大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2018年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2018年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 三角置換と周期積分
方針
根号 は が最短である。周期積分は, が常に正なので特異点を気にせず一周期の標準公式に落とせる。
周期積分の注意
は一周期を実線全体へ写す置換である。途中で区間を のように取り直しても,周期関数なので値は変わらない。 分母を まで整理すれば,あとは を使うだけでよい。
検算
第2の値は,分母が から の間にあることから を満たすはずである。得られた はこの範囲に入り,符号も正しい。
典型ミス
を に直すとき,置換後の積分区間にこだわりすぎて 余計な符号を入れるミスがある。一周期積分では平行移動しても値が変わらないことを 先に書くと安全である。
第2問 — 行列の核と階数1行列
方針
前半は内積 を見るのが最も確実である。 からすぐ と書くのではなく, いったんこの二次形式を経由すると,論理の穴がなくなる。
階数1の意味
は列空間が1次元であることを意味する。したがって 全ての列が1本の非零列ベクトルの実数倍になる。この「列ごとの係数」を横に並べたものが であり,行列全体が外積 になる。
検算
逆向きに見ると, なら の列はすべて の倍数なので 階数は高くても1である。さらに少なくとも1列は非零なので階数は1である。 この確認により,表現が階数1行列をちょうど捉えていることが分かる。
典型ミス
から左に を掛けるような議論は, が正則とは限らないため使えない。 また,階数1の表現では の取り方は一意ではない。 と は同じ行列を与える。
第3問 — 制約付き極値
方針
まず極値の存在をコンパクト性で押さえる。その後,ラグランジュ未定乗数法でも解けるが, この制約では を消去して の1変数最大化にする方が計算が短い。
制約曲線上で積の絶対値が最大になる点
符号の扱い
を最大化すると絶対値だけが分かる。最大値と最小値を分けるには, と が同符号なら正,異符号なら負であることを最後に戻す必要がある。
検算
得られた点では であり,制約を満たす。また である。
典型ミス
で直接微分すると 近くの符号処理が面倒になる。 とおけば 定義域が閉区間になり,端点確認も自然に行える。
第4問 — 常微分方程式の保存量
方針
この式は力学でいうエネルギー保存則の形をしている。方程式に を掛けて積分する, または直接 を計算する,という二通りの書き方がある。答案では直接微分が最も短い。
有界性から符号を排除する
と仮定すると,保存量の式から の絶対値が正の定数以上になる。 つまり解は全実数上で止まれない。微分係数が正に固定されれば右へ進むほど増大し, 負に固定されれば左へ戻るほど増大する。どちらも上有界性に反する。
検算
は結論と矛盾しない。例えば定数解 や では である。定数解 では であり,やはり を満たす。
典型ミス
上に有界という仮定だけで が有界とは限らない。しかし の場合は が正の下限を持つため,片側の無限遠で必ず上へ発散する。この片側の議論を書けば, 下に有界かどうかを仮定する必要はない。
第5問 — 直和分解と部分空間の分類
方針
と次元条件から,まず と見抜く。 この直和分解に対して, のうち に完全に入る部分, に完全に入る部分, どちらにも完全には入らないグラフ部分に分けるのが本質である。
斜め成分を含む標準形
構成の意味
と は個別に固定される部分である。 残りの は, 成分を決めると 成分も一意に決まるグラフ部分になる。 同じ を持つ では,この三つの部品の次元が一致するため, 基底を対応させるだけで求める同型写像を作れる。
採点上の注意
(1) は必要条件 を示すだけでは不十分である。 その条件を満たす全ての組が実際に実現できることを,具体的な を作って示す必要がある。
典型ミス
が必ず の部分直和として だけで書けると思ってしまう誤りがある。 一般には斜めの成分 が存在し,この成分の数が である。