大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2013年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2013年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 多項式空間上の線形変換
方針
線形変換を係数の漸化式として見ると,反復計算が一気に簡単になる。今回は二次係数が 倍,その下の一次係数が 倍を含む形で更新され,定数項は一つ前の一次係数を足していく。
検算
一度だけ作用させると 次は となる。一般式に を入れると同じ値が出るので,反復の添字のずれはない。
採点上の注意
は見かけ上 で定義されていないが,ここでは多項式空間上の変換なので, 計算後に多項式として延長すればよい。この一言がないと,変換が 上で閉じていることの説明が弱くなる。
2013年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
次数が 以下の多項式を とおく。原点での値は多項式として連続に延長して考えればよいので, である。また したがって つまり,係数ベクトル に対して という上三角に近い形の漸化式を得る。
では であり, のまま保たれる。さらに だから よって
最終答
第2問 — 積分剰余と凸性
方針
この問題は「凸関数は弦の下にある」という事実を,積分剰余の形で証明させている。通常の二階微分による凸性判定を使うだけでなく,指定された式の符号をきちんと読むことが重要である。
符号の見落とし
積分区間 では , では である。これに と が掛かるので,補正項は正ではなく負になる。符号を反対に読むと結論も反対になる。
採点上の注意
が任意の点であることを最後に明記する。すなわち,固定した の議論ではなく, と置けば区間上のすべての点を表せる,という一文が必要である。
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まず とおく。点 を基点にした積分剰余つきのTaylor公式から である。これらにそれぞれ を掛けて足すと ここで である。したがって が従う。
次に とする。任意の は と表せる。このとき であり, であるから,二つの積分項はいずれも 以下である。端点値は なので したがってすべての に対して である。
最終答
積分剰余公式を端点 に適用して重み付きに足すと指定の等式が得られる。さらに なら二つの剰余積分がともに非正なので,任意の で 。
第3問 — 巡回行列の固有値
方針
4次行列式を直接展開すると計算量が大きい。行ごとに成分が巡回していることに気づけば,離散Fourier型の固有ベクトルで一度に対角化できる。
実数の核
を使って固有値を求めても,最終的な核は実ベクトル空間で答える。特に では複素固有ベクトルをそのまま書くより, 全成分が の行列になることを使って と表す方が簡潔で誤りが少ない。
典型ミス
巡回行列の固有値を求めるとき, と の取り方を逆にしても行列式は同じになる。ただし固有ベクトルとの対応は入れ替わるので,核の基底を書く段階では実際に代入して確認するとよい。
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この行列は巡回行列である。第一行を と読むと,4次の1の根 に対して固有値は で与えられる。
実際に計算すると したがって より
階数は零固有値の個数で決まる。 なら零固有値はないので では だけが消えるため では が消え, は残るため
核の基底も同じ固有ベクトルから分かる。 では に対応するので では行列の全成分が になり, である。したがって 例えば が基底になる。
最終答
核は で , で の3次元空間である。
第4問 — 複素正接関数の周期積分
方針
正接関数は周期 をもつので,区間長 の積分は縦方向にずらしても変わらない,という見方が本質である。微分して端点差を見ると,この周期性が一行で効く。
極を避ける条件
の極は実軸上の から縦方向にずれていない点である。今回 なので,経路 は極を通らない。この確認を書いておくと,微分や経路の移動を安心して使える。
採点上の注意
の極限だけから直ちに とは言えない。 が に依らないことを示してから,極限の値を代入する順序で書く。
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をそのまま使うより, として と書くと極限が見やすい。分母は で が支配的になり, である。したがって
次に を で微分する。 では積分経路が正接関数の極を通らないので,積分と微分を交換して より ゆえに は で一定である。
最後に をとると,先ほどの極限は で一様に成り立つので
最終答
第5問 — 二変数関数の極値
方針
まず停留点をすべて出し,非退化な点はヘッセ行列で判定する。退化点では二次形式だけを見ると結論が出ないので,高次項を含めて符号が両側に出るかを調べる。
退化点の見方
では二次項が で半正定値なので,一見すると極小に見える。しかし三次項が と同じ方向に効くため, を二次の大きさに調整すると値を下げられる。 退化点ではこのような「二次項が消える曲線」を探すのが定石である。
採点上の注意
ヘッセ行列の行列式が になった点を「判定不能」と書いて終えるのは不足である。極値でないことを示すには,近くで関数値が基準値より大きい点と小さい点を具体的に示す必要がある。
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関数を とする。偏微分は 臨界点は を満たす点である。これを として解くと を得る。
ヘッセ行列は である。点 では この行列は なので負定値である。したがって は極大点で,極大値は
点 では であり, なので二次判定だけでは決まらない。ここでは と因数分解する。
直線 上では である。一方, とおくと だから を選べば,十分小さい でこれは負になる。また例えば では が の十分小さい範囲で成り立つ。したがって の任意の近くに となる点と となる点があるので, は極値を与えない。
最終答
唯一の極値は での極大値 である。 は臨界点だが極値ではない。極小値は存在しない。