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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2007年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2007年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 左右から近づく微分商

方針

ポイントは、二点 a+ha+haka-k を直接結ぶ差商を、aa を中継点にして二つの通常の差商に分解することである。 係数 hh+k,kh+k \frac{h}{h+k},\qquad \frac{k}{h+k} はどちらも 00 以上で和が 11 だから、全体は二つの差商の加重平均になっている。

二階微分可能性は不要

二階微分可能ならもちろん一階微分可能である。しかしこの極限では剰余項の二次評価は不要で、左右の一階差商が同じ極限を持つことだけを使う。 したがって「二階微分可能だからテイラー展開」と始めてもよいが、その場合でも本質は一次の項だけである。

典型ミス

hhkk が同じ速さで 00 に近づくとは限らない。 たとえば h/(h+k)h/(h+k) の極限は経路によって変わるが、二つの差商がともに f(a)f'(a) に近づくため、重みの極限を決める必要はない。

2007年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

h>0, k>0h>0,\ k>0 とする。分子を f(a)f(a) をはさんで分けると f(a+h)f(ak)h+k=hh+kf(a+h)f(a)h+kh+kf(a)f(ak)k. \frac{f(a+h)-f(a-k)}{h+k} = \frac{h}{h+k}\frac{f(a+h)-f(a)}{h} + \frac{k}{h+k}\frac{f(a)-f(a-k)}{k}. ここで f(a+h)f(a)hf(a) \frac{f(a+h)-f(a)}{h}\longrightarrow f'(a) であり、また k>0k>0 として aka-k から近づけると f(a)f(ak)k=f(ak)f(a)kf(a) \frac{f(a)-f(a-k)}{k} = \frac{f(a-k)-f(a)}{-k} \longrightarrow f'(a) である。

したがって、任意の ε>0\varepsilon>0 に対し、十分小さい h,k>0h,k>0 では f(a+h)f(a)hf(a)<ε,f(a)f(ak)kf(a)<ε \left|\frac{f(a+h)-f(a)}{h}-f'(a)\right|<\varepsilon, \qquad \left|\frac{f(a)-f(a-k)}{k}-f'(a)\right|<\varepsilon が成り立つ。このとき上の表示から f(a+h)f(ak)h+kf(a)hh+kf(a+h)f(a)hf(a)+kh+kf(a)f(ak)kf(a)<ε \begin{aligned} &\left| \frac{f(a+h)-f(a-k)}{h+k}-f'(a) \right| \\ &\le \frac{h}{h+k} \left|\frac{f(a+h)-f(a)}{h}-f'(a)\right| + \frac{k}{h+k} \left|\frac{f(a)-f(a-k)}{k}-f'(a)\right| \\ &<\varepsilon \end{aligned} となる。よって求める極限は f(a)f'(a) である。

この証明では二階微分可能性を使っていない。x=ax=a における一階微分可能性だけで、右からの差商と左からの差商がともに同じ値 f(a)f'(a) に収束するため、同じ結論が従う。

最終答

極限は f(a) \displaystyle f'(a) である。この結論は、x=ax=a で一回微分可能であれば成り立つ。

2 — 楕円体の体積

方針

楕円体は、単位球を各座標軸方向に異なる倍率で拡大した図形である。 三次元の体積は、長さの倍率の積だけ拡大されるので、答は単位球の体積に abcabc を掛けたものになる。

検算

a=b=c=ra=b=c=r のとき、楕円体は半径 rr の球であり、式は 4π3r3 \frac{4\pi}{3}r^3 になる。これは球の体積と一致する。

採点上の注意

答だけでなく、変数変換のヤコビアン abcabc を明記することが重要である。 特に a,b,ca,b,c がすべて正であるため、絶対値を取ってもヤコビアンはそのまま abcabc でよい。

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変数変換 x=au,y=bv,z=cw x=au,\qquad y=bv,\qquad z=cw を用いる。このとき (xa)2+(yb)2+(zc)2=u2+v2+w2 \left(\frac{x}{a}\right)^2+ \left(\frac{y}{b}\right)^2+ \left(\frac{z}{c}\right)^2 = u^2+v^2+w^2 なので、与えられた楕円体は単位球 u2+v2+w21 u^2+v^2+w^2\le 1 から、u,v,wu,v,w 方向にそれぞれ a,b,ca,b,c 倍したものである。

ヤコビアンは (x,y,z)(u,v,w)=abc \left|\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(u,v,w)}\right| = abc である。したがって体積 VVV=abcu2+v2+w21dudvdw. V = abc\iiint_{u^2+v^2+w^2\le 1}du\,dv\,dw. 単位球の体積は、ww を固定して断面円の面積を積分すれば 11π(1w2)dw=π[ww33]11=4π3. \int_{-1}^{1}\pi(1-w^2)\,dw = \pi\left[w-\frac{w^3}{3}\right]_{-1}^{1} = \frac{4\pi}{3}. ゆえに V=4π3abc. V=\frac{4\pi}{3}abc.

最終答

楕円体の体積は V=4π3abc. \displaystyle V=\frac{4\pi}{3}abc.

3 — 留数による有理関数積分

方針

分母の次数が分子より十分大きいので、上半円の大きな弧上の積分は 00 に消える。 したがって、実軸上の積分は上半平面内の極の留数だけで決まる。

計算の要点

単純極 z0z_0 での留数は 1(1+z4)z=z0=14z03 \frac{1}{(1+z^4)'|_{z=z_0}}=\frac{1}{4z_0^3} である。ここで指数表示を使うと、三角関数の値を個別に追うより符号ミスが少ない。

典型ミス

最後に半分にするのを忘れると、(,)(-\infty,\infty) 上の積分値を答えてしまう。 求めているのは正の半直線上の積分であり、偶関数性によりその半分である。

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f(z)=11+z4 f(z)=\frac{1}{1+z^4} を考え、上半平面の半円周 CR={z:z=R, Imz0} C_R=\{z:|z|=R,\ \operatorname{Im}z\ge 0\} と実軸上の区間 [R,R][-R,R] からなる閉曲線で積分する。

1+z4=01+z^4=0 の上半平面内の根は z1=eπi/4,z2=e3πi/4 z_1=e^{\pi i/4},\qquad z_2=e^{3\pi i/4} である。どちらも単純極だから Resz=zj11+z4=14zj3(j=1,2) \operatorname*{Res}_{z=z_j}\frac{1}{1+z^4} = \frac{1}{4z_j^3} \qquad (j=1,2) である。したがって Resz=z1f+Resz=z2f=14(e3πi/4+e9πi/4)=14(e3πi/4+eπi/4)=i22. \begin{aligned} \operatorname*{Res}_{z=z_1}f+ \operatorname*{Res}_{z=z_2}f &= \frac14 \left(e^{-3\pi i/4}+e^{-9\pi i/4}\right) \\ &= \frac14 \left(e^{-3\pi i/4}+e^{-\pi i/4}\right) = -\frac{i}{2\sqrt2}. \end{aligned} 留数定理より RRdx1+x4+CRdz1+z4=2πi(i22)=π2. \int_{-R}^{R}\frac{dx}{1+x^4} + \int_{C_R}\frac{dz}{1+z^4} = 2\pi i\left(-\frac{i}{2\sqrt2}\right) = \frac{\pi}{\sqrt2}.

RR を十分大きく取れば、CRC_R 上で 1+z4R41 |1+z^4|\ge R^4-1 なので CRdz1+z4πRR410(R). \left|\int_{C_R}\frac{dz}{1+z^4}\right| \le \frac{\pi R}{R^4-1} \longrightarrow 0 \qquad (R\to\infty). よって dx1+x4=π2. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4} = \frac{\pi}{\sqrt2}. 被積分関数は偶関数であるから 0dx1+x4=12dx1+x4=π22. \int_{0}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4} = \frac12 \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4} = \frac{\pi}{2\sqrt2}.

最終答

0dx1+x4=π22. \displaystyle \int_{0}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4} = \frac{\pi}{2\sqrt2}.

4 — rank-one 更新の行列式

方針

四次の行列式を正面から展開する必要はない。 すべての成分が xixjx_i x_j の形でそろっているため、列ベクトル xx とその転置の積 xxTxx^{\mathsf T} と見抜くのが最短である。

公式の確認

行列式公式は、ブロック行列 (1vTuIn) \begin{pmatrix} 1 & -v^{\mathsf T}\\ u & I_n \end{pmatrix} の行列式を二通りに計算すれば得られる。 右下の InI_n で Schur 補行列を取ると 1+vTu1+v^{\mathsf T}u、左上の 11 で Schur 補行列を取ると det(In+uvT)\det(I_n+uv^{\mathsf T}) になる。

採点上の注意

この問題では、行列を I4+xxTI_4+xx^{\mathsf T} と書いた時点で構造がほぼ決まる。 その後に rank-one 更新の公式をそのまま使ってもよいが、公式名だけで不安なら上のブロック行列による一行証明を添えると答案として強い。

2007年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

x=(x1x2x3x4) x= \begin{pmatrix} x_1\\ x_2\\ x_3\\ x_4 \end{pmatrix} とおく。与えられた行列は I4+xxT I_4+xx^{\mathsf T} である。実際、対角成分は 1+xi21+x_i^2、非対角成分は xixjx_i x_j になる。

ここで rank-one 更新の行列式公式 det(In+uvT)=1+vTu \det(I_n+uv^{\mathsf T})=1+v^{\mathsf T}u を用いると、 det(I4+xxT)=1+xTx=1+x12+x22+x32+x42. \det(I_4+xx^{\mathsf T}) = 1+x^{\mathsf T}x = 1+x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2. したがって求める等式が示された。

最終答

左辺の行列は I4+xxTI_4+xx^{\mathsf T} であるから、 det(I4+xxT)=1+x12+x22+x32+x42. \displaystyle \det(I_4+xx^{\mathsf T}) = 1+x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2.

5 — 重根をもつ三次行列の固有値

方針

三次の実係数多項式で重根があるとき、重根が非実数になることはできない。 非実根は共役な根を伴うため、非実重根なら共役も重根になり、次数が四以上必要になるからである。 この観察により、固有値を実数 α,α,β\alpha,\alpha,\beta と置ける。

逆行列の出し方

固有値が分かったら、特性多項式を作って Cayley--Hamilton を使うのが最も安定している。 A33A2I=0A^3-3A-2I=0 から A1A^{-1} を出すには、AA が正則であることを先に確認する必要がある。 ここでは detA=2\det A=2 なので問題ない。

対角化可能性

固有値が同じでも、対角化可能性は Jordan ブロックの形で変わる。 1-1 の二重固有値に対して、22 次の Jordan ブロックを持たせれば対角化不能になり、完全に対角行列にすれば対角化可能になる。

2007年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

固有値を重複度込みで α, α, β \alpha,\ \alpha,\ \beta と書く。行列 AA は実行列なので、特性多項式の係数は実数である。 もし重根 α\alpha が非実数なら、共役複素数 α\overline{\alpha} も同じ重複度で根になってしまい、三次多項式では次数が足りない。 したがって重根 α\alpha は実数である。

トレースと行列式の条件から 2α+β=0,α2β=2 2\alpha+\beta=0,\qquad \alpha^2\beta=2 である。前式より β=2α\beta=-2\alpha だから α2(2α)=2,α3=1. \alpha^2(-2\alpha)=2, \qquad \alpha^3=-1. よって α=1,β=2. \alpha=-1,\qquad \beta=2. したがって固有値は 1, 1, 2 -1,\ -1,\ 2 である。

次に A1A^{-1}AA の多項式で表す。 特性多項式は (λ+1)2(λ2)=λ33λ2 (\lambda+1)^2(\lambda-2) = \lambda^3-3\lambda-2 なので、Cayley--Hamilton の定理より A33A2I=0. A^3-3A-2I=0. detA=20\det A=2\ne 0 だから AA は正則であり、右から A1A^{-1} を掛けると A23I2A1=0. A^2-3I-2A^{-1}=0. ゆえに A1=12(A23I). A^{-1}=\frac12(A^2-3I).

最後に例を挙げる。対角化可能でない例として A1=(110010002) A_1= \begin{pmatrix} -1 & 1 & 0\\ 0 & -1 & 0\\ 0 & 0 & 2 \end{pmatrix} を取ればよい。1-1 に対応する Jordan ブロックの大きさが 22 なので、これは対角化可能でない。

対角化可能な例としては A2=(100010002) A_2= \begin{pmatrix} -1 & 0 & 0\\ 0 & -1 & 0\\ 0 & 0 & 2 \end{pmatrix} がある。どちらもトレースは 00、行列式は 22、固有値は 1,1,2-1,-1,2 であり、条件を満たす。

最終答

(i) 固有値は 1,1,2-1,-1,2

(ii) A1=12(A23I). \displaystyle A^{-1}=\frac12(A^2-3I).

(iii) 例えば (110010002) \begin{pmatrix} -1 & 1 & 0\\ 0 & -1 & 0\\ 0 & 0 & 2 \end{pmatrix} は対角化可能でなく、 (100010002) \begin{pmatrix} -1 & 0 & 0\\ 0 & -1 & 0\\ 0 & 0 & 2 \end{pmatrix} は対角化可能である。

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