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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2008年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは1件(固有値・固有ベクトル)。2007年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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解説5問・解答5問・最終答5問(全5問)
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2008年度は解答・最終答まで全文公開
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阪大 数学 2008年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—球と円柱の共通部分の体積—あり
第2問線形代数同伴行列の固有多項式と対角化採点上の注意あり
第3問微分積分・解析有界正則関数の係数評価不等号の扱いあり
第4問—交換子で定まる線形写像表現行列の作り方あり
第5問微分積分・解析凸関数の割線勾配と零点の一意性零点の一意性あり

この年度の解説には典型ミス4件・検算2件・採点上の注意1件が付いています。

2008年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は1問に1テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
固有値・固有ベクトル第2問25大学・544問

前年度(2007年度)との違い

大問数
2007年度 5問 → 2008年度 5問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
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第1問 — 球と円柱の共通部分の体積

方針

立体を直接三次元で見ようとするより、まず xyxy 平面への射影を見る。 円柱は xyxy 平面では中心 (a/2,0)(a/2,0)、半径 a/2a/2 の円板であり、この円板上で球の高さ 2a2−r22\sqrt{a^2-r^2} を積分すればよい。

検算

答は a3a^3 に比例している。長さを aa 倍すれば体積は a3a^3 倍になるので、次元は合っている。 また、円柱の射影面積は πa2/4\pi a^2/4 程度で、高さは最大でも 2a2a であるから、体積が a3a^3 の定数倍になることも自然である。

典型ミス

円柱の条件を 0≤r≤a0\le r\le a としてしまうと、中心が原点の円柱として扱う誤りになる。 正しくは r≤acos⁡θr\le a\cos\theta であり、角度範囲も cos⁡θ≥0\cos\theta\ge 0 に限られる。

解答

球の内部と円柱の内部の共通部分を考える。 xyxy 平面で極座標 x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θ x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta を用いると、円柱の条件は r2−arcos⁡θ≤0 r^2-ar\cos\theta\le 0 である。したがって −π2≤θ≤π2,0≤r≤acos⁡θ -\frac{\pi}{2}\le \theta\le \frac{\pi}{2},\qquad 0\le r\le a\cos\theta が射影領域である。固定した (r,θ)(r,\theta) に対して、球の上下方向の長さは 2a2−r2 2\sqrt{a^2-r^2} だから、体積 VV は V=∫−π/2π/2∫0acos⁡θ2a2−r2 r dr dθ. V =\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\int_0^{a\cos\theta} 2\sqrt{a^2-r^2}\,r\,dr\,d\theta . 内側の積分は ∫0acos⁡θ2ra2−r2 dr=23{a3−(a2−a2cos⁡2θ)3/2}. \int_0^{a\cos\theta}2r\sqrt{a^2-r^2}\,dr = \frac{2}{3} \left\{ a^3-\left(a^2-a^2\cos^2\theta\right)^{3/2} \right\}. −π/2≤θ≤π/2-\pi/2\le \theta\le \pi/2 では (a2−a2cos⁡2θ)3/2=a3∣sin⁡θ∣3 \left(a^2-a^2\cos^2\theta\right)^{3/2} =a^3|\sin\theta|^3 である。よって V=2a33∫−π/2π/2(1−∣sin⁡θ∣3) dθ. V = \frac{2a^3}{3} \int_{-\pi/2}^{\pi/2} \left(1-|\sin\theta|^3\right)\,d\theta . ここで ∫−π/2π/2∣sin⁡θ∣3 dθ=2∫0π/2sin⁡3θ dθ=43 \int_{-\pi/2}^{\pi/2}|\sin\theta|^3\,d\theta = 2\int_0^{\pi/2}\sin^3\theta\,d\theta = \frac{4}{3} なので、 V=2a33(π−43)=2a39(3π−4). V = \frac{2a^3}{3} \left(\pi-\frac{4}{3}\right) = \frac{2a^3}{9}(3\pi-4).

最終答

求める体積は 2a39(3π−4). \displaystyle \frac{2a^3}{9}(3\pi-4).

第2問 — 同伴行列の固有多項式と対角化

方針

この形の行列では、最初から固有ベクトルを (1,λ,…,λn−1)T(1,\lambda,\ldots,\lambda^{n-1})^T と予想すると計算が短い。 上の n−1n-1 行が指数を一つずつ上げ、最後の行で固有方程式を使うという構造になっている。

採点上の注意

PP を書くだけでなく、det⁡P≠0\det P\ne 0 を確認する必要がある。 根が相異なるという仮定は、まさに Vandermonde 行列が正則であることを保証するために使われている。

典型ミス

固有多項式の係数の順序を逆にしないこと。 最後の行が −a0,−a1,…,−an−1-a_0,-a_1,\ldots,-a_{n-1} の順で並ぶので、対応する多項式は a0+a1λ+⋯+an−1λn−1+λna_0+a_1\lambda+\cdots+a_{n-1}\lambda^{n-1}+\lambda^n である。

解答

与えられた行列を AA とし、固有多項式を fA(λ)=det⁡(λI−A) f_A(\lambda)=\det(\lambda I-A) で定める。この行列は多項式 p(λ)=λn+an−1λn−1+an−2λn−2+⋯+a1λ+a0 p(\lambda)=\lambda^n+a_{n-1}\lambda^{n-1} +a_{n-2}\lambda^{n-2}+\cdots+a_1\lambda+a_0 の同伴行列である。実際、λI−A\lambda I-A の行列式を最後の行の係数について展開するか、 標準的な同伴行列の計算を用いると fA(λ)=p(λ) f_A(\lambda)=p(\lambda) となる。

次に、p(λ)=0p(\lambda)=0 を満たす λ\lambda に対して v(λ)=(1λλ2⋮λn−1) v(\lambda)= \begin{pmatrix} 1\\ \lambda\\ \lambda^2\\ \vdots\\ \lambda^{n-1} \end{pmatrix} とおく。すると上から n−1n-1 成分はただちに Av(λ)=(λλ2⋮λn−1−a0−a1λ−⋯−an−1λn−1) A v(\lambda) = \begin{pmatrix} \lambda\\ \lambda^2\\ \vdots\\ \lambda^{n-1}\\ -a_0-a_1\lambda-\cdots-a_{n-1}\lambda^{n-1} \end{pmatrix} となる。最後の成分は p(λ)=0p(\lambda)=0 より −a0−a1λ−⋯−an−1λn−1=λn -a_0-a_1\lambda-\cdots-a_{n-1}\lambda^{n-1} =\lambda^n である。したがって Av(λ)=λv(λ) A v(\lambda)=\lambda v(\lambda) であり、v(λ)v(\lambda) は固有値 λ\lambda に対応する固有ベクトルである。

いま解 λ1,…,λn\lambda_1,\ldots,\lambda_n がすべて相異なるので、 P=(11⋯1λ1λ2⋯λnλ12λ22⋯λn2⋮⋮⋮λ1n−1λ2n−1⋯λnn−1) P= \begin{pmatrix} 1&1&\cdots&1\\ \lambda_1&\lambda_2&\cdots&\lambda_n\\ \lambda_1^2&\lambda_2^2&\cdots&\lambda_n^2\\ \vdots&\vdots&&\vdots\\ \lambda_1^{n-1}&\lambda_2^{n-1}&\cdots&\lambda_n^{n-1} \end{pmatrix} は Vandermonde 行列であり、 det⁡P=∏1≤i<j≤n(λj−λi)≠0 \det P=\prod_{1\le i<j\le n}(\lambda_j-\lambda_i)\ne 0 である。各列が固有ベクトルだから AP=Pdiag⁡(λ1,λ2,…,λn) AP = P \operatorname{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n) となり、 P−1AP=diag⁡(λ1,λ2,…,λn) P^{-1}AP = \operatorname{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n) を得る。

最終答

固有多項式は fA(λ)=λn+an−1λn−1+⋯+a1λ+a0. \displaystyle f_A(\lambda)= \lambda^n+a_{n-1}\lambda^{n-1}+\cdots+a_1\lambda+a_0. 相異なる根 λ1,…,λn\lambda_1,\ldots,\lambda_n に対し、列を v(λi)=(1,λi,…,λin−1)Tv(\lambda_i)=(1,\lambda_i,\ldots,\lambda_i^{n-1})^T とする Vandermonde 行列 PP を取れば P−1AP=diag⁡(λ1,…,λn). \displaystyle P^{-1}AP=\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n).

第3問 — 有界正則関数の係数評価

方針

単位円板全体で ∣f∣<1|f|<1 と分かっているので、半径 r<1r<1 の円周上で Cauchy の係数公式を使う。 最後に rr を 11 に近づけることで、r−nr^{-n} を 11 に近づけるのが要点である。

不等号の扱い

円周上では ∣f(z)∣<1|f(z)|<1 なので、途中では ∣an∣<r−n|a_n|<r^{-n} と書いてもよい。 ただし r→1r\to1 の極限を取ると結論は一般に ≤1\le 1 であり、<1<1 までは言えない。 たとえば定数関数に近い関数を考えると、この差が重要になる。

典型ミス

r=1r=1 の円周で Cauchy の公式を直接使ってはいけない。 関数は開円板で正則と仮定されているだけで、境界 ∣z∣=1|z|=1 上で定義されているとは限らない。

解答

0<r<10<r<1 を任意に取る。円 ∣z∣=r|z|=r は単位円板の中に含まれるので、Cauchy の積分公式より an=12πi∫∣z∣=rf(z)zn+1 dz a_n= \frac{1}{2\pi i} \int_{|z|=r}\frac{f(z)}{z^{n+1}}\,dz である。仮定から ∣f(z)∣<1|f(z)|<1 だから ∣an∣≤12π⋅2πr⋅1rn+1=1rn. |a_n| \le \frac{1}{2\pi}\cdot 2\pi r\cdot \frac{1}{r^{n+1}} = \frac{1}{r^n}. これは任意の 0<r<10<r<1 について成り立つ。そこで r→1−0r\to 1-0 とすれば ∣an∣≤1 |a_n|\le 1 を得る。

最終答

すべての n=0,1,2,…n=0,1,2,\ldots について ∣an∣≤1 \displaystyle |a_n|\le 1 が成り立つ。

第4問 — 交換子で定まる線形写像

方針

行列積は一般には可換でないが、左から AA を掛ける操作と右から AA を掛ける操作はどちらも XX に関して線形である。 したがって、その差である交換子 AX−XAAX-XA も線形になる。

表現行列の作り方

基底を T1,T2,T3,T4T_1,T_2,T_3,T_4 の順に固定したら、ϕA(Tj)\phi_A(T_j) の座標を第 jj 列に入れる。 行と列を取り違えると転置行列が出てしまうので、各列を一つずつ確認するのが安全である。

検算

X=IX=I なら AI−IA=0AI-IA=0 である。 今回の基底では I=T1+T4I=T_1+T_4 なので、表現行列の第1列と第4列を足すと 00 になる。 これは計算結果のよいチェックになる。

解答

X,Y∈VX,Y\in V、α,β∈R\alpha,\beta\in\mathbb{R} とする。定義から ϕA(αX+βY)=A(αX+βY)−(αX+βY)A \phi_A(\alpha X+\beta Y) = A(\alpha X+\beta Y)-(\alpha X+\beta Y)A であり、右辺を展開すると α(AX−XA)+β(AY−YA)=αϕA(X)+βϕA(Y) \alpha(AX-XA)+\beta(AY-YA) = \alpha\phi_A(X)+\beta\phi_A(Y) となる。よって ϕA\phi_A は線形写像である。

次に A=(abcd) A= \begin{pmatrix} a&b\\ c&d \end{pmatrix} とする。基底 T1,T2,T3,T4T_1,T_2,T_3,T_4 に対して順に計算すると ϕA(T1)=(0−bc0)=−bT2+cT3, \phi_A(T_1) = \begin{pmatrix} 0&-b\\ c&0 \end{pmatrix} = -bT_2+cT_3, ϕA(T2)=(−ca−d0c)=−cT1+(a−d)T2+cT4, \phi_A(T_2) = \begin{pmatrix} -c&a-d\\ 0&c \end{pmatrix} = -cT_1+(a-d)T_2+cT_4, ϕA(T3)=(b0d−a−b)=bT1+(d−a)T3−bT4, \phi_A(T_3) = \begin{pmatrix} b&0\\ d-a&-b \end{pmatrix} = bT_1+(d-a)T_3-bT_4, ϕA(T4)=(0b−c0)=bT2−cT3. \phi_A(T_4) = \begin{pmatrix} 0&b\\ -c&0 \end{pmatrix} = bT_2-cT_3. したがって、表現行列は各 ϕA(Tj)\phi_A(T_j) の座標を第 jj 列に並べればよいので [ϕA]{T1,T2,T3,T4}=(0−cb0−ba−d0bc0d−a−c0c−b0). [\phi_A]_{\{T_1,T_2,T_3,T_4\}} = \begin{pmatrix} 0&-c& b&0\\ -b&a-d&0&b\\ c&0&d-a&-c\\ 0&c&-b&0 \end{pmatrix}.

最終答

ϕA\phi_A は線形写像であり、指定された基底に関する表現行列は (0−cb0−ba−d0bc0d−a−c0c−b0). \displaystyle \begin{pmatrix} 0&-c& b&0\\ -b&a-d&0&b\\ c&0&d-a&-c\\ 0&c&-b&0 \end{pmatrix}.

第5問 — 凸関数の割線勾配と零点の一意性

方針

f′′>0f''>0 は f′f' の狭義単調増加を意味する。 割線勾配は平均値の定理でどこかの接線勾配に置き換えられるため、左側の割線勾配より右側の割線勾配が大きくなる。

零点の一意性

存在は中間値の定理だけで十分である。 一意性では、二つの零点 u<vu<v があると仮定し、さらに右端 bb を三点目に使う。 すると、左側の割線勾配は 00、右側の割線勾配は負になるので、(1) の「右ほど大きい」という結論と矛盾する。

典型ミス

「凸だから零点は一つ」とだけ書くと不十分である。 凸関数は一般には二つの零点を持つこともある。 ここでは右端で f(b)<0f(b)<0 という符号条件を組み合わせることで、二つ目の零点を排除している。

解答

まず (1) を示す。平均値の定理より、ある ξ1∈(x1,x2),ξ2∈(x2,x3) \xi_1\in(x_1,x_2),\qquad \xi_2\in(x_2,x_3) が存在して f(x2)−f(x1)x2−x1=f′(ξ1),f(x3)−f(x2)x3−x2=f′(ξ2) \frac{f(x_2)-f(x_1)}{x_2-x_1}=f'(\xi_1), \qquad \frac{f(x_3)-f(x_2)}{x_3-x_2}=f'(\xi_2) となる。仮定 f′′(x)>0f''(x)>0 から f′f' は開区間 (a,b)(a,b) で狭義単調増加である。 ξ1<ξ2\xi_1<\xi_2 なので f′(ξ1)<f′(ξ2) f'(\xi_1)<f'(\xi_2) であり、求める割線勾配の不等式が従う。

次に (2) を示す。ff は閉区間で連続であり、f(a)>0f(a)>0、f(b)<0f(b)<0 だから、 中間値の定理により少なくとも一つの零点が (a,b)(a,b) に存在する。

一意性を示すため、相異なる二つの零点 u<vu<v が存在すると仮定する。 このとき u<v<bu<v<b であり、(1) を x1=u, x2=v, x3=bx_1=u,\ x_2=v,\ x_3=b に適用すると f(v)−f(u)v−u<f(b)−f(v)b−v \frac{f(v)-f(u)}{v-u} < \frac{f(b)-f(v)}{b-v} を得る。左辺は 00、右辺は f(b)<0f(b)<0 より負であるから 0<f(b)b−v<0 0<\frac{f(b)}{b-v}<0 という矛盾が生じる。したがって零点は高々一つである。 存在性と合わせて、零点は (a,b)(a,b) にただ一つ存在する。

最終答

(1) 割線勾配は左の区間から右の区間へ移ると狭義に増加する。 (2) 条件 f(a)>0, f(b)<0f(a)>0,\ f(b)<0 の下で、方程式 f(x)=0f(x)=0 は (a,b)(a,b) に唯一つの解を持つ。

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  • 2008年度(このページ・全5問)解答・最終答まで全文公開

    球と円柱の共通部分の体積 / 同伴行列の固有多項式と対角化 / 有界正則関数の係数評価

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