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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2008年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2008年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 球と円柱の共通部分の体積

方針

立体を直接三次元で見ようとするより、まず xyxy 平面への射影を見る。 円柱は xyxy 平面では中心 (a/2,0)(a/2,0)、半径 a/2a/2 の円板であり、この円板上で球の高さ 2a2r22\sqrt{a^2-r^2} を積分すればよい。

検算

答は a3a^3 に比例している。長さを aa 倍すれば体積は a3a^3 倍になるので、次元は合っている。 また、円柱の射影面積は πa2/4\pi a^2/4 程度で、高さは最大でも 2a2a であるから、体積が a3a^3 の定数倍になることも自然である。

典型ミス

円柱の条件を 0ra0\le r\le a としてしまうと、中心が原点の円柱として扱う誤りになる。 正しくは racosθr\le a\cos\theta であり、角度範囲も cosθ0\cos\theta\ge 0 に限られる。

2008年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

球の内部と円柱の内部の共通部分を考える。 xyxy 平面で極座標 x=rcosθ,y=rsinθ x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta を用いると、円柱の条件は r2arcosθ0 r^2-ar\cos\theta\le 0 である。したがって π2θπ2,0racosθ -\frac{\pi}{2}\le \theta\le \frac{\pi}{2},\qquad 0\le r\le a\cos\theta が射影領域である。固定した (r,θ)(r,\theta) に対して、球の上下方向の長さは 2a2r2 2\sqrt{a^2-r^2} だから、体積 VVV=π/2π/20acosθ2a2r2rdrdθ. V =\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\int_0^{a\cos\theta} 2\sqrt{a^2-r^2}\,r\,dr\,d\theta . 内側の積分は 0acosθ2ra2r2dr=23{a3(a2a2cos2θ)3/2}. \int_0^{a\cos\theta}2r\sqrt{a^2-r^2}\,dr = \frac{2}{3} \left\{ a^3-\left(a^2-a^2\cos^2\theta\right)^{3/2} \right\}. π/2θπ/2-\pi/2\le \theta\le \pi/2 では (a2a2cos2θ)3/2=a3sinθ3 \left(a^2-a^2\cos^2\theta\right)^{3/2} =a^3|\sin\theta|^3 である。よって V=2a33π/2π/2(1sinθ3)dθ. V = \frac{2a^3}{3} \int_{-\pi/2}^{\pi/2} \left(1-|\sin\theta|^3\right)\,d\theta . ここで π/2π/2sinθ3dθ=20π/2sin3θdθ=43 \int_{-\pi/2}^{\pi/2}|\sin\theta|^3\,d\theta = 2\int_0^{\pi/2}\sin^3\theta\,d\theta = \frac{4}{3} なので、 V=2a33(π43)=2a39(3π4). V = \frac{2a^3}{3} \left(\pi-\frac{4}{3}\right) = \frac{2a^3}{9}(3\pi-4).

最終答

求める体積は 2a39(3π4). \displaystyle \frac{2a^3}{9}(3\pi-4).

2 — 同伴行列の固有多項式と対角化

方針

この形の行列では、最初から固有ベクトルを (1,λ,,λn1)T(1,\lambda,\ldots,\lambda^{n-1})^T と予想すると計算が短い。 上の n1n-1 行が指数を一つずつ上げ、最後の行で固有方程式を使うという構造になっている。

採点上の注意

PP を書くだけでなく、detP0\det P\ne 0 を確認する必要がある。 根が相異なるという仮定は、まさに Vandermonde 行列が正則であることを保証するために使われている。

典型ミス

固有多項式の係数の順序を逆にしないこと。 最後の行が a0,a1,,an1-a_0,-a_1,\ldots,-a_{n-1} の順で並ぶので、対応する多項式は a0+a1λ++an1λn1+λna_0+a_1\lambda+\cdots+a_{n-1}\lambda^{n-1}+\lambda^n である。

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与えられた行列を AA とし、固有多項式を fA(λ)=det(λIA) f_A(\lambda)=\det(\lambda I-A) で定める。この行列は多項式 p(λ)=λn+an1λn1+an2λn2++a1λ+a0 p(\lambda)=\lambda^n+a_{n-1}\lambda^{n-1} +a_{n-2}\lambda^{n-2}+\cdots+a_1\lambda+a_0 の同伴行列である。実際、λIA\lambda I-A の行列式を最後の行の係数について展開するか、 標準的な同伴行列の計算を用いると fA(λ)=p(λ) f_A(\lambda)=p(\lambda) となる。

次に、p(λ)=0p(\lambda)=0 を満たす λ\lambda に対して v(λ)=(1λλ2λn1) v(\lambda)= \begin{pmatrix} 1\\ \lambda\\ \lambda^2\\ \vdots\\ \lambda^{n-1} \end{pmatrix} とおく。すると上から n1n-1 成分はただちに Av(λ)=(λλ2λn1a0a1λan1λn1) A v(\lambda) = \begin{pmatrix} \lambda\\ \lambda^2\\ \vdots\\ \lambda^{n-1}\\ -a_0-a_1\lambda-\cdots-a_{n-1}\lambda^{n-1} \end{pmatrix} となる。最後の成分は p(λ)=0p(\lambda)=0 より a0a1λan1λn1=λn -a_0-a_1\lambda-\cdots-a_{n-1}\lambda^{n-1} =\lambda^n である。したがって Av(λ)=λv(λ) A v(\lambda)=\lambda v(\lambda) であり、v(λ)v(\lambda) は固有値 λ\lambda に対応する固有ベクトルである。

いま解 λ1,,λn\lambda_1,\ldots,\lambda_n がすべて相異なるので、 P=(111λ1λ2λnλ12λ22λn2λ1n1λ2n1λnn1) P= \begin{pmatrix} 1&1&\cdots&1\\ \lambda_1&\lambda_2&\cdots&\lambda_n\\ \lambda_1^2&\lambda_2^2&\cdots&\lambda_n^2\\ \vdots&\vdots&&\vdots\\ \lambda_1^{n-1}&\lambda_2^{n-1}&\cdots&\lambda_n^{n-1} \end{pmatrix} は Vandermonde 行列であり、 detP=1i<jn(λjλi)0 \det P=\prod_{1\le i<j\le n}(\lambda_j-\lambda_i)\ne 0 である。各列が固有ベクトルだから AP=Pdiag(λ1,λ2,,λn) AP = P \operatorname{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n) となり、 P1AP=diag(λ1,λ2,,λn) P^{-1}AP = \operatorname{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n) を得る。

最終答

固有多項式は fA(λ)=λn+an1λn1++a1λ+a0. \displaystyle f_A(\lambda)= \lambda^n+a_{n-1}\lambda^{n-1}+\cdots+a_1\lambda+a_0. 相異なる根 λ1,,λn\lambda_1,\ldots,\lambda_n に対し、列を v(λi)=(1,λi,,λin1)Tv(\lambda_i)=(1,\lambda_i,\ldots,\lambda_i^{n-1})^T とする Vandermonde 行列 PP を取れば P1AP=diag(λ1,,λn). \displaystyle P^{-1}AP=\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n).

3 — 有界正則関数の係数評価

方針

単位円板全体で f<1|f|<1 と分かっているので、半径 r<1r<1 の円周上で Cauchy の係数公式を使う。 最後に rr11 に近づけることで、rnr^{-n}11 に近づけるのが要点である。

不等号の扱い

円周上では f(z)<1|f(z)|<1 なので、途中では an<rn|a_n|<r^{-n} と書いてもよい。 ただし r1r\to1 の極限を取ると結論は一般に 1\le 1 であり、<1<1 までは言えない。 たとえば定数関数に近い関数を考えると、この差が重要になる。

典型ミス

r=1r=1 の円周で Cauchy の公式を直接使ってはいけない。 関数は開円板で正則と仮定されているだけで、境界 z=1|z|=1 上で定義されているとは限らない。

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0<r<10<r<1 を任意に取る。円 z=r|z|=r は単位円板の中に含まれるので、Cauchy の積分公式より an=12πiz=rf(z)zn+1dz a_n= \frac{1}{2\pi i} \int_{|z|=r}\frac{f(z)}{z^{n+1}}\,dz である。仮定から f(z)<1|f(z)|<1 だから an12π2πr1rn+1=1rn. |a_n| \le \frac{1}{2\pi}\cdot 2\pi r\cdot \frac{1}{r^{n+1}} = \frac{1}{r^n}. これは任意の 0<r<10<r<1 について成り立つ。そこで r10r\to 1-0 とすれば an1 |a_n|\le 1 を得る。

最終答

すべての n=0,1,2,n=0,1,2,\ldots について an1 \displaystyle |a_n|\le 1 が成り立つ。

4 — 交換子で定まる線形写像

方針

行列積は一般には可換でないが、左から AA を掛ける操作と右から AA を掛ける操作はどちらも XX に関して線形である。 したがって、その差である交換子 AXXAAX-XA も線形になる。

表現行列の作り方

基底を T1,T2,T3,T4T_1,T_2,T_3,T_4 の順に固定したら、ϕA(Tj)\phi_A(T_j) の座標を第 jj 列に入れる。 行と列を取り違えると転置行列が出てしまうので、各列を一つずつ確認するのが安全である。

検算

X=IX=I なら AIIA=0AI-IA=0 である。 今回の基底では I=T1+T4I=T_1+T_4 なので、表現行列の第1列と第4列を足すと 00 になる。 これは計算結果のよいチェックになる。

2008年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

X,YVX,Y\in Vα,βR\alpha,\beta\in\mathbb{R} とする。定義から ϕA(αX+βY)=A(αX+βY)(αX+βY)A \phi_A(\alpha X+\beta Y) = A(\alpha X+\beta Y)-(\alpha X+\beta Y)A であり、右辺を展開すると α(AXXA)+β(AYYA)=αϕA(X)+βϕA(Y) \alpha(AX-XA)+\beta(AY-YA) = \alpha\phi_A(X)+\beta\phi_A(Y) となる。よって ϕA\phi_A は線形写像である。

次に A=(abcd) A= \begin{pmatrix} a&b\\ c&d \end{pmatrix} とする。基底 T1,T2,T3,T4T_1,T_2,T_3,T_4 に対して順に計算すると ϕA(T1)=(0bc0)=bT2+cT3, \phi_A(T_1) = \begin{pmatrix} 0&-b\\ c&0 \end{pmatrix} = -bT_2+cT_3, ϕA(T2)=(cad0c)=cT1+(ad)T2+cT4, \phi_A(T_2) = \begin{pmatrix} -c&a-d\\ 0&c \end{pmatrix} = -cT_1+(a-d)T_2+cT_4, ϕA(T3)=(b0dab)=bT1+(da)T3bT4, \phi_A(T_3) = \begin{pmatrix} b&0\\ d-a&-b \end{pmatrix} = bT_1+(d-a)T_3-bT_4, ϕA(T4)=(0bc0)=bT2cT3. \phi_A(T_4) = \begin{pmatrix} 0&b\\ -c&0 \end{pmatrix} = bT_2-cT_3. したがって、表現行列は各 ϕA(Tj)\phi_A(T_j) の座標を第 jj 列に並べればよいので [ϕA]{T1,T2,T3,T4}=(0cb0bad0bc0dac0cb0). [\phi_A]_{\{T_1,T_2,T_3,T_4\}} = \begin{pmatrix} 0&-c& b&0\\ -b&a-d&0&b\\ c&0&d-a&-c\\ 0&c&-b&0 \end{pmatrix}.

最終答

ϕA\phi_A は線形写像であり、指定された基底に関する表現行列は (0cb0bad0bc0dac0cb0). \displaystyle \begin{pmatrix} 0&-c& b&0\\ -b&a-d&0&b\\ c&0&d-a&-c\\ 0&c&-b&0 \end{pmatrix}.

5 — 凸関数の割線勾配と零点の一意性

方針

f>0f''>0ff' の狭義単調増加を意味する。 割線勾配は平均値の定理でどこかの接線勾配に置き換えられるため、左側の割線勾配より右側の割線勾配が大きくなる。

零点の一意性

存在は中間値の定理だけで十分である。 一意性では、二つの零点 u<vu<v があると仮定し、さらに右端 bb を三点目に使う。 すると、左側の割線勾配は 00、右側の割線勾配は負になるので、(1) の「右ほど大きい」という結論と矛盾する。

典型ミス

「凸だから零点は一つ」とだけ書くと不十分である。 凸関数は一般には二つの零点を持つこともある。 ここでは右端で f(b)<0f(b)<0 という符号条件を組み合わせることで、二つ目の零点を排除している。

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まず (1) を示す。平均値の定理より、ある ξ1(x1,x2),ξ2(x2,x3) \xi_1\in(x_1,x_2),\qquad \xi_2\in(x_2,x_3) が存在して f(x2)f(x1)x2x1=f(ξ1),f(x3)f(x2)x3x2=f(ξ2) \frac{f(x_2)-f(x_1)}{x_2-x_1}=f'(\xi_1), \qquad \frac{f(x_3)-f(x_2)}{x_3-x_2}=f'(\xi_2) となる。仮定 f(x)>0f''(x)>0 から ff' は開区間 (a,b)(a,b) で狭義単調増加である。 ξ1<ξ2\xi_1<\xi_2 なので f(ξ1)<f(ξ2) f'(\xi_1)<f'(\xi_2) であり、求める割線勾配の不等式が従う。

次に (2) を示す。ff は閉区間で連続であり、f(a)>0f(a)>0f(b)<0f(b)<0 だから、 中間値の定理により少なくとも一つの零点が (a,b)(a,b) に存在する。

一意性を示すため、相異なる二つの零点 u<vu<v が存在すると仮定する。 このとき u<v<bu<v<b であり、(1) を x1=u, x2=v, x3=bx_1=u,\ x_2=v,\ x_3=b に適用すると f(v)f(u)vu<f(b)f(v)bv \frac{f(v)-f(u)}{v-u} < \frac{f(b)-f(v)}{b-v} を得る。左辺は 00、右辺は f(b)<0f(b)<0 より負であるから 0<f(b)bv<0 0<\frac{f(b)}{b-v}<0 という矛盾が生じる。したがって零点は高々一つである。 存在性と合わせて、零点は (a,b)(a,b) にただ一つ存在する。

最終答

(1) 割線勾配は左の区間から右の区間へ移ると狭義に増加する。 (2) 条件 f(a)>0, f(b)<0f(a)>0,\ f(b)<0 の下で、方程式 f(x)=0f(x)=0(a,b)(a,b) に唯一つの解を持つ。

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