大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2010年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2010年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 広義積分と留数計算
方針
前半は領域が扇形で,しかも分母が だけで書かれているため,極座標が最短である。 後半は単位円内の極をすべて拾って留数を足すだけでよい。極が分母の一次因子に由来するので, 因子の係数 を落とさないことが計算の要点である。
検算
広義積分の原点近くの振る舞いは であり,可積分である。 また答は正でなければならない。複素積分では, なので答は負の虚数になり, 留数の和 と符号が一致している。
採点上の注意
と読むところで指数を取り違えやすい。 また複素積分では,, であるため, 留数計算に係数 が入る。
2010年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
- 極座標 を用いる。指定された領域は で表される。被積分関数にヤコビアン を掛けると したがって ここで であるから,動径方向の積分は である。また よって
- 分母の零点は であり,どちらも単位円の内部にある。各点での留数は および 留数定理より
最終答
第2問 — 行列の核の次元
方針
未知数は 個,方程式は 本なので,核の次元はランクで決まる。 パラメータ が入っているときは,最大ランクを判定する小行列式を一つ見つけ, それが消える例外値だけを別に確認するのが効率的である。
例外値の見落としを防ぐ
ではランクが から落ちる。ただしランクが 以下まで落ちるわけではない。 実際に 次小行列式 が残っているため,ランクはちょうど である。 この「上からの評価」と「下からの評価」の両方を書くと,答案として安定する。
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行列は 行列なので,求める次元は である。まず 次小行列式を調べる。第 列を取った小行列式は したがって なら であり,
次に の場合を調べる。このとき上の 次小行列式だけでなく,他の 次小行列式も すべて になるため, である。一方,第 行と 第 列からなる小行列式は なので, である。よって
最終答
第3問 — 複素数列の周期性
方針
この漸化式は線形ではないが,積と商だけで進むため,数項を丁寧に計算すると周期性が見える。 複素数であっても乗除法の計算規則は同じであり,非零条件があるため分母が になる心配はない。
検算
だけでなく,次の も となる。初めの2項が同じに戻るので,以後の全項が同じ周期で繰り返される。
採点上の注意
極限を求めるとき,最初の数項だけを見て「収束する」と判断してはいけない。 列そのものは一般には一点に収束せず,周期列である。求めるのは Cesaro 型の平均なので, 周期一巡の平均に落とす。
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初項が でないので,漸化式で現れる割り算はすべて正当化される。まず順に計算すると さらに したがって 同様に となり,ここから先は長さ の周期列になる。
よって平均値の極限は,1周期分の平均に等しい。
最終答
第4問 — Rolleの定理の反復
方針
三階導関数の零点を示したいので,Rolle の定理を三段階で使う。 まず から の零点を一つ作り,次に の零点が三つあることを利用して の零点を二つ作り,最後に の零点二つから の零点を作る。
検算
が端点に出てしまうと主張にならないが,構成では となるため,確かに開区間内の点である。
採点上の注意
Rolle の定理を使うには,対象関数が閉区間で連続,開区間で微分可能であることが必要である。 ここでは が三回微分可能なので,, , に必要な正則性は満たされている。 答案では,どの関数にどの区間で Rolle の定理を適用するかを明記するとよい。
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条件より であるから,Rolle の定理により,ある が存在して となる。
また仮定から である。そこで に Rolle の定理を区間 と でそれぞれ適用すると, ある , が存在して となる。
最後に に Rolle の定理を区間 で適用する。すると,ある が存在して である。ここで だから, である。
最終答
開区間 内に を満たす点 が存在する。
第5問 — 巡回型行列の核
方針
この行列は「連続する 個を足す」巡回型の行列である。 各行の式そのものを解くよりも,隣の行との差を取って,和の大部分を打ち消すのが核心である。 差を取ると一気に という周期条件が出る。
互いに素の場合
のとき, ずつ進む操作は全添字を一巡する。 そのため は単なる周期性ではなく,すべての成分が等しいことを意味する。 最後に行和が である条件を使って,その共通値も と分かる。
最大公約数がある場合
のときは添字集合が 個の剰余類に分かれる。 各剰余類ごとに一定値を入れると は満たせる。さらに行和を にするために, 剰余類の値の総和を にすればよい。上の構成はその最も簡単な例である。
採点上の注意
第(1)問で得た は の範囲で書かれているが, 第(2)問以降では行を巡回的に見て同じ差分を取る必要がある。 添字を法 で扱うことを明示すると,折り返し部分の説明が曖昧にならない。
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添字は必要に応じて を法として読む。第 行の方程式は, 連続する 個の成分の和が であることを表している。すなわち である。
- 隣り合う行の差を取る。 では添字の折り返しが起こらないので, よって が成り立つ。
- 同じ差分の議論を添字を を法として行うと, が得られる。もし なら,写像 は 全体を一つの巡回軌道にする。したがって である。第1行の方程式から となり, なので である。よって解は零ベクトルに限られる。
- とする。例えば と定める。このベクトルは明らかに零ベクトルではない。 ここで は の倍数である。任意の 個の連続成分には,各剰余類の成分が ちょうど 個ずつ含まれる。したがってどの行和も となる。よってこの は を満たす。
最終答
(1) 隣接行の差から 。 (2) なら核は零ベクトルのみ。 (3) なら,剰余類 に ,剰余類 に ,他を とする非零解が取れる。