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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2010年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。線形代数2問・微分積分・解析1問・複素解析1問。テーマタグは3件(重積分と極座標・留数定理・群論・環論)。2009年度と共通のテーマは留数定理。

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解説5問・解答5問・最終答5問(全5問)
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2010年度は解答・最終答まで全文公開
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阪大 数学 2010年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は線形代数2問・微分積分・解析1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析広義積分と留数計算採点上の注意あり
第2問線形代数行列の核の次元例外値の見落としを防ぐあり
第3問複素解析複素数列の周期性採点上の注意あり
第4問—Rolleの定理の反復採点上の注意あり
第5問線形代数巡回型行列の核互いに素の場合 / 最大公約数がある場合あり

この年度の解説には採点上の注意4件・検算3件が付いています。

2010年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に3テーマが出ています。

前年度(2009年度)との違い

大問数
2009年度 5問 → 2010年度 5問
両年度に出たテーマ
留数定理
2010年度で新しく出たテーマ
重積分と極座標・群論・環論
2009年度のページを見る

第1問 — 広義積分と留数計算

方針

前半は領域が扇形で,しかも分母が x2+y2x^2+y^2 だけで書かれているため,極座標が最短である。 後半は単位円内の極をすべて拾って留数を足すだけでよい。極が分母の一次因子に由来するので, 因子の係数 2,32,3 を落とさないことが計算の要点である。

検算

広義積分の原点近くの振る舞いは r1/3 dr dθr^{1/3}\,dr\,d\theta であり,可積分である。 また答は正でなければならない。複素積分では,3−2<0\sqrt3-2<0 なので答は負の虚数になり, 留数の和 −1+3/2-1+\sqrt3/2 と符号が一致している。

採点上の注意

(x2+y2)43=r8/3\sqrt[3]{(x^2+y^2)^4}=r^{8/3} と読むところで指数を取り違えやすい。 また複素積分では,(2z−1)=2(z−1/2)(2z-1)=2(z-1/2), (3z−2)=3(z−2/3)(3z-2)=3(z-2/3) であるため, 留数計算に係数 2,32,3 が入る。

解答

  1. 極座標 x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θ x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta を用いる。指定された領域は 0≤θ≤π3,0≤r≤22 0\leq \theta\leq \frac{\pi}{3},\qquad 0\leq r\leq 2\sqrt2 で表される。被積分関数にヤコビアン rr を掛けると x2(x2+y2)43 dx dy=r2cos⁡2θr8/3⋅r dr dθ=r1/3cos⁡2θ dr dθ. \frac{x^2}{\sqrt[3]{(x^2+y^2)^4}}\,dx\,dy = \frac{r^2\cos^2\theta}{r^{8/3}}\cdot r\,dr\,d\theta = r^{1/3}\cos^2\theta\,dr\,d\theta . したがって I=∫0π/3∫022r1/3cos⁡2θ dr dθ=[34r4/3]022[θ2+sin⁡2θ4]0π/3. \begin{aligned} I &= \int_0^{\pi/3}\int_0^{2\sqrt2} r^{1/3}\cos^2\theta\,dr\,d\theta \\ &= \left[\frac34 r^{4/3}\right]_0^{2\sqrt2} \left[\frac{\theta}{2}+\frac{\sin 2\theta}{4}\right]_0^{\pi/3}. \end{aligned} ここで (22)4/3=(23/2)4/3=4(2\sqrt2)^{4/3}=(2^{3/2})^{4/3}=4 であるから,動径方向の積分は 33 である。また ∫0π/3cos⁡2θ dθ=π6+38. \int_0^{\pi/3}\cos^2\theta\,d\theta = \frac{\pi}{6}+\frac{\sqrt3}{8}. よって I=3(π6+38)=π2+338. I=3\left(\frac{\pi}{6}+\frac{\sqrt3}{8}\right) =\frac{\pi}{2}+\frac{3\sqrt3}{8}.
  2. 分母の零点は z=12,z=23 z=\frac12,\qquad z=\frac23 であり,どちらも単位円の内部にある。各点での留数は Res⁡z=1/2sin⁡πz(2z−1)(3z−2)=sin⁡(π/2)2(3/2−2)=−1 \operatorname*{Res}_{z=1/2} \frac{\sin \pi z}{(2z-1)(3z-2)} = \frac{\sin(\pi/2)}{2(3/2-2)} =-1 および Res⁡z=2/3sin⁡πz(2z−1)(3z−2)=sin⁡(2π/3)3(4/3−1)=32. \operatorname*{Res}_{z=2/3} \frac{\sin \pi z}{(2z-1)(3z-2)} = \frac{\sin(2\pi/3)}{3(4/3-1)} = \frac{\sqrt3}{2}. 留数定理より ∫∣z∣=1sin⁡πz(2z−1)(3z−2) dz=2πi(−1+32)=πi(3−2). \int_{|z|=1} \frac{\sin \pi z}{(2z-1)(3z-2)}\,dz = 2\pi i\left(-1+\frac{\sqrt3}{2}\right) = \pi i(\sqrt3-2).

最終答

(1) π2+338,(2) πi(3−2). \text{(1)}\ \frac{\pi}{2}+\frac{3\sqrt3}{8}, \qquad \text{(2)}\ \pi i(\sqrt3-2).

第2問 — 行列の核の次元

方針

未知数は 55 個,方程式は 44 本なので,核の次元はランクで決まる。 パラメータ aa が入っているときは,最大ランクを判定する小行列式を一つ見つけ, それが消える例外値だけを別に確認するのが効率的である。

例外値の見落としを防ぐ

a=2/5a=2/5 ではランクが 44 から落ちる。ただしランクが 22 以下まで落ちるわけではない。 実際に 33 次小行列式 −5-5 が残っているため,ランクはちょうど 33 である。 この「上からの評価」と「下からの評価」の両方を書くと,答案として安定する。

解答

行列は 4×54\times 5 行列なので,求める次元は dim⁡V(a)=5−rank⁡A(a) \dim V(a)=5-\operatorname{rank} A(a) である。まず 44 次小行列式を調べる。第 1,2,3,51,2,3,5 列を取った小行列式は det⁡(123123314321111a)=2−5a. \det \begin{pmatrix} 1&2&3&1\\ 2&3&3&1\\ 4&3&2&1\\ 1&1&1&a \end{pmatrix} =2-5a. したがって a≠2/5a\neq 2/5 なら rank⁡A(a)=4\operatorname{rank}A(a)=4 であり, dim⁡V(a)=5−4=1. \dim V(a)=5-4=1.

次に a=2/5a=2/5 の場合を調べる。このとき上の 44 次小行列式だけでなく,他の 44 次小行列式も すべて 00 になるため,rank⁡A(2/5)≤3\operatorname{rank}A(2/5)\leq 3 である。一方,第 1,2,31,2,3 行と 第 1,2,31,2,3 列からなる小行列式は det⁡(123233432)=−5≠0 \det \begin{pmatrix} 1&2&3\\ 2&3&3\\ 4&3&2 \end{pmatrix} =-5\neq 0 なので,rank⁡A(2/5)≥3\operatorname{rank}A(2/5)\geq 3 である。よって rank⁡A(2/5)=3,dim⁡V(2/5)=5−3=2. \operatorname{rank}A(2/5)=3,\qquad \dim V(2/5)=5-3=2.

最終答

dim⁡V(a)={2,a=25,1,a≠25. \dim V(a)= \begin{cases} 2, & a=\dfrac25,\\[2mm] 1, & a\neq \dfrac25. \end{cases}

第3問 — 複素数列の周期性

方針

この漸化式は線形ではないが,積と商だけで進むため,数項を丁寧に計算すると周期性が見える。 複素数であっても乗除法の計算規則は同じであり,非零条件があるため分母が 00 になる心配はない。

検算

z7=az_7=a だけでなく,次の z8z_8 も z8=cz7z6=caac/b=b z_8=c\frac{z_7}{z_6}=c\frac{a}{ac/b}=b となる。初めの2項が同じに戻るので,以後の全項が同じ周期で繰り返される。

採点上の注意

極限を求めるとき,最初の数項だけを見て「収束する」と判断してはいけない。 列そのものは一般には一点に収束せず,周期列である。求めるのは Cesaro 型の平均なので, 周期一巡の平均に落とす。

解答

初項が 00 でないので,漸化式で現れる割り算はすべて正当化される。まず順に計算すると z1=a,z2=b,z3=bca. z_1=a,\qquad z_2=b,\qquad z_3=\frac{bc}{a}. さらに z4=cz3z2=c2a,z5=cz4z3=c2b,z6=cz5z4=acb. z_4=c\frac{z_3}{z_2}=\frac{c^2}{a},\qquad z_5=c\frac{z_4}{z_3}=\frac{c^2}{b},\qquad z_6=c\frac{z_5}{z_4}=\frac{ac}{b}. したがって z7=cz6z5=cac/bc2/b=a. z_7=c\frac{z_6}{z_5} =c\frac{ac/b}{c^2/b} =a. 同様に z8=bz_8=b となり,ここから先は長さ 66 の周期列になる。

よって平均値の極限は,1周期分の平均に等しい。 lim⁡n→∞1n∑k=1nzk=16(a+b+bca+c2a+c2b+acb). \lim_{n\to\infty}\frac1n\sum_{k=1}^n z_k = \frac16 \left( a+b+\frac{bc}{a}+\frac{c^2}{a}+\frac{c^2}{b}+\frac{ac}{b} \right).

最終答

z7=a,lim⁡n→∞1n∑k=1nzk=16(a+b+bca+c2a+c2b+acb). z_7=a,\qquad \lim_{n\to\infty}\frac1n\sum_{k=1}^n z_k = \frac16 \left( a+b+\frac{bc}{a}+\frac{c^2}{a}+\frac{c^2}{b}+\frac{ac}{b} \right).

第4問 — Rolleの定理の反復

方針

三階導関数の零点を示したいので,Rolle の定理を三段階で使う。 まず ff から f′f' の零点を一つ作り,次に f′f' の零点が三つあることを利用して f′′f'' の零点を二つ作り,最後に f′′f'' の零点二つから f′′′f''' の零点を作る。

検算

ξ\xi が端点に出てしまうと主張にならないが,構成では a<u<ξ<v<b a<u<\xi<v<b となるため,確かに開区間内の点である。

採点上の注意

Rolle の定理を使うには,対象関数が閉区間で連続,開区間で微分可能であることが必要である。 ここでは ff が三回微分可能なので,ff, f′f', f′′f'' に必要な正則性は満たされている。 答案では,どの関数にどの区間で Rolle の定理を適用するかを明記するとよい。

解答

条件より f(a)=f(b)f(a)=f(b) であるから,Rolle の定理により,ある c∈(a,b)c\in(a,b) が存在して f′(c)=0 f'(c)=0 となる。

また仮定から f′(a)=0,f′(c)=0,f′(b)=0 f'(a)=0,\qquad f'(c)=0,\qquad f'(b)=0 である。そこで f′f' に Rolle の定理を区間 [a,c][a,c] と [c,b][c,b] でそれぞれ適用すると, ある u∈(a,c)u\in(a,c), v∈(c,b)v\in(c,b) が存在して f′′(u)=0,f′′(v)=0 f''(u)=0,\qquad f''(v)=0 となる。

最後に f′′f'' に Rolle の定理を区間 [u,v][u,v] で適用する。すると,ある ξ∈(u,v)\xi\in(u,v) が存在して f′′′(ξ)=0 f'''(\xi)=0 である。ここで a<u<ξ<v<b a<u<\xi<v<b だから,ξ∈(a,b)\xi\in(a,b) である。

最終答

開区間 (a,b)(a,b) 内に f′′′(ξ)=0f'''(\xi)=0 を満たす点 ξ\xi が存在する。

第5問 — 巡回型行列の核

方針

この行列は「連続する rr 個を足す」巡回型の行列である。 各行の式そのものを解くよりも,隣の行との差を取って,和の大部分を打ち消すのが核心である。 差を取ると一気に xi=xi+rx_i=x_{i+r} という周期条件が出る。

互いに素の場合

gcd⁡(r,n)=1\gcd(r,n)=1 のとき,rr ずつ進む操作は全添字を一巡する。 そのため xi=xi+rx_i=x_{i+r} は単なる周期性ではなく,すべての成分が等しいことを意味する。 最後に行和が 00 である条件を使って,その共通値も 00 と分かる。

最大公約数がある場合

g≥2g\geq2 のときは添字集合が gg 個の剰余類に分かれる。 各剰余類ごとに一定値を入れると xi=xi+rx_i=x_{i+r} は満たせる。さらに行和を 00 にするために, 剰余類の値の総和を 00 にすればよい。上の構成はその最も簡単な例である。

採点上の注意

第(1)問で得た xi=xi+rx_i=x_{i+r} は 1≤i≤n−r1\leq i\leq n-r の範囲で書かれているが, 第(2)問以降では行を巡回的に見て同じ差分を取る必要がある。 添字を法 nn で扱うことを明示すると,折り返し部分の説明が曖昧にならない。

解答

添字は必要に応じて nn を法として読む。第 ii 行の方程式は, 連続する rr 個の成分の和が 00 であることを表している。すなわち Si:=xi+xi+1+⋯+xi+r−1=0 S_i:=x_i+x_{i+1}+\cdots+x_{i+r-1}=0 である。

  1. 隣り合う行の差を取る。1≤i≤n−r1\leq i\leq n-r では添字の折り返しが起こらないので, 0=Si−Si+1=(xi+xi+1+⋯+xi+r−1)−(xi+1+xi+2+⋯+xi+r)=xi−xi+r. 0=S_i-S_{i+1} = (x_i+x_{i+1}+\cdots+x_{i+r-1}) -(x_{i+1}+x_{i+2}+\cdots+x_{i+r}) = x_i-x_{i+r}. よって xi=xi+r(i=1,2,…,n−r) x_i=x_{i+r}\qquad (i=1,2,\ldots,n-r) が成り立つ。
  2. 同じ差分の議論を添字を nn を法として行うと, xi=xi+r(i=1,2,…,n) x_i=x_{i+r}\qquad (i=1,2,\ldots,n) が得られる。もし gcd⁡(r,n)=1\gcd(r,n)=1 なら,写像 i↦i+ri\mapsto i+r は {1,…,n}\{1,\ldots,n\} 全体を一つの巡回軌道にする。したがって x1=x2=⋯=xn=:t x_1=x_2=\cdots=x_n=:t である。第1行の方程式から rt=0 rt=0 となり,r>0r>0 なので t=0t=0 である。よって解は零ベクトルに限られる。
  3. g=gcd⁡(r,n)≥2g=\gcd(r,n)\geq 2 とする。例えば xi={1,i≡1(modg),−1,i≡2(modg),0,otherwise x_i= \begin{cases} 1, & i\equiv 1 \pmod g,\\ -1, & i\equiv 2 \pmod g,\\ 0, & \text{otherwise} \end{cases} と定める。このベクトルは明らかに零ベクトルではない。 ここで rr は gg の倍数である。任意の rr 個の連続成分には,各剰余類の成分が ちょうど r/gr/g 個ずつ含まれる。したがってどの行和も rg⋅1+rg⋅(−1)=0 \frac{r}{g}\cdot 1+\frac{r}{g}\cdot(-1)=0 となる。よってこの xx は A(n,r)x=0A(n,r)x=0 を満たす。

最終答

(1) 隣接行の差から xi=xi+rx_i=x_{i+r}。 (2) gcd⁡(r,n)=1\gcd(r,n)=1 なら核は零ベクトルのみ。 (3) gcd⁡(r,n)=g≥2\gcd(r,n)=g\geq2 なら,剰余類 11 に 11,剰余類 22 に −1-1,他を 00 とする非零解が取れる。

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