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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2009年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2009年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 制約付き最大化

方針

zz だけが一次で、x,yx,y は二乗で制約に現れる点を見落とさない。 u=x2, v=y2, w=zu=x^2,\ v=y^2,\ w=z と置き換えると、単体上で uvw2uv w^2 を最大化する問題になる。 指数の比 1:1:21:1:2 がそのまま最適な配分比になるので、計算結果 u=v=1/4, w=1/2u=v=1/4,\ w=1/2 は自然である。

典型ミス

x=y=zx=y=z としてはいけない。制約式では zzx,yx,y の扱いが違う。 また、ラグランジュ法の計算だけで終える場合は、境界では積が 00 になることを最初に述べておくと答案が安定する。

2009年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

境界で x=0x=0 または y=0y=0 または z=0z=0 なら xyz=0xyz=0 である。 正の値が得られる点があるので、最大点は内部 x,y,z>0x,y,z>0 にある。 そこで Φ(x,y,z)=logx+logy+logz,g(x,y,z)=x2+y2+z1 \Phi(x,y,z)=\log x+\log y+\log z,\qquad g(x,y,z)=x^2+y^2+z-1 にラグランジュの未定乗数法を用いる。 1x=2λx,1y=2λy,1z=λ \frac1x=2\lambda x,\qquad \frac1y=2\lambda y,\qquad \frac1z=\lambda より x2=y2,z=2x2. x^2=y^2,\qquad z=2x^2. x,y>0x,y>0 だから x=yx=y であり、制約式から 2x2+2x2=1,x=y=12,z=12. 2x^2+2x^2=1,\qquad x=y=\frac12,\qquad z=\frac12. したがって xyz=121212=18. xyz=\frac12\cdot \frac12\cdot \frac12=\frac18.

この値が最大であることは、u=x2, v=y2, w=zu=x^2,\ v=y^2,\ w=z とおくと u,v,w0, u+v+w=1u,v,w\ge 0,\ u+v+w=1 かつ (xyz)2=uvw2 (xyz)^2=uv\,w^2 となり、重み付き相加相乗平均で u:v:w=1:1:2u:v:w=1:1:2 のときに uvw2uv\,w^2 が最大となることからも確認できる。

最終答

最大値は 18\displaystyle \frac18。最大点は (x,y,z)=(12,12,12)\displaystyle (x,y,z)=\left(\frac12,\frac12,\frac12\right)

2 — 歪対称行列と非対角化性

構成の考え方

実数体上の歪対称行列は性質がかなり硬いが、ここでは複素行列なので零でない冪零例を作れる。 一般に (0αβα0γβγ0) \begin{pmatrix} 0&\alpha&\beta\\ -\alpha&0&\gamma\\ -\beta&-\gamma&0 \end{pmatrix} の特性多項式は λ{λ2+α2+β2+γ2} -\lambda\{\lambda^2+\alpha^2+\beta^2+\gamma^2\} となる。そこで α2+β2+γ2=0\alpha^2+\beta^2+\gamma^2=0 かつ全部は 00 でないように選ぶと、 固有値がすべて 00 の非零行列になる。上の例は α=1, β=i, γ=0\alpha=1,\ \beta=i,\ \gamma=0 としたものに対応する。

採点上の注意

行列を一つ書くだけでは不十分である。転置で符号が反転することと、対角化できないことを別々に示す。 非対角化性は、A3=OA^3=OAOA\ne O だけでなく、 「対角化可能な冪零行列は零行列である」と結びつけて書くと減点されにくい。

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例えば A=(01i100i00) A= \begin{pmatrix} 0&1&i\\ -1&0&0\\ -i&0&0 \end{pmatrix} とおく。このとき成分を見れば直ちに tA=A {}^t A=-A である。

次に非対角化性を確認する。直接計算すると A2=(00001i0i1),A3=O. A^2= \begin{pmatrix} 0&0&0\\ 0&-1&-i\\ 0&-i&1 \end{pmatrix}, \qquad A^3=O. 一方で AOA\ne O である。したがって AA は零でない冪零行列であり、 固有値はすべて 00 である。もし AA が対角化可能なら、 対角化後の対角成分はすべて 00 になるので A=OA=O となってしまい矛盾する。 よってこの AA は対角化できない。

最終答

A=(01i100i00)\displaystyle A=\begin{pmatrix} 0&1&i\\ -1&0&0\\ -i&0&0 \end{pmatrix} は条件を満たす一例である。

3 — 単位円上の留数計算

極の位置

この計算では、分母を (1az)(za) (1-az)(z-a) に分けた後、z=az=az=1/az=1/a のどちらが単位円内にあるかだけを判定すればよい。 a=1|a|=1 は仮定から除かれているので、極が積分路上に乗る場合を考えなくてよい。

検算

被積分関数は正であるから、答えも正でなければならない。 上の結果は a<1|a|<1 では 1a2>01-a^2>0a>1|a|>1 では a21>0a^2-1>0 となり、符号の検算に合っている。 また a=0a=0 の場合は積分値が 2π2\pi となり、式にも一致する。

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z=eiθz=e^{i\theta} とおくと cosθ=12(z+1z),dθ=dziz. \cos\theta=\frac12\left(z+\frac1z\right), \qquad d\theta=\frac{dz}{iz}. 分母は 1a(z+1z)+a2=(1az)(za)z 1-a\left(z+\frac1z\right)+a^2 =\frac{(1-az)(z-a)}{z} と分解できるので、求める積分は単位円 z=1|z|=1 上で z=11i(1az)(za)dz \int_{|z|=1} \frac{1}{i(1-az)(z-a)}\,dz となる。極は z=az=az=1/az=1/a である。

a<1|a|<1 のとき、単位円内の極は z=az=a だけである。よって Resz=a1i(1az)(za)=1i(1a2) \operatorname*{Res}_{z=a} \frac{1}{i(1-az)(z-a)} =\frac{1}{i(1-a^2)} であり、 02πdθ12acosθ+a2=2π1a2. \int_0^{2\pi} \frac{d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2} =\frac{2\pi}{1-a^2}.

a>1|a|>1 のとき、単位円内の極は z=1/az=1/a だけである。1az1-az の微分係数は a-a だから Resz=1/a1i(1az)(za)=1i(1/aa)(a)=1i(a21). \operatorname*{Res}_{z=1/a} \frac{1}{i(1-az)(z-a)} = \frac{1}{i(1/a-a)(-a)} = \frac{1}{i(a^2-1)}. したがって 02πdθ12acosθ+a2=2πa21. \int_0^{2\pi} \frac{d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2} =\frac{2\pi}{a^2-1}.

最終答

02πdθ12acosθ+a2={2π1a2,a<1,2πa21,a>1. \int_0^{2\pi} \frac{d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2} = \begin{cases} \displaystyle \frac{2\pi}{1-a^2}, & |a|<1,\\[1ex] \displaystyle \frac{2\pi}{a^2-1}, & |a|>1. \end{cases}

4 — 行列式の因数分解

展開を短くする

三次の行列式をサラスの公式だけで展開すると項が散らばりやすい。 この行列は対称なので、上で使った XYZ+2pqrXr2Yq2Zp2 XYZ+2pqr-Xr^2-Yq^2-Zp^2 の形に落とすと、符号の管理がかなり楽になる。

検算

c=0c=0 とすると、元の行列の右下 2×22\times 2 部分の行列式が消えるため、全体の行列式も 00 になる。 答え 2abc(a+b+c)32abc(a+b+c)^3 も同じく 00 になる。 また a=b=c=1a=b=c=1 では元の行列は対角成分 44、非対角成分 11 の行列であり、固有値は 6,3,36,3,3 で行列式は 5454。 答えも 211133=542\cdot 1\cdot 1\cdot 1\cdot 3^3=54 となり一致する。

採点上の注意

最終形だけを書くと、展開ミスと区別がつきにくい。 少なくとも対称行列の三次行列式公式に代入した式を一段書き、そこから因数分解したことを示すとよい。

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行列式を対称行列の公式 det(XpqpYrqrZ)=XYZ+2pqrXr2Yq2Zp2 \det \begin{pmatrix} X&p&q\\ p&Y&r\\ q&r&Z \end{pmatrix} =XYZ+2pqr-Xr^2-Yq^2-Zp^2 で展開する。ここで X=(a+b)2,Y=(b+c)2,Z=(c+a)2, X=(a+b)^2,\quad Y=(b+c)^2,\quad Z=(c+a)^2, p=ca,q=bc,r=ab p=ca,\quad q=bc,\quad r=ab とおくと、行列式 DDD=(a+b)2(b+c)2(c+a)2+2a2b2c2a2b2(a+b)2b2c2(b+c)2c2a2(c+a)2. \begin{aligned} D={}&(a+b)^2(b+c)^2(c+a)^2 +2a^2b^2c^2\\ &\quad -a^2b^2(a+b)^2 -b^2c^2(b+c)^2 -c^2a^2(c+a)^2. \end{aligned} これを整理する。まず (a+b)(b+c)(c+a)=(a+b+c)(ab+bc+ca)abc (a+b)(b+c)(c+a) =(a+b+c)(ab+bc+ca)-abc である。上式を用いて展開し、同次次数ごとにまとめると D=2abc(a+b+c)3. D=2abc(a+b+c)^3. したがって因数分解は 2abc(a+b+c)3 2abc(a+b+c)^3 である。

最終答

2abc(a+b+c)3\displaystyle 2abc(a+b+c)^3

5 — 対数関数の級数展開

奇数次だけが残る理由

log1x1+x \log\frac{1-x}{1+x} は奇関数である。したがってマクローリン展開に偶数次の項は現れない。 先にこの性質を意識しておくと、符号や係数の確認がしやすい。

誤差評価の使い方

小数を求める問題では、近似値だけでなく、丸めに十分な誤差上界を示す必要がある。 今回は x=1/3x=-1/3 と絶対値が小さいので、級数は非常に速く収束する。 x5x^5 の項までで誤差が 0.000150.00015 未満になり、小数第2位の判定には十分である。

典型ミス

log(1+x)\log(1+x) の符号を引くところで、偶数次の項まで残してしまうミスが多い。 また log2\log 2 を求めるときに x=1/3x=1/3 とすると f(1/3)=log(1/2)f(1/3)=\log(1/2) になり符号が反対になる。

2009年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

x<1|x|<1log(1x)=m=1xmm,log(1+x)=m=1(1)m+1xmm \log(1-x)=-\sum_{m=1}^{\infty}\frac{x^m}{m}, \qquad \log(1+x)=\sum_{m=1}^{\infty}\frac{(-1)^{m+1}x^m}{m} である。したがって f(x)=log(1x)log(1+x)=2(x+x33+x55+)=2k=0x2k+12k+1. \begin{aligned} f(x) &=\log(1-x)-\log(1+x)\\ &=-2\left(x+\frac{x^3}{3}+\frac{x^5}{5}+\cdots\right)\\ &=-2\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^{2k+1}}{2k+1}. \end{aligned}

nn 次までの多項式近似を考える。m=(n1)/2m=\lfloor (n-1)/2\rfloor とおくと、 実際に現れる項は奇数次だけなので Pn(x)=2k=0mx2k+12k+1 P_n(x)=-2\sum_{k=0}^{m}\frac{x^{2k+1}}{2k+1} である。ただし n=0n=0 のときは空和として P0(x)=0P_0(x)=0 と読む。 剰余は Rn(x)=f(x)Pn(x)=2k=m+1x2k+12k+1. R_n(x)=f(x)-P_n(x) = -2\sum_{k=m+1}^{\infty}\frac{x^{2k+1}}{2k+1}. 特に x<1|x|<1Rn(x)2x2m+3(2m+3)(1x2) |R_n(x)| \le \frac{2|x|^{2m+3}}{(2m+3)(1-x^2)} という評価が得られる。

最後に log2\log 2 を求める。 1x1+x=2x=13 \frac{1-x}{1+x}=2 \quad\Longleftrightarrow\quad x=-\frac13 なので log2=f ⁣(13)=2(13+1333+1535+). \log 2=f\!\left(-\frac13\right) = 2\left( \frac13+\frac{1}{3\cdot 3^3}+\frac{1}{5\cdot 3^5} +\cdots \right). x5x^5 項まで取ると 2(13+1333+1535)=8421215=0.693004. 2\left(\frac13+\frac{1}{3\cdot 3^3}+\frac{1}{5\cdot 3^5}\right) = \frac{842}{1215} = 0.693004\cdots . 残りは 0<R<27k=3(13)2k+1=2737132<0.00015 0<R< \frac{2}{7}\sum_{k=3}^{\infty}\left(\frac13\right)^{2k+1} = \frac{2}{7}\cdot \frac{3^{-7}}{1-3^{-2}} <0.00015 である。よって log2=0.693 \log 2=0.693\cdots となり、小数第2位まででは 0.690.69 である。

最終答

f(x)=2k=0x2k+12k+1,Rn(x)=2k=m+1x2k+12k+1 f(x)=-2\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^{2k+1}}{2k+1},\qquad R_n(x)=-2\sum_{k=m+1}^{\infty}\frac{x^{2k+1}}{2k+1} ただし m=(n1)/2m=\lfloor (n-1)/2\rfloor。また log2=0.69\log 2=0.69

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