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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。線形代数2問・微分積分・解析1問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・正定値行列・重積分と極座標)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

阪大 数学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は線形代数2問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—楕円体と円柱条件の共通部分—あり
第2問微分積分・解析二変数関数の極値判定極大点がない理由 / 採点上の注意あり
第3問—単調列と指数型列核になる不等式あり
第4問線形代数正定値行列のQR分解一意性で見るべき点 / 固有値の検算あり
第5問線形代数行列の冪—あり

この年度の解説には典型ミス3件・検算2件・採点上の注意1件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に3テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 5問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2024年度で新しく出たテーマ
正定値行列・重積分と極座標
2023年度のページを見る

第1問 — 楕円体と円柱条件の共通部分

方針

楕円体を球に直す線形変換を先に入れると,残る条件は (X,Y)(X,Y)-平面上の円柱条件になる。三次元の積分を,円柱の射影領域上での高さ 29−r22\sqrt{9-r^2} の積分として処理するのが最短である。

典型ミス

最後にヤコビアン 66 を掛け忘れると,答えがちょうど 1/61/6 になる。 また r≤3cos⁡θr\le 3\cos\theta は cos⁡θ≥0\cos\theta\ge 0 の範囲でのみ意味を持つため, θ\theta の範囲を全周にしないことが重要である。

解答

変数 X=x,Y=y2,Z=z3 X=x,\qquad Y=\frac{y}{2},\qquad Z=\frac{z}{3} を用いる。この変換のヤコビアンは ∣∂(x,y,z)∂(X,Y,Z)∣=6 \left|\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(X,Y,Z)}\right|=6 である。楕円体側の条件は半径 33 の球 X2+Y2+Z2≤9 X^2+Y^2+Z^2\le 9 に変わる。一方,もう一つの条件は X2+Y2≤3X X^2+Y^2\le 3X すなわち (X−32)2+Y2≤(32)2 \left(X-\frac{3}{2}\right)^2+Y^2\le \left(\frac{3}{2}\right)^2 である。

(X,Y)(X,Y)-平面で極座標 X=rcos⁡θ, Y=rsin⁡θX=r\cos\theta,\ Y=r\sin\theta を使うと, 0≤r≤3cos⁡θ,−π2≤θ≤π2 0\le r\le 3\cos\theta,\qquad -\frac{\pi}{2}\le \theta\le \frac{\pi}{2} であり,球の条件から −9−r2≤Z≤9−r2 -\sqrt{9-r^2}\le Z\le \sqrt{9-r^2} である。したがって求める体積 VV は V=6∫−π/2π/2∫03cos⁡θ29−r2 r dr dθ=12∫−π/2π/2[ −13(9−r2)3/2]03cos⁡θdθ=108∫−π/2π/2(1−∣sin⁡θ∣3)dθ=108(π−2∫0π/2sin⁡3θ dθ). \begin{aligned} V &=6\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\int_0^{3\cos\theta} 2\sqrt{9-r^2}\,r\,dr\,d\theta\\ &=12\int_{-\pi/2}^{\pi/2} \left[\,-\frac{1}{3}(9-r^2)^{3/2}\right]_{0}^{3\cos\theta} d\theta\\ &=108\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\left(1-|\sin\theta|^3\right)d\theta\\ &=108\left(\pi-2\int_0^{\pi/2}\sin^3\theta\,d\theta\right). \end{aligned} ∫0π/2sin⁡3θ dθ=23 \int_0^{\pi/2}\sin^3\theta\,d\theta=\frac{2}{3} であるから, V=108(π−43)=108π−144 V=108\left(\pi-\frac{4}{3}\right)=108\pi-144 を得る。

最終答

V=108π−144V=108\pi-144

第2問 — 二変数関数の極値判定

極大点がない理由

この関数は高次の項が (xy−k)2(xy-k)^2 を含むため無限遠で大きくなる方向が多い。 停留点をすべて列挙してヘッセ行列で分類すれば,正定値になる点と鞍点しか出ない。 したがって局所極大点はない。

検算

k>2k>2 の原点での値は k2k^2,新しく現れる極小点での値は 4k−44k-4 である。 k2−(4k−4)=(k−2)2>0 k^2-(4k-4)=(k-2)^2>0 なので,新しい極小点の方が値が小さい。停留点の分類と値の大小が整合している。

採点上の注意

停留条件の差から (y−x)(xy−k)=0(y-x)(xy-k)=0 を出すところが分岐の中心である。 xy=k, x+y=0xy=k,\ x+y=0 が k>0k>0 と矛盾することを書かないと,余分な候補を残したままになる。

二変数関数の極値判定の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 単調列と指数型列

核になる不等式

必要なのは (1+cn)n \left(1+\frac{c}{n}\right)^n が nn について増加し,かつ ece^c で上から抑えられるという標準事実である。 ただし今回は c=anc=a_n も動くため,まず an+1≥ana_{n+1}\ge a_n で底を比較し, 次に nn の比較を入れる,という二段階に分けると間違えにくい。

典型ミス

sup⁡an<2\sup a_n<2 は収束先を e2e^2 未満にする条件ではない。 必要なのは上から抑える定数があることだけである。したがって最後の設問では 「有界なら M=sup⁡anM=\sup a_n を取れる」と書けば同じ証明がそのまま使える。

単調列と指数型列の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 正定値行列のQR分解

方針

この問題の本質は,QR分解の存在そのものよりも,対角成分を正に固定したときの一意性である。 直交化では各段階のノルムを正に取るため,自動的に rjj>0r_{jj}>0 になる。

一意性で見るべき点

直交行列と上三角行列の両方である行列は非常に制限される。 第1列から順に見ると,下三角側の成分がすでに 00 であり,直交性により上側の非対角成分も消える。 さらに対角成分が正であれば全て 11 になる。

固有値の検算

QRQR と RQRQ は一般には同じ行列ではないが,ここでは RQ=QT(QR)Q RQ=Q^{\mathsf T}(QR)Q と書ける。したがって「積の順序を入れ替えても固有値が同じ」という一般論に頼らず, 直交相似として確認できる。

正定値行列のQR分解の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 行列の冪

方針

固有値を調べると 22 が重複し,33 が単根として現れる。 ただし aa の値によっては通常の対角化だけで処理しにくい。 そこで,射影部分 PP と冪零部分 NN に分けると,全ての実数 aa を同じ式で扱える。

検算

n=1n=1 を代入すると c1=a+1c_1=a+1 であり, (2a+1−a−1−1a+3−a−1a+1−a+2) \begin{pmatrix} 2 & a+1 & -a-1\\ -1 & a+3 & -a\\ -1 & a+1 & -a+2 \end{pmatrix} が戻る。したがって少なくとも初期値との整合性は取れている。

典型ミス

a=−1a=-1 のときだけ別扱いにしようとすると場合分けが長くなる。 上の式では cn=0c_n=0 となるだけでそのまま成立するため,冪零部分を用いた処理の方が答案として安定する。

行列の冪の途中式・最終答をPDFで見る

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  • 2014年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    変数変換とベータ積分 / 多項式の零点と三角格子 / 直交行列のCayley変換

  • 2013年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    多項式空間上の線形変換 / 積分剰余と凸性 / 巡回行列の固有値

  • 2012年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    積分の変数変換 / 実数連立方程式 / 指数型母関数と3周期列

  • 2011年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    積分評価 / 線形部分空間 / 正則関数と調和共役

  • 2010年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    広義積分と留数計算 / 行列の核の次元 / 複素数列の周期性

  • 2009年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    制約付き最大化 / 歪対称行列と非対角化性 / 単位円上の留数計算

  • 2008年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    球と円柱の共通部分の体積 / 同伴行列の固有多項式と対角化 / 有界正則関数の係数評価

  • 2007年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    左右から近づく微分商 / 楕円体の体積 / 留数による有理関数積分

  • 2006年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    漸化式と階乗正規化 / 二変数関数の極値 / 単位円上の留数計算

  • 2005年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    可積分条件と無限遠での極限 / 極座標でのラプラシアン / フーリエ型積分と留数