院試hub

東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2025年8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・ヒルベルト空間)。2024年8月実施と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標。

最終更新:

このページで公開
解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 2025年8月実施 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析重積分と極座標領域の読み替え / 極座標での境界あり
第2問—線形写像の核と像核の計算 / 交わりの調べ方あり
第3問微分方程式偏微分可能性と全微分可能性全微分可能性の核心 / 偏微分可能と全微分可能の違いあり
第4問線形代数実対称行列とRayleigh商固有値の構造 / Rayleigh商あり

この年度の解説には検算1件が付いています。

2025年8月実施の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2024年8月実施)との違い

大問数
2024年8月実施 4問 → 2025年8月実施 4問
2025年8月実施で新しく出たテーマ
ヒルベルト空間・偏微分可能性と連続性
2024年8月実施のページを見る

第1問 — 重積分と極座標

領域の読み替え

不等式の連鎖をそのまま扱うより、まず3本の直線で囲まれる領域に直すのがよい。特に 2x+1≤x+y2x+1\le x+y は y≥x+1y\ge x+1、x+y≤0x+y\le0 は y≤−xy\le -x である。さらに 2x+1≤02x+1\le0 も従うので、領域が第2象限側の三角形に限られる。

極座標での境界

θ=3π/4\theta=3\pi/4 は直線 y=−xy=-x に対応する。もう一方の端 θ=π\theta=\pi は負の xx 軸である。半径方向の下限は斜めの直線 y=x+1y=x+1、上限は縦の直線 x=−1x=-1 から得られる。端点で確認すると、θ=π\theta=\pi では両方とも r=1r=1、θ=3π/4\theta=3\pi/4 では r=1/2r=1/\sqrt2 から r=2r=\sqrt2 までとなり、図形と一致する。

主値の扱い

この問題で最も間違えやすいのは arctan⁡(y/x)=θ\arctan(y/x)=\theta としてしまう点である。主値の arctan⁡\arctan の値域は (−π/2,π/2)(-\pi/2,\pi/2) なので、第2象限では θ−π\theta-\pi になる。符号が負になることを、積分値が負になる最終結果とも照合できる。

重積分と極座標の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 線形写像の核と像

核の計算

AA は上2行と下2行がそれぞれ同じ一次条件を与える形になっている。c=0c=0 の場合でも、上から3行目の 3x3+3x4=03x_3+3x_4=0 が残るため、ker⁡fA\ker f_A は上の2次元空間で変わらない。BB も第1行と第3行、第2行と第4行が同じ条件を与える。

交わりの調べ方

2つの像空間の交わりを直接図示することはできないので、まずそれぞれの像の生成ベクトルを具体的に計算する。その後、左右の線形結合を等置して係数を比較するのが最も安定した方法である。最後の式だけに cc が残るため、計算の見通しもよい。

検算

c=3c=3 のとき 9Ba1−9Ba2=−7Ab1+4Ab2=t(9,18,9,9) 9Ba_1-9Ba_2 = -7Ab_1+4Ab_2 = {}^{t}(9,18,9,9) である。これは両方の像に属する非零ベクトルを実際に与えているので、必要条件だけでなく十分性も確認できている。

解答

A=(12002400003300cc) A= \begin{pmatrix} 1&2&0&0\\ 2&4&0&0\\ 0&0&3&3\\ 0&0&c&c \end{pmatrix} とおく。Ax=0Ax=0, x=t(x1,x2,x3,x4)x={}^{t}(x_1,x_2,x_3,x_4) は x1+2x2=0,x3+x4=0 x_1+2x_2=0,\qquad x_3+x_4=0 に同値である。したがって ker⁡fA=⟨(2−100),(001−1)⟩. \ker f_A = \left\langle \begin{pmatrix}2\\-1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\0\\1\\-1\end{pmatrix} \right\rangle .

次に B=(1010020410100102) B= \begin{pmatrix} 1&0&1&0\\ 0&2&0&4\\ 1&0&1&0\\ 0&1&0&2 \end{pmatrix} である。Bx=0Bx=0 は x1+x3=0,x2+2x4=0 x_1+x_3=0,\qquad x_2+2x_4=0 に同値であるから ker⁡fB=⟨(10−10),(020−1)⟩. \ker f_B = \left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\-1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\2\\0\\-1\end{pmatrix} \right\rangle .

交わりの条件を調べる。上で求めた基底を a1=(2−100),a2=(001−1),b1=(10−10),b2=(020−1) a_1=\begin{pmatrix}2\\-1\\0\\0\end{pmatrix},\quad a_2=\begin{pmatrix}0\\0\\1\\-1\end{pmatrix},\quad b_1=\begin{pmatrix}1\\0\\-1\\0\end{pmatrix},\quad b_2=\begin{pmatrix}0\\2\\0\\-1\end{pmatrix} とおくと Ba1=(2−22−1),Ba2=(1−41−2),Ab1=(12−3−c),Ab2=(48−3−c). \begin{aligned} Ba_1&=\begin{pmatrix}2\\-2\\2\\-1\end{pmatrix},& Ba_2&=\begin{pmatrix}1\\-4\\1\\-2\end{pmatrix},\\ Ab_1&=\begin{pmatrix}1\\2\\-3\\-c\end{pmatrix},& Ab_2&=\begin{pmatrix}4\\8\\-3\\-c\end{pmatrix}. \end{aligned} 非零ベクトルが交わりに属することは、ある係数 α,β,s,t\alpha,\beta,s,t が αBa1+βBa2=sAb1+tAb2 \alpha Ba_1+\beta Ba_2=sAb_1+tAb_2 を満たすことと同値である。成分比較を行うと {2α+β=s+4t,−2α−4β=2s+8t,2α+β=−3s−3t,−α−2β=−c(s+t) \begin{cases} 2\alpha+\beta=s+4t,\\ -2\alpha-4\beta=2s+8t,\\ 2\alpha+\beta=-3s-3t,\\ -\alpha-2\beta=-c(s+t) \end{cases} である。第1式と第3式から 4s+7t=0,s=−74t 4s+7t=0,\qquad s=-\frac74t を得る。さらに第1式より 2α+β=9t/42\alpha+\beta=9t/4 であり、第2式と合わせて解くと α=94t,β=−94t. \alpha=\frac94t,\qquad \beta=-\frac94t. 第4式は −α−2β=−c(s+t) -\alpha-2\beta=-c(s+t) であるから 94t=3c4t. \frac94t=\frac{3c}{4}t. 交わりに非零ベクトルが存在するには t≠0t\ne0 が必要なので c=3 c=3 である。

実際に c=3c=3 のとき、例えば t=4t=4 とすれば 9Ba1−9Ba2=−7Ab1+4Ab2=(91899)≠0 9Ba_1-9Ba_2=-7Ab_1+4Ab_2 = \begin{pmatrix}9\\18\\9\\9\end{pmatrix}\ne0 となり、非零の交わりが存在する。

最終答

ker⁡fA=⟨t(2,−1,0,0), t(0,0,1,−1)⟩,ker⁡fB=⟨t(1,0,−1,0), t(0,2,0,−1)⟩,c=3. \begin{gathered} \ker f_A= \left\langle {}^{t}(2,-1,0,0),\ {}^{t}(0,0,1,-1) \right\rangle,\\ \ker f_B= \left\langle {}^{t}(1,0,-1,0),\ {}^{t}(0,2,0,-1) \right\rangle,\\ c=3. \end{gathered}

第3問 — 偏微分可能性と全微分可能性

全微分可能性の核心

∣x∣|x| と ∣y∣|y| があるため一見すると微分可能性が怪しく見えるが、原点では f(x,y)=(x−y)+2次以上の小さい項 f(x,y)=(x-y)+\text{2次以上の小さい項} という構造になっている。実際、余りは (x−y)(∣x∣+∣y∣)(x-y)(|x|+|y|) であり、これは距離の2乗程度で抑えられる。

偏微分可能と全微分可能の違い

偏微分可能性は座標軸方向だけの極限を調べる性質である。全微分可能性では任意方向からの近づき方を同時に制御する必要がある。本問では不等式 ∣x−y∣(∣x∣+∣y∣)≤2(x2+y2) |x-y|(|x|+|y|)\le 2(x^2+y^2) がその制御を与えている。

C1C^1 でない理由

原点では全微分可能であっても、平面全体で C1C^1 級とは限らない。絶対値の折れ目は直線 x=0x=0 と y=0y=0 に残っており、特に x=0, y>0x=0,\ y>0 では xx 方向の左右差商が異なる。C1C^1 でないことを示すには、偏導関数の不連続性を示してもよいが、本問では偏微分そのものが存在しない点を示すのが最短である。

偏微分可能性と全微分可能性の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 実対称行列とRayleigh商

固有値の構造

この行列は第1成分の 22 と、3次元部分の完全グラフ型行列に分かれている。3次元部分では、全成分が等しい方向が固有値 22、成分和が 00 の平面が固有値 −1-1 に対応する。この見方を使うと、4次の特性多項式を直接展開せずに固有空間まで求められる。

Rayleigh商

実対称行列では、Rayleigh商の最大値は最大固有値である。答案ではこの事実を使ってよいが、上のように固有空間分解を書けば、なぜ最大値が 22 になるかを直接確認できる。

圧縮行列の最大固有値

tSAS{}^{t}SAS は、AA を w,w′w,w' が張る2次元部分空間に制限して、その部分空間の正規直交基底で表した行列である。2次元に制限してもRayleigh商の取り得る範囲は全空間での範囲を超えない。これが最大固有値が増えない理由である。

実対称行列とRayleigh商の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 院試 過去問の収録4年度

  • 2025年8月実施(このページ・全4問)

    重積分と極座標 / 線形写像の核と像 / 偏微分可能性と全微分可能性

  • 2024年8月実施(全4問)

    楕円領域の重積分 / 対称行列の固有値と極限 / 凸関数の基本性質

  • 2021年8月実施(全4問)

    微分可能性と正則性 / 行列の対角化と多項式表示 / Riemann和の極限

  • 2020年8月実施(全4問)

    中心差分と2階微分 / 共通固有ベクトルと可換行列 / 非負関数の広義積分