東北大学 院試 過去問 解答例
東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2025年8月実施 院試 解答例・解説
東北大学 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2025年8月実施の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 重積分と極座標
領域の読み替え
不等式の連鎖をそのまま扱うより、まず3本の直線で囲まれる領域に直すのがよい。特に は 、 は である。さらに も従うので、領域が第2象限側の三角形に限られる。
極座標での境界
は直線 に対応する。もう一方の端 は負の 軸である。半径方向の下限は斜めの直線 、上限は縦の直線 から得られる。端点で確認すると、 では両方とも 、 では から までとなり、図形と一致する。
主値の扱い
この問題で最も間違えやすいのは としてしまう点である。主値の の値域は なので、第2象限では になる。符号が負になることを、積分値が負になる最終結果とも照合できる。
第2問 — 線形写像の核と像
核の計算
は上2行と下2行がそれぞれ同じ一次条件を与える形になっている。 の場合でも、上から3行目の が残るため、 は上の2次元空間で変わらない。 も第1行と第3行、第2行と第4行が同じ条件を与える。
交わりの調べ方
2つの像空間の交わりを直接図示することはできないので、まずそれぞれの像の生成ベクトルを具体的に計算する。その後、左右の線形結合を等置して係数を比較するのが最も安定した方法である。最後の式だけに が残るため、計算の見通しもよい。
検算
のとき である。これは両方の像に属する非零ベクトルを実際に与えているので、必要条件だけでなく十分性も確認できている。
第3問 — 偏微分可能性と全微分可能性
全微分可能性の核心
と があるため一見すると微分可能性が怪しく見えるが、原点では という構造になっている。実際、余りは であり、これは距離の2乗程度で抑えられる。
偏微分可能と全微分可能の違い
偏微分可能性は座標軸方向だけの極限を調べる性質である。全微分可能性では任意方向からの近づき方を同時に制御する必要がある。本問では不等式 がその制御を与えている。
でない理由
原点では全微分可能であっても、平面全体で 級とは限らない。絶対値の折れ目は直線 と に残っており、特に では 方向の左右差商が異なる。 でないことを示すには、偏導関数の不連続性を示してもよいが、本問では偏微分そのものが存在しない点を示すのが最短である。
第4問 — 実対称行列とRayleigh商
固有値の構造
この行列は第1成分の と、3次元部分の完全グラフ型行列に分かれている。3次元部分では、全成分が等しい方向が固有値 、成分和が の平面が固有値 に対応する。この見方を使うと、4次の特性多項式を直接展開せずに固有空間まで求められる。
Rayleigh商
実対称行列では、Rayleigh商の最大値は最大固有値である。答案ではこの事実を使ってよいが、上のように固有空間分解を書けば、なぜ最大値が になるかを直接確認できる。
圧縮行列の最大固有値
は、 を が張る2次元部分空間に制限して、その部分空間の正規直交基底で表した行列である。2次元に制限してもRayleigh商の取り得る範囲は全空間での範囲を超えない。これが最大固有値が増えない理由である。