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東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2023年8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は微分積分・解析2問、線形代数1問です。線形空間・基底、重積分と極座標、正定値行列などが出ています。2022年8月実施と共通するテーマは重積分と極座標です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 対角線上の連続性と全微分

積分表示を作る理由

差商の形を直接扱うと,x=yx=y に近づく極限で場合分けが重くなる。指数関数の基本定理 ex−ey=∫yxeu du e^x-e^y=\int_y^x e^u\,du を u=y+t(x−y)u=y+t(x-y) と置き換えると,対角線上も含めて同じ式で扱える。この時点で連続性と偏微分計算がほぼ終わる。

全微分可能性の確認

偏微分係数が存在するだけでは全微分可能性は従わない。ここでは一次近似からの余りが o(h2+k2)o(\sqrt{h^2+k^2}) であることを明示した。積分表示では余り評価が tt に関して一様にできるため,極限操作の正当化が書きやすい。

解答

与えられた関数は,次の積分表示で一つの式にまとめられる。 f(x,y)=∫01exp⁡{tx+(1−t)y} dt. f(x,y)=\int_0^1 \exp\{tx+(1-t)y\}\,dt . 実際,x≠yx\ne y なら右辺は ∫01ey+t(x−y) dt=ex−eyx−y \int_0^1 e^{y+t(x-y)}\,dt =\frac{e^x-e^y}{x-y} であり,x=yx=y なら exe^x である。したがって被積分関数は (x,y,t)(x,y,t) について連続で,積分区間も固定されているから,特に (a,a)(a,a) で連続である。

同じ表示から積分記号下で偏微分してよいので fx(x,y)=∫01texp⁡{tx+(1−t)y} dt,fy(x,y)=∫01(1−t)exp⁡{tx+(1−t)y} dt. f_x(x,y)=\int_0^1 t\exp\{tx+(1-t)y\}\,dt,\qquad f_y(x,y)=\int_0^1 (1-t)\exp\{tx+(1-t)y\}\,dt . よって fx(a,a)=ea∫01t dt=ea2,fy(a,a)=ea∫01(1−t) dt=ea2. f_x(a,a)=e^a\int_0^1 t\,dt=\frac{e^a}{2},\qquad f_y(a,a)=e^a\int_0^1 (1-t)\,dt=\frac{e^a}{2}.

最後に全微分可能性を示す。h,k→0h,k\to0 とおくと f(a+h,a+k)−f(a,a)=∫01ea(eth+(1−t)k−1) dt. \begin{aligned} f(a+h,a+k)-f(a,a) &=\int_0^1 e^a\left(e^{th+(1-t)k}-1\right)\,dt . \end{aligned} rt=th+(1−t)kr_t=th+(1-t)k とおけば,∣rt∣≤∣h∣+∣k∣|r_t|\le |h|+|k| であり, ert=1+rt+O((∣h∣+∣k∣)2) e^{r_t}=1+r_t+O\left((|h|+|k|)^2\right) が 0≤t≤10\le t\le1 で一様に成り立つ。したがって f(a+h,a+k)−f(a,a)=ea∫01{th+(1−t)k} dt+O((∣h∣+∣k∣)2)=ea2(h+k)+o(h2+k2). \begin{aligned} f(a+h,a+k)-f(a,a) &= e^a\int_0^1 \{th+(1-t)k\}\,dt +O\left((|h|+|k|)^2\right)\\ &= \frac{e^a}{2}(h+k) +o\left(\sqrt{h^2+k^2}\right). \end{aligned} これは (a,a)(a,a) における全微分可能性を意味する。

最終答

fx(a,a)=fy(a,a)=ea/2f_x(a,a)=f_y(a,a)=e^a/2 であり,全微分は df(a,a)(h,k)=ea2(h+k)df_{(a,a)}(h,k)=\dfrac{e^a}{2}(h+k) である。

第2問 — 核と直交分解

核の基底

核は行基本変形で最も確実に求められる。階数が2なので核の次元は 4−2=24-2=2 である。この次元確認を書いておくと,得られた2本が基底であることの根拠になる。

直交補空間の検算

W⊥W^\perp は2次元である。提示した q1,q2q_1,q_2 は互いに直交し,どちらも p1,p2p_1,p_2 に直交するため,正規化すれば正規直交基底になる。最後の分解では p1⋅w′=0,p2⋅w′=0 p_1\cdot w'=0,\qquad p_2\cdot w'=0 が成り立つので,w′∈W⊥w'\in W^\perp の確認も済んでいる。

核と直交分解の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 重積分で定まる関数

偏微分の出し方

長方形領域の上端または右端だけが動くので,偏微分は1変数積分になる。被積分関数の連続性を先に示しておくと,積分の基本定理を安心して使える。

極値の数え上げ

gn′(x)g_n'(x) の式そのものよりも,変数変換 z=nπx2z=n\pi x^2 が重要である。これにより根の問題は標準的な tan⁡z=z\tan z=z の解の個数に帰着する。区間ごとに tan⁡z\tan z の符号と単調性を見れば,解を近似計算せずに個数だけを正確に数えられる。

重積分で定まる関数の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 正定値行列とSchur補

合同変換と正定値性

正定値性は相似変換ではなく合同変換で保たれる。すなわち正則行列 PP に対して MM と PTMPP^TMP は同時に正定値である。この問題では2次の場合の平方完成が,そのまま高次元のSchur補の議論につながっている。

Schur補の見方

xTAx+2xTy+yTByx^TAx+2x^Ty+y^TBy を yy について平方完成すると,残る項が A−B−1A-B^{-1} になる。ここで BB の正定値性は,逆行列の存在と第2項の正値性の両方に必要である。

正定値行列とSchur補の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年8月実施(全4問)

    重積分と極座標 / 線形写像の核と像 / 偏微分可能性と全微分可能性

  • 2024年8月実施(全4問)

    楕円領域の重積分 / 対称行列の固有値と極限 / 凸関数の基本性質

  • 2023年8月実施(このページ・全4問)

    対角線上の連続性と全微分 / 核と直交分解 / 重積分で定まる関数

  • 2022年8月実施(全4問)

    指数関数の積分と順序交換 / 複素行列の特異値と核 / 最大値原理と楕円領域

  • 2021年8月実施(全4問)

    微分可能性と正則性 / 行列の対角化と多項式表示 / Riemann和の極限

  • 2020年8月実施(全4問)

    中心差分と2階微分 / 共通固有ベクトルと可換行列 / 非負関数の広義積分

2023年8月実施の出題内容

全4問

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析対角線上の連続性と全微分積分表示を作る理由 / 全微分可能性の確認あり
第2問—核と直交分解核の基底 / 直交補空間の検算あり
第3問微分積分・解析重積分で定まる関数偏微分の出し方 / 極値の数え上げあり
第4問線形代数正定値行列とSchur補合同変換と正定値性 / Schur補の見方あり

同じテーマを出した他大学・他年度

5テーマ

前年度(2022年8月実施)との違い

大問数
2022年8月実施 4問 → 2023年8月実施 4問
両年度に出たテーマ
重積分と極座標
2022年8月実施の解答例

東北大学の公式過去問

公開年度範囲
1998〜2025(上期筆答・下期筆答・推薦小論文を年度により掲載)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
募集要項で確認。一般入試は英語スコア提出または外国語試験の扱いが年度・群で異なる。
院試hubの最終確認
2026-09-26
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