院試hub

東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2021年8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標)。2020年8月実施と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

最終更新:

このページで公開
解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 2021年8月実施 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析微分可能性と正則性振動項は振幅で判定する / 片側の確認あり
第2問線形代数行列の対角化と多項式表示重複固有値の確認 / 多項式表示の考え方あり
第3問微分積分・解析Riemann和の極限和の形を見る / 第2の極限の小さい補正あり
第4問—生成部分空間と固有空間の和生成系から基底を選ぶ / 固有空間の和あり

この年度の解説には検算1件が付いています。

2021年8月実施の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に2テーマが出ています。

前年度(2020年8月実施)との違い

大問数
2020年8月実施 4問 → 2021年8月実施 4問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2021年8月実施で新しく出たテーマ
重積分と極座標
2020年8月実施のページを見る

第1問 — 微分可能性と正則性

振動項は振幅で判定する

この型の関数では sin⁡(1/x2)\sin(1/x^{2}) や cos⁡(1/x2)\cos(1/x^{2}) 自体に極限はない。 したがって,振動を抑えるべき係数が xβx^{\beta} で,β>0\beta>0 かどうかが本質になる。 微分可能性では xα−1x^{\alpha-1},C1C^{1} 性では xα−3x^{\alpha-3}, 2階微分可能性では xα−4x^{\alpha-4} がそれぞれ支配的な係数である。

片側の確認

負の側では関数が恒等的に 00 なので,左微分係数も左側の導関数も 00 である。 したがって問題は常に右側からの極限に帰着される。答案ではこの片側の差を明記しておくと, 原点以外の滑らかさと原点での接続条件を混同していないことが伝わる。

境界値の扱い

α=3\alpha=3 と α=4\alpha=4 は別々に確認する必要がある。 α=3\alpha=3 は C1C^{1} 性の段階で −2cos⁡(1/x2)-2\cos(1/x^{2}) が残るため不可である。 一方 α=4\alpha=4 は C1C^{1} ではあるが,2階微分係数の差商に −2cos⁡(1/h2)-2\cos(1/h^{2}) が残るため2階微分可能ではない。

解答

右側から原点に近づくときだけ振動項が現れる。h<0h<0 では f(h)−f(0)h=0 \frac{f(h)-f(0)}{h}=0 であり,h>0h>0 では f(h)−f(0)h=hα−1sin⁡1h2 \frac{f(h)-f(0)}{h} =h^{\alpha-1}\sin\frac{1}{h^{2}} である。仮定より α>1\alpha>1 だから ∣hα−1sin⁡1h2∣≤hα−1⟶0(h↓0). \left|h^{\alpha-1}\sin\frac{1}{h^{2}}\right| \le h^{\alpha-1}\longrightarrow 0 \qquad (h\downarrow 0). したがって ff は x=0x=0 で微分可能で,f′(0)=0f'(0)=0 である。

次に x>0x>0 で微分すると f′(x)=αxα−1sin⁡1x2−2xα−3cos⁡1x2, f'(x)= \alpha x^{\alpha-1}\sin\frac{1}{x^{2}} -2x^{\alpha-3}\cos\frac{1}{x^{2}}, また x<0x<0 では f′(x)=0f'(x)=0 である。原点以外では滑らかなので, C1C^{1} 性の判定は x↓0x\downarrow0 における f′(x)f'(x) の極限だけを見ればよい。 第1項は α>1\alpha>1 で常に 00 に収束する。第2項は xα−3cos⁡1x2 x^{\alpha-3}\cos\frac{1}{x^{2}} であり,これが 00 に収束するための必要十分条件は α>3\alpha>3 である。 α=3\alpha=3 では cos⁡(1/x2)\cos(1/x^{2}) が振動し,1<α<31<\alpha<3 では有界にもならない。 よって ff が R\mathbb{R} 上 C1C^{1} である条件は α>3 \alpha>3 である。

最後に,α>3\alpha>3 のもとで原点における2階微分可能性を調べる。 f′(0)=0f'(0)=0 なので f′(h)−f′(0)h=αhα−2sin⁡1h2−2hα−4cos⁡1h2(h>0) \frac{f'(h)-f'(0)}{h} = \alpha h^{\alpha-2}\sin\frac{1}{h^{2}} -2h^{\alpha-4}\cos\frac{1}{h^{2}} \qquad (h>0) である。第1項は α>3\alpha>3 なら 00 に収束する。第2項は α>4\alpha>4 のときに限って 00 に収束し,α=4\alpha=4 では振動し, 3<α<43<\alpha<4 では発散する。したがって C1C^{1} ではあるが2階微分可能でない条件は 3<α≤4 3<\alpha\le 4 である。

最終答

f′(0)=0f'(0)=0。ff が C1C^{1} である条件は α>3\alpha>3。さらに C1C^{1} だが2階微分可能でない条件は 3<α≤43<\alpha\le4。

第2問 — 行列の対角化と多項式表示

重複固有値の確認

固有値 11 は代数的重複度が2である。対角化では,ここで固有空間の次元が本当に2かを確認する必要がある。 今回 (A−I)x=0(A-I)x=0 は1本の独立な一次条件だけなので,固有空間は2次元であり,固有値 22 の固有ベクトルと合わせて3本の一次独立な固有ベクトルがそろう。

多項式表示の考え方

対角化可能な行列では,多項式 p(A)p(A) の作用は各固有空間上で p(λ)p(\lambda) 倍になる。 したがって A−1=f(A)A^{-1}=f(A) は固有値 1,21,2 上で逆数を取る補間問題である。 同様に B=g(A)B=g(A) は,BB が同じ固有値に属する固有空間全体で同じスカラー倍になっているかを見る問題である。

検算

b=−2b=-2 を代入すると B=4I−2AB=4I-2A と直接計算できる。 この等式は B=g(A)B=g(A) の十分性を一行で保証するので,固有空間で得た条件の検算として有効である。

行列の対角化と多項式表示の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — Riemann和の極限

和の形を見る

1n∑k=1n\frac1n\sum_{k=1}^{n} は1変数のRiemann和, 1n2∑k=1n∑ℓ=1n\frac1{n^{2}}\sum_{k=1}^{n}\sum_{\ell=1}^{n} は2変数のRiemann和である。 添字を k/n,ℓ/nk/n,\ell/n に置き換えたときに連続関数が現れれば,極限は定積分になる。

第2の極限の小さい補正

k3−1k2n\frac{k^{3}-1}{k^{2}n} は主要部が k/nk/n で,補正項は高々 1/n1/n である。 対数の中身は 11 以上で,導関数 1/(1+x)1/(1+x) も有界なので,補正項の総和への寄与は Riemann和の極限では消える。この確認を入れると,単に見た目だけで置き換えた答案にならない。

二重積分の順序

第3の積分は先に yy で積分すると一度の置換で終わる。 先に xx で積分しても計算できるが,sin⁡(xy2)\sin(xy^{2}) の中に xy2xy^{2} があるため, xy dyxy\,dy と組にする方が自然である。

Riemann和の極限の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 生成部分空間と固有空間の和

生成系から基底を選ぶ

複数の生成ベクトルが与えられたときは,列ベクトルとして並べて主列を読むのが確実である。 今回の第2列は第1列の −1/2-1/2 倍であり,第4列は第1列と第3列の一次結合である。 そのため,WW は2次元に落ちる。

固有空間の和

行列 AA は固有値 11 を重複して持つが,固有空間は1次元だけである。 したがって,すべての固有空間の和 VV は R3\mathbb{R}^{3} 全体ではなく2次元で止まる。 代数的重複度だけで VV の次元を判断しないことが重要である。

和空間の証明

W+V=R3W+V=\mathbb{R}^{3} を直接3本の一次独立なベクトルで示してもよい。 ここでは W,V,W∩VW,V,W\cap V の次元がすでに分かっているため,次元公式を使うのが最短である。 交わりが1次元であることを明示してから次元公式に入ると,論理の抜けがない。

生成部分空間と固有空間の和の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 院試 過去問の収録4年度

  • 2025年8月実施(全4問)

    重積分と極座標 / 線形写像の核と像 / 偏微分可能性と全微分可能性

  • 2024年8月実施(全4問)

    楕円領域の重積分 / 対称行列の固有値と極限 / 凸関数の基本性質

  • 2021年8月実施(このページ・全4問)

    微分可能性と正則性 / 行列の対角化と多項式表示 / Riemann和の極限

  • 2020年8月実施(全4問)

    中心差分と2階微分 / 共通固有ベクトルと可換行列 / 非負関数の広義積分