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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2020年8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・テイラー展開)。

最終更新:

収録4年度分の解答PDF:東北大学 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 2020年8月実施 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析中心差分と2階微分1階微分が消える理由 / 2変数でも混合微分は不要あり
第2問線形代数共通固有ベクトルと可換行列共通固有ベクトルは交わりで探す / 可換性が固有空間を保つあり
第3問微分積分・解析非負関数の広義積分単調性が効く場所 / 連続反例の作り方あり
第4問—置換表現の不変部分空間置換表現の分解 / 符号表現は含まれないあり

2020年8月実施の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に2テーマが出ています。

第1問 — 中心差分と2階微分

1階微分が消える理由

中心差分では x+hx+h と x−hx-h を対称に使うため,Taylor展開の1次項が打ち消し合う。 この問題では C2C^{2} しか仮定されていないので,3階微分を含むTaylor展開ではなく, 積分形の剰余で示すのが最も安全である。

2変数でも混合微分は不要

4点は座標軸方向にだけ動いている。したがって必要なのは xx 方向の1変数公式と yy 方向の1変数公式であり,混合微分 fxyf_{xy} は現れない。 この点を押さえると,係数が 4/h24/h^{2} になる理由も,4点平均から中心値を引いているためだと分かる。

負の hh について

差分式は hh を −h-h に変えても同じ値になる。したがって h>0h>0 で極限を示せば, 両側極限としての h→0h\to0 も同時に従う。

解答

まず1変数の場合を示す。h>0h>0 として,微積分の基本定理を2回用いると g(x+h)−g(x)=hg′(x)+∫0h(h−t)g′′(x+t) dt, g(x+h)-g(x) = hg'(x)+\int_{0}^{h}(h-t)g''(x+t)\,dt, g(x−h)−g(x)=−hg′(x)+∫0h(h−t)g′′(x−t) dt g(x-h)-g(x) = -hg'(x)+\int_{0}^{h}(h-t)g''(x-t)\,dt である。両式を加えると1階微分の項が消えて g(x+h)+g(x−h)−2g(x)=∫0h(h−t){g′′(x+t)+g′′(x−t)} dt. g(x+h)+g(x-h)-2g(x) = \int_{0}^{h}(h-t)\{g''(x+t)+g''(x-t)\}\,dt. したがって g(x+h)+g(x−h)−2g(x)h2=∫01(1−s){g′′(x+hs)+g′′(x−hs)} ds \frac{g(x+h)+g(x-h)-2g(x)}{h^{2}} = \int_{0}^{1}(1-s)\{g''(x+hs)+g''(x-hs)\}\,ds である。g′′g'' は連続なので,h→0h\to0 とすると右辺は ∫01(1−s){2g′′(x)} ds=g′′(x) \int_{0}^{1}(1-s)\{2g''(x)\}\,ds = g''(x) に収束する。これは求める中心差分公式である。

次に2変数の場合を考える。固定した yy に対して Gy(X)=f(X,y)G_{y}(X)=f(X,y) とおくと, 上の1変数公式より lim⁡h→0f(x+h,y)+f(x−h,y)−2f(x,y)h2=fxx(x,y). \lim_{h\to0} \frac{f(x+h,y)+f(x-h,y)-2f(x,y)}{h^{2}} = f_{xx}(x,y). 同様に,固定した xx に対して Hx(Y)=f(x,Y)H_{x}(Y)=f(x,Y) とおけば lim⁡h→0f(x,y+h)+f(x,y−h)−2f(x,y)h2=fyy(x,y). \lim_{h\to0} \frac{f(x,y+h)+f(x,y-h)-2f(x,y)}{h^{2}} = f_{yy}(x,y). 2つの式を加えると lim⁡h→0f(x+h,y)+f(x−h,y)+f(x,y+h)+f(x,y−h)−4f(x,y)h2=fxx(x,y)+fyy(x,y). \lim_{h\to0} \frac{ f(x+h,y)+f(x-h,y)+f(x,y+h)+f(x,y-h)-4f(x,y) }{h^{2}} = f_{xx}(x,y)+f_{yy}(x,y). これは平均値の形に直せば,指定された表示と同じである。

最終答

1変数の中心差分は g′′(x)g''(x) に収束する。2変数では xx 方向と yy 方向の中心差分を加えることで fxx(x,y)+fyy(x,y)f_{xx}(x,y)+f_{yy}(x,y) に収束する。

第2問 — 共通固有ベクトルと可換行列

共通固有ベクトルは交わりで探す

「両方の固有ベクトルである」とは,ある固有値の組について固有空間の交わりに入るという意味である。 今回は EA(2)∩EB(1)E_{A}(2)\cap E_{B}(1) だけが1次元で,他の交わりは零である。 したがって候補を直接計算してから,零ベクトルを除けばよい。

可換性が固有空間を保つ

AM=MAAM=MA なら,Av=λvAv=\lambda v を満たす vv に対して A(Mv)=M(Av)=λMvA(Mv)=M(Av)=\lambda Mv である。つまり MM は AA の固有空間を保つ。 同じことを BB にも使うと,共通固有空間も保たれる。

対角化可能性の見抜き方

可換条件を満たす行列がすべて sI+tKsI+tK と書けるところまで落とすと,問題は KK の対角化に帰着する。 KK は「全成分の和から自分自身を引く」作用なので,(1,1,1)T(1,1,1)^{\mathsf T} と 和が 00 の平面で固有値が分かれる。この構造を使うと計算量を抑えられる。

共通固有ベクトルと可換行列の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 非負関数の広義積分

単調性が効く場所

非負可積分だけでは,狭い区間で高い山を作れる。単調非増加性があると,点 xx での値 f(x)f(x) は 直前の区間 [x/2,x][x/2,x] 全体の下限になるため,点の情報を面積で支配できる。

xf(x)xf(x) の評価

xf(x)≤2∫x/2xf(t) dtxf(x)\le2\int_{x/2}^{x}f(t)\,dt という形を作るのが核心である。 右辺は積分の尾部なので 00 に収束する。ここでは非負性も重要で,尾部積分が単調に小さくなることを保証している。

連続反例の作り方

連続性は山を滑らかにつなぐ条件にすぎず,山の幅を十分小さくすれば総面積は有限にできる。 そのため,連続かつ非負で広義積分が収束しても,関数値そのものが無限遠で 00 に近づくとは限らない。

非負関数の広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 置換表現の不変部分空間

置換表現の分解

C3\mathbb{C}^{3} は,全成分が等しい直線 UU と,成分和が 00 の平面 HH に分解される。 置換は成分の順番を入れ替えるだけなので,この2つの部分空間を保つ。

符号表現は含まれない

1次元不変部分空間がもう1つあるとすれば,互換がすべて −1-1 倍で作用する可能性が考えられる。 しかし,標準的な座標置換の中にはそのような非零ベクトルは存在しない。 第1・第2成分交換と第2・第3成分交換の条件を同時に課すと零ベクトルしか残らない。

平面 HH の既約性

HH 内の非零ベクトルは,何らかの2成分に差を持つ。 その差を置換との差で取り出すと (1,−1,0)T(1,-1,0)^{\mathsf T} 型のベクトルが得られ, さらに置換で (0,1,−1)T(0,1,-1)^{\mathsf T} 型も得られる。これらが HH を張るため, HH の中に中間的な不変部分空間はない。

置換表現の不変部分空間の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 院試 過去問の収録4年度

  • 2025年8月実施(全4問)

    重積分と極座標 / 線形写像の核と像 / 偏微分可能性と全微分可能性

  • 2024年8月実施(全4問)

    楕円領域の重積分 / 対称行列の固有値と極限 / 凸関数の基本性質

  • 2021年8月実施(全4問)

    微分可能性と正則性 / 行列の対角化と多項式表示 / Riemann和の極限

  • 2020年8月実施(このページ・全4問)

    中心差分と2階微分 / 共通固有ベクトルと可換行列 / 非負関数の広義積分