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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2024年8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・重積分と極座標)。2021年8月実施と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標。

最終更新:

収録4年度分の解答PDF:東北大学 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 2024年8月実施 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析楕円領域の重積分領域の見方 / 平面での注意あり
第2問—対称行列の固有値と極限構造の見抜き方 / 極限の意味あり
第3問微分積分・解析凸関数の基本性質中心となる道具 / 連続性の証明あり
第4問線形代数階数と半正定値行列階数の見方 / 半正定値と固有値あり

この年度の解説には検算1件が付いています。

2024年8月実施の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に5テーマが出ています。

前年度(2021年8月実施)との違い

大問数
2021年8月実施 4問 → 2024年8月実施 4問
2024年8月実施で新しく出たテーマ
線形空間・基底・正定値行列・二次形式
2021年8月実施のページを見る

第1問 — 楕円領域の重積分

領域の見方

変数変換は楕円座標ではなく、通常の極座標を横方向に2倍したものである。したがって x2+4y2=4r2x^2+4y^2=4r^2 となり、外側の楕円が単位円 r=1r=1 に変わる。内側の楕円は r=sin⁡θr=\sin\theta に対応する。

rθr\theta 平面での注意

r>0r>0 なので、条件 r≥sin⁡θr\ge\sin\theta は sin⁡θ≤0\sin\theta\le0 の範囲では自動的に満たされる。したがって下半分では 0<r<10<r<1 全体が入り、上半分では r=sin⁡θr=\sin\theta の外側だけが入る。内部を考えると境界 r=1r=1 と r=sin⁡θr=\sin\theta は除く。

積分の検算

被積分関数は変換後に 8r38r^3、Jacobianは 2r2r なので 16r416r^4 になる。領域の面積ではなく5乗積分が出るため、最後に ∫0πsin⁡5θ dθ=16/15\int_0^\pi\sin^5\theta\,d\theta=16/15 を使う。符号は正で、外側全体の寄与 (32π/5)(32\pi/5) から内側部分の寄与を引く形になる。

楕円領域の重積分の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 対称行列の固有値と極限

構造の見抜き方

すべての対角成分が 11、非対角成分が −1-1 なので、直接行列式を展開するより 2I−J2I-J と見るのが速い。JJ は「成分和を全成分に並べる」行列であり、固有空間がすぐに分かる。

極限の意味

2−nAn2^{-n}A^n は、最大固有値 22 に属する成分だけを残す操作に収束する。固有値 −1-1 の成分は (−1/2)n(-1/2)^n になるため消える。したがって答えは固有値 22 の固有空間への射影行列である。

検算

得られた極限行列 PP は P2=PP^2=P、Pt(1,1,1)=0P{}^{t}(1,1,1)=0 を満たし、成分和が 00 のベクトルにはそのまま作用する。これは固有値 22 の空間への射影になっていることを示している。

解答

行列 A=(1−1−1−11−1−1−11) A= \begin{pmatrix} 1&-1&-1\\ -1&1&-1\\ -1&-1&1 \end{pmatrix} は A=2I−J A=2I-J と書ける。ただし JJ はすべての成分が 11 の 3×33\times3 行列である。

JJ は J(111)=3(111) J\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix} = 3\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix} を満たし、また x1+x2+x3=0x_1+x_2+x_3=0 を満たすベクトルに対しては Jx=0Jx=0 である。したがって A=2I−JA=2I-J の固有値は 2−3=−1,2−0=2 2-3=-1,\qquad 2-0=2 である。固有空間は λ=−1:⟨(111)⟩,λ=2:{(x1x2x3) | x1+x2+x3=0}=⟨(−110),(−101)⟩. \begin{aligned} \lambda=-1:\quad &\left\langle \begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix} \right\rangle,\\ \lambda=2:\quad &\left\{ \begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix} \ \middle|\ x_1+x_2+x_3=0 \right\} \\ &= \left\langle \begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix} \right\rangle . \end{aligned} 最大固有値は λ=2\lambda=2 である。

極限を求めるため、R3\mathbb{R}^3 を R3=⟨t(1,1,1)⟩⊕{x∣x1+x2+x3=0} \mathbb{R}^3 = \left\langle{}^{t}(1,1,1)\right\rangle \oplus \{x\mid x_1+x_2+x_3=0\} に直交分解する。固有値 22 の固有空間への直交射影は P=I−13J=13(2−1−1−12−1−1−12) P=I-\frac13J = \frac13 \begin{pmatrix} 2&-1&-1\\ -1&2&-1\\ -1&-1&2 \end{pmatrix} である。一方、固有値 −1-1 の成分は (−12)n \left(\frac{-1}{2}\right)^n 倍されるので n→∞n\to\infty で 00 に収束する。よって lim⁡n→∞12nAn=P=13(2−1−1−12−1−1−12). \lim_{n\to\infty}\frac{1}{2^n}A^n=P = \frac13 \begin{pmatrix} 2&-1&-1\\ -1&2&-1\\ -1&-1&2 \end{pmatrix}.

最終答

λ=−1: ⟨t(1,1,1)⟩,λ=2: {x∈R3∣x1+x2+x3=0},lim⁡n→∞12nAn=13(2−1−1−12−1−1−12). \begin{gathered} \lambda=-1:\ \left\langle{}^{t}(1,1,1)\right\rangle,\qquad \lambda=2:\ \left\{x\in\mathbb{R}^3\mid x_1+x_2+x_3=0\right\},\\ \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac1{2^n}A^n = \frac13 \begin{pmatrix} 2&-1&-1\\ -1&2&-1\\ -1&-1&2 \end{pmatrix}. \end{gathered}

第3問 — 凸関数の基本性質

中心となる道具

凸関数の基本性質は、割線の傾きが右へ行くほど大きくなることである。本問の不等式はその最初の形であり、後半の連続性と片側微分可能性もすべてこの傾きの単調性から出る。

連続性の証明

連続性は凸性の定義から直接 ε\varepsilon-δ\delta で示すより、近くの差商が上下から有限な定数で挟まれることを示す方が短い。開区間であることは、任意の点 x0x_0 の左右に a,ba,b を取れる点で使っている。

片側微分の存在

右差商 q+(h)q_+(h) は hh が大きくなるほど大きくなる。したがって h↓0h\downarrow0 で下限に近づく。左差商も同様に単調性を持つ。単調かつ有界な関数は片側極限を持つため、右側微分係数と左側微分係数が存在する。

不等号の向き

凸関数では一般に左微分係数が右微分係数を超えない。角を持つ例 f(x)=∣x∣f(x)=|x| では x=0x=0 で左微分係数が −1-1、右微分係数が 11 になり、この不等号の向きが確認できる。

凸関数の基本性質の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 階数と半正定値行列

階数の見方

vtvv{}^{t}v は、任意の入力 xx をまず内積 tvx{}^{t}vx で1つの数にし、その数を vv 倍して返す行列である。したがって像は vv が張る直線に入る。v≠0v\ne0 なら実際にその直線全体が像になるので階数は1である。

半正定値と固有値

txAx≥0{}^{t}xAx\ge0 が全ての xx で成り立つ実対称行列は半正定値である。固有ベクトルを代入すると tuAu=λ∥u∥2{}^{t}uAu=\lambda\|u\|^2 となるため、二次形式の非負性から固有値の非負性がすぐに従う。

2本のベクトルの場合

yty+ztzy{}^{t}y+z{}^{t}z は YtYY{}^{t}Y と書ける。実数体では ker⁡(YtY)=ker⁡(tY) \ker(Y{}^{t}Y)=\ker({}^{t}Y) が成り立つため、階数は YY の階数と一致する。y,zy,z が一次独立であることが、ここで階数 22 を保証している。

零ベクトルの扱い

問題の意図は v≠0v\ne0 の場合であり、そのとき階数は1である。ただし記述上 v=0v=0 を許すなら、vtvv{}^{t}v は零行列になり階数は0になる。この例外を把握しておくと、階数問題で余計な失点を避けられる。

階数と半正定値行列の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 情報基礎科学専攻 数学群 院試 過去問の収録4年度

  • 2025年8月実施(全4問)

    重積分と極座標 / 線形写像の核と像 / 偏微分可能性と全微分可能性

  • 2024年8月実施(このページ・全4問)

    楕円領域の重積分 / 対称行列の固有値と極限 / 凸関数の基本性質

  • 2021年8月実施(全4問)

    微分可能性と正則性 / 行列の対角化と多項式表示 / Riemann和の極限

  • 2020年8月実施(全4問)

    中心差分と2階微分 / 共通固有ベクトルと可換行列 / 非負関数の広義積分