東北大学 院試 過去問 解答例
東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2024年8月実施 院試 解答例・解説
東北大学 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2024年8月実施の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 楕円領域の重積分
領域の見方
変数変換は楕円座標ではなく、通常の極座標を横方向に2倍したものである。したがって となり、外側の楕円が単位円 に変わる。内側の楕円は に対応する。
平面での注意
なので、条件 は の範囲では自動的に満たされる。したがって下半分では 全体が入り、上半分では の外側だけが入る。内部を考えると境界 と は除く。
積分の検算
被積分関数は変換後に 、Jacobianは なので になる。領域の面積ではなく5乗積分が出るため、最後に を使う。符号は正で、外側全体の寄与 から内側部分の寄与を引く形になる。
第2問 — 対称行列の固有値と極限
構造の見抜き方
すべての対角成分が 、非対角成分が なので、直接行列式を展開するより と見るのが速い。 は「成分和を全成分に並べる」行列であり、固有空間がすぐに分かる。
極限の意味
は、最大固有値 に属する成分だけを残す操作に収束する。固有値 の成分は になるため消える。したがって答えは固有値 の固有空間への射影行列である。
検算
得られた極限行列 は 、 を満たし、成分和が のベクトルにはそのまま作用する。これは固有値 の空間への射影になっていることを示している。
第3問 — 凸関数の基本性質
中心となる道具
凸関数の基本性質は、割線の傾きが右へ行くほど大きくなることである。本問の不等式はその最初の形であり、後半の連続性と片側微分可能性もすべてこの傾きの単調性から出る。
連続性の証明
連続性は凸性の定義から直接 - で示すより、近くの差商が上下から有限な定数で挟まれることを示す方が短い。開区間であることは、任意の点 の左右に を取れる点で使っている。
片側微分の存在
右差商 は が大きくなるほど大きくなる。したがって で下限に近づく。左差商も同様に単調性を持つ。単調かつ有界な関数は片側極限を持つため、右側微分係数と左側微分係数が存在する。
不等号の向き
凸関数では一般に左微分係数が右微分係数を超えない。角を持つ例 では で左微分係数が 、右微分係数が になり、この不等号の向きが確認できる。
第4問 — 階数と半正定値行列
階数の見方
は、任意の入力 をまず内積 で1つの数にし、その数を 倍して返す行列である。したがって像は が張る直線に入る。 なら実際にその直線全体が像になるので階数は1である。
半正定値と固有値
が全ての で成り立つ実対称行列は半正定値である。固有ベクトルを代入すると となるため、二次形式の非負性から固有値の非負性がすぐに従う。
2本のベクトルの場合
は と書ける。実数体では が成り立つため、階数は の階数と一致する。 が一次独立であることが、ここで階数 を保証している。
零ベクトルの扱い
問題の意図は の場合であり、そのとき階数は1である。ただし記述上 を許すなら、 は零行列になり階数は0になる。この例外を把握しておくと、階数問題で余計な失点を避けられる。