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東北大 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 数学群 2022年8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は線形代数1問、微分積分・解析1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標が出ています。2021年8月実施と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、重積分と極座標です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 指数関数の積分と順序交換

符号の確認

∂f/∂x\partial f/\partial x は負であるため,二重積分の値も負になる。一方,最後の1変数積分は e−ex>e−e2xe^{-e^x}>e^{-e^{2x}} により正である。順序交換後の式と最後に求める式は符号が逆なので,ここを落とすと答えの符号を誤る。

端点での収束

x=0x=0 付近では分子が1次の大きさで消えるため,最後の積分は特異に見えても有限である。無限遠では e−exe^{-e^x} が非常に速く0へ向かうので収束性に問題はない。

指数関数の積分と順序交換の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 複素行列の特異値と核

正則性と核の関係

有限次元では dim⁡ker⁡A≥1\dim\ker A\ge1 と AA が特異であることは同値である。したがって第3問は,行列式の因数分解を再利用できる。

特異でも連立方程式が解けるとは限らない

α=2\alpha=2 では核は大きいが,右辺が列空間に入らないため Ay=bAy=b は解を持たない。特異な場合は,核だけでなく拡大係数行列の整合性を必ず確認する必要がある。

解答

まず行列式を計算する。 det⁡A=2(4−2α)−α(4−α2)+2(4−2α)=α3−12α+16=(α−2)2(α+4). \begin{aligned} \det A &= 2(4-2\alpha)-\alpha(4-\alpha^2)+2(4-2\alpha)\\ &= \alpha^3-12\alpha+16\\ &= (\alpha-2)^2(\alpha+4). \end{aligned} したがって AA が正則である条件は α≠2,α≠−4 \alpha\ne2,\qquad \alpha\ne-4 である。

次に特異な場合に Ay=bAy=b を解く。まず α=2\alpha=2 では,AA の各成分はすべて2である。したがって Ay=2(y1+y2+y3)(111) Ay=2(y_1+y_2+y_3) \begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix} となるが,このベクトルは右辺 (1,2,3)T(1,2,3)^T にはなり得ない。よって解は存在しない。

α=−4\alpha=-4 のときは行基本変形により (2−42122−4−4−4223)∼(10−1−7601−1−560000). \left( \begin{array}{ccc|c} 2&-4&2&1\\ 2&2&-4&-4\\ -4&2&2&3 \end{array} \right) \sim \left( \begin{array}{ccc|c} 1&0&-1&-\frac76\\ 0&1&-1&-\frac56\\ 0&0&0&0 \end{array} \right). したがって t∈Ct\in\mathbb{C} を任意として y=(t−76t−56t)=(−76−560)+t(111) y= \begin{pmatrix} t-\frac76\\[1mm] t-\frac56\\[1mm] t \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac76\\[1mm] -\frac56\\[1mm] 0 \end{pmatrix} + t\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix} がすべての解である。

W=ker⁡AW=\ker A の次元が1以上である条件は,AA が特異である条件と同じである。よって α=2またはα=−4 \alpha=2\quad\text{または}\quad \alpha=-4 である。

最後に核の基底を求める。α=2\alpha=2 では条件は y1+y2+y3=0 y_1+y_2+y_3=0 であるから W=span⁡{(−110),(−101)}. W=\operatorname{span}\left\{ \begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix} \right\}. α=−4\alpha=-4 では W=span⁡{(111)}. W=\operatorname{span}\left\{ \begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix} \right\}.

最終答

AA は α≠2,−4\alpha\ne2,-4 で正則。特異時の Ay=bAy=b は α=2\alpha=2 で解なし,α=−4\alpha=-4 で (−7/6,−5/6,0)T+t(1,1,1)T(-7/6,-5/6,0)^T+t(1,1,1)^T。核は α=2\alpha=2 で2次元,α=−4\alpha=-4 で1次元である。

第3問 — 最大値原理と楕円領域

第2微分の符号

内部最大点では任意方向の2階微分が非正になる。ここでは座標軸方向だけ見れば十分で, fxx≤0, fyy≤0f_{xx}\le0,\ f_{yy}\le0 からラプラシアンが正になれないことが分かる。

境界への帰着

具体例では内部停留点が領域外にあるため,最大値は境界上に限られる。境界条件から x2x^2 を消去すると1変数の二次関数になり,端点と頂点を含めて確認できる。頂点が許容範囲に入っていることを書くのが重要である。

最大値原理と楕円領域の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ブロック行列の固有値と逆行列

分解の見方

R3\mathbb{R}^3 は 1\mathbf{1} の張る1次元空間と,成分和が0の2次元空間に分かれる。JJ は前者では3倍,後者では0として働く。この分解を使うと,6次元の問題が2次元部分と4次元部分に分かれる。

逆行列の形

対称なブロック構造を保つため,逆行列も同じ形に置くのが自然である。J2=3JJ^2=3J を使えば係数比較だけで確認できる。固有値から正則条件を先に出しておくと,分母が0にならない条件も同時に確認できる。

ブロック行列の固有値と逆行列の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年8月実施(全4問)

    重積分と極座標 / 線形写像の核と像 / 偏微分可能性と全微分可能性

  • 2024年8月実施(全4問)

    楕円領域の重積分 / 対称行列の固有値と極限 / 凸関数の基本性質

  • 2023年8月実施(全4問)

    対角線上の連続性と全微分 / 核と直交分解 / 重積分で定まる関数

  • 2022年8月実施(このページ・全4問)

    指数関数の積分と順序交換 / 複素行列の特異値と核 / 最大値原理と楕円領域

  • 2021年8月実施(全4問)

    微分可能性と正則性 / 行列の対角化と多項式表示 / Riemann和の極限

  • 2020年8月実施(全4問)

    中心差分と2階微分 / 共通固有ベクトルと可換行列 / 非負関数の広義積分

2022年8月実施の出題内容

全4問

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析指数関数の積分と順序交換符号の確認 / 端点での収束あり
第2問—複素行列の特異値と核正則性と核の関係 / 特異でも連立方程式が解けるとは限らないあり
第3問—最大値原理と楕円領域第2微分の符号 / 境界への帰着あり
第4問線形代数ブロック行列の固有値と逆行列分解の見方 / 逆行列の形あり

同じテーマを出した他大学・他年度

2テーマ

2022年8月実施は2問に2テーマが出ています。

前年度(2021年8月実施)との違い

大問数
2021年8月実施 4問 → 2022年8月実施 4問
2021年8月実施の解答例

東北大学の公式過去問

公開年度範囲
1998〜2025(上期筆答・下期筆答・推薦小論文を年度により掲載)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
募集要項で確認。一般入試は英語スコア提出または外国語試験の扱いが年度・群で異なる。
院試hubの最終確認
2026-09-26
東北大学の公式過去問PDF