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千葉大学 院試 過去問 解答例

千葉大 融合理工学府 数学情報科学専攻 数学・情報数理学コース 専門科目(A0・A問題・B問題) 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全18問)

全18問。微分積分・解析7問・線形代数2問・位相・幾何1問。テーマタグは12件(テイラー展開・固有値・固有ベクトル・線形空間・基底)。

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解説18問/全18問(9,613字)
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途中式と最終答(最終答つき18問)
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千葉大 専門科目(A0・A問題・B問題) 2021年度 院試 過去問の出題内容(全18問)

この18問の分野は微分積分・解析7問・線形代数2問・位相・幾何1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1A0 写像の全射性に関する同値条件あり
2線形代数A1 双対空間と双対写像の階数あり
3微分積分・解析A2 マクローリン展開と無限積の収束あり
4位相・幾何A3 連続写像の逆像と部分位相空間の位相的性質あり
5微分積分・解析A4 ポアソン分布の積率母関数と中心極限定理あり
6A5 LCS(最長共通部分列)の動的計画法あり
7B1 剰余群と有限アーベル群の埋め込みあり
8B2 冪等的条件を満たす可換環の構造あり
9微分積分・解析B3 微分形式の引き戻しと球面上の積分あり
10B4 鎖ホモトピーとホモロジー写像の一致あり
11微分積分・解析B5 コーシー・リーマンと留数定理による広義積分あり
12微分方程式B6 周期係数線形微分方程式系と Floquet の定理あり
13線形代数B7 Volterra 型作用素のノルムと固有値あり
14微分積分・解析B8 ガウス分布の裾評価と従属和の極限あり
15B9 正規分布の最尤推定とフィッシャー情報量あり
16微分積分・解析B10 一方向性関数の長さ正規化あり
17微分積分・解析B11 初等関数(Kalmar 初等関数)の構成あり
18B12 Scheme でマスクと部分列判定の実装あり

この年度の解説には試験で書くべきポイント18件・典型ミス18件が付いています。

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は10問に12テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
テイラー展開3・518大学・45
固有値・固有ベクトル1325大学・544
線形空間・基底221大学・152
重積分と極座標923大学・142
留数定理1118大学・126
群論・環論713大学・60
最尤推定158大学・28
動的計画法69大学・24
コーシーの積分定理118大学・16
中心極限定理55大学・14
特性関数176大学・12
偏微分可能性と連続性119大学・12

1 — A0 写像の全射性に関する同値条件

方針

集合論的写像の基本性質。f(f1(Y))Yf(f^{-1}(Y))\subseteq Y は常に成立で、逆向きの包含が全射性と同値であることを意識する。 (4)(4) は圏論的に「全射 = 右簡約可能」と読み替えると見通しが良い。

典型ミス

(3)\Rightarrow(1) を直接示そうとするより、対偶(全射でない\Rightarrow異なる二つの YY で逆像が一致)の構成例を作る方が論理が単純。 (4)\Rightarrow(1) で C=BC=B とせず別の集合を取ると話が遠回りになる。

試験で書くべきポイント

f(f1(Y))Yf(f^{-1}(Y))\subseteq YXf1(f(X))X\subseteq f^{-1}(f(X)) は常時成立であることを最初に断る。 循環論法の方向 (1)(2)(3)(4)(1)(1)\to(2)\to(3)\to(4)\to(1) を冒頭で宣言してから各方向を独立に証明すると採点者に伝わりやすい。

A0 写像の全射性に関する同値条件の途中式・最終答をPDFで見る

2 — A1 双対空間と双対写像の階数

方針

双対写像の基本構造:有限次元で rank(f)=rank(f)\mathrm{rank}(f^{*})=\mathrm{rank}(f)ff 全射 \Leftrightarrow ff^{*} 単射、ff 単射 \Leftrightarrow ff^{*} 全射。 本問では (3) で Img=Kerf\mathrm{Im}\,g=\mathrm{Ker}\,fff 全射から dimImg=mn\dim\mathrm{Im}\,g=m-n を引き出す。

典型ミス

rank(g)=rank(g)\mathrm{rank}(g^{*})=\mathrm{rank}(g) を「自明」と書いて済ませない。少なくとも (2) を全射 g~:UImg\tilde g:U\to\mathrm{Im}\,g に適用する形で証明をなぞる必要がある。 階数定理の適用先 ff を間違えて Kerf=Img\mathrm{Ker}\,f=\mathrm{Im}\,g を見落とすと答えがずれる。

試験で書くべきポイント

(2) では「σf=0\sigma\circ f=0 で任意の wWw\in W に対し σ(w)=0\sigma(w)=0」を、ff の全射性で書き下す。 (3) は階数定理 dimKerf+dimImf=dimV\dim\mathrm{Ker}\,f+\dim\mathrm{Im}\,f=\dim V を一行で書き、dimImf=n\dim\mathrm{Im}\,f=nff 全射)と仮定 Kerf=Img\mathrm{Ker}\,f=\mathrm{Im}\,g から dimImg=mn\dim\mathrm{Im}\,g=m-n を導出する。

A1 双対空間と双対写像の階数の途中式・最終答をPDFで見る

3 — A2 マクローリン展開と無限積の収束

方針

(1)(a) は arcsin\arcsin 関数の標準的微分公式の組み合わせ。 (1)(b) は (a) の常微分方程式から係数の漸化式を導く。係数比較は xk1x^{k-1} の係数で揃えるとシンプル。 (2) は不等式 1+tet1+t\le e^{t} を用いて単調有界収束に帰着する古典問題。

典型ミス

(1)(b) で ff の偶奇性 c2k=0c_{2k}=0 を見落とすと係数の処理が煩雑になる。 (2) で log(1+an)an\log(1+a_n)\le a_n と書いて対数和の収束を経由する別ルートも成立する。

試験で書くべきポイント

(1)(a) の漸化式を確実に作る。 (1)(b) の係数表示は (2j)!!/(2j+1)!!(2j)!!/(2j+1)!! と書けばよく、収束半径は arcsinx\arcsin x の特異点 x=±1x=\pm1 に由来することを述べる。 (2) は「単調 + 有界 \Rightarrow 収束」という実数論の基本定理を引用する。

A2 マクローリン展開と無限積の収束の途中式・最終答をPDFで見る

4 — A3 連続写像の逆像と部分位相空間の位相的性質

方針

連続写像の逆像で {f0}=f1([0,))\{f\ge0\}=f^{-1}([0,\infty)) は閉集合の逆像。{f>0}\{f>0\} は開集合の逆像。 連結性は「連結集合の閉包は連結」「連結集合と稠密に交わる集合は連結」を活用。

典型ミス

(1)(i) で「ff の零点がない」を見落とすと条件が抜ける。 (2) で曲線 f(R)f(\mathbb{R}) が単位円に巻き付く描像を、r(t)1r(t)\to1 と角度 tt の振動で説明することが重要。

試験で書くべきポイント

DD の連結性は「f(R)f(\mathbb{R}) は連続像なので連結、Df(R)D\subseteq\overline{f(\mathbb{R})}、連結集合の閉包の部分集合は連結」と一行で論ずる。 閉性は D=DD=\overline{D} を、極限点は (0,0)(0,0)S1S^{1} の点と f(R)f(\mathbb{R}) の各点しかないことを示せばよい。

A3 連続写像の逆像と部分位相空間の位相的性質の途中式・最終答をPDFで見る

5 — A4 ポアソン分布の積率母関数と中心極限定理

方針

ポアソンの積率母関数 exp(μ(et1))\exp(\mu(e^{t}-1)) は暗記事項。キュムラント母関数のテイラー展開からすべてのキュムラントが μ\mu と分かる。 独立和は積率母関数の積で再生性 Po(μ1)+Po(μ2)Po(μ1+μ2)\mathrm{Po}(\mu_1)+\mathrm{Po}(\mu_2)\sim\mathrm{Po}(\mu_1+\mu_2) を確認。 標準化和の極限は CLT で正規分布。

典型ミス

(3) で /n/\sqrt{n}/nμ/\sqrt{n\mu} のスケーリングを混同しないこと。問題は単に /n/\sqrt n なので分散は μ\mu のまま残る。 中心積率の計算で平均と分散の関係を経由するときは符号や係数のミスが多い。階乗積率を用いると整理しやすい。

試験で書くべきポイント

(2) では「再生性」を MY(n)(t)=exp(nμ(et1))M_{Y(n)}(t)=\exp(n\mu(e^{t}-1)) から積率母関数の一意性で結論付ける流れが定番。 (3) で「XiX_i の分散は μ\mu」を一言断ってから CLT を適用すれば分散 μ\mu の正規分布に収束することが透明になる。

A4 ポアソン分布の積率母関数と中心極限定理の途中式・最終答をPDFで見る

6 — A5 LCS(最長共通部分列)の動的計画法

方針

プログラムを「t[i,j]=s1[1..i],s2[1..j]t[i,j]=s_1[1..i],s_2[1..j] の LCS 長」と読み解く。 LCS DP の漸化式:一致なら左上 +1+1、不一致なら左 or 上の最大。

典型ミス

(1) で max\max の代わりに >>elseelse を使う実装で「等値時は t[i,j1]t[i,j-1]」を採るが、結果に影響しない(同じ値)ことを見落とす。 (2) で「N 文字列ペア」と書かれているのを「N 文字目で初めて一致する」など特殊化しないこと。

試験で書くべきポイント

(1) では tt 表全体を書き出し、特に t[i,j]t[i,j] の漸化式を一行で示す。 (2) では t[N,N]t[N,N] が LCS 長であること、その値が {0,1,,N}\{0,1,\dots,N\} で文字列の重なり具合を示すことを明確に述べる。

A5 LCS(最長共通部分列)の動的計画法の途中式・最終答をPDFで見る

7 — B1 剰余群と有限アーベル群の埋め込み

方針

Q/Z\mathbb{Q}/\mathbb{Z} は「すべての有限巡回群を内包するが、各 nn について巡回群 Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} の部分群を一つだけ持つ」というねじれアーベル群。 有限アーベル群を埋め込めるなら、その「ねじれ性」と「pp-rank 1\le1 性」が継承される。

典型ミス

(1) で「Z\mathbb{Z} は無限巡回、Q/Z\mathbb{Q}/\mathbb{Z} はねじれ」を抽象的に書くだけでなく、f(b)=0f(b)=0 の具体構成を提示する。 (2) で構造定理を直接使うのもよいが、pp-ねじれの一意性で済ますのが最も短い。

試験で書くべきポイント

(2) では「(Q/Z)[n]=1/n+ZZ/nZ(\mathbb{Q}/\mathbb{Z})[n]=\langle 1/n+\mathbb{Z}\rangle\cong\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}」を一行で述べることが鍵。 構造定理を使う場合は (Z/p)2(\mathbb{Z}/p)^{2} 部分群の存在に矛盾を導く。

B1 剰余群と有限アーベル群の埋め込みの途中式・最終答をPDFで見る

8 — B2 冪等的条件を満たす可換環の構造

方針

x3=xx^{3}=x を満たす可換環は「ブール環の F3\mathbb{F}_3 版」と思える。 鍵は x(x1)(x+1)=0x(x-1)(x+1)=0 の因数分解と、ジャコブソン根基・素極大同等性・中国剰余定理(CRT)の三段構え。

典型ミス

(1) で「RR はジャコブソン半単純」を証明なしで使わない。1±x1\pm x の単元性を J(R)J(R) の定義から引き出す。 (3) で F2\mathbb{F}_2 の可能性を排除する条件「1+11+1 が単元」を意識的に使う。

試験で書くべきポイント

(2) では「整域で t(t1)(t+1)=0t(t-1)(t+1)=0t{0,±1}t\in\{0,\pm1\}」と「位数 3\le3 の整域は体(F2\mathbb{F}_2 or F3\mathbb{F}_3)」を明示する。 (3) では CRT を適用するために「P1,,PnP_1,\dots,P_n が極大かつ互いに素、共通部分が冪零根基 =0=0」を断る。

B2 冪等的条件を満たす可換環の構造の途中式・最終答をPDFで見る

9 — B3 微分形式の引き戻しと球面上の積分

方針

変換 φ\varphi は反転 z1/zˉz\mapsto 1/\bar z(または共役反転)に相当し、S2S^{2} の二つの立体射影座標系の遷移である。 ヤコビアン 1/r41/r^{4}α\alpha の係数 1/(x22+y22+1)21/(x_2^{2}+y_2^{2}+1)^{2} が打ち消し合って U1U_1 上で滑らかに延長できる。

典型ミス

ヤコビアン計算で符号や成分配置を間違えると後の積分が正確に出ない。 φ(α)\varphi^{*}(\alpha)V1V_1 でだけ書いて (0,0)(0,0) での連続性を確認しないと、(3) の一意拡張が示せていない。

試験で書くべきポイント

(1)(2) は計算問題なのでヤコビ行列を明示し 1/r41/r^{4} を導く。 (5) は極座標 0rdr(1+r2)2=12\int_0^{\infty}\frac{r\,dr}{(1+r^{2})^{2}}=\frac{1}{2} を使い、最終 π\piS2S^{2} の通常面積 4π4\pi と異なるのは形式 α\alpha が「フビニ–スタディ風」係数で正規化されているため。

B3 微分形式の引き戻しと球面上の積分の途中式・最終答をPDFで見る

10 — B4 鎖ホモトピーとホモロジー写像の一致

方針

鎖ホモトピーは「ffgg の幾何的差分」を DD で書き上げる構成的手続き。 具体例 (1) では D0D_0 を「対応辺」として、D1D_1 は「四角形の対角に張られる二つの三角形の差」と読み解くと出てくる。

典型ミス

(1) で D0D_0 の符号や向き付けを誤ると 1D0=g0f0\partial'_1 D_0=g_0-f_0 が破れる。 (2) でサイクル条件 z=0\partial z=0 を使う点を見落とすと、Dq1qzD_{q-1}\partial_q z 項が残ってしまう。

試験で書くべきポイント

(1) では各 DqD_q の値を全て書き出し、()(\sharp) を直接代入で確認する。 (2) は zz のサイクル性 z=0\partial z=0 を使うことが核心、それを明示すること。

B4 鎖ホモトピーとホモロジー写像の一致の途中式・最終答をPDFで見る

11 — B5 コーシー・リーマンと留数定理による広義積分

方針

(1) は「R\mathbb{R} 線形 + df(i)=idf(1)df(i)=i\,df(1)」を確認するだけ。展開すれば CR 方程式が出る。 (2)(a) は標準的な留数計算。z=iz=inn 位極における留数を「Leibniz の高階微分」で求める。 (2)(b) は (a) を RR\to\infty で実積分に対応付け、円弧上の積分が消える評価を加える。

典型ミス

高階微分の符号 (1)n1(-1)^{n-1}i2n1=(1)n1ii^{2n-1}=(-1)^{n-1}i の二段の符号が打ち消すので、最終結果は実数になる。 円弧上の評価で 1+z2R21|1+z^{2}|\ge|R^{2}-1| を使う点を忘れない。

試験で書くべきポイント

(1) では「全微分性」と「R\mathbb{R} 線形性」を出発点に、C\mathbb{C} 線形性 == CR == 正則性を一直線に繋ぐ。 (2) では (1+z2)n(1+z^{2})^{n} の極の位数が nn と明示し、留数を Leibniz 公式で計算する手順を書き下す。

B5 コーシー・リーマンと留数定理による広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

12 — B6 周期係数線形微分方程式系と Floquet の定理

方針

(1) はリャプノフ–シュミットの「随伴方程式の解は X1X^{-1} 経由で表せる」という古典手法。微分計算でゼロを示す方が見通しが良い。 (2) はフロケ理論。X(t+T)=X(t)MX(t+T)=X(t)M のモノドロミー MM を介して周期解の存在を導く。

典型ミス

(1) で ddtX1=X1X˙X1\frac{d}{dt}X^{-1}=-X^{-1}\dot X X^{-1} を忘れない。 (2) で「周期解が必ず存在」とは「自明な ZIZ\equiv I 以外」を明示する場合と「ともかく II でよい」場合がある。試験では P=MP=M を提示すれば非自明性も確保。

試験で書くべきポイント

(2) では「X(t+T)X(t+T) が同じ系の基本系である」「基本系どうしは定数行列倍で結ばれる」の二段で X(t+T)=X(t)MX(t+T)=X(t)M を出す。 モノドロミー MM の存在 \Rightarrow 周期解の存在の論理を明確に書く。

B6 周期係数線形微分方程式系と Floquet の定理の途中式・最終答をPDFで見る

13 — B7 Volterra 型作用素のノルムと固有値

方針

ボラテラ型 x1\int_{x}^{1} の積分作用素は L1L^{1} で有界、ノルムは Fubini で評価。 固有値計算は微分方程式に帰着し、境界条件 [Tf](1)=0[Tf](1)=0 で固有関数を排除する。

典型ミス

(1) で Fubini を使うとき、領域変数の交換を丁寧に書かないと評価が止まる。 (2) で f(x)=Cx1/λf(x)=Cx^{-1/\lambda}L1L^{1} に入る λ\lambda 範囲だけで判断して、境界条件 f(1)=0f(1)=0 を見落とすと「λ<0\lambda<0λ>1\lambda>1 で固有値」と誤答しやすい。

試験で書くべきポイント

(1) は Tf1f1\|Tf\|_{1}\le\|f\|_{1} と等号達成例(f1f\equiv1)の二段で T=1\|T\|=1 を確定。 (2) では「F(1)=0F(1)=0 という境界条件」が固有関数の存在を否定する核心であることを明示する。

B7 Volterra 型作用素のノルムと固有値の途中式・最終答をPDFで見る

14 — B8 ガウス分布の裾評価と従属和の極限

方針

ガウス裾の Mills ratio ex2/2/x\sim e^{-x^{2}/2}/x を上下から得る。 平均最大値の閾値 2logn\sqrt{2\log n} は「ガウス過程の上限」の典型値。

典型ミス

(1) の下界は部分積分が必要。「上界の 1/x1/x を逆向きに」は不正確。 (4) で「ij<lognP(XiXj)2nlognP(X)\sum_{|i-j|<\log n}P(X_i\cap X_j)\le2n\log n P(X)」のように一様上界を雑に取らないこと。

試験で書くべきポイント

(4) では「第二モーメント法」を明示:E[N]E[N]\to\inftyVar(N)/E[N]20\mathrm{Var}(N)/E[N]^{2}\to0P(N1)1P(N\ge1)\to1。 近距離項と遠距離項の振る舞いを別個に評価する分け方が肝。

B8 ガウス分布の裾評価と従属和の極限の途中式・最終答をPDFで見る

15 — B9 正規分布の最尤推定とフィッシャー情報量

方針

分散が既知の正規分布の最尤推定。標本平均がすべての性質(不偏・一致・有効)を備える典型例。 フィッシャー情報量はスコア関数の二乗の期待値で、独立サンプリングなら線形に加算。

典型ミス

(4) でフィッシャー情報量を計算するとき、2logf/μ2\partial^{2}\log f/\partial\mu^{2} の負期待値で求めても I1=1I_1=1 を得る(同値定義)。 (5) でクラメール・ラオの「達成」と「有効推定量」を区別なく書いてよい(不偏推定量の中で達成すれば有効)。

試験で書くべきポイント

(2) で「最大化」の二階条件(<0\ell''<0)を一行添えると完全。 (5) では「μ^\hat\mu は不偏」「Var(μ^)=1/n=1/In(μ)\mathrm{Var}(\hat\mu)=1/n=1/I_n(\mu)」「クラメール・ラオの不等式の等号成立」の三段構成で結論する。

B9 正規分布の最尤推定とフィッシャー情報量の途中式・最終答をPDFで見る

16 — B10 一方向性関数の長さ正規化

方針

Length-Regular 性は単純に長さを計算すればよい。 一方向性は「reduction」:gg の反転 \Rightarrow ff の反転、を構成する。

典型ミス

gg の構造で 1\Vert1\Vert を入れる理由は「f(x)f(x) の長さが 00 パディングで判別可能」とするため。これを使って f(x)=f(x)|f(x')|=|f(x)| を引き出す論理が肝。 f(x)f(x) の長さが可変であることを忘れて padding 長を一定とミスしないこと。

試験で書くべきポイント

(2) では reduction の構成を「入力・出力・実行時間・成功確率」で明示する。 特に「yy' における 11 の位置で f(x)=f(x)|f(x)|=|f(x')| が決まる」点をきちんと述べる。

B10 一方向性関数の長さ正規化の途中式・最終答をPDFで見る

17 — B11 初等関数(Kalmar 初等関数)の構成

方針

初等関数(Kalmar 初等関数)は基本関数 ++ 合成 ++ 有界和 Σ\Sigma・有界積 Π\Pi の閉包。 原始再帰なしでも、Σ,Π\Sigma,\Pi と sub だけで加算・乗算が構成できる点が要点。 最小化 μ<\mu_{<} はループ内で「まだ真になっていないか」を表す指示関数を使い Σ\Sigma で位置を計算する。

典型ミス

(1) で「Σf(x,a)=y<xf(y,a)\Sigma f(x,a)=\sum_{y<x}f(y,a)f=const1f=\mathrm{const}_1 として加算」と誤って書くと、それは xx を返すだけで加算にならない。 (2) で qq の定義で z<yz<yzyz\le y の境界を間違えやすい。Π\Piz<succ(y)z<\mathrm{succ}(y) で取ると zyz\le y の積になる。

試験で書くべきポイント

(1) では「a+b=(a+1)(b+1)(ab+1)a+b=(a+1)(b+1)-(ab+1)」を恒等式として明記し、引き算が自然数で正しく機能することを確認する。 (2) では補助関数 qq が「zyz\le ypp がずっと偽」を表していることを言葉で説明し、Σ\Sigma でそれを足し上げると最小化値になる構造を明確に書く。

B11 初等関数(Kalmar 初等関数)の構成の途中式・最終答をPDFで見る

18 — B12 Scheme でマスクと部分列判定の実装

方針

mask は古典的な「フィルタ」の変形で、リストの並列再帰。 subseq は「s1s_1s2s_2 の部分列か」を判定する DP/貪欲問題で、Scheme では再帰で素直に書ける。

典型ミス

(1) で「\#f」を空リストや |0| と混同しない。Scheme では真偽値 |#t/#f| が独自の型。 (2) で「採用 = |#t|」「不採用 = |#f|」の対応を逆にしない。

試験で書くべきポイント

(2) のシンプル版は「貪欲で正しい」という正当性を一文で述べると採点者にとって明快。 |equal?| の使い方(要素レベルでの一般等値)と |cons| によるリスト構築を、コード冒頭で示すと読みやすい。

B12 Scheme でマスクと部分列判定の実装の途中式・最終答をPDFで見る

千葉大 専門科目(A0・A問題・B問題) 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全18問)

    A0 写像の合成と安定像 / A1 行列のジョルダン標準形と可換化 / A2 微分可能性と導関数の中間値性

  • 2025年度(全17問)

    A0 写像・像・逆像 / A1 多項式空間の線形写像 / A2 極限と逆写像定理

  • 2024年度(全18問)

    A0 写像の個数と全射の存在 / A1 行列式・直交行列の固有値 / A2 ラグランジュ未定乗数法

  • 2023年度(全18問)

    A0 整数の部分集合と有限補集合条件 / A1 ケイリー・ハミルトンと可換行列 / A2 一様連続性と関数列

  • 2022年度(全18問)

    A0 写像の像・逆像と濃度の比較 / A1 双線形形式の Gram 行列と正定値性 / A2 級数の収束 (隣接差・絶対収束・対数交代級数)

  • 2021年度(このページ・全18問)

    A0 写像の全射性に関する同値条件 / A1 双対空間と双対写像の階数 / A2 マクローリン展開と無限積の収束