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千葉大学 院試 過去問 解答例

千葉大 融合理工学府 数学情報科学専攻 数学・情報数理学コース 専門科目(A0・A問題・B問題) 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全17問)

全17問。微分積分・解析3問・位相・幾何2問・確率・統計1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理。

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解説17問/全17問(5,256字)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき17問)
問題本文
非収録

千葉大 専門科目(A0・A問題・B問題) 2025年度 院試 過去問の出題内容(全17問)

この17問の分野は微分積分・解析3問・位相・幾何2問・確率・統計1問・代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1A0 写像・像・逆像あり
2A1 多項式空間の線形写像あり
3微分積分・解析A2 極限と逆写像定理あり
4位相・幾何A3 距離の変換とコンパクト性あり
5A4 正規分布の線形変換あり
6A5 二次元累積和あり
7B1 自己同型群あり
8代数B2 有限体上の多項式環と不変部分環あり
9微分積分・解析B3 2次微分形式とトーラスあり
10B4 単体複体のホモロジーあり
11微分積分・解析B5 留数定理とフーリエ型積分あり
12微分方程式B6 常微分方程式あり
13位相・幾何B7 l1空間におけるコンパクト集合あり
14確率・統計B8 実数値確率変数の可測性あり
15B9 ハミング符号と重み3グラフあり
16B10 ユークリッドの互除法あり
17B11 OCamlリスト反転とキューあり

この年度の解説には典型ミス12件・検算11件・試験で書くべきポイント11件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に5テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 18問 → 2025年度 17
2025年度で新しく出たテーマ
群論・環論符号理論
2024年度のページを見る

1 — A0 写像・像・逆像

方針

像の等式では「像に入る元の原像を取る」議論になるため,単射性が必要になる。一方,逆像の等式は写像の単射性・全射性に関係なく,論理式をそのまま引き戻すだけでよい。

典型ミス

f(A2)cf(A_2)^cYY における補集合であり,f(A2c)f(A_2^c) とは一般には異なる。単射性を使うのは,f(x)f(A2)f(x)\notin f(A_2) から xA2x\notin A_2 を保証する場面である。

試験で書くべきポイント

N\mathbb{N} 上の例は,式を書くだけでなく,全射性・単射性のどちらが成り立ち,どちらが破れているかを一文で確認すると減点されにくい。

A0 写像・像・逆像の途中式・最終答をPDFで見る

2 — A1 多項式空間の線形写像

方針

微分作用素は次数2の斉次部分と次数1の部分を混ぜない。したがって,x2,xy,y2x^2,xy,y^2 への作用から BBx,yx,y への作用から CC を別々に求めればよい。

検算

BB の特性多項式は λ(λ1)2\lambda(\lambda-1)^2 になる。計算途中で detB0\det B\neq0 になった場合は,二階微分係数の 1/21/22x2/x2=2\partial^2 x^2/\partial x^2=2 の打ち消しを確認するとよい。

試験で書くべきポイント

対角化可能性は「固有値が重複している」だけでは判定できない。代数的重複度2の固有値に対して固有空間の次元が1である,という形で理由を書く。

A1 多項式空間の線形写像の途中式・最終答をPDFで見る

3 — A2 極限と逆写像定理

方針

前半はリーマン和とチェザロ平均を使い分ける。後半は Df(0)Df(0) の正則性を確認し,逆写像の微分が逆行列で与えられることを使う。

典型ミス

第3の極限は nn ではなく kk で変化する数列の平均である。各項の極限を先に求め,収束列の算術平均の定理を使うのが安全である。

検算

detDf(0)=1\det Df(0)=-1 なので,逆行列の成分に分母は現れない。計算結果が大きな分数になった場合は,連立一次方程式を列ごとに解き直すとよい。

A2 極限と逆写像定理の途中式・最終答をPDFで見る

4 — A3 距離の変換とコンパクト性

方針

tt/(1+t)t\mapsto t/(1+t) は距離を有界化する標準操作である。連続性では d1d_1d2d_2 の明示的な変換式 d1=d21d2 d_1=\frac{d_2}{1-d_2} を意識すると,逆向きの恒等写像も連続であることが見える。

典型ミス

d2d1d_2\le d_1 だけから分かるのは f:(X,d1)(X,d2)f:(X,d_1)\to(X,d_2) の連続性である。逆向きは別途 δ=ε/(1+ε)\delta=\varepsilon/(1+\varepsilon) を選ぶ必要がある。

試験で書くべきポイント

閉部分空間のコンパクト性は,開被覆に YFY\setminus F を加えて YY の開被覆に直す,という一手を書くと簡潔に証明できる。

A3 距離の変換とコンパクト性の途中式・最終答をPDFで見る

5 — A4 正規分布の線形変換

方針

正規分布の線形結合は再び正規分布になる。平均と分散を先に出せば,密度関数は標準形にそのまま代入できる。

検算

Z<WZ<W では XX が消えて Y<1Y<-1 だけが残る。ここで XXYY の同時分布を積分し始めると計算が重くなる。

典型ミス

共分散では定数 2,12,-1 は消える。また Cov(Y,2Y)=2\operatorname{Cov}(Y,-2Y)=-2 であり,符号を落としやすい。

A4 正規分布の線形変換の途中式・最終答をPDFで見る

6 — A5 二次元累積和

方針

この関数は二次元累積和を作っている。各点 (k,)(k,\ell) には,左上の長方形領域の総和が入る。

検算

最後の式は,右下までの大きな長方形から,上側と左側を引き,二重に引いた左上を戻す形である。添字が k+1,+1k+1,\ell+1 から始まるため,境界に b[k][]b[k][\ell] が出る。

試験で書くべきポイント

プログラムの各行を逐語的に追うより,ループ不変量として「jj 列目を処理した時点で左上長方形の和になっている」と書くと証明が短い。

A5 二次元累積和の途中式・最終答をPDFで見る

7 — B1 自己同型群

方針

巡回群 Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} の自己同型は,生成元 1ˉ\bar1 をどの生成元へ送るかで決まる。そのため自己同型群は乗法群 (Z/nZ)×(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times に一致する。

典型ミス

Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} 自体の加法群と,自己同型群に対応する単元群を混同しない。自己同型は xˉax\bar{x}\mapsto \overline{ax} で,aann と互いに素でなければならない。

試験で書くべきポイント

非巡回例では,単に「巡回でない」と書くのではなく,すべての非単位元の位数が2で,位数4の元が存在しないことを示す。

B1 自己同型群の途中式・最終答をPDFで見る

8 — B2 有限体上の多項式環と不変部分環

方針

標数3では (t+1)3=t3+1(t+1)^3=t^3+1 となるため,t3tt^3-t が平行移動 tt+1t\mapsto t+1 の基本不変量になる。固定部分環を先に見抜くと,極大イデアルの問題も u=t3tu=t^3-t で整理できる。

検算

t3tt^3-t ではなく t3+tt^3+t としてしまうと σ\sigma で固定されない。実際に tt+1t\mapsto t+1 を代入して確認することが重要である。

試験で書くべきポイント

(t3t1)(t^3-t-1) が極大イデアルを与えるには,3次多項式が F3\mathbb{F}_3 に根を持たないことを書けば十分である。3次多項式は根を持たなければ既約である。

B2 有限体上の多項式環と不変部分環の途中式・最終答をPDFで見る

9 — B3 2次微分形式とトーラス

方針

ω\omega は位置ベクトルを体積形式へ内積した2形式であり,球面上では半径方向の面積形式になる。最後は η\eta が原点で特異性をもつため,小球をくり抜いて Stokes の定理を使う。

典型ミス

Σ\Sigma の内部に原点が含まれるので,単純に Ση=dη\int_\Sigma\eta=\int d\eta としてはいけない。小球境界から 4π-4\pi の寄与が出る。

検算

もし特異項 r3ω-r^{-3}\omega がなければ,答えは 33 倍のトーラス体積 12π212\pi^2 になる。実際の答えはそこから 4π4\pi だけ引かれる。

B3 2次微分形式とトーラスの途中式・最終答をPDFで見る

10 — B4 単体複体のホモロジー

方針

各複体を図形として見ると早い。Σ1\Sigma_1 は三角形の枠と枝,Σ2\Sigma_2 は一方の三角形だけを面で埋めたもの,Σ3\Sigma_3 は2つの三角形を両方とも面で埋めたものである。

検算

連結なグラフだけなら H1H_1 の階数は EV+1E-V+1 で数えられる。2単体が入ると,その境界サイクルが1つずつ殺される。

試験で書くべきポイント

kerg/imf\ker g_*/\operatorname{im} f_* は,Σ2\Sigma_2 で残っているサイクルのうち Σ3\Sigma_3 で境界になるものを,Σ1\Sigma_1 から来たサイクルで割ったものとして説明すると分かりやすい。

B4 単体複体のホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

11 — B5 留数定理とフーリエ型積分

方針

a>0a>0 なので上半平面で eiaze^{iaz} が指数減衰する。したがって上半平面の長方形輪郭を使い,内部の極 z=iz=i の留数を拾う。

典型ミス

下半平面を閉じると eiaze^{iaz} が減衰しない。a>0a>0 の符号を見て,どちらに閉じるかを決める。

検算

留数は eiai=eae^{ia i}=e^{-a} であり,答えは aa\to\infty で指数的に小さくなる。これは振動積分の減衰として自然である。

B5 留数定理とフーリエ型積分の途中式・最終答をPDFで見る

12 — B6 常微分方程式

方針

前半2問は変数分離でよい。最後は logy\log y を取って,0に近づけないことを不等式で示すのが要点である。

典型ミス

(1) では x>0x>0 の枝から出発しているため,logx\log|x| と書いて負の側へ延長することはできない。最大定義域は初期点を含む連結区間で考える。

試験で書くべきポイント

一意性の主張では,通常の Lipschitz 条件を原点でそのまま使うのは危険である。正負に分け,正の解が0へ到達できないことを示す形が安定している。

B6 常微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

13 — B7 l1空間におけるコンパクト集合

方針

本質は「支配収束」と「対角線論法」である。各座標はコンパクトな閉円板に入るので,座標ごとの収束部分列は取れる。最後に 1\ell^1-ノルム収束へ昇格させるために a1a\in\ell^1 を使う。

典型ミス

座標ごとの有界性だけでは 1\ell^1 のコンパクト性は出ない。尾部を一様に小さくできること,つまり an<\sum |a_n|<\infty が必要である。

検算

a1a\notin\ell^1 のとき,有限切断 x(m)x^{(m)} はすべて 1\ell^1 に属する点である。これを使うと非有界性が直接見える。

B7 l1空間におけるコンパクト集合の途中式・最終答をPDFで見る

14 — B8 実数値確率変数の可測性

方針

実数値可測性は,開半直線 (,a)(-\infty,a) の逆像を調べれば十分である。和の可測性では,実数の間に有理数を挟むことで可算和に落とす。

典型ミス

{X+Y<a}\{X+Y<a\} を非可算和で表すと,σ\sigma-加法族の閉性だけでは処理できない。有理数を使って可算和にすることが必要である。

試験で書くべきポイント

右辺の等式では,X(ω)+Y(ω)<aX(\omega)+Y(\omega)<a なら X(ω)<q<aY(ω)X(\omega)<q<a-Y(\omega) となる有理数 qq が存在する,という有理数の稠密性を一言添えるとよい。

B8 実数値確率変数の可測性の途中式・最終答をPDFで見る

15 — B9 ハミング符号と重み3グラフ

方針

検査行列の列が F23\mathbb{F}_2^3 の非零ベクトル全体であることに気づくと,これは長さ7のハミング符号の標準的な議論になる。

検算

重み3の個数は7であり,これは7本の直線に対応する。2列を選ぶと3列目が和で決まるが,同じ3点集合を3回数えるので (72)/3\binom72/3 となる。

試験で書くべきポイント

連結性は「重み3符号語が生成する」ことを示せば十分である。具体的な4つの独立な重み3符号語を書くと,抽象論に頼らずに完結する。

B9 ハミング符号と重み3グラフの途中式・最終答をPDFで見る

16 — B10 ユークリッドの互除法

方針

互除法の計算量評価では,商がすべて1に近いときが最悪であり,そのとき余り列は Fibonacci 数列になる。これを下界として使う。

典型ミス

最後の商だけは qN2q_N\ge2 である。最後の余りが0になるため,rN1=qNrNr_{N-1}=q_Nr_N であり,rN1>rNr_{N-1}>r_N から qN=1q_N=1 はありえない。

試験で書くべきポイント

O(logb)O(\log b) は「余りが毎回半分以下になる」とは限らないため,単純な半減論法では不十分である。Fibonacci 数列との比較を書くのが標準的である。

B10 ユークリッドの互除法の途中式・最終答をPDFで見る

17 — B11 OCamlリスト反転とキュー

方針

`rev0' が遅い理由は,各段階で末尾挿入 `ins' を行うためである。反転は先頭への追加を使うと線形時間になる。同じ発想をキューにも使い,後ろ側への追加を `s' への先頭追加として蓄積する。

典型ミス

各 `pop' のたびに `s' を反転すると,やはり二乗時間になりうる。`r' が空になったときだけまとめて反転することが重要である。

検算

償却的に見ると,各要素は `s' に入る,`r' へ移る,`r' から出る,という定数回のリスト操作にしか関与しない。したがって操作列全体では線形になる。

B11 OCamlリスト反転とキューの途中式・最終答をPDFで見る

千葉大 専門科目(A0・A問題・B問題) 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全18問)

    A0 写像の合成と安定像 / A1 行列のジョルダン標準形と可換化 / A2 微分可能性と導関数の中間値性

  • 2025年度(このページ・全17問)

    A0 写像・像・逆像 / A1 多項式空間の線形写像 / A2 極限と逆写像定理

  • 2024年度(全18問)

    A0 写像の個数と全射の存在 / A1 行列式・直交行列の固有値 / A2 ラグランジュ未定乗数法

  • 2023年度(全18問)

    A0 整数の部分集合と有限補集合条件 / A1 ケイリー・ハミルトンと可換行列 / A2 一様連続性と関数列

  • 2022年度(全18問)

    A0 写像の像・逆像と濃度の比較 / A1 双線形形式の Gram 行列と正定値性 / A2 級数の収束 (隣接差・絶対収束・対数交代級数)

  • 2021年度(全18問)

    A0 写像の全射性に関する同値条件 / A1 双対空間と双対写像の階数 / A2 マクローリン展開と無限積の収束