千葉大学 院試 過去問 解答例
千葉大 融合理工学府 数学情報科学専攻 数学・情報数理学コース 専門科目(A0・A問題・B問題) 2022年度 院試 解答例・解説
千葉大学 融合理工学府 数学情報科学専攻 数学・情報数理学コース 専門科目(A0・A問題・B問題) 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A0 写像の像・逆像と濃度の比較
方針
像と逆像の性質を確認する典型問題。 と (一般に等号は成立しない)の方向を念頭に置く。 (II) は Cantor の定理。論法は対角線論法であることを必ず明記する。
典型ミス
(a) で と のどちらが偽かを取り違える例が多い。一般的に成り立つ包含関係 は逆向きであることに注意。 (d) で「単射の逆写像は像でしか定義できない」点を見落とすと議論が破綻する。
試験で書くべきポイント
(II)(2) は「もし全単射が存在したら」と背理法を立て、 を定義し、 なる について の矛盾を導出する流れを丁寧に書く。
第2問 — A1 双線形形式の Gram 行列と正定値性
方針
Gram 行列 を扱う典型問題。座標表示 で と表せることを最初に確認すれば見通しがよい。 正定値の判定はシルヴェスタの主小行列式判定法、対角化は Gram--Schmidt が定石。
典型ミス
(2) で「実対称ゆえ固有値は実」を言わずに正定値性だけで議論すると、固有ベクトルが複素のとき詰まる。 (4) で を求めるだけで の値を提示し忘れがち。対角成分まで書くこと。
試験で書くべきポイント
(1) は「 の核 の右核」を双線形性 で結びつける。 (3) は が整数であることを忘れず、 より が最小と明記する。
第3問 — A2 級数の収束 (隣接差・絶対収束・対数交代級数)
方針
(1) は「等差級数の差」が 以上なので はおよそ等差列、 は と比較可能。 (2) は ノルムと の Cauchy--Schwarz が定石。 (3) は で交代級数の Leibniz 判定。
典型ミス
(1) で「 が正である」を仮定して比較してしまうと、初期に のケースを見落とす。 有限項を除いて議論する点に触れる。 (3) では の単調減少性を「明らか」と片付けがち。 を使った漸近評価まで書くと安全。
試験で書くべきポイント
(2) は絶対収束を示すので が有限であることを論じる。 と の積(Cauchy--Schwarz)でひとことで処理。 (3) は調和数 を「」と漸近展開しておくと、(i)(ii) の評価が見通せる。
第4問 — A3 位相空間の生成と区間のコンパクト性
方針
(1) は「準開基 から生成される最小の位相」を反例の母体にする。 有限交わりと任意和で何が作れるかを書き出すのが定石。 (2) は「下方無限を含む集合のみが開」という変則位相を扱う。コンパクト性は端点 を覆えるかで分かれる。
典型ミス
(1)(iv) で「単射 連続」と勘違いする例が多い。連続性は逆像が開かどうかであって写像の単射性とは無関係。 (2)(ii) で「 は普通の位相で非コンパクト」と短絡する答案。位相が変わればコンパクト性も変わる。
試験で書くべきポイント
(1) は「 として最小のものを取る」と一文添えて、反例位相の構成を明示する。 (2)(i) は を構成的に列挙し、(ii) は端点 を含めるには なる が必要、その単一被覆で済むことを明記する。
第5問 — A4 順序統計量の分布と共分散
方針
順序統計量の基本: 。同時密度は で () となる。 共分散は の二重積分で計算。
典型ミス
(2) で と を取り違える、あるいは符号忘れ。 は が小さいほど大きい()、 は が大きいほど大きい()。 (4) で を独立と勘違いして と書く例。 なので独立ではない。
試験で書くべきポイント
(3) は の形で の範囲を明示する。 (4) は同時密度 を導出してから の積分を計算する流れで論理を明確化する。
第6問 — A5 Pascal による全順列生成プログラム
方針
を「 を全部並び替えて を呼び出す再帰関数」と読み解くのが本筋。 ループ内の「交換 再帰 元に戻す」が再帰的並び替えアルゴリズム(Heap 法)の典型。
典型ミス
(1) で出力順を勘違いする。for k:=i downto 1 なので、 は大きい方から小さい方へ動くこと、また のときは交換しても変化しない( と の交換)ことに注意。
(2) で「すべての並び替えが出る」だけで終わらせず、重複なくと が元に戻ることを帰納法で示す。
試験で書くべきポイント
帰納法仮定 を「 は のすべての並び替えを生成し、終了時 を元に戻す」と二条件で書く。 基本ステップ 、帰納ステップで「ループ内の各 で に位置 の元が来る 残りを で全並び替え 元に戻す」を明確に書く。
第7問 — B1 置換群と対角群、Sylow 部分群
方針
は の置換行列実現、 は の対角埋め込み。 は半直積 。 正規性は「置換による共役で対角成分が並び替わるだけ」で示せる。 Sylow 3 部分群は と「 巡回 」を組み合わせる。
典型ミス
(2) で が原始 乗根である(位数 )ことを使い忘れて を間違える。 (5) で の Sylow 3 部分群の位数を と誤る( ゆえ )。
試験で書くべきポイント
(3) は具体的に を書き、 に留まることを明示。 (5) は と (位数 ) を見て、追加の を「3 巡回置換」から取る、という発想を述べる。
第8問 — B2 唯一の素イデアルを持つ環の冪零イデアル
方針
冪零イデアル は任意の可換環で素イデアルの共通部分()に等しい。 本問は素イデアルが一つのため と直結する。 (2) は局所環の判定(極大が一つ 局所環)と単元判定の組合せ。
典型ミス
(1) で の二項展開を使わず適当に処理する。 (3) で の証明を「素ゆえ 」と取り違える(これは逆方向)。 正しくは のときに を導く必要があり、 の局所化と素イデアルの存在性で示す。
試験で書くべきポイント
(2) は「素 極大」の理由( は唯一だから)と「局所環の単元判定」を段階的に書く。 (3) は の事実を引用し、 の素イデアルが のみであることに帰着する。
第9問 — B3 Monge グラフの Gauss 曲率と Gauss 写像
方針
Monge グラフの曲率公式 は記憶しておく。 原点では なので と簡潔。 Gauss 写像 について、(Weingarten)と は基本。
典型ミス
(1) で を「」と書いて、 の向きを混同し符号間違いをする。 の向きを 成分が正と固定していることを忘れない。
試験で書くべきポイント
(3) は 次元線形変換でのベクトル積の挙動 を理由とともに書く。 原点で第一基本形式が単位行列に近いことから、(2) の計算が単純化されることに触れると論理が明快。
第10問 — B4 ホップ絡み目補空間とホモロジー
方針
内の Hopf 絡み目補空間が torus にホモトピー同値という基本事実を、半径補正による強変形レトラクトで具体的に示す。 は が 上にあることに気づくのが鍵。Alexander 双対性または「開ソリッドトーラス 一点」の幾何的考察で計算可能。
典型ミス
(1)(2) で「 かつ 」の条件を使い忘れる。 ホモトピーが well-defined であるために分母が零でないことを確認すること。 (4) で が 上にあることを見落とすと、 を「絡み目に点を付け足す」と誤解する。
試験で書くべきポイント
(1)(2) の強変形レトラクトは、目的の部分集合上で恒等となる連続族 を明示する。 (4) は を確認した後 Alexander 双対 を引用するのが最短。
第11問 — B5 半円弧上の複素積分と実積分
方針
の Dirichlet 積分を求める古典的な複素積分問題。 半円輪郭で を積分し、(1) で小円積分、(2) で大円積分の処理を確立してから (3) で組み立てる。
典型ミス
(2) で Jordan の不等式 を使わず、 で済ませて になり を示せない例が多い。 の下からの線形近似を必ず使う。
試験で書くべきポイント
(3) で の輪郭が「閉曲線で内部に特異点なし」( は除外する小半円があるため)と明記する。 を に置換する計算を丁寧に書く。 最終的に が偶関数より として を得る論理を示す。
第12問 — B6 線形 ODE の解、軌道の同値関係と相図
方針
線形系の固有値・固有ベクトル分解。 鞍点()では安定多様体・不安定多様体の つの半直線と、 象限の一般軌道があり、計 個の同値類。
典型ミス
(2) で「軌跡同士が交わらない」事実(解の一意性)を使わずに同値関係を示そうとして詰まる。 線形 ODE では大域解が一意で、軌跡同士は disjoint または完全一致のいずれか。
試験で書くべきポイント
(3) は鞍点の相図を「 の方向に発散、 の方向に収束」と図示し、安定・不安定多様体の 半直線と原点・ 象限の一般軌道で計 個の同値類があることを明示する。 代表系は各クラスから一点ずつ取ればよい。
第13問 — B7 数列空間のノルム性、完備性と双対表現
方針
(2) の完備性は古典的: 各点極限を取って Fatou の補題で評価する。 (3) 有限台空間 上の有界線形汎関数( ノルムで評価)を、 ベクトル で双対的に表現する。 これは の特殊な場合( は の稠密部分空間)。
典型ミス
(2) で「各点極限が に属する」だけ示してノルム収束を示し忘れる。 (3) で の 性を有限和の 選択的符号付き合成 で示す技巧を見落とす。 任意有限部分和の上界 を強調する。
試験で書くべきポイント
(3) では の有界性条件 ( ノルム)を使うので、 と書く。 を、有限部分和に対する の値で評価して下から押さえる手法は典型的。
第14問 — B8 i.i.d. ランダムウォーク、停止時刻と Wald の等式
方針
有界増分の i.i.d. ランダムウォークの基本問題。 (1)(2) は条件付き期待値の独立性公理から自動。 (4) は と大数の強法則がポイント、ドリフトがあるので必ず境界を越える。 (5) は Wald の等式( と一様可積分性)で Optional Stopping を適用。
典型ミス
(4) で のケースの扱いを混乱しがち。本問は を仮定しているのでドリフト 必ず無限へ。 (5) で「 a.s.」だけでは Optional Stopping は使えず、 と一様可積分性を確認する必要がある。
試験で書くべきポイント
(5) は で停止し、 の極限を取って収束定理を使う流れ。 増分が有界 () なので で一様有界、有界収束定理が使えると明示する。
第15問 — B9 ベルヌーイ分布の最尤推定と Fisher 情報量
方針
ベルヌーイの最尤推定の標準問題。 は不偏・一致・有効すべての性質を持つ理想的な推定量。 Fisher 情報量は を覚えておく(または導出 の二階微分の期待値で計算)。
典型ミス
(5) の符号: でマイナスを忘れない。 あるいは と書いて計算しても同じ。
試験で書くべきポイント
(6) では「分散 CRB 有効」の論理を明示する。 ベルヌーイの場合、 はちょうど効率 で達成する典型例(指数分布族の MLE は一般に有効)。
第16問 — B10 有限体の原始元によるグラフ
方針
有限体の原始元の特定が肝。 では 、原始元は 個。 は で原始元は 個。
典型ミス
原始元を「 や でない元」と勘違いする例。 原始元は乗法群の生成元(位数最大の元)であり、定義は乗法群の位数に等しい位数を持つ元。
試験で書くべきポイント
原始元を一つ見つけてから の指数すべてで列挙するのが定石。 では を、 では を最初の原始元として取る。 グラフの図は頂点を円形に並べて辺を矢印で結べばよい。
第17問 — B11 NFA、ポンピング補題、shuffle 言語の非正則性
方針
NFA は最小限の状態で構成。受容状態の選び方で や の扱いを工夫する。 ポンピング補題の典型適用: を取って が のみとなる分解で矛盾を出す。 shuffle 操作は正則性を保たないことの古典的反例 風( は 同数語)。
典型ミス
(1) で を含めるかどうかの確認。 で なので 、 も受容状態にする。 (3) で「shuffle が正則性を保つ」と勘違い。 の制約は文脈自由( と同様)であり正則ではない。
試験で書くべきポイント
(1) は状態遷移を表で書くか、状態と矢印で図示。状態 で十分。 (2)(3) は「 より は のみ」を明示し、 で矛盾を導く流れ。 (3) は具体的な を選び、 が の同数語と一致することを示す。
第18問 — B12 Scheme によるリスト生成、再帰の停止性
方針
s1 の意味を「x 以降の整数のうち v に含まれないものを 個並べる」と読み解くのが鍵。
s2 はこれを直接的に再帰で実現する形。
停止性は「 は単調非増加で、 が変わらない再帰は x が v 内に居るときのみ、x は単調増加」がポイント。
典型ミス
(1) で (s0 (+ 4 3) 1) の長さを と勘違い(正しくは )。
(2) で「x のとき を減らす」と書いてしまう答案。 はそのまま、x だけ進める。
試験で書くべきポイント
(3) は構造帰納で「 は基底、 で x と x のケース分け」。
(4) は「 を減らす再帰の回数は 自身に上から押さえられ、 を減らさない再帰の連続回数は に押さえられる」点を述べる。