千葉大学 院試 過去問 解答例
千葉大 融合理工学府 数学情報科学専攻 数学・情報数理学コース 専門科目(A0・A問題・B問題) 2026年度 院試 解答例・解説
千葉大学 融合理工学府 数学情報科学専攻 数学・情報数理学コース 専門科目(A0・A問題・B問題) 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A0 写像の合成と安定像
方針
この問題は,合成写像から単射・全射を読み取る基本問題と,反復像の包含を扱う問題が合わさっている。最重要の関係は であり,これが安定像の議論を一行で整理してくれる。
検算
だけでは について単射性も全射性も保証されない。小さい有限集合で反例を作ると,どの写像にどの条件が効いているかを確認しやすい。
試験で書くべきポイント
最後の等号では, の単射性を使って「 から, の同じ が に入る」と言う必要がある。ここを書かないと, ごとに異なる原像を選んでいるだけになり, が従わない。
第2問 — A1 行列のジョルダン標準形と可換化
方針
前半はジョルダン標準形と可換化代数の標準問題である。後半は一見すると展開が複雑だが, の条件を に対して多項式恒等式として見ると,係数比較だけで可換性が出る。
典型ミス
で固有値 の重複度が2と分かっても,ジョルダンブロックの大きさはまだ決まらない。必ず を確認する。
試験で書くべきポイント
最大元の証明では, の任意の元を直接可換と示す必要がある。単に を示すだけでは,最大性ではなく包含の片側しか証明していない。
第3問 — A2 微分可能性と導関数の中間値性
方針
第2・第3小問は導関数のダルブー性の証明である。定理名だけを書くより,端点近くで値が下がることを使って内部最小点を作ると,導関数の連続性を仮定せずに済む。
典型ミス
が連続でないため,中間値の定理を に直接適用してはいけない。導関数の中間値性は別の事実であり,ここではフェルマーの定理と最小値の存在で証明する。
検算
第3小問は から直線 を引く操作で,第2小問の形に完全に帰着している。符号が となっていることを確認すればよい。
第4問 — A3 商位相とコンパクト性
方針
この問題は相対位相と商位相の定義をそのまま使う。射影 の各同値類が2点であることや,実射影平面という名前を知っていることは不要である。
典型ミス
商集合 の開集合を,代表元を選んで直接判定しようとすると混乱しやすい。商位相では常に を 側へ戻して判定する。
試験で書くべきポイント
コンパクト性は「閉有界だから がコンパクト」,「連続像だから がコンパクト」の二段階で書く。特に を の部分集合のように扱わないことが重要である。
第5問 — A4 幾何分布と無記憶性
方針
幾何分布では「何回失敗が続いたか」ではなく「初めて成功するまでの試行回数」で数えている。したがって値は から始まり,尾確率が になる。
典型ミス
モーメント母関数の初項は である。 から始める形と混同すると,余分な が消えて期待値もずれる。
検算
とすると に集中し,期待値は1,分散は0へ近づく。公式 はこの極限と整合している。
第6問 — A5 組合せ生成プログラム
方針
このプログラムは,長さ ,重み の0-1列を辞書式に並べたときの 番目を構成している。先頭を0にした列は 個あり,それを超えたら先頭を1にして添字をずらす。
典型ミス
は0始まりである。したがって「6個飛ばす」場合の添字は ではなく である。また重み は1の個数であり,ベクトルの長さとは別に数える。
検算
は長さ6,重み3である。先頭0の列が10個あるため では先頭0のままになり,次の桁で先頭1側に移る。この再帰の分岐と出力が一致している。
第7問 — B1 一次分数変換の作用
方針
一次分数変換では,分母が消えないことと代表行列のスカラー倍で値が変わらないことを最初に確認する。軌道の稠密性は大きな群を使う必要はなく,有理数平行移動だけで十分である。
典型ミス
固定条件を一次方程式だと思ってしまうと,2次無理数の場合を落とす。固定方程式は であり,ここから「有理数ではなく2次代数的数」が出てくる。
試験で書くべきポイント
最後の「無限アーベル」は,単に例を一つ挙げるだけでは足りない。固定する行列全体が の乗法に対応することを述べると,可換性と無限性が同時に見える。
第8問 — B2 商環と単項式半群環
方針
この問題の中心は,関係式を使って単項式を標準形へ落とすことである。 を消し, と を消し,最後に で の指数を にそろえる。
検算
の像では がそれぞれ になる。指数の合同類で見ると, に対応する項は に分かれる。この観察が独立性の検算になる。
典型ミス
-加群の生成系と -加群の基底を混同しない。前者では が並ぶが,後者では の冪は係数環側へ吸収できるため の3本で足りる。
第9問 — B3 接ベクトルと体積形式の座標変換
方針
接ベクトルは「関数に作用する微分作用素」として扱うと,座標変換は連鎖律そのものになる。微分形式は反対に,ヤコビアンの行列式で変換する。
典型ミス
接ベクトルの係数行列と1形式の係数行列は逆転しやすい。今回の は から へ戻す行列なので,最後に逆行列を取る必要がある。
検算
行列式は である。したがって逆行列の分母が9になることは, 計算ミスを見つける簡単な確認になる。
第10問 — B4 球面に弦を付けた空間のホモロジー
方針
図形をそのまま見るより,可縮な下半球面または球面部分を潰して,残るグラフのサイクル数を数えるのが速い。2本の線分は中心で交わるため,単に円周2個ではなく,4本辺のグラフになる。
検算
2つの頂点と4本の辺からなる連結グラフの の階数は である。 この3という数が と の両方に現れる。
試験で書くべきポイント
では球面を加えたことで が追加される。線分を付けても2次元の球面基本類は消えないため,ここを落とさない。
第11問 — B5 Fresnel積分
方針
積分路を角度 だけ回すと, が になり,ガウス積分に変わる。 これがFresnel積分の標準手法である。
典型ミス
の向きに注意する。ここでは が小さい方から大きい方へ動くので, の符号になる。
検算
の実部と虚部は等しい。最終値の虚部が になっていることを確認すると,角度係数のミスを発見しやすい。
第12問 — B6 Sturm型の零点判定
方針
これはPruefer変換で2階方程式を極座標化する問題である。 と を平面上の点と見て,角度 の増加を追跡する。
検算
のため である。角度が単調増加することが,隣り合う零点の議論と無限個の零点の議論の両方を支えている。
典型ミス
ではなく, と置かれている点に注意する。 このため には が現れる。
第13問 — B7 L2ノルムとスケーリング
方針
スケーリングの問題では,まず等長性を確認し,次に内積が消えることへ帰着する。 コンパクト台連続関数で証明してから密度で一般化するのが最も安全である。
典型ミス
と は点wise収束だけでは扱いにくい。内積を評価し, または の因子で消えることを見る。
試験で書くべきポイント
問題文で与えられている近似事実を使う箇所を明確にする。コンパクト台連続関数での評価だけを書いて一般の場合を放置すると, 全体での証明にならない。
第14問 — B8 優加法性と大偏差率関数
方針
前半はFeketeの補題である。後半は,確率の積を作るために独立性を使い,対数を取って優加法列に戻す。
典型ミス
の評価で, であることを使うと「和が非負」は「全て0」と同値になる。 ここを としてしまうと誤りである。
検算
正規分布の率関数は平均 で0になり,平均から離れるほど二次的に増える。 この形はCramer型大偏差の標準形と一致している。
第15問 — B9 最小二乗法と一個抜き交差検証
方針
前半は射影行列 の基本性質である。後半は一個抜き交差検証の標準公式で,hat matrix の対角成分が補正係数として現れる。
典型ミス
は が説明変数行列の列空間に入っているから成り立つ。任意のベクトルに対して ではない。
試験で書くべきポイント
一個抜き公式は結論だけを書くより, と置き,Sherman--Morrison公式から出ることを一言添えると説得力がある。最後に計算量上の利点も文章で答える。
第16問 — B10 Bell基底とユニタリ補正
方針
これは量子テレポーテーションのBell基底分解そのものである。測定結果に応じて,Pauli型のユニタリ補正をかけると元の状態に戻る。
典型ミス
係数 を落としてもユニタリ補正の形は変わらないが, の表示としては必要である。 また は全体の位相を除けば Pauli 行列の積であり,符号を一か所間違えやすい。
検算
を に作用させると になる。これにより と が対応することを確認できる。
第17問 — B11 文脈自由言語の閉包性
方針
非閉包性は,文脈自由な2言語の共通部分として非文脈自由な を作るのが定石である。
典型ミス
と の定義で,どの2種類の文字数をそろえるかを取り違えない。 一方は と ,もう一方は と をそろえることで,共通部分で3種類すべてがそろう。
試験で書くべきポイント
最後の小問は「CFLは共通部分で閉じない」とだけ答えると誤りである。1文字アルファベットという追加条件により正則性が回復する。
第18問 — B12 OCamlリスト関数とコンス回数
方針
`ksss' は組合せ列挙であり,先頭を使う枝と使わない枝に分かれる。コンス回数の差分は,この分岐で新しく発生するコンスだけを数えると見通しがよい。
典型ミス
`rev' を最後に毎回呼ぶ方法では,選ばれた各リストの長さに比例した余分なコピーが発生する。 改善版では選ぶ時点で逆順に積むため,最後の反転と連結をまとめて消している。
検算
のとき,改善版は現在の蓄積リストを1つ結果に加えるだけなのでコンスは1回である。 この境界条件があるから,差分式の右辺が常に1になる。