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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2014年度 院試 解答例・解説

東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2014年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 午前・中心力とラプラス--ルンゲ--レンツベクトル

方針

この問題は、二体問題を一体問題へ落とし、中心力の標準結果を導く流れである。最初の重心変換で交差項が消えること、次に ϕ\phi が循環座標であることを書けば、角運動量保存と有効ポテンシャルは自然に出る。

有効ポテンシャルの意味

半径方向だけを見ると、角運動量保存により横向き運動のエネルギーが l2/(2μr2)l^2/(2\mu r^2) に置き換わる。これは中心へ近づくほど大きくなるため、衝突を避ける遠心障壁として働く。円軌道の条件は dUeff/dr=0dU_{\mathrm{eff}}/dr=0 と読める。

採点上の注意

ラプラス--ルンゲ--レンツベクトルでは、保存性の確認だけでなく、最後に Ar\boldsymbol{A}\cdot\boldsymbol{r} を計算して軌道式に結びつける必要がある。三重積の符号を誤ると、楕円軌道の離心率に相当する係数の符号が逆になる。

2014年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

全質量を M=m1+m2M=m_1+m_2、換算質量を μ=m1m2m1+m2 \mu=\frac{m_1m_2}{m_1+m_2} とおく。重心座標と相対座標を R=m1r1+m2r2M,r=r2r1 \boldsymbol{R}=\frac{m_1\boldsymbol{r}_1+m_2\boldsymbol{r}_2}{M}, \qquad \boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}_2-\boldsymbol{r}_1 で定義すると、 r1=Rm2Mr,r2=R+m1Mr \boldsymbol{r}_1=\boldsymbol{R}-\frac{m_2}{M}\boldsymbol{r}, \qquad \boldsymbol{r}_2=\boldsymbol{R}+\frac{m_1}{M}\boldsymbol{r} である。したがって速度についても同じ線形関係が成り立ち、交差項は m1(m2M)+m2(m1M)=0 m_1\left(-\frac{m_2}{M}\right)+m_2\left(\frac{m_1}{M}\right)=0 により消える。運動エネルギーは 12m1r˙12+12m2r˙22=12MR˙2+12μr˙2 \frac12 m_1\dot{\boldsymbol{r}}_1^{\,2} +\frac12 m_2\dot{\boldsymbol{r}}_2^{\,2} =\frac12 M\dot{\boldsymbol{R}}^{\,2} +\frac12\mu\dot{\boldsymbol{r}}^{\,2} となるので、 L=12MR˙2+12μr˙2U(r) L=\frac12 M\dot{\boldsymbol{R}}^{\,2} +\frac12\mu\dot{\boldsymbol{r}}^{\,2}-U(\boldsymbol{r}) と分離できる。

中心力ポテンシャルでは運動面を固定できるので、相対座標を r=(rcosϕ,rsinϕ,0) \boldsymbol{r}=(r\cos\phi,r\sin\phi,0) とおく。このとき r˙2=r˙2+r2ϕ˙2 \dot{\boldsymbol{r}}^{\,2}=\dot r^{\,2}+r^2\dot\phi^{\,2} だから、相対運動のラグランジアンは L=12μ(r˙2+r2ϕ˙2)U(r) L=\frac12\mu\left(\dot r^{\,2}+r^2\dot\phi^{\,2}\right)-U(r) である。

ϕ\phi は循環座標であり、 ddtLϕ˙=ddt(μr2ϕ˙)=0 \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial\dot\phi} =\frac{d}{dt}\left(\mu r^2\dot\phi\right)=0 となる。よって l=μr2ϕ˙ l=\mu r^2\dot\phi が保存する。

rr についてのラグランジュ方程式は μr¨μrϕ˙2+U(r)=0. \mu\ddot r-\mu r\dot\phi^{\,2}+U'(r)=0. この式に ϕ˙=l/(μr2)\dot\phi=l/(\mu r^2) を代入すると μr¨=U(r)+l2μr3=ddr{U(r)+l22μr2}. \mu\ddot r =-U'(r)+\frac{l^2}{\mu r^3} =-\frac{d}{dr}\left\{ U(r)+\frac{l^2}{2\mu r^2} \right\}. すなわち、半径方向の運動は有効ポテンシャル Ueff(r)=U(r)+l22μr2 U_{\mathrm{eff}}(r)=U(r)+\frac{l^2}{2\mu r^2} 中の一次元運動として読める。第二項は遠心力に対応し、rr が小さいほど中心へ近づきにくくする障壁である。

上式に r˙\dot r をかけると ddt[12μr˙2+U(r)+l22μr2]=0 \frac{d}{dt}\left[ \frac12\mu\dot r^{\,2}+U(r)+\frac{l^2}{2\mu r^2} \right]=0 であり、エネルギー E=12μr˙2+U(r)+l22μr2 E=\frac12\mu\dot r^{\,2}+U(r)+\frac{l^2}{2\mu r^2} が保存する。

以後 U(r)=k/rU(r)=-k/r とする。相対運動の運動方程式は μr¨=kr3r. \mu\ddot{\boldsymbol{r}} =-\frac{k}{r^3}\boldsymbol{r}. 角運動量ベクトルを l=r×μr˙ \boldsymbol{l}=\boldsymbol{r}\times\mu\dot{\boldsymbol{r}} と書くと、l\boldsymbol{l} は保存する。さらに A=μr˙×lμkrr \boldsymbol{A} =\mu\dot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l} -\mu k\frac{\boldsymbol{r}}{r} を考える。時間微分は A˙=μr¨×lμkddt(rr) \dot{\boldsymbol{A}} =\mu\ddot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l} -\mu k\frac{d}{dt}\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r}\right) である。ここで r¨×l=kμr3r×(r×μr˙)=kr3(r2r˙(rr˙)r) \ddot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l} =-\frac{k}{\mu r^3}\boldsymbol{r}\times \left(\boldsymbol{r}\times\mu\dot{\boldsymbol{r}}\right) =\frac{k}{r^3}\left(r^2\dot{\boldsymbol{r}} -(\boldsymbol{r}\cdot\dot{\boldsymbol{r}})\boldsymbol{r}\right) を用いると μr¨×l=μk(r˙rr˙r2r)=μkddt(rr) \mu\ddot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l} =\mu k\left( \frac{\dot{\boldsymbol{r}}}{r} -\frac{\dot r}{r^2}\boldsymbol{r} \right) =\mu k\frac{d}{dt}\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r}\right) となるので A˙=0\dot{\boldsymbol{A}}=\boldsymbol{0} である。

また A\boldsymbol{A}l\boldsymbol{l} と直交する。実際、 Al=μ(r˙×l)lμkrlr=0. \boldsymbol{A}\cdot\boldsymbol{l} =\mu(\dot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l})\cdot\boldsymbol{l} -\mu k\frac{\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{l}}{r}=0.

A\boldsymbol{A}r\boldsymbol{r} のなす角を α\alpha とすると、 Ar=μ(r˙×l)rμkr. \boldsymbol{A}\cdot\boldsymbol{r} =\mu(\dot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l})\cdot\boldsymbol{r}-\mu kr. 三重積を入れ替えると (r˙×l)r=l(r×r˙)=l2μ (\dot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l})\cdot\boldsymbol{r} =\boldsymbol{l}\cdot(\boldsymbol{r}\times\dot{\boldsymbol{r}}) =\frac{l^2}{\mu} だから、 Arcosα=l2μkr. Ar\cos\alpha=l^2-\mu kr. 従って 1r=μkl2(1+Aμkcosα) \frac1r=\frac{\mu k}{l^2}\left(1+\frac{A}{\mu k}\cos\alpha\right) を得る。

最終答

% M=m1+m2,μ=m1m2m1+m2, M=m_1+m_2,\qquad \mu=\frac{m_1m_2}{m_1+m_2}, L=12MR˙2+12μr˙2U(r),Lrel=12μ(r˙2+r2ϕ˙2)U(r), L=\frac12M\dot{\boldsymbol{R}}^{\,2} +\frac12\mu\dot{\boldsymbol{r}}^{\,2}-U(\boldsymbol{r}), \qquad L_{\mathrm{rel}}=\frac12\mu(\dot r^{\,2}+r^2\dot\phi^{\,2})-U(r), l=μr2ϕ˙,μr¨=ddr(U(r)+l22μr2), l=\mu r^2\dot\phi,\qquad \mu\ddot r=-\frac{d}{dr} \left(U(r)+\frac{l^2}{2\mu r^2}\right), E=12μr˙2+U(r)+l22μr2. E=\frac12\mu\dot r^{\,2}+U(r)+\frac{l^2}{2\mu r^2}. 逆二乗ポテンシャル U=k/rU=-k/r では A=μr˙×lμkrr \boldsymbol{A} =\mu\dot{\boldsymbol{r}}\times\boldsymbol{l} -\mu k\frac{\boldsymbol{r}}{r} が保存し、Al\boldsymbol{A}\perp\boldsymbol{l}。軌道は 1r=μkl2(1+Aμkcosα) \frac1r=\frac{\mu k}{l^2}\left(1+\frac{A}{\mu k}\cos\alpha\right) で与えられる。

2 — 午前・電磁場とLC振動

方針

前半はビオ--サバールの法則、中央は変位電流、後半はエネルギー保存を伴うLC振動である。特に円板間の磁場は、導線電流ではなく変位電流をアンペール則に入れる点が本質である。

極板を引き離したときの注意

極板間隔を変える操作では、接続前なら電荷が保存する。電圧が保存すると考えると、エネルギーの係数を誤る。今回の差は回路内で自然に生じたものではなく、外力が電場に対してした仕事として蓄えられる。

2014年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

半径 aa の円環電流 II による軸上磁場は、ビオ--サバールの法則 dB=μ0I4πd×RR3 d\boldsymbol{B} =\frac{\mu_0 I}{4\pi} \frac{d\boldsymbol{\ell}\times\boldsymbol{R}}{R^3} から求める。軸に垂直な成分は円周上で打ち消し合い、軸方向だけが残る。軸上点の座標を zz とすると R=a2+z2R=\sqrt{a^2+z^2} であり、 Bz=μ0I4π02πa2dφ(a2+z2)3/2=μ0Ia22(a2+z2)3/2. B_z =\frac{\mu_0 I}{4\pi} \int_0^{2\pi}\frac{a^2\,d\varphi}{(a^2+z^2)^{3/2}} =\frac{\mu_0 I a^2}{2(a^2+z^2)^{3/2}}. 向きは電流の向きに対する右ねじの向きである。

長さ ll、巻数 NN のソレノイドを、単位長さあたり n=N/ln=N/l 個の円環電流の重ね合わせとして扱う。中心から軸方向に zz' だけ離れた薄い輪の寄与は dBz=μ0nIa22(a2+z2)3/2dz dB_z=\frac{\mu_0 nI a^2}{2(a^2+z'^2)^{3/2}}\,dz' である。よって中心の磁束密度は B0=μ0nIa22l/2l/2dz(a2+z2)3/2=μ0NI2a2+(l/2)2. B_0 =\frac{\mu_0 nI a^2}{2} \int_{-l/2}^{l/2}\frac{dz'}{(a^2+z'^2)^{3/2}} =\frac{\mu_0 NI}{2\sqrt{a^2+(l/2)^2}}. 特に lal\gg a では B0μ0NIl. B_0\simeq \frac{\mu_0 NI}{l}. この近似で内部磁場を一様とすると、断面積 S=πa2S=\pi a^2 だから磁束鎖交数は NΦ=NB0SN\Phi=N B_0 S であり、 L=NΦI=μ0N2πa2l. L=\frac{N\Phi}{I} =\frac{\mu_0 N^2\pi a^2}{l}.

端効果を無視すると、円板間の電場は Ez(t)=v0dsinωt E_z(t)=\frac{v_0}{d}\sin\omega t である。半径 rr の円周を考えると、電束の時間変化は ddt(ϵ0Ezπr2)=ϵ0πr2v0ωdcosωt. \frac{d}{dt}\left(\epsilon_0 E_z \pi r^2\right) =\epsilon_0\pi r^2\frac{v_0\omega}{d}\cos\omega t. アンペール--マクスウェルの法則より Bϕ(r,t)2πr=μ0ϵ0πr2v0ωdcosωt. B_\phi(r,t)\,2\pi r =\mu_0\epsilon_0\pi r^2\frac{v_0\omega}{d}\cos\omega t. したがって Bϕ(r,t)=μ0ϵ0r2dv0ωcosωt,Hϕ(r,t)=ϵ0r2dv0ωcosωt. B_\phi(r,t) =\frac{\mu_0\epsilon_0 r}{2d}v_0\omega\cos\omega t, \qquad H_\phi(r,t) =\frac{\epsilon_0 r}{2d}v_0\omega\cos\omega t. 磁場は中心軸を回る周方向であり、電場が増加している瞬間には右ねじの向きで生じる。

最初の極板間隔でのキャパシタンスを CC とする。直流電圧 VV で充電した直後の電荷を Q0=CV Q_0=CV とする。ソレノイドとコンデンサーを接続した後、コンデンサー電荷を Q(t)Q(t) とおくと、回路方程式は LQ¨+QC=0. L\ddot Q+\frac{Q}{C}=0. 初期条件 Q(0)=CV, Q˙(0)=0Q(0)=CV,\ \dot Q(0)=0 から Q(t)=CVcosΩt,I(t)=Q˙(t)=CVΩsinΩt,Ω=1LC. Q(t)=CV\cos\Omega t, \qquad I(t)=-\dot Q(t)=CV\Omega\sin\Omega t, \qquad \Omega=\frac1{\sqrt{LC}}. エネルギーは UC(t)=Q(t)22C=12CV2cos2Ωt, U_C(t)=\frac{Q(t)^2}{2C} =\frac12CV^2\cos^2\Omega t, UL(t)=12LI(t)2=12CV2sin2Ωt. U_L(t)=\frac12LI(t)^2 =\frac12CV^2\sin^2\Omega t. 和は常に 12CV2\frac12CV^2 で一定である。

極板間隔を 2d2d に広げるとキャパシタンスは C=C2 C'=\frac{C}{2} になる。孤立したコンデンサーの電荷は保存されるので Q0=CVQ_0=CV のままである。したがって新しい角振動数は Ω=1LC=2Ω \Omega'=\frac1{\sqrt{LC'}}=\sqrt2\,\Omega であり、 UC(t)=Q022Ccos2Ωt=CV2cos2Ωt, U_C'(t)=\frac{Q_0^2}{2C'}\cos^2\Omega't =CV^2\cos^2\Omega't, UL(t)=CV2sin2Ωt. U_L'(t)=CV^2\sin^2\Omega't. エネルギーの最大値は元の 12CV2\frac12CV^2 から CV2CV^2 に増える。この増分は、引き合う極板を外力で引き離すときに外部がした仕事である。

最終答

% Bz(0,0,z)=μ0Ia22(a2+z2)3/2,Bsol(0)=μ0NI2a2+(l/2)2μ0NIl, B_z(0,0,z)=\frac{\mu_0 I a^2}{2(a^2+z^2)^{3/2}}, \qquad B_{\mathrm{sol}}(0)=\frac{\mu_0 NI}{2\sqrt{a^2+(l/2)^2}} \simeq \frac{\mu_0 NI}{l}, L=μ0N2πa2l, L=\frac{\mu_0N^2\pi a^2}{l}, Ez(t)=v0dsinωt,Bϕ(r,t)=μ0ϵ0r2dv0ωcosωt. E_z(t)=\frac{v_0}{d}\sin\omega t,\qquad B_\phi(r,t)=\frac{\mu_0\epsilon_0 r}{2d}v_0\omega\cos\omega t. LC接続後は I(t)=CVΩsinΩt,Ω=1LC, I(t)=CV\Omega\sin\Omega t,\qquad \Omega=\frac1{\sqrt{LC}}, UC=12CV2cos2Ωt,UL=12CV2sin2Ωt. U_C=\frac12CV^2\cos^2\Omega t,\qquad U_L=\frac12CV^2\sin^2\Omega t. 極板間隔を二倍にした場合は C=C2,Ω=2Ω, C'=\frac C2,\qquad \Omega'=\sqrt2\,\Omega, UC=CV2cos2Ωt,UL=CV2sin2Ωt. U_C'=CV^2\cos^2\Omega't,\qquad U_L'=CV^2\sin^2\Omega't.

3 — 午後・スピン軌道相互作用

方針

スピン軌道相互作用は、運動量に比例する有効磁場とパウリ行列の内積である。一次元化すると σy\sigma_y だけが現れるため、まず σy\sigma_y 固有基底で対角化するのが最短である。横磁場を加えると σx\sigma_xσy\sigma_y が同時に現れ、二次元ベクトル h(k)\boldsymbol{h}(k) の長さがエネルギー分裂になる。

分散曲線の読み方

磁場がない場合、二つの放物線は k=0k=0 で交差する。横磁場は σy\sigma_y 固有状態を混合するため、この交差は避けられ、最小ギャップは 2Δ=gμBB 2\Delta=g\mu_BB となる。図示ではこのギャップを明示すると、ゼーマン項の役割が伝わりやすい。

典型ミス

p×E\boldsymbol{p}\times\boldsymbol{E} の向きで符号を落としやすい。分散の上下の枝そのものは符号を入れ替えても形は似るが、どの枝がどのスピン向きかの説明が逆になるため、外積の順序を明記することが重要である。

2014年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

σx,σy,σz\sigma_x,\sigma_y,\sigma_z を、σz\sigma_z の固有状態 α=(10),β=(01) \alpha=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \qquad \beta=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix} で表す。まず σx=(0110) \sigma_x=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} なので、固有値 +1,1+1,-1 に対する規格化固有状態は χx,+=12(α+β),χx,=12(αβ). \chi_{x,+}=\frac{1}{\sqrt2}(\alpha+\beta), \qquad \chi_{x,-}=\frac{1}{\sqrt2}(\alpha-\beta). また σy=(0ii0) \sigma_y=\begin{pmatrix}0&-i\\ i&0\end{pmatrix} より χy,+=12(α+iβ),χy,=12(αiβ) \chi_{y,+}=\frac{1}{\sqrt2}(\alpha+i\beta), \qquad \chi_{y,-}=\frac{1}{\sqrt2}(\alpha-i\beta) である。

電子が xx 軸方向に動き、電場が zz 方向を向くとき p×E=(0,pxE,0) \boldsymbol{p}\times\boldsymbol{E} =(0,-p_xE,0) である。従ってスピン軌道相互作用を含むハミルトニアンは H=px22mγEpxσy. H=\frac{p_x^2}{2m}-\frac{\gamma E}{\hbar}p_x\sigma_y. 平面波 ϕk(x)=eikx\phi_k(x)=e^{ikx} に対して px=kp_x=\hbar k であり、スピン部分は σy\sigma_y の固有状態をとればよい。s=±1s=\pm1σy\sigma_y の固有値とすると Es(k)=2k22msγEk,ψk,s(x)=eikxχy,s. E_s(k)=\frac{\hbar^2k^2}{2m}-s\gamma E k, \qquad \psi_{k,s}(x)=e^{ikx}\chi_{y,s}. γ<0\gamma<0 なので、正の kk 側で低い枝と負の kk 側で低い枝は互いに逆の yy 方向スピンを持つ。

さらに xx 方向の磁場によるゼーマン項を加える。略記として Δ=12gμBB \Delta=\frac12g\mu_BB を導入すると H=px22mγEpxσy+Δσx. H=\frac{p_x^2}{2m}-\frac{\gamma E}{\hbar}p_x\sigma_y+\Delta\sigma_x. 平面波基底では H(k)=2k22mI+ΔσxγEkσy. H(k)=\frac{\hbar^2k^2}{2m}\,I +\Delta\sigma_x-\gamma Ek\,\sigma_y. これは有効磁場 h(k)=(Δ,γEk,0) \boldsymbol{h}(k)=(\Delta,-\gamma Ek,0) に沿った二準位問題なので、固有エネルギーは E±(k)=2k22m±Δ2+γ2E2k2. E_\pm(k)=\frac{\hbar^2k^2}{2m} \pm\sqrt{\Delta^2+\gamma^2E^2k^2}. 固有スピンの期待値は、上側の枝では h(k)\boldsymbol{h}(k) 方向、下側の枝では h(k)-\boldsymbol{h}(k) 方向を向く。特に k=0k=0 では xx 方向にそろい、k|k| が大きいほど ±y\pm y 方向成分が支配的になる。

最終答

% σx:λ=±1,χx,±=12(α±β), \sigma_x:\quad \lambda=\pm1,\quad \chi_{x,\pm}=\frac1{\sqrt2}(\alpha\pm\beta), σy:λ=±1,χy,+=12(α+iβ),χy,=12(αiβ). \sigma_y:\quad \lambda=\pm1,\quad \chi_{y,+}=\frac1{\sqrt2}(\alpha+i\beta),\quad \chi_{y,-}=\frac1{\sqrt2}(\alpha-i\beta). 電場のみでは H=px22mγEpxσy,Es(k)=2k22msγEk. H=\frac{p_x^2}{2m}-\frac{\gamma E}{\hbar}p_x\sigma_y, \qquad E_s(k)=\frac{\hbar^2k^2}{2m}-s\gamma Ek. 横磁場を加えると H(k)=2k22mI+ΔσxγEkσy,Δ=12gμBB, H(k)=\frac{\hbar^2k^2}{2m}I+\Delta\sigma_x-\gamma Ek\,\sigma_y, \qquad \Delta=\frac12g\mu_BB, E±(k)=2k22m±Δ2+γ2E2k2. E_\pm(k)=\frac{\hbar^2k^2}{2m} \pm\sqrt{\Delta^2+\gamma^2E^2k^2}.

4 — 午後・ミクロカノニカル分布とマクスウェル分布

方針

ミクロカノニカル分布では「エネルギー一定の面積」を数える。速さ分布を求めるときは、指定した粒子の二次元速度空間の円周因子 v1dv1v_1\,dv_1 と、残りの自由度が作る高次元球面の面積を掛け合わせる。

規格化を気にしない理由

設問では規格化定数を求めなくてよい。温度を読むために必要なのは指数関数の係数であり、 exp(mv22ϵ) \exp\left(-\frac{mv^2}{2\epsilon}\right) を標準形 exp[mv2/(2kBT)]\exp[-mv^2/(2k_BT)] と比較すれば十分である。

採点上の注意

P(v1)P(v_1) は速度成分の分布ではなく速さの分布である。そのため二次元極座標のヤコビアン v1v_1 が必ず付く。この因子を落とすと、マクスウェル分布の形が一次元速度成分の分布と混同される。

2014年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

粒子数 N=2N=2 のとき、速度成分 (vx,1,vy,1,vx,2,vy,2) (v_{x,1},v_{y,1},v_{x,2},v_{y,2}) を四次元座標とみなす。全運動エネルギーは E=m2(vx,12+vy,12+vx,22+vy,22) E=\frac{m}{2} \left(v_{x,1}^2+v_{y,1}^2+v_{x,2}^2+v_{y,2}^2\right) である。従ってエネルギー一定の状態は vx,12+vy,12+vx,22+vy,22=R2,R=2Em v_{x,1}^2+v_{y,1}^2+v_{x,2}^2+v_{y,2}^2 =R^2, \qquad R=\sqrt{\frac{2E}{m}} を満たす四次元球面上にある。ミクロカノニカル分布では、この球面上で等重率に分布する。

dd 次元球面の面積を Sd(r)S_d(r) と書くと、一般に Sd(r)=2πd/2Γ(d/2)rd1. S_d(r)=\frac{2\pi^{d/2}}{\Gamma(d/2)}r^{d-1}. 特に S2(r)=2πr,S3(r)=4πr2,S4(r)=2π2r3. S_2(r)=2\pi r,\qquad S_3(r)=4\pi r^2,\qquad S_4(r)=2\pi^2r^3. これらは、座標を一つずつ固定して残りの断面を積分する再帰的な積分表示から得られる。例えば dd 次元球面を q1,,qd1q_1,\ldots,q_{d-1} で切ると、最後の座標は qd=±r2q12qd12 q_d=\pm\sqrt{r^2-q_1^2-\cdots-q_{d-1}^2} で決まり、ヤコビアンの因子が 2rr2q12qd12 \frac{2r}{\sqrt{r^2-q_1^2-\cdots-q_{d-1}^2}} として現れる。

粒子1の速さを v1=vx,12+vy,12 v_1=\sqrt{v_{x,1}^2+v_{y,1}^2} とする。四次元球面上で v1v_1v1v_1 から v1+dv1v_1+dv_1 にある部分の大きさを数える。二次元の粒子1速度空間では円周因子 2πv1dv12\pi v_1\,dv_1 が出る。一方、残り二成分は半径 R2v12 \sqrt{R^2-v_1^2} の円上に制限されるが、エネルギー殻のデルタ関数に由来する因子により、最終的には P(v1)dv1v1dv1 P(v_1)\,dv_1\propto v_1\,dv_1 となる。したがって P(v1){v1,0v1R,0,v1>R. P(v_1)\propto \begin{cases} v_1,&0\le v_1\le R,\\ 0,&v_1>R. \end{cases}

一般の NN では速度空間の次元は 2N2N であり、 RN=2Em=2Nϵm R_N=\sqrt{\frac{2E}{m}} =\sqrt{\frac{2N\epsilon}{m}} である。粒子1の二つの速度成分だけを取り出すと、残りは 2N22N-2 次元である。前と同様に数えると PN(v1)v1(RN2v12)N2 P_N(v_1)\propto v_1\left(R_N^2-v_1^2\right)^{N-2} であり、範囲は 0v1RN0\le v_1\le R_N である。

ここで RN2=2Nϵm R_N^2=\frac{2N\epsilon}{m} を代入すると PN(v1)v1RN2N4(1mv122Nϵ)N2. P_N(v_1)\propto v_1 R_N^{2N-4} \left(1-\frac{mv_1^2}{2N\epsilon}\right)^{N-2}. 規格化に依存しない係数を落とし、NN\to\infty とすると (1mv122Nϵ)N2exp(mv122ϵ). \left(1-\frac{mv_1^2}{2N\epsilon}\right)^{N-2} \longrightarrow \exp\left(-\frac{mv_1^2}{2\epsilon}\right). 従って P(v1)v1exp(mv122ϵ) P(v_1)\propto v_1 \exp\left(-\frac{mv_1^2}{2\epsilon}\right) を得る。

二次元のマクスウェル速さ分布は P(v)vexp(mv22kBT) P(v)\propto v\exp\left(-\frac{mv^2}{2k_BT}\right) だから、 kBT=ϵ,T=ϵkB k_BT=\epsilon, \qquad T=\frac{\epsilon}{k_B} である。

最終答

% R=2Em R=\sqrt{\frac{2E}{m}} で、N=2N=2 のミクロカノニカル分布は四次元球面 vx,12+vy,12+vx,22+vy,22=R2 v_{x,1}^2+v_{y,1}^2+v_{x,2}^2+v_{y,2}^2=R^2 上の一様分布である。 S2(r)=2πr,S3(r)=4πr2,S4(r)=2π2r3. S_2(r)=2\pi r,\qquad S_3(r)=4\pi r^2,\qquad S_4(r)=2\pi^2r^3. PN=2(v1)v1(0v1R). P_{N=2}(v_1)\propto v_1\quad (0\le v_1\le R). 一般の NN では PN(v1)v1(2Nϵmv12)N2, P_N(v_1)\propto v_1\left(\frac{2N\epsilon}{m}-v_1^2\right)^{N-2}, 従って P(v1)v1exp(mv122ϵ). P(v_1)\propto v_1\exp\left(-\frac{mv_1^2}{2\epsilon}\right). よって T=ϵkB. T=\frac{\epsilon}{k_B}.

5 — 午後・運動する帯電球の磁気エネルギー

方針

低速で動く帯電体では、静電場がほぼ形を保って並進し、その電束の時間変化が磁場を作る。結論だけなら H=v×D\boldsymbol{H}=\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{D} で一行だが、円板を貫く電束の変化から同じ結果を出すと、マクスウェル方程式との対応が明確になる。

重く見えることの意味

帯電球が動くと、電場だけでなく磁場も一緒に運ばれる。磁場には正のエネルギーがあるため、同じ速度を与えるのに機械的な運動エネルギーだけの場合より余分なエネルギーが必要になる。これを有効質量の増加として表している。ただし、電気的自己エネルギーや相対論的な場の運動量まで含めた完全な質量論とは別の近似的な議論である。

積分の点検

Hr2sinθH\propto r^{-2}\sin\theta なので、エネルギー積分では r4r^{-4} と体積要素 r2drr^2\,dr が合わさって ar2dr\int_a^\infty r^{-2}dr になる。下限 aa が残るため、半径を小さくすると磁気エネルギーは大きくなる。

2014年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

半径 aa の薄い球殻に表面電荷密度 σ\sigma が一様に分布しているので、全電荷は Q=4πa2σ Q=4\pi a^2\sigma である。球の外側 r>ar>a では、ガウスの法則より 4πr2D(r,t)=Q. 4\pi r^2 D(r,t)=Q. したがって D(r,t)=Q4πr2=σa2r2. D(r,t)=\frac{Q}{4\pi r^2} =\frac{\sigma a^2}{r^2}. 向きはその時刻の球中心から外向きである。

速度が光速に比べて十分小さい近似では、動いている電荷分布の磁場は H=v×D \boldsymbol{H}=\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{D} と書ける。ここで v=vx^\boldsymbol{v}=v\hat{\boldsymbol{x}} であり、D\boldsymbol{D} は動径方向である。位置ベクトルと xx 軸のなす角を θ\theta とすると H(r,t)=vD(r,t)sinθ=σa2vr2sinθ. H(r,t)=vD(r,t)\sin\theta =\frac{\sigma a^2v}{r^2}\sin\theta.

この関係はアンペール--マクスウェルの法則からも確認できる。中心が xx 軸上にあり、観測点を通る円を考え、その半径を d=rsinθ d=r\sin\theta とする。円周に沿って HH は一定なので Hd=2πdH. \oint \boldsymbol{H}\cdot d\boldsymbol{\ell} =2\pi d\,H. 一方、円を張る面を貫く電束を Ψ\Psi とすると Hd=dΨdt \oint \boldsymbol{H}\cdot d\boldsymbol{\ell} =\frac{d\Psi}{dt} である。

円の面が球中心から見込む立体角を用いると、円板を貫く電束は Ψ=Q2(1xr),x=rcosθ. \Psi=\frac{Q}{2}\left(1-\frac{x}{r}\right), \qquad x=r\cos\theta. 微小時間 Δt\Delta t の間に球中心は vΔtv\Delta t だけ進むため、円板から見た相対的な xx 座標は xvΔtx-v\Delta t に変わる。一次までで ΔΨ=QvΔt2d2r3=4πa2σvΔt2r2sin2θr3. \Delta\Psi =\frac{Qv\Delta t}{2}\frac{d^2}{r^3} =\frac{4\pi a^2\sigma\,v\Delta t}{2} \frac{r^2\sin^2\theta}{r^3}. 従って ΔΨ=2πσa2vΔtrsin2θ. \Delta\Psi= \frac{2\pi\sigma a^2v\Delta t}{r}\sin^2\theta. これを 2πdH=ΔΨ/Δt2\pi dH=\Delta\Psi/\Delta t に代入すれば H=σa2vr2sinθ H=\frac{\sigma a^2v}{r^2}\sin\theta が再び得られる。

真空中の磁気エネルギー密度は u(r,t)=12μ0H2=μ0σ2a4v22r4sin2θ. u(r,t)=\frac12\mu_0H^2 =\frac{\mu_0\sigma^2a^4v^2}{2r^4}\sin^2\theta. 球の外側全空間で積分すると UB=adr0πdθ02πdφμ0σ2a4v22r4sin2θr2sinθ. U_B =\int_a^\infty dr\int_0^\pi d\theta\int_0^{2\pi}d\varphi\, \frac{\mu_0\sigma^2a^4v^2}{2r^4}\sin^2\theta\, r^2\sin\theta. adrr2=1a,0πsin3θdθ=43 \int_a^\infty \frac{dr}{r^2}=\frac1a, \qquad \int_0^\pi\sin^3\theta\,d\theta=\frac43 より UB=4π3μ0σ2a3v2=μ0Q212πav2. U_B =\frac{4\pi}{3}\mu_0\sigma^2a^3v^2 =\frac{\mu_0Q^2}{12\pi a}v^2. したがって、運動に伴う全エネルギーを Utot=12m0v2+UB=12(m0+8π3μ0σ2a3)v2 U_{\mathrm{tot}} =\frac12m_0v^2+U_B =\frac12\left(m_0+\frac{8\pi}{3}\mu_0\sigma^2a^3\right)v^2 と書ける。

最終答

% Q=4πa2σ,D(r,t)=σa2r2(r>a), Q=4\pi a^2\sigma,\qquad D(r,t)=\frac{\sigma a^2}{r^2}\quad (r>a), H=v×D,H(r,t)=σa2vr2sinθ. \boldsymbol{H}=\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{D}, \qquad H(r,t)=\frac{\sigma a^2v}{r^2}\sin\theta. 円板を貫く電束の微小変化は ΔΨ=2πσa2vΔtrsin2θ. \Delta\Psi= \frac{2\pi\sigma a^2v\Delta t}{r}\sin^2\theta. 磁気エネルギー密度は u(r,t)=12μ0H2, u(r,t)=\frac12\mu_0H^2, 全磁気エネルギーは UB=4π3μ0σ2a3v2=μ0Q212πav2. U_B=\frac{4\pi}{3}\mu_0\sigma^2a^3v^2 =\frac{\mu_0Q^2}{12\pi a}v^2. 従って Utot=12(m0+8π3μ0σ2a3)v2. U_{\mathrm{tot}} =\frac12\left(m_0+\frac{8\pi}{3}\mu_0\sigma^2a^3\right)v^2.

6 — 午後・フォノン状態密度と層状結晶の比熱

方針

フォノン比熱のべきは、ほぼ状態密度のべきで決まる。低温では熱的に励起される周波数が ωkBT/\omega\sim k_BT/\hbar までに限られるため、低周波側の D(ω)D(\omega) の形だけを見ればよい。

クロスオーバーの読み方

kBTk_BTωa\hbar\omega_a より小さいと、面間方向もまだ低周波線形領域しか見えないため三次元的である。これを超えると面間方向の状態数はほぼ飽和し、温度を上げても増えるのは主に面内方向の状態であるため二次元的な T2T^2 則に変わる。

高温極限

kBTωbk_BT\gg\hbar\omega_b では、第一ブリルアン域内のモードがほぼ古典的に励起される。このとき各モードの平均エネルギーは温度に比例し、モード数は有限なので、比熱は温度に依存しない定数に近づく。

2014年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

低周波で ω=vk\omega=vk と書ける音響フォノンを考える。波数空間で半径 kk 以下の状態数は、空間次元を dd として N(k)kd N(k)\propto k^d である。k=ω/vk=\omega/v だから N(ω)ωd. N(\omega)\propto \omega^d. 状態密度は D(ω)=dNdωωd1 D(\omega)=\frac{dN}{d\omega}\propto \omega^{d-1} である。従って D(ω)ωp,p=d1. D(\omega)\propto \omega^p,\qquad p=d-1. 三次元では p=2p=2、二次元では p=1p=1 である。

内部エネルギーは、係数を除いて U=0dωD(ω)ω1eω/(kBT)1 U=\int_0^\infty d\omega\, D(\omega)\,\hbar\omega\, \frac1{e^{\hbar\omega/(k_BT)}-1} で与えられる。D(ω)ωpD(\omega)\propto\omega^p とし、 x=ωkBT x=\frac{\hbar\omega}{k_BT} で変数変換すると UTp+20dxxp+1ex1. U\propto T^{p+2} \int_0^\infty dx\,\frac{x^{p+1}}{e^x-1}. 積分は温度に依存しないので CV=(UT)VTp+1. C_V=\left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V \propto T^{p+1}. したがって CVTqC_V\propto T^q の指数は q=p+1=d. q=p+1=d. 三次元では q=3q=3、二次元では q=2q=2 である。

層状結晶では面内結合が強く、面間結合が弱い。したがって面内方向に進むフォノンは大きな音速と大きな帯域幅を持ち、面間方向に進むフォノンは小さな音速と小さな上限周波数を持つ。低い上限 ωa\omega_a で飽和する枝が面間方向、高い上限 ωb\omega_b まで伸びる枝が面内方向である。

十分低い周波数 ωωa\omega\ll\omega_a では、面内・面間のどちらも線形で、異方的ではあるが三次元の音響分散として扱える。等エネルギー面は楕円体であり、状態数は三次元体積に比例するので D(ω)ω2. D(\omega)\propto \omega^2.

一方、 ωaωωb \omega_a\ll\omega\ll\omega_b では、面間方向の分散はほぼ第一ブリルアン域全体を使い切っており、状態数の増加は主に面内二次元の波数面積で決まる。等エネルギー面は面間方向へ伸びた円筒状に近く、準二次元的に D(ω)ω D(\omega)\propto \omega となる。従って D(ω)ωτ D(\omega)\propto\omega^\tau と書けば τ={2,ωωa,1,ωaωωb. \tau= \begin{cases} 2,&\omega\ll\omega_a,\\ 1,&\omega_a\ll\omega\ll\omega_b. \end{cases}

上と同じ CVTτ+1C_V\propto T^{\tau+1} の関係を使う。ただし全てのフォノンが熱的に励起される高温では古典極限となり、比熱はほぼ一定になる。したがって CVTs C_V\propto T^s と書くと s={3,kBTωa,2,ωakBTωb,0,ωbkBT. s= \begin{cases} 3,& k_BT\ll\hbar\omega_a,\\ 2,& \hbar\omega_a\ll k_BT\ll\hbar\omega_b,\\ 0,& \hbar\omega_b\ll k_BT. \end{cases}

最終答

% 線形分散を持つ dd 次元フォノンでは D(ω)ωd1. D(\omega)\propto\omega^{d-1}. よって p={2三次元,1二次元,q={3三次元,2二次元. p= \begin{cases} 2&\text{三次元},\\ 1&\text{二次元}, \end{cases} \qquad q= \begin{cases} 3&\text{三次元},\\ 2&\text{二次元}. \end{cases} 層状結晶では、低い上限 ωa\omega_a の枝が面間方向、高い上限 ωb\omega_b の枝が面内方向である。 τ={2,ωωa,1,ωaωωb, \tau= \begin{cases} 2,&\omega\ll\omega_a,\\ 1,&\omega_a\ll\omega\ll\omega_b, \end{cases} s={3,kBTωa,2,ωakBTωb,0,ωbkBT. s= \begin{cases} 3,& k_BT\ll\hbar\omega_a,\\ 2,& \hbar\omega_a\ll k_BT\ll\hbar\omega_b,\\ 0,& \hbar\omega_b\ll k_BT. \end{cases}

東京大学 物理学 — 他の年度