東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2019年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2019年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 午前・軌道力学と重力勾配
楕円軌道の長軸は、角運動量ではなくエネルギーだけから最短で求められる。射出点が近地点とは限らないが、ケプラー問題では束縛軌道の半長軸は比エネルギーで一意に決まる。この事実を使うと計算が大幅に短くなる。
重力勾配の符号で迷った場合は、棒が接線方向を向いた配置を考えるとよい。両端は重心より地球から遠くなり、重力ポテンシャルが大きくなるため、その配置は不安定である。したがって有効ポテンシャルは に比例し、動径方向が安定になる。答案では、平衡点を列挙するだけでなく安定・不安定をポテンシャルまたは線形化で判定するのが安全である。
第2問 — 午前・誘導加熱と円環電流
誘導加熱では、誘導電場が半径に比例すること、発熱は に比例することの二点を押さえる。平均電力では の平均 を落としやすい。
円環電流の二問は、配置の対称性を見ると展開の形が決まる。逆向きなら原点でゼロとなる奇関数型、同じ向きなら原点で極値を持つ偶関数型である。二次項を消す条件を求める際は、軸上磁場を一度微分してから で評価すると計算ミスが少ない。
第3問 — 午後・デルタ障壁と二粒子干渉
デルタ障壁では、波動関数は連続だが導関数が跳ぶ。この跳びの式の係数を一つ間違えると、以後の 依存性が全てずれる。
二粒子干渉は、古典的な「片方が透過・片方が反射」という経路の足し算ではなく、交換対称性を持つ二粒子波動関数の干渉として扱う。反対称状態では同じ一粒子状態に二粒子が入る振幅が消え、対称状態では が消える点で同方向散乱が強制される。
第4問 — 午後・ファンデルワールス気体
臨界点の計算では、変数を体積 ではなく密度 にしておくと微分が短い。等温圧縮率は の逆数にさらに が掛かるため、この因子を忘れない。
相互作用の導出では、斥力は有効体積を減らして圧力を上げ、引力は自由エネルギーを下げて圧力を下げる。符号の物理的意味を確認すると、最終式の の符号を取り違えにくい。
第5問 — 午後・多層膜の反射防止
垂直入射の多層膜は、電場振幅そのものよりもアドミタンス の変換として考えると見通しが良い。四分の一波長層は負荷アドミタンスを に変換するため、低屈折率層と高屈折率層の組は を掛ける操作になる。
反射係数の符号は、反射波の磁場にマイナスが付くことを忘れると逆になる。最後は、空気側のアドミタンス と膜を通して見た有効アドミタンスが一致すれば反射が消える、と確認すればよい。
第6問 — 午後・金属と半導体の接触
平行板の部分では、仕事関数や化学ポテンシャルの差をそのまま電圧と見なさず、電子の電荷 を介して と対応させることが重要である。力は一定電荷のエネルギー微分でも求められるが、平行板の電場圧 を使うと短い。
ショットキー接合では、障壁高さは金属仕事関数と半導体電子親和力の差で決まる。ドナー密度や空乏層幅の詳細を計算しなくても、整流の説明では、フェルミ準位の整列、空乏層、ボルツマン因子による熱電子放出の三点を述べれば十分である。