東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2016年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)
全6問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・ラグランジアン)。2015年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。
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- 解説6問・解答6問・最終答6問(全6問)
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東大 物理学 2016年度 院試 過去問の出題内容(全6問)
2016年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は3問に4テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1・3問 | 25大学・544問 | |
| 調和振動子 | 第3問 | 16大学・110問 | |
| ラグランジアン | 第1問 | 13大学・68問 | |
| バンド理論 | 第6問 | 2大学・3問 |
前年度(2015年度)との違い
- 大問数
- 2015年度 6問 → 2016年度 6問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル
第1問 — 午前・振り子と二重振り子
力ではなくポテンシャルでつり合いを取る
下側の質点へ水平力を加えると、上側の棒には二つの質点の重さが効く。一方、下側の棒に効く重さは下側質点のものだけである。この違いを落とすと と の分母を同じにしてしまう。ポテンシャルを書いて偏微分する方法は、張力を明示的に消去しなくてよいので符号ミスが少ない。
微小振動では質量行列を残す
二重振り子では運動エネルギーに交差項 が残るため、単に二つの単振り子を並べた固有値問題にはならない。行列式の式 を作るところまで書くと、採点上も基準振動を求めていることが明確になる。
解答
角 を鉛直下向きから測る。質点の接線方向の運動方程式は であるから 微小振幅では より 質量 は慣性項と重力による接線力の双方に同じ比例因子として現れ、割り消える。したがって角周波数は に依存しない。
平衡位置で同じ撃力 を与えると初速度は である。微小振動なら角速度初期値は なので、角周波数は変わらないが、振幅とエネルギーは質量が大きいほど小さくなる。
二本の棒の角を同じく鉛直下向きから とする。下側の質点に加わる一定力を と書くと、ポテンシャルは定数を除いて つり合い条件 から したがって
とする。座標を と置く。運動エネルギーとポテンシャルは よって
二次のラグランジアンだけ残すと Euler--Lagrange 方程式は を代入すると とおけば すなわち したがって二つの基準角周波数は
最終答
%
第2問 — 午前・導体リングと電磁誘導
符号はレンツの法則で点検する
でリングが 向きに動くと、面を貫く 向きの磁束は増える。したがって誘導電流はそれを打ち消す向き、すなわち約束した正向きとは反対向きに流れる。得られた と磁気力 はこの物理的判断と一致する。
停止位置が負になる理由
時間的に磁場を立ち上げると、最初はリングの位置が原点でも磁束が増加する。その磁束増加を打ち消す電流が流れ、リングは磁場勾配の小さい側へ押される。短時間ランプでは立ち上げ中の移動量は小さいが、ランプ後の速度減衰でさらに有限距離だけ進むため、主項として が残る。
解答
リングの法線を 向きに取る。半径を 、中心座標を とする。リング面上では であり、磁束に寄与するのは だけである。円板内での の面積平均は中心座標 なので
速度 で動くと 反時計回りを正の電流向きとする約束では 電流ループの磁気モーメントは であり、 方向の力は 等速を保つ外力はこれと逆向きだから、大きさは
磁場の 成分が のとき、 したがって 磁気力は 両辺に を掛けると
では である。初期条件は なので、べき級数 では 。また右辺は少なくとも に比例するため となり、 である。
では、ランプ中の変位と速度はまだ小さい。そこで 、 として よって すなわち ランプ終了時の速度は
では だから したがって停止後の位置は の主近似では
最終答
%
第3問 — 午後・調和振動子のコヒーレント状態
コヒーレント状態の本質
コヒーレント状態は の固有状態であり、数演算子の固有状態ではない。エネルギー固有状態の重ね合わせでありながら、時間発展で形を保ったまま複素振幅だけが回転する。この性質が古典的な振動に最も近い量子状態である理由である。
準古典性の確認
では が揺らぎ より十分大きい。相対揺らぎが 程度に小さく、期待値が古典的な調和振動子の位相空間軌道を描くため、準古典的状態と呼ばれる。
解答
したがって なら 規格化を調べると なので 同様に であり、とくに負の固有値を持つ状態は存在しないため
に を作用させると よって固有値は である。規格化は から確認できる。
コヒーレント状態では したがって 二乗平均から よって
成分は を掛けるだけなので、 とすると したがって
最終答
%
第4問 — 午後・断熱膨張とジュール・トムソン効果
断熱でも二種類ある
準静的断熱膨張は可逆なので が一定である。一方、細孔栓を通す膨張は不可逆であり、保存されるのは ではなく である。この区別を最初に明示しないと、二つの温度変化係数の比較で混乱する。
温度上昇の物理的意味
では である。膨張では だから となる。引力項 を無視できる高温では、分子間引力を切るためのエネルギー消費が小さく、排除体積のために流動仕事の変化が運動エネルギー増加として現れる。これがジュール・トムソン膨張で温度が上がる理由である。
解答
エントロピーを と見ると マクスウェル関係と定圧比熱の定義から 等エントロピーでは なので 理想気体 では
1 モルの気体を高圧側から低圧側へ押し出すとき、外部が気体にする仕事は 、気体が外部へする仕事は である。断熱なので 移項して すなわち
と見れば 上で求めた を代入すると 等エンタルピー から したがって また理想気体では だから
を の一次まで展開する。 と書くと よって では一次のビリアル補正が消え、低密度で理想気体に最も近く見える。
低圧で と近似する。すると したがって ゆえに 符号が変わる温度は
最終答
%
第5問 — 午後・誘電体と金属中の電磁波
概形
散逸を無視したモデルでは、伝搬できる領域は 、減衰する領域は と判定できる。誘電体では共鳴周波数のすぐ上で分母の符号が変わり、しばらく が純虚数になる。金属では低周波側全体が純虚数である。
可視光での違い
多くの透明な誘電体では可視光が束縛電子の強い共鳴より低い周波数側にあり、 は実数で伝搬できる。金属では自由電子のプラズマ周波数より低い領域で誘電率が負になり、電磁波は表面から指数関数的に減衰する。そのため金属は反射が強く、誘電体は透明になりやすい。
解答
電子の変位を 方向だけで書くと、電荷が なので 分極は である。両辺に を掛けると 電場と分極が同じ角周波数で振動するとき したがって
変位電束は だから 波動方程式から 散逸を入れていないので は実数である。したがって では は実数、 では と純虚数、 では再び実数である。
金属中の自由電子では復元力がなく 同じ手順で すなわち したがって よって
最終答
% 誘電体は共鳴近傍に不伝搬帯を持ち、金属は で波が減衰する。
第6問 — 午後・半古典運動とバンド分散
状態密度は等エネルギー面の体積から出す
異方的有効質量では等エネルギー面が球ではなく楕円体になる。座標変換で球に直す方法もあるが、半軸の積を直接使うと、質量の寄与が として出ることがすぐ分かる。
線形バンドでは速度の大きさが一定
放物線バンドでは速度が に比例するが、線形バンドでは で一定である。そのためサイクロトロン角速度は有効質量ではなく に依存し、 となる。正負のバンドで群速度の向きが反転するため、軌道の回り方も反対になる。
解答
は 空間の楕円体であり、その半軸は スピン縮退を数えない単位体積当たりの状態数は よって状態密度は
群速度は なので したがって 平面では という楕円を、初期点 から 方向へ進む。
初期位置を原点とすると したがって 射影は楕円、全体は 方向へ進むらせん状の軌道である。
線形バンドを と書く。単位面積当たりの状態数は よって各バンドの状態密度は であり、交差点でゼロから線形に増える。
群速度は 波数の大きさ は保存し、 とおけば、正エネルギーバンドでは 負エネルギーバンドでは したがって 空間の軌道はいずれも円で、正エネルギー側は反時計回り、負エネルギー側は時計回りである。
実空間の半径は 正エネルギーバンドでは 負エネルギーバンドでは どちらも円軌道で、初期点からの回り方が逆になる。
最終答
%
東大 物理学 院試 過去問の収録13年度
剛体回転と磁気トルク / 調和振動子と突然近似 / ゴム弾性の統計力学
減衰振動と揺動応答 / 一次元障壁散乱 / 平均場イジング模型
剛体振り子と磁気モーメント測定 / 1次元光共振器 / 固体の比熱
量子井戸と対称性 / 支点加振振り子 / 古典気体の回転平衡
回転磁場によるスピン遷移と Ramsey 干渉 / 一次元格子振動 / 二元合金の相分離
量子ビットの時間発展とゲート生成 / 等方弾性体の応力と弾性波反射 / 理想ボース気体とボース凝縮
固定端ばね鎖の固有振動 / 一軸性結晶中の電磁波 / 理想気体と吸着等温式
午前・軌道力学と重力勾配 / 午前・誘導加熱と円環電流 / 午後・デルタ障壁と二粒子干渉
2016年度(このページ・全6問)解答・最終答まで全文公開
午前・振り子と二重振り子 / 午前・導体リングと電磁誘導 / 午後・調和振動子のコヒーレント状態
2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
午前・跳ね返る剛体球 / 午前・線電荷と円筒導体の鏡像法 / 午後・二重井戸と二粒子トンネル
2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
午前・中心力とラプラス--ルンゲ--レンツベクトル / 午前・電磁場とLC振動 / 午後・スピン軌道相互作用
2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
粗い円柱のつり合いと滑りから転がりへの移行 / 平行平板間の空間電荷制限電流 / 調和振動子の遷移と非調和摂動
2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
円板に巻き付く糸につながれた質点 / 円柱導体のジュール熱とポインティングベクトル / スピン1の磁気共鳴と四極子摂動