東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2016年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2016年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 午前・振り子と二重振り子
力ではなくポテンシャルでつり合いを取る
下側の質点へ水平力を加えると、上側の棒には二つの質点の重さが効く。一方、下側の棒に効く重さは下側質点のものだけである。この違いを落とすと と の分母を同じにしてしまう。ポテンシャルを書いて偏微分する方法は、張力を明示的に消去しなくてよいので符号ミスが少ない。
微小振動では質量行列を残す
二重振り子では運動エネルギーに交差項 が残るため、単に二つの単振り子を並べた固有値問題にはならない。行列式の式 を作るところまで書くと、採点上も基準振動を求めていることが明確になる。
2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
角 を鉛直下向きから測る。質点の接線方向の運動方程式は であるから 微小振幅では より 質量 は慣性項と重力による接線力の双方に同じ比例因子として現れ、割り消える。したがって角周波数は に依存しない。
平衡位置で同じ撃力 を与えると初速度は である。微小振動なら角速度初期値は なので、角周波数は変わらないが、振幅とエネルギーは質量が大きいほど小さくなる。
二本の棒の角を同じく鉛直下向きから とする。下側の質点に加わる一定力を と書くと、ポテンシャルは定数を除いて つり合い条件 から したがって
とする。座標を と置く。運動エネルギーとポテンシャルは よって
二次のラグランジアンだけ残すと Euler--Lagrange 方程式は を代入すると とおけば すなわち したがって二つの基準角周波数は
最終答
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第2問 — 午前・導体リングと電磁誘導
符号はレンツの法則で点検する
でリングが 向きに動くと、面を貫く 向きの磁束は増える。したがって誘導電流はそれを打ち消す向き、すなわち約束した正向きとは反対向きに流れる。得られた と磁気力 はこの物理的判断と一致する。
停止位置が負になる理由
時間的に磁場を立ち上げると、最初はリングの位置が原点でも磁束が増加する。その磁束増加を打ち消す電流が流れ、リングは磁場勾配の小さい側へ押される。短時間ランプでは立ち上げ中の移動量は小さいが、ランプ後の速度減衰でさらに有限距離だけ進むため、主項として が残る。
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リングの法線を 向きに取る。半径を 、中心座標を とする。リング面上では であり、磁束に寄与するのは だけである。円板内での の面積平均は中心座標 なので
速度 で動くと 反時計回りを正の電流向きとする約束では 電流ループの磁気モーメントは であり、 方向の力は 等速を保つ外力はこれと逆向きだから、大きさは
磁場の 成分が のとき、 したがって 磁気力は 両辺に を掛けると
では である。初期条件は なので、べき級数 では 。また右辺は少なくとも に比例するため となり、 である。
では、ランプ中の変位と速度はまだ小さい。そこで 、 として よって すなわち ランプ終了時の速度は
では だから したがって停止後の位置は の主近似では
最終答
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第3問 — 午後・調和振動子のコヒーレント状態
コヒーレント状態の本質
コヒーレント状態は の固有状態であり、数演算子の固有状態ではない。エネルギー固有状態の重ね合わせでありながら、時間発展で形を保ったまま複素振幅だけが回転する。この性質が古典的な振動に最も近い量子状態である理由である。
準古典性の確認
では が揺らぎ より十分大きい。相対揺らぎが 程度に小さく、期待値が古典的な調和振動子の位相空間軌道を描くため、準古典的状態と呼ばれる。
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したがって なら 規格化を調べると なので 同様に であり、とくに負の固有値を持つ状態は存在しないため
に を作用させると よって固有値は である。規格化は から確認できる。
コヒーレント状態では したがって 二乗平均から よって
成分は を掛けるだけなので、 とすると したがって
最終答
%
第4問 — 午後・断熱膨張とジュール・トムソン効果
断熱でも二種類ある
準静的断熱膨張は可逆なので が一定である。一方、細孔栓を通す膨張は不可逆であり、保存されるのは ではなく である。この区別を最初に明示しないと、二つの温度変化係数の比較で混乱する。
温度上昇の物理的意味
では である。膨張では だから となる。引力項 を無視できる高温では、分子間引力を切るためのエネルギー消費が小さく、排除体積のために流動仕事の変化が運動エネルギー増加として現れる。これがジュール・トムソン膨張で温度が上がる理由である。
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エントロピーを と見ると マクスウェル関係と定圧比熱の定義から 等エントロピーでは なので 理想気体 では
1 モルの気体を高圧側から低圧側へ押し出すとき、外部が気体にする仕事は 、気体が外部へする仕事は である。断熱なので 移項して すなわち
と見れば 上で求めた を代入すると 等エンタルピー から したがって また理想気体では だから
を の一次まで展開する。 と書くと よって では一次のビリアル補正が消え、低密度で理想気体に最も近く見える。
低圧で と近似する。すると したがって ゆえに 符号が変わる温度は
最終答
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第5問 — 午後・誘電体と金属中の電磁波
概形
散逸を無視したモデルでは、伝搬できる領域は 、減衰する領域は と判定できる。誘電体では共鳴周波数のすぐ上で分母の符号が変わり、しばらく が純虚数になる。金属では低周波側全体が純虚数である。
可視光での違い
多くの透明な誘電体では可視光が束縛電子の強い共鳴より低い周波数側にあり、 は実数で伝搬できる。金属では自由電子のプラズマ周波数より低い領域で誘電率が負になり、電磁波は表面から指数関数的に減衰する。そのため金属は反射が強く、誘電体は透明になりやすい。
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電子の変位を 方向だけで書くと、電荷が なので 分極は である。両辺に を掛けると 電場と分極が同じ角周波数で振動するとき したがって
変位電束は だから 波動方程式から 散逸を入れていないので は実数である。したがって では は実数、 では と純虚数、 では再び実数である。
金属中の自由電子では復元力がなく 同じ手順で すなわち したがって よって
最終答
% 誘電体は共鳴近傍に不伝搬帯を持ち、金属は で波が減衰する。
第6問 — 午後・半古典運動とバンド分散
状態密度は等エネルギー面の体積から出す
異方的有効質量では等エネルギー面が球ではなく楕円体になる。座標変換で球に直す方法もあるが、半軸の積を直接使うと、質量の寄与が として出ることがすぐ分かる。
線形バンドでは速度の大きさが一定
放物線バンドでは速度が に比例するが、線形バンドでは で一定である。そのためサイクロトロン角速度は有効質量ではなく に依存し、 となる。正負のバンドで群速度の向きが反転するため、軌道の回り方も反対になる。
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は 空間の楕円体であり、その半軸は スピン縮退を数えない単位体積当たりの状態数は よって状態密度は
群速度は なので したがって 平面では という楕円を、初期点 から 方向へ進む。
初期位置を原点とすると したがって 射影は楕円、全体は 方向へ進むらせん状の軌道である。
線形バンドを と書く。単位面積当たりの状態数は よって各バンドの状態密度は であり、交差点でゼロから線形に増える。
群速度は 波数の大きさ は保存し、 とおけば、正エネルギーバンドでは 負エネルギーバンドでは したがって 空間の軌道はいずれも円で、正エネルギー側は反時計回り、負エネルギー側は時計回りである。
実空間の半径は 正エネルギーバンドでは 負エネルギーバンドでは どちらも円軌道で、初期点からの回り方が逆になる。
最終答
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