東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2015年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2015年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 午前・跳ね返る剛体球
符号の点検
この問題では、接触点での回転由来の速度が 方向になる向きを正の角速度としている。したがって、右向きに並進してすべらず転がる最終状態では角速度は負になる。この符号を誤ると、保存量 の最終評価で の符号が逆になる。
保存量の意味
摩擦の力積は並進運動量を変えるが、同じ力積が中心まわりに腕の長さ の角力積を与える。その二つがちょうど打ち消し合う組合せが である。反発係数や鉛直方向の運動はこの保存量に入らないため、何回跳ね返ったかを知らなくても最終速度が求まる。
2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
一様な剛体球を半径 、厚さ の薄い球殻に分ける。薄い球殻の任意の直径まわりの慣性モーメントは である。したがって 質量 を用いれば
回転の正方向を、接触点での回転による速度が 方向になる向きとする。衝突直後にすべらない条件は、接触点の水平速度がゼロであることだから 床からの水平力積を とすると、水平運動量について である。また接触点は中心から の位置にあるため、中心まわりの角運動量について となる。上の二式と から すなわち
回目の衝突で、衝突前後の水平速度と角速度をそれぞれ 、 と書く。力積を とすると したがって よって は衝突回数 に依存しない保存量である。
反跳が終わった後はすべらず転がるので 保存量を初期値と最終値で等置すると したがって 転がり終わった直後に となる条件は
最終答
%
第2問 — 午前・線電荷と円筒導体の鏡像法
鏡像位置は反転半径で決まる
円筒境界では、実電荷からの距離と鏡像電荷からの距離の比が一定ならポテンシャルも一定になる。点 を円 に関して反転した に鏡像を置くと、この距離比がちょうど角度に依存しなくなる。
測定式の読み方
右側と左側の測定値の差は に比例し、上側と下側の差は に比例する。和で割ることで未知の線電荷密度 が消えるため、位置だけを決定できる。
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線電荷密度を とする。半径 の円筒面をガウス面に取ると より ポテンシャルの基準を でゼロに取れば
に 、 に があるとする。点 から二本の線電荷までの距離を とおくと、定数を除いた全ポテンシャルは
半径 の接地円筒空洞内で、実線電荷が にあるとする。鏡像電荷を に と置く。境界 でポテンシャルが一定になるには であればよい。実際、 であり、 は によらない。
境界でゼロになるように定数を選ぶと、空洞内のポテンシャルは
を計算すると 周回積分は となる。
線電荷が にあり、 とする。上式を角度 から見た形に直すと したがって よって
最終答
%
第3問 — 午後・二重井戸と二粒子トンネル
強相互作用で周期が長くなる理由
と は直接結合していない。必ず中間状態 を経由するため、強い相互作用で とのエネルギー差が大きいと、有効結合は ではなく または になる。これが周期を から 、 のスケールへ長くする。
引力と反発の見かけの同一性
引力では同じ井戸にいる状態が低エネルギー、反発では高エネルギーになる。しかし確率の時間変化は、主に と のエネルギー分裂の大きさで決まる。符号は位相には効くが、確率には二乗で現れるため、概形はほぼ同じになる。
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対称な波動関数は節を持たず、反対称な波動関数は中央に節を持つため、低いエネルギーを持つのは対称状態である。したがって とおくと、直交性は から従う。この基底で 初期状態が左井戸なら よって右井戸にある確率は
二粒子基底を とする。ボース粒子なので一粒子の移動には占有数因子が付き、 固有値は 初期状態を とすると、各粒子が独立に右へ移る確率 を用いて
同じ井戸に二個あるときだけエネルギーが 下がる場合、 反対称な組合せ の固有値は 。対称な組合せ と の部分空間では を対角化すればよく、残る固有値は では 低エネルギーの二つの組合せの分裂は なので、粒子はほぼ対のまま左右を移る。選択肢では、 がほぼゼロで と が交互に入れ替わる (b) を選ぶ。対応は、開始時に 1 から始まる曲線が 、0 から立ち上がる曲線が 、ほぼ 0 の曲線が である。周期は
同じ井戸に二個あるときだけエネルギーが 上がる場合、 固有値は では、 を仮想的に経由した有効結合だけが残り、 と の分裂は である。したがって選ぶ曲線の型は強い引力の場合と同じ (b) で、
最終答
% 強い引力・強い反発のどちらも、主な振る舞いは二個が対になって左右へトンネルする運動である。
第4問 — 午後・古典気体と相転移の熱力学
自由エネルギーの見方
固定された のもとで自然に最小化されるのは である。二つの最小値が等しいとき、二つの相が同じギブス自由エネルギーを持つため共存する。圧力を変えると の傾きが変わり、どちらの谷が低いかが入れ替わる。
符号で安定性を判断する
力学的安定性は、体積を少し増やしたとき圧力が下がることに対応する。つまり が安定である。S 字型等温線の正傾き部分は、体積ゆらぎを元に戻す復元性がなく、熱平衡の曲線には現れない。
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熱的波長を と書く。ボルツマン統計で を入れると である。
内部エネルギーは したがって 自由エネルギー から すなわち
一粒子エネルギーを とし、利用可能体積を とする。すると したがって 圧力は すなわち
とおくと よって極値は状態方程式を満たす点である。さらに 熱平衡として安定な点は の最小点であり、 を満たす。中央の極大点は であり、不安定である。
圧力 を大きくすると、項 は大きな体積側をより強く押し上げるため、小体積側の最小値が相対的に低くなる。逆に を小さくすると、大体積側の最小値が相対的に低くなる。
状態方程式そのものは、低温で - 平面に S 字型の等温線を与える。正の傾きを持つ枝は上の安定性条件に反するので、熱平衡状態としては採用されない。ギブス自由エネルギー で決まる平衡状態では、二つの最小値が等しい圧力で体積が不連続に飛び、等温線は水平な共存線で置き換わる。
最終答
% 安定な極値は の最小点であり、 を満たす。平衡等温線では不安定枝が除かれ、共存圧力で水平な体積ジャンプが現れる。
第5問 — 午後・導電性媒質中の電磁波
複素波数の物理
は位相の進み方を決め、 は振幅の減衰を決める。良導体では と が同程度になり、波は一波長程度も進まないうちに大きく減衰する。これが表皮効果である。
エネルギー保存の確認
入射直後に媒質内へ入った時間平均エネルギー流は、奥へ進むにつれてジュール熱として失われる。積分した発熱量が のポインティング流に等しいことは、電磁エネルギー保存則の具体的な確認になっている。
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電場を と置く。等位相面は 一定を満たすので、位相速度は 振幅は で減衰するから、振幅が になる距離は
波動方程式に代入すると 実部・虚部を比較して よって
では では
ファラデーの法則から したがって磁束密度は電場に対して だけ遅れる。良導体極限では 、不良導体極限では である。
での時間平均ポインティングベクトルの大きさは 媒質への単位体積あたりの仕事率は 時間平均は したがって を使うと
最終答
%
第6問 — 午後・二次元結晶と強結合バンド
六角形の境界
第1ブリルアン域は逆格子点への垂直二等分線で作る。 軸上の交点は に対応する境界、 軸上の交点は と に対応する境界で決まる。
ギャップの起源
二種類の原子を含むと、二つの副格子のオンサイトエネルギー差 が点 でそのままバンドギャップになる。同種原子にするとこの差が消え、最近接ホッピングの位相和 がゼロになる点で線形分散が現れる。
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基本単位格子ベクトルを とする。逆格子ベクトルは を満たすので 第1ブリルアン域は六角形であり、正の 軸との交点は 正の 軸との交点は
単位胞面積は スピン自由度を含めると、単位面積あたりの状態数は 単位胞あたり電子数が 2 なので したがって この円の面積は第1ブリルアン域の面積に等しく、六角形の境界と交差する。
原子と 原子の係数を と書く。最近接三本の位相和を とおくと、連立方程式は ただし よってエネルギー固有値は
単位胞あたり最外殻電子が平均 2 個なら、下のバンドが占有される。 軸上で とすると である。したがって 、 とおくと よって なら 伝導帯側の 方向有効質量は
原子をすべて 原子に置き換えると と見なせる。すると 点 近傍では したがって
最終答
% 同種原子にすると となり、ギャップは消える。