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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2012年度 院試 解答例・解説

東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2012年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

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1 — 円板に巻き付く糸につながれた質点

幾何を一度決めると計算は短い

この運動では、糸の自由部分の長さが 0aφ\ell_0-a\varphi になることが本質である。位置を aer+eφa\boldsymbol e_r+\ell\boldsymbol e_\varphi と置くと、φ\varphi 微分で aeφa\boldsymbol e_\varphiaeφ-a\boldsymbol e_\varphi が相殺し、速度が φ˙er-\ell\dot\varphi\boldsymbol e_r だけになる。ここを書けると、以後の計算はほぼ一行で進む。

角運動量が保存しない理由

張力は質点に対して仕事をしないのでエネルギーは保存する。しかし張力の作用線は点 QQ と質点を結ぶ接線であり、原点を通らない。したがって原点まわりのモーメントが生じ、LL は減少する。保存する量と保存しない量の理由を、力の向きと作用線で分けて説明するのが採点上重要である。

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円板の半径を aa、最初の糸の長さを 0\ell_0 とする。糸が円板から離れる点を QQ とし、OQ\overrightarrow{OQ}xx 軸となす角を φ\varphi とする。極座標の単位ベクトルを er=(cosφ,sinφ),eφ=(sinφ,cosφ) \boldsymbol e_r=(\cos\varphi,\sin\varphi),\qquad \boldsymbol e_\varphi=(-\sin\varphi,\cos\varphi) とおく。巻き付いた弧の長さは aφa\varphi なので、自由に張っている糸の長さは (φ)=0aφ \ell(\varphi)=\ell_0-a\varphi である。質点の位置は r=aer+eφ \boldsymbol r=a\boldsymbol e_r+\ell\boldsymbol e_\varphi と表せる。

  1. 張力は常に糸の方向に働き、質点の速度と垂直である。そのため張力は仕事をせず、運動エネルギーは保存する。一方、張力の作用線は一般に原点 OO を通らないので、原点まわりのトルクは 0 ではなく、角運動量は保存しない。
  2. (φ)=a\ell'(\varphi)=-a を用いると drdφ=aeφaeφer=er. \frac{d\boldsymbol r}{d\varphi} =a\boldsymbol e_\varphi-a\boldsymbol e_\varphi-\ell\boldsymbol e_r =-\ell\boldsymbol e_r. したがって v=φ˙er. \boldsymbol v=-\ell\dot\varphi\,\boldsymbol e_r. 成分表示では x=acosφsinφ,y=asinφ+cosφ, x=a\cos\varphi-\ell\sin\varphi,\qquad y=a\sin\varphi+\ell\cos\varphi, x˙=φ˙cosφ,y˙=φ˙sinφ. \dot x=-\ell\dot\varphi\cos\varphi,\qquad \dot y=-\ell\dot\varphi\sin\varphi. 原点まわりの角運動量は L=m(xy˙yx˙)=m2φ˙. L=m(x\dot y-y\dot x)=m\ell^2\dot\varphi.
  3. 速さは一定で初速に等しいので v=φ˙=v0. |\boldsymbol v|=\ell\dot\varphi=v_0. よって dφdt=v00aφ. \frac{d\varphi}{dt}=\frac{v_0}{\ell_0-a\varphi}. 積分して 0φa2φ2=v0t. \ell_0\varphi-\frac{a}{2}\varphi^2=v_0t. 初期条件 φ(0)=0\varphi(0)=0 を満たす枝を取ると φ(t)=0022av0ta. \varphi(t)=\frac{\ell_0-\sqrt{\ell_0^2-2av_0t}}{a}. 巻き付きが終わるのは =0\ell=0、すなわち φ=0/a\varphi=\ell_0/a のときであるから τ=022av0. \tau=\frac{\ell_0^2}{2av_0}.
  4. φ˙=v0\ell\dot\varphi=v_0 は一定であるから a=dvdt=v0φ˙eφ=v02eφ. \boldsymbol a=\frac{d\boldsymbol v}{dt} =-v_0\dot\varphi\,\boldsymbol e_\varphi =-\frac{v_0^2}{\ell}\boldsymbol e_\varphi. したがって張力は T=mv020aφeφ. \boldsymbol T =-\frac{mv_0^2}{\ell_0-a\varphi}\boldsymbol e_\varphi. 成分では Tx=mv020aφsinφ,Ty=mv020aφcosφ. T_x=\frac{mv_0^2}{\ell_0-a\varphi}\sin\varphi,\qquad T_y=-\frac{mv_0^2}{\ell_0-a\varphi}\cos\varphi. 微小時間だけ見れば、質点は点 QQ を瞬間的な曲率中心として、半径 \ell、速さ v0v_0 の等速円運動をしていると解釈できる。
  5. 張力の原点まわりのモーメントは N=xTyyTx=mav020aφ. N=xT_y-yT_x =-\frac{mav_0^2}{\ell_0-a\varphi}. 一方 L=m2φ˙=mv0(0aφ) L=m\ell^2\dot\varphi=m v_0(\ell_0-a\varphi) だから dLdt=mav0φ˙=mav020aφ=N. \frac{dL}{dt} =-mav_0\dot\varphi =-\frac{mav_0^2}{\ell_0-a\varphi} =N.

最終答

% r=aer+(0aφ)eφ,v=(0aφ)φ˙er, \boldsymbol r=a\boldsymbol e_r+(\ell_0-a\varphi)\boldsymbol e_\varphi,\quad \boldsymbol v=-(\ell_0-a\varphi)\dot\varphi\,\boldsymbol e_r, φ(t)=0022av0ta,τ=022av0, \varphi(t)=\frac{\ell_0-\sqrt{\ell_0^2-2av_0t}}{a},\qquad \tau=\frac{\ell_0^2}{2av_0}, T=mv020aφeφ,N=mav020aφ,dLdt=N. \boldsymbol T =-\frac{mv_0^2}{\ell_0-a\varphi}\boldsymbol e_\varphi,\qquad N=-\frac{mav_0^2}{\ell_0-a\varphi},\qquad \frac{dL}{dt}=N.

2 — 円柱導体のジュール熱とポインティングベクトル

微視的モデルからオーム則へ

平均速度は、最大速度ではなく自由飛行時間で平均した速度である。散乱間隔が 2τ2\tau と指定されているため、平均速度は最大速度の半分になり、va=qEτ/mv_a=qE\tau/m となる。この係数を落とすと伝導率の係数もずれる。

エネルギーは横から入る

直流電流ではエネルギーが導線内部を電子と一緒に上向きへ運ばれる、と考えると誤りやすい。電場は軸方向、磁場は周方向なので、ポインティングベクトルは半径方向内向きである。導体表面から入った電磁場のエネルギーが、内部でジュール熱へ変わる。

非一様導体の扱い

σ(r)\sigma(r) が変わっても、定常状態で断面内に横向き電流がないなら軸方向電場は同じ値として扱える。電流密度だけが σ(r)\sigma(r) に比例して変化する。ポインティング流の側面積分と局所ジュール熱の体積積分が同じ積分 0rσ(s)sds\int_0^r\sigma(s)s\,ds に帰着することが、エネルギー保存の確認である。

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円柱導体の半径を aa、長さを LL とする。電流は円柱軸方向に流れるものとし、端効果は無視する。

  1. 電子の電荷の大きさを qq、質量を mm、数密度を nn、電場の大きさを EE とする。散乱直後に速度 0 となり、次の散乱までの時間が 2τ2\tau であるから、加速度の大きさは qEm. \frac{qE}{m}. 一回の自由飛行中の平均速度は va=12τ02τqEmtdt=qEτm. v_a=\frac{1}{2\tau}\int_0^{2\tau}\frac{qE}{m}t\,dt =\frac{qE\tau}{m}. 電流密度は j=nqva=nq2τmE j=nqv_a=\frac{nq^2\tau}{m}E である。したがってオームの法則 j=σE j=\sigma E が成り立ち、電気伝導率は σ=nq2τm. \sigma=\frac{nq^2\tau}{m}. 円柱断面で一様に電流が流れるとき j=Iπa2 j=\frac{I}{\pi a^2} であるから、単位時間・単位体積あたりのジュール熱は J=jE=j2σ=I2σπ2a4. J=jE=\frac{j^2}{\sigma} =\frac{I^2}{\sigma\pi^2a^4}. 一回の散乱で失われる電子一個あたりの運動エネルギーは 12m(qEm2τ)2=2q2E2τ2m. \frac{1}{2}m\left(\frac{qE}{m}2\tau\right)^2 =\frac{2q^2E^2\tau^2}{m}. 散乱頻度は 1/(2τ)1/(2\tau) であるから、単位時間・単位体積あたりに失われる運動エネルギーは n12τ2q2E2τ2m=nq2τmE2=σE2=J. n\frac{1}{2\tau}\frac{2q^2E^2\tau^2}{m} =\frac{nq^2\tau}{m}E^2 =\sigma E^2 =J.
  2. 材質が一様である場合、導体内部の電場は Ez=Iσπa2. E_z=\frac{I}{\sigma\pi a^2}. 半径 r<ar<a の円周を回るアンペールの法則から Hϕ(r)=Ienc2πr=Ir2πa2. H_\phi(r)=\frac{I_{\mathrm{enc}}}{2\pi r} =\frac{Ir}{2\pi a^2}. よって S=E×H=EzHϕer \boldsymbol S=\boldsymbol E\times\boldsymbol H =-E_zH_\phi\,\boldsymbol e_r であり、向きは半径方向内向き、大きさは S(r)=I2r2π2σa4. |\boldsymbol S(r)| =\frac{I^2r}{2\pi^2\sigma a^4}. 半径 rr、長さ LL の内側領域へ単位時間に流入するエネルギーは側面積分で Pin(r)=S(r)2πrL=I2r2Lπσa4. P_{\mathrm{in}}(r) =|\boldsymbol S(r)|\,2\pi rL =\frac{I^2r^2L}{\pi\sigma a^4}. 一方、この領域内で発生するジュール熱は PJ(r)=j2σπr2L=I2r2Lπσa4. P_J(r)=\frac{j^2}{\sigma}\pi r^2L =\frac{I^2r^2L}{\pi\sigma a^4}. したがって両者は一致する。
  3. 電気伝導率が σ(r)\sigma(r) のとき、軸方向電場を EzE_z と書くと j(r)=σ(r)Ez. j(r)=\sigma(r)E_z. 全電流が II であることから I=2πEz0aσ(s)sds,Ez=I2π0aσ(s)sds. I=2\pi E_z\int_0^a\sigma(s)s\,ds, \qquad E_z=\frac{I}{2\pi\int_0^a\sigma(s)s\,ds}. よって j(r)=Iσ(r)2π0aσ(s)sds. j(r)= \frac{I\sigma(r)}{2\pi\int_0^a\sigma(s)s\,ds}. 半径 rr の円内に含まれる電流は Ienc(r)=2πEz0rσ(s)sds I_{\mathrm{enc}}(r)=2\pi E_z\int_0^r\sigma(s)s\,ds なので Hϕ(r)=Ienc(r)2πr=Ezr0rσ(s)sds. H_\phi(r)=\frac{I_{\mathrm{enc}}(r)}{2\pi r} =\frac{E_z}{r}\int_0^r\sigma(s)s\,ds. 半径 rr の領域へ流入するエネルギーは Pin(r)=2πrLEzHϕ(r)=2πLEz20rσ(s)sds. P_{\mathrm{in}}(r) =2\pi rL E_zH_\phi(r) =2\pi L E_z^2\int_0^r\sigma(s)s\,ds. 領域内のジュール熱は PJ(r)=0rσ(s)Ez22πsLds=2πLEz20rσ(s)sds. P_J(r)=\int_0^r \sigma(s)E_z^2\,2\pi sL\,ds =2\pi L E_z^2\int_0^r\sigma(s)s\,ds. 非一様な場合にも両者は一致する。

最終答

% va=qEτm,σ=nq2τm,J=I2σπ2a4. v_a=\frac{qE\tau}{m},\qquad \sigma=\frac{nq^2\tau}{m},\qquad J=\frac{I^2}{\sigma\pi^2a^4}. 一様導体内部では S(r)=I2r2π2σa4er, \boldsymbol S(r) =-\frac{I^2r}{2\pi^2\sigma a^4}\boldsymbol e_r, 半径 rr の円柱領域へ流入するエネルギーは、その領域で発生するジュール熱 I2r2Lπσa4 \frac{I^2r^2L}{\pi\sigma a^4} に等しい。非一様な場合も j(r)=Iσ(r)2π0aσ(s)sds j(r)= \frac{I\sigma(r)}{2\pi\int_0^a\sigma(s)s\,ds} として同じ等式が成り立つ。

3 — スピン1の磁気共鳴と四極子摂動

回転座標系では単純なラビ振動になる

実験室系では交流磁場が時間依存するが、共鳴条件で回転座標系に移ると、スピンは xx 方向の一定磁場を受ける問題に帰着する。したがって期待値ベクトルは xx 軸まわりに角速度 γBRF\gamma B_{\mathrm{RF}} で回転し、Jz\langle J_z\rangle は余弦的に振動する。

四極子項はこの基底で対角

HQH_Q は一見 Jx2,Jy2J_x^2,J_y^2 を含むため非対角に見えるが、Jx2+Jy2=J2Jz2J_x^2+J_y^2=J^2-J_z^2 とまとめると 3Jz2J23J_z^2-J^2 になる。したがって一次摂動では固有状態を混ぜず、m=±1m=\pm1 が同じだけ上がり、m=0m=0 が下がる。準位間隔が左右で異なる点が、摂動なしの場合との違いである。

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基底を 1,1,1,0,1,1 |1,1\rangle,\quad |1,0\rangle,\quad |1,-1\rangle の順に取る。

  1. 昇降演算子 J±J,m=(Jm)(J±m+1)J,m±1 J_\pm|J,m\rangle =\hbar\sqrt{(J\mp m)(J\pm m+1)}\,|J,m\pm1\rangle Jx=J++J2,Jy=J+J2i J_x=\frac{J_++J_-}{2},\qquad J_y=\frac{J_+-J_-}{2i} から、J=1J=1 では Jx=2(010101010), J_x=\frac{\hbar}{\sqrt2} \begin{pmatrix} 0&1&0\\ 1&0&1\\ 0&1&0 \end{pmatrix}, Jy=2(0i0i0i0i0),Jz=(100000001). J_y=\frac{\hbar}{\sqrt2} \begin{pmatrix} 0&-i&0\\ i&0&-i\\ 0&i&0 \end{pmatrix}, \qquad J_z=\hbar \begin{pmatrix} 1&0&0\\ 0&0&0\\ 0&0&-1 \end{pmatrix}.
  2. 静磁場を B=(0,0,B)\boldsymbol B=(0,0,B) とすると HM=γBJz. H_M=-\gamma B J_z. よってエネルギーは Em=γBm(m=1,0,1) E_m=-\gamma B\hbar m\qquad(m=1,0,-1) であり、 γB,0,+γB -\gamma B\hbar,\quad 0,\quad +\gamma B\hbar の三準位をもつ。最低エネルギー状態は 1,1|1,1\rangle である。
  3. 共鳴条件は ω=γB,ω=γB \hbar\omega=\gamma B\hbar,\qquad \omega=\gamma B である。回転座標系で有効ハミルトニアンを HRF=γBRFJx H_{\mathrm{RF}}=-\gamma B_{\mathrm{RF}}J_x と近似する。初期状態は 1,1|1,1\rangle であるから、Ω=γBRF\Omega=\gamma B_{\mathrm{RF}}θ=Ωt\theta=\Omega t とおくと Ψ(t)=eiθJx/1,1. |\Psi(t)\rangle =e^{i\theta J_x/\hbar}|1,1\rangle. 係数表示は Ψ(t)=1+cosθ21,1+isinθ21,0+cosθ121,1. |\Psi(t)\rangle =\frac{1+\cos\theta}{2}|1,1\rangle +\frac{i\sin\theta}{\sqrt2}|1,0\rangle +\frac{\cos\theta-1}{2}|1,-1\rangle. 実験室系の状態を ψ(t)|\psi(t)\rangle とし Ψ(t)=eiωtJz/ψ(t) |\Psi(t)\rangle=e^{-i\omega tJ_z/\hbar}|\psi(t)\rangle と定義しているなら ψ(t)=eiωtJz/Ψ(t) |\psi(t)\rangle =e^{i\omega tJ_z/\hbar}|\Psi(t)\rangle である。JzJ_z はこの変換と可換なので期待値は同じで Jz(t)=cos(Ωt)=cos(γBRFt). \langle J_z\rangle(t) =\hbar\cos(\Omega t) =\hbar\cos(\gamma B_{\mathrm{RF}}t).
  4. HQ=A(2Jz2Jy2Jx2) H_Q=A(2J_z^2-J_y^2-J_x^2) である。Jx2+Jy2+Jz2=J2=22J_x^2+J_y^2+J_z^2=J^2=2\hbar^2 を用いると HQ=A(3Jz2J2). H_Q=A(3J_z^2-J^2). したがって 1,m|1,m\rangle に対する一次摂動エネルギーは ΔEm(1)=A2(3m22). \Delta E_m^{(1)} =A\hbar^2(3m^2-2). 全エネルギーは Em=γBm+A2(3m22). E_m=-\gamma B\hbar m+A\hbar^2(3m^2-2). 具体的には E1=γB+A2,E0=2A2,E1=+γB+A2. E_{1}=-\gamma B\hbar+A\hbar^2,\qquad E_{0}=-2A\hbar^2,\qquad E_{-1}=+\gamma B\hbar+A\hbar^2.

最終答

% Jx=2(010101010),Jy=2(0i0i0i0i0),Jz=(100000001). J_x=\frac{\hbar}{\sqrt2} \begin{pmatrix}0&1&0\\1&0&1\\0&1&0\end{pmatrix},\quad J_y=\frac{\hbar}{\sqrt2} \begin{pmatrix}0&-i&0\\i&0&-i\\0&i&0\end{pmatrix},\quad J_z=\hbar \begin{pmatrix}1&0&0\\0&0&0\\0&0&-1\end{pmatrix}. Em=γBm,Jz=cos(γBRFt), E_m=-\gamma B\hbar m,\qquad \langle J_z\rangle=\hbar\cos(\gamma B_{\mathrm{RF}}t), Em=γBm+A2(3m22). E_m=-\gamma B\hbar m+A\hbar^2(3m^2-2).

4 — 一次元古典気体と剛体棒気体

一次元でもギブス因子は必要

同種粒子を古典的に扱う場合でも、同じ配置を粒子ラベルで N!N! 回数えてしまうため、分配関数には 1/N!1/N! を入れる。これを落とすと自由エネルギーの NN 依存性が誤り、化学ポテンシャルも正しく出ない。

λ\lambda の意味

λ\lambda は運動量積分から現れる量で、長さの次元を持つ。条件 Nλ/L1N\lambda/L\ll1 は、一次元密度 N/LN/L と量子波長の積が小さいという条件であり、熱波長が平均粒子間隔より十分短いことを意味する。

状態方程式の違い

理想気体では pL=NkBTpL=Nk_{\mathrm B}T である。剛体棒気体では粒子中心が使える長さが LNdL-Nd に減るため、同じ LLTT なら圧力は理想気体より大きい。相互作用の効果が、一次元では特に明確に「利用可能体積の減少」として現れる。

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温度を TTβ=(kBT)1\beta=(k_{\mathrm B}T)^{-1}、熱的ド・ブロイ波長を λ=h2πmkBT=2π2mkBT \lambda=\frac{h}{\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B}T}} =\sqrt{\frac{2\pi\hbar^2}{m k_{\mathrm B}T}} とする。

  1. 相互作用のない一次元古典気体では、一粒子分配関数は z1=1h0Ldxexp(βp22m)dp=Lλ. z_1=\frac{1}{h}\int_0^L dx\int_{-\infty}^{\infty} \exp\left(-\beta\frac{p^2}{2m}\right)dp =\frac{L}{\lambda}. 同種粒子なのでギブス因子 1/N!1/N! を入れて ZA=1N!(Lλ)N. Z_A=\frac{1}{N!}\left(\frac{L}{\lambda}\right)^N.
  2. スターリング公式を用いると lnZANlnLλNlnN+N=N[lnLNλ+1]. \ln Z_A \simeq N\ln\frac{L}{\lambda}-N\ln N+N =N\left[\ln\frac{L}{N\lambda}+1\right]. したがって自由エネルギーは FA(T,L)=kBTlnZA=NkBT[lnNλL1]. F_A(T,L) =-k_{\mathrm B}T\ln Z_A =Nk_{\mathrm B}T \left[\ln\frac{N\lambda}{L}-1\right].
  3. 化学ポテンシャルは μA=(FAN)T,L=kBTlnNλL. \mu_A=\left(\frac{\partial F_A}{\partial N}\right)_{T,L} =k_{\mathrm B}T\ln\frac{N\lambda}{L}.
  4. ボルツマン統計で各一粒子状態の平均占有数が小さいためには、典型的に eμ/(kBT)1 e^{\mu/(k_{\mathrm B}T)}\ll1 が必要である。上の結果から NλL1 \frac{N\lambda}{L}\ll1 となる。ここで λ\lambda は長さの次元を持ち、粒子の量子的な波束の広がりを表す熱的ド・ブロイ波長である。したがって条件は、平均粒子間隔 L/NL/Nλ\lambda より十分大きく、量子統計による粒子交換の効果が無視できるという意味をもつ。
  5. 剛体的な排除距離 dd をもつ一次元気体では、粒子を左から順に並べたときに、各粒子が長さ dd だけ利用可能長を減らす。端との排除も含めると、配置空間の有効長は LNd L-Nd である。したがって ZB=1N!(LNdλ)N Z_B=\frac{1}{N!} \left(\frac{L-Nd}{\lambda}\right)^N である。自由エネルギーは FB=NkBT[lnNλLNd1]. F_B=Nk_{\mathrm B}T \left[\ln\frac{N\lambda}{L-Nd}-1\right]. 一次元の圧力を p=(FBL)T,N p=-\left(\frac{\partial F_B}{\partial L}\right)_{T,N} と定義すれば p=NkBTLNd. p=\frac{Nk_{\mathrm B}T}{L-Nd}. すなわち p(LNd)=NkBT. p(L-Nd)=Nk_{\mathrm B}T.

最終答

% ZA=1N!(Lλ)N,FA=NkBT[lnNλL1], Z_A=\frac{1}{N!}\left(\frac{L}{\lambda}\right)^N,\qquad F_A=Nk_{\mathrm B}T\left[\ln\frac{N\lambda}{L}-1\right], μA=kBTlnNλL,NλL1. \mu_A=k_{\mathrm B}T\ln\frac{N\lambda}{L},\qquad \frac{N\lambda}{L}\ll1. 剛体棒気体では ZB=1N!(LNdλ)N,p(LNd)=NkBT. Z_B=\frac{1}{N!} \left(\frac{L-Nd}{\lambda}\right)^N,\qquad p(L-Nd)=Nk_{\mathrm B}T.

5 — 界面のTM波・全反射・表面プラズモン

TM偏光であることが重要

磁場が yy 成分だけを持つので、電場は入射面内の x,zx,z 成分を持つ。これはTM偏光である。表面プラズモンはTM偏光でなければ電荷密度振動と結合できないため、TE波の式を使うと境界条件が合わない。

減衰波でも界面方向には振動する

全反射時の真空側の場は、界面に垂直な方向には指数減衰するが、界面に沿う方向には eikxxe^{ik_xx} として振動する。この kxk_x は入射側媒質の屈折率によって ω/c\omega/c より大きくできる。

大小関係の検算

ε2>ε0|\varepsilon_2|>\varepsilon_0 なので ε2ε2ε0>1. \frac{|\varepsilon_2|}{|\varepsilon_2|-\varepsilon_0}>1. したがって表面波の kxk_x は真空中の光の波数 ω/c\omega/c より大きい。この不等式こそが、プリズムを使う理由の最短の説明になる。

2012年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

時間依存性を eiωte^{-i\omega t} とし、界面を z=0z=0 とする。磁場は yy 成分だけを持つTM偏光を考える。各媒質で 2E+ω2μ0εjE=0 \nabla^2\boldsymbol E+\omega^2\mu_0\varepsilon_j\boldsymbol E=0 が成り立つ。

  1. 媒質 1 の屈折率を nn、媒質 2 を真空とする。媒質 1 で伝播波、媒質 2 で減衰波となるには kx2+k12=(nωc)2,kx2k22=(ωc)2 k_x^2+k_1^2=\left(\frac{n\omega}{c}\right)^2, \qquad k_x^2-k_2^2=\left(\frac{\omega}{c}\right)^2 が必要である。したがって k1=(nωc)2kx2,k2=kx2(ωc)2. k_1=\sqrt{\left(\frac{n\omega}{c}\right)^2-k_x^2}, \qquad k_2=\sqrt{k_x^2-\left(\frac{\omega}{c}\right)^2}. k1,k2k_1,k_2 がともに実正となる条件は ωc<kx<nωc. \frac{\omega}{c}<k_x<\frac{n\omega}{c}.
  2. 媒質 1 から媒質 2 へ反射なしに透過するTM波を考える。波数ベクトルを (kx,0,kj)(k_x,0,k_j)、磁場を HyH_y とすると、マクスウェル方程式から Ex=kjωεjHy. E_x=\frac{k_j}{\omega\varepsilon_j}H_y. したがって ζjEj,xHj,y=kjωεj. \zeta_j\equiv\frac{E_{j,x}}{H_{j,y}} =\frac{k_j}{\omega\varepsilon_j}. 反射がないためには接線成分 Ex,HyE_x,H_y が同時に連続し、ζ1=ζ2\zeta_1=\zeta_2 でなければならない。すなわち k1ε1=k2ε2. \frac{k_1}{\varepsilon_1} =\frac{k_2}{\varepsilon_2}. さらに kj2=ω2μ0εjkx2 k_j^2=\omega^2\mu_0\varepsilon_j-k_x^2 を用いると kx2=ω2μ0ε1ε2ε1+ε2. k_x^2=\omega^2\mu_0 \frac{\varepsilon_1\varepsilon_2}{\varepsilon_1+\varepsilon_2}. よって kx=ωμ0ε1ε2ε1+ε2. k_x=\omega\sqrt{\mu_0 \frac{\varepsilon_1\varepsilon_2}{\varepsilon_1+\varepsilon_2}}.
  3. 媒質 1 を真空、媒質 2 を金属とし、 ε1=ε0,ε2<ε0 \varepsilon_1=\varepsilon_0,\qquad \varepsilon_2<-\varepsilon_0 とする。両側で界面から離れる向きに減衰するTM表面波では κj2=kx2ω2μ0εj \kappa_j^2=k_x^2-\omega^2\mu_0\varepsilon_j であり、境界条件は κ1ε1+κ2ε2=0 \frac{\kappa_1}{\varepsilon_1} +\frac{\kappa_2}{\varepsilon_2}=0 となる。これを解くと表面波の分散関係は kx2=ω2μ0ε1ε2ε1+ε2. k_x^2=\omega^2\mu_0 \frac{\varepsilon_1\varepsilon_2}{\varepsilon_1+\varepsilon_2}. ε2=ε2\varepsilon_2=-|\varepsilon_2| と書けば kx=ωcε2ε2ε0. k_x =\frac{\omega}{c} \sqrt{\frac{|\varepsilon_2|} {|\varepsilon_2|-\varepsilon_0}}. したがって kx>ωc. k_x>\frac{\omega}{c}.
  4. 真空中を伝わる光を金属表面へ直接入射しても、界面方向の波数成分は最大でも ω/c\omega/c である。しかし表面波は kx>ω/ck_x>\omega/c を必要とするため、直接入射では運動量が不足する。 高屈折率プリズムを用いて全反射条件にすると、真空側には減衰波が生じる。この減衰波は光の振動数を保ったまま、界面方向に ωc<kx<nωc \frac{\omega}{c}<k_x<\frac{n\omega}{c} の大きな波数成分を持てる。したがって金属表面波との波数整合が可能になり、表面プラズモンを効率よく励起できる。

最終答

% 全反射で真空側に減衰波を作る条件は ωc<kx<nωc. \frac{\omega}{c}<k_x<\frac{n\omega}{c}. TM波の反射なし条件は kx=ωμ0ε1ε2ε1+ε2. k_x=\omega\sqrt{\mu_0 \frac{\varepsilon_1\varepsilon_2}{\varepsilon_1+\varepsilon_2}}. 真空・金属界面の表面波は kx=ωcε2ε2ε0>ωc. k_x =\frac{\omega}{c} \sqrt{\frac{|\varepsilon_2|} {|\varepsilon_2|-\varepsilon_0}} >\frac{\omega}{c}. プリズム配置は、この不足する界面方向波数を全反射の減衰場で補う。

6 — 一次元結晶の強束縛近似

ブロッホ和と最近接近似

原子軌道を周期的に並べた強束縛近似では、ブロッホ位相 eikjae^{ikja} を付けて足し合わせる。最近接だけを残すと、対角項はオンサイトエネルギー、非対角項は隣の軌道へ移るホッピングを表す。これが余弦分散 2γcoska2\gamma\cos ka を生む。

有効質量は曲率で読む

有効質量は分散の二階微分で決まる。バンド底の電子は正の曲率を持つので正の有効質量を持つ。満杯に近いバンドでは動くキャリアは電子の抜け穴、すなわち正孔であり、バンド頂上の負の電子曲率を正孔の正の有効質量として読む。

混成は交差を反交差に変える

δ=0\delta=0 では AA バンドと BB 準位は交差してよい。有限の δ\delta があると、同じ kk を持つ二状態が混ざるため、交差点でエネルギー差 2δ2|\delta| の隙間が開く。固体物理でいうバンド反発の最も基本的な例である。

2012年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

格子定数を aa、単位胞数を MM とし、周期境界条件を課す。

  1. ブロッホ型の試行関数 ψk(x)=j=1MeikjaϕA(xja) \psi_k(x)=\sum_{j=1}^M e^{ikja}\phi_A(x-ja) が周期境界条件を満たすには eikMa=1 e^{ikMa}=1 が必要である。したがって k=2πnMa k=\frac{2\pi n}{Ma} であり、第一ブリルアン域では πa<kπa -\frac{\pi}{a}<k\leq\frac{\pi}{a} と取ればよい。
  2. 最近接までの行列要素だけを残す。各原子軌道の対角項は、孤立原子のエネルギー EAE_A に両隣のイオンポテンシャルの寄与 2β2\beta を加えたものになる。最近接軌道間の非対角項を γ\gamma とすると E(k)=EA+2β+2γcoska. E(k)=E_A+2\beta+2\gamma\cos ka.
  3. 第一ブリルアン域での分散は余弦型である。安定な結晶では、隣接イオンのポテンシャルは電子に対して引力的に働くので β<0\beta<0 と考えられる。また結合性の組合せが低エネルギーになる通常の場合、γ<0\gamma<0 であり、バンドの底は k=0k=0、頂上は k=π/ak=\pi/a になる。
  4. バンド底近くでは E(k)EA+2β+2γγa2k2. E(k)\simeq E_A+2\beta+2\gamma-\gamma a^2k^2. 有効質量を 1m=12d2Edk2 \frac{1}{m^*}=\frac{1}{\hbar^2}\frac{d^2E}{dk^2} で定義すると、低密度電子の有効質量は me=22γa2=22γa2 m_e^*=\frac{\hbar^2}{-2\gamma a^2} =\frac{\hbar^2}{2|\gamma|a^2} である。バンドがほぼ満たされている場合のキャリアは正孔であり、バンド頂上近くの正孔有効質量は mh=22γa2. m_h^*=\frac{\hbar^2}{2|\gamma|a^2}.
  5. 次に、各単位胞に AA 軌道と BB 軌道がある場合を考える。波動関数を Ψk(x)=j=1Meikja{ckϕA(xja)+dkϕB(xja)} \Psi_k(x)= \sum_{j=1}^M e^{ikja} \{c_k\phi_A(x-ja)+d_k\phi_B(x-ja)\} とおく。AA 軌道の分散を εA(k)=EA+2β+2γcoska \varepsilon_A(k)=E_A+2\beta+2\gamma\cos ka と書き、BB 軌道の分散を無視して EBE_B とする。同一分子内の混成を δ\delta とすれば、係数は (εA(k)E(k)δδEBE(k))(ckdk)=(00) \begin{pmatrix} \varepsilon_A(k)-E(k) & \delta\\ \delta & E_B-E(k) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} c_k\\ d_k \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0\\0 \end{pmatrix} を満たす。
  6. まず δ=0\delta=0 なら E(k)=εA(k)またはE(k)=EB. E(k)=\varepsilon_A(k) \quad\text{または}\quad E(k)=E_B. すなわち、余弦型の AA バンドと平坦な BB 準位が得られる。EBE_BAA バンドの内部にある場合、両者は交差する。十分離れている場合は、交差せず独立したバンドとして見える。 δ0\delta\neq0 では E±(k)=εA(k)+EB2±(εA(k)EB2)2+δ2. E_\pm(k) =\frac{\varepsilon_A(k)+E_B}{2} \pm \sqrt{ \left(\frac{\varepsilon_A(k)-E_B}{2}\right)^2+\delta^2 }. AA バンドと BB 準位が近い場合には、交差点で幅 2δ2|\delta| の反交差が開く。十分離れている場合には、主な効果は二次のエネルギーシフト ΔE±δ2εA(k)EB \Delta E\simeq \pm\frac{\delta^2}{|\varepsilon_A(k)-E_B|} であり、分散の形は大きくは変わらない。

最終答

% eikMa=1,k=2πnMa, e^{ikMa}=1,\qquad k=\frac{2\pi n}{Ma}, EA(k)=EA+2β+2γcoska. E_A(k)=E_A+2\beta+2\gamma\cos ka. 低密度電子と満杯近くの正孔の有効質量は、γ<0\gamma<0 の通常の場合 me=mh=22γa2. m_e^*=m_h^*=\frac{\hbar^2}{2|\gamma|a^2}. 二軌道模型では E±(k)=EA+2β+2γcoska+EB2±(EA+2β+2γcoskaEB2)2+δ2. E_\pm(k) =\frac{E_A+2\beta+2\gamma\cos ka+E_B}{2} \pm \sqrt{ \left(\frac{E_A+2\beta+2\gamma\cos ka-E_B}{2}\right)^2+\delta^2 }.

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