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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2022年度 院試 解答例・解説

東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 回転磁場によるスピン遷移と Ramsey 干渉

方針

この問題は、回転磁場によるスピン反転を「遷移振幅の時間積分」として扱うのが最も見通しがよい。円偏光型の回転磁場なので、+|+\rangle|-\rangle を結ぶ非対角成分は一つの位相因子 eiωte^{-i\omega t} だけを持つ。静磁場による自由歳差を取り除く回転表示に移ると、残る位相はずれは Δ=ωω0\Delta=\omega-\omega_0 だけになる。

途中式の意味

単一パルスでは a(τ)0τeiΔtdt a(\tau)\propto\int_0^\tau e^{-i\Delta t}\,dt である。この積分は、区間 0tτ0\le t\le\tau の中で位相がどれだけそろって足し合わされるかを表す。共鳴 Δ=0\Delta=0 では全時刻の寄与が同位相なので振幅は τ\tau に比例する。一方、Δτ=2π\Delta\tau=2\pi では複素平面上で一周して打ち消し合うため、最初の零点が生じる。

Ramsey 法では a(T+τ)0τeiΔtdt+TT+τeiΔtdt a(T+\tau)\propto \int_0^\tau e^{-i\Delta t}\,dt +\int_T^{T+\tau} e^{-i\Delta t}\,dt となる。二つの積分の大きさはほぼ同じで、相対位相が eiΔTe^{-i\Delta T} である。したがって 1+eiΔT2=4cos2ΔT2 |1+e^{-i\Delta T}|^2=4\cos^2\frac{\Delta T}{2} が現れ、単一パルスの広い包絡線の中に、間隔 1/T1/T の細い干渉縞が入る。

検算

第一に、Δ0\Delta\to0 の極限で sin(Δτ/2)Δτ/21 \frac{\sin(\Delta\tau/2)}{\Delta\tau/2}\to1 となるので、P1(ω0)=(ω1τ/2)2P_1(\omega_0)=(\omega_1\tau/2)^2P2(ω0)=(ω1τ)2P_2(\omega_0)=(\omega_1\tau)^2 が得られる。二つの同位相パルスでは振幅が二倍、確率が四倍になるので、この結果は物理的に自然である。

第二に、ω1\omega_1 は角振動数、τ\tau は時間だから ω1τ\omega_1\tau は無次元であり、確率式の次元は正しい。第三に、近似 b(t)1b(t)\simeq1 を使ったので、得られた式は P11P_1\ll1、二パルスでは特に (ω1τ)21(\omega_1\tau)^2\ll1 の範囲で使うべきである。

典型ミス

よくある誤りは、ω0\omega_0ω\omega の符号を逆にして A(t)=e+i(ωω0)tA(t)=e^{+i(\omega-\omega_0)t} としてしまうことである。確率だけなら単一パルスでは同じ形になるが、Ramsey の相対位相を書く段階で混乱しやすい。ここでは行列の右上成分が eiωte^{-i\omega t} であり、α=aeiω0t/2\alpha=a e^{-i\omega_0t/2}β=beiω0t/2\beta=b e^{i\omega_0t/2} と戻して確認すれば符号を固定できる。

もう一つの誤りは、二パルスの確率を 2P12P_1 としてしまうことである。測定を挟まない場合は二つの経路は区別できないので、確率ではなく振幅を足す。したがって干渉因子 4cos2(ΔT/2)4\cos^2(\Delta T/2) が必要である。一方、途中で zz 成分を測定した場合には経路情報が残るため、今度は確率和になり 2P12P_1 が正しい。

試験で書くべきポイント

答案では、まずハミルトニアンを ω0/2\hbar\omega_0/2ω1/2\hbar\omega_1/2 を用いた行列に直すところを省略しない。ここを書けば、μ<0\mu<0 の符号処理を正しく行ったことが採点者に伝わる。

次に、回転表示で A(t)=ei(ωω0)t A(t)=e^{-i(\omega-\omega_0)t} を明示する。この一行が後半すべての出発点である。弱い遷移の計算では、b(t)1b(t)\simeq1 とした理由が「遷移確率が十分小さいから」であることを添えるとよい。

スペクトル幅については、単一パルスの零点 ω0±2π/τ\omega_0\pm2\pi/\tau と、Ramsey 中央縞の零点 ω0±π/T\omega_0\pm\pi/T を混同しないことが重要である。設問が ω0\omega_0 近傍の最近接零点を聞いている場合、TτT\gg\tau なので答えるべき幅は 2π/T2\pi/T である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 一次元格子振動

方針

前半は単原子一次元鎖の標準的な基準振動である。後半は、質量欠陥を散乱中心とみなし、欠陥から十分離れた場所では通常の分散関係がそのまま使えることを利用する。周期境界条件では散乱行列の固有値と、輪を一周した位相 eiqLe^{-iqL} を一致させるのが最短である。

散乱計算の要所

n=1n=-1 の式から出る Tq=1+Rq T_q=1+R_q は、変位の連続条件に対応する。連続媒質の弦や波動方程式で境界の変位がつながるのと同じ役割をもつが、ここでは格子の運動方程式から直接出す必要がある。

n=0n=0 の式では質量だけが MM に変わる。ここで誤って左辺を mωq2Tq-m\omega_q^2T_q としてしまうと、欠陥の効果が消えてしまう。分散関係に現れる mm は、欠陥から離れた一様部分の質量である。

検算

M=mM=mTq=1, Rq=0T_q=1,\ R_q=0 となることは必ず確認する。欠陥がないのに反射が残る式は誤りである。また MM\to\inftyTq0, Rq1T_q\to0,\ R_q\to-1 となるのは固定端反射の位相反転と一致する。

周期境界条件の見方

Sq(AqDq)=eiqL(AqDq) S_q \begin{pmatrix} A_q\\ D_q \end{pmatrix} = e^{-iqL} \begin{pmatrix} A_q\\ D_q \end{pmatrix} と見れば、許される qq は散乱行列の固有値だけで決まる。対称入射と反対称入射に分けると、固有値が Tq+RqT_q+R_qTqRqT_q-R_q に分かれるため、計算が大幅に短くなる。

典型ミス

0<q<π0<q<\pi の仮定により、q=0q=0q=πq=\pi は式の形から除かれている。特にモード数を数える小問では、進行波型で得られる数だけを答えるのではなく、残りのモードが何かを述べる必要がある。

試験で書くべきポイント

答案では、運動方程式、分散関係、境界二式、Rq=Tq1R_q=T_q-1TqT_q の順に並べると採点者が追いやすい。周期境界条件では行列式条件を一度書き、その後に M=m,2m,M=m,2m,\infty を代入して特殊化するのが安全である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 二元合金の相分離

方針

これは正則溶液模型の平均場計算である。エネルギー項 zVx(1x)zVx(1-x) は異種原子が隣り合うことへのペナルティ、エントロピー項は混合による利得を表す。高温ではエントロピーが勝って一様相が安定になり、低温ではエネルギーを下げるために A-rich 相と B-rich 相へ分かれる。

数え上げの注意

NABN_{AB}1/21/2 を付けない点が重要である。A 原子から B 隣接を数えると、A-B 対は A 側から一度だけ数えられる。A-A や B-B のように同種対を両端から数える場合とは違う。

極値と変曲点の意味

δ0\delta_0f(x)=0f'(x)=0 から決まる極小の位置で、低温側で相分離後の二つの安定組成を与える。一方、δ1\delta_1f(x)=0f''(x)=0 から決まる変曲点であり、小さな組成ゆらぎに対する安定性の境界である。したがって δ0\delta_0δ1\delta_1 を混同してはいけない。

検算

T=Tc0T=T_{c0} では δ1=0\delta_1=0 となり、スピノーダル曲線は臨界点に縮む。T0T\to0 では δ11/2\delta_1\to1/2 となり、中心付近の広い範囲が不安定になる。これは低温で異種隣接を避ける相分離傾向と一致する。

共通接線の見方

ff^* は二点 (x1,f(x1))(x_1,f(x_1)), (x2,f(x2))(x_2,f(x_2)) を結ぶ直線上で x0x_0 に対応する値である。一様相がその直線より上にあれば、二相に分かれた方が自由エネルギーを下げる。対称な模型では共存曲線が左右の極小点で決まるため、δ0\delta_0 が共存組成になる。

典型ミス

安定条件を f(x0)=0f'(x_0)=0 と書いてしまう誤りが多い。ここで問われているのは、組成 x0x_0 が外部から与えられた一様相が小さな組成ゆらぎに耐えるかどうかであり、必要なのは局所的な凸性 f(x0)>0f''(x_0)>0 である。

試験で書くべきポイント

相図を描く小問では、曲線名だけでなく領域の物理的意味を添えるとよい。共存曲線の外側が一様最安定、共存曲線とスピノーダル曲線の間が準安定、スピノーダル内側が不安定、という三層構造を明確に示すことが採点上重要である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 誘電体応答と全反射

方針

前半はローレンツ振動子模型である。電子の変位を強制減衰振動子として解き、分極 P=NqxP=-Nqx から感受率を読む。後半は、誘電率が ϵ0(1+χ)\epsilon_0(1+\chi) の媒質への斜入射であり、境界面に平行な波数成分の保存と媒質中の分散関係を組み合わせれば全反射条件が出る。

符号の確認

電子の電荷は q-q なので、電場力は qE-qE である。そのため x0x_0 には一度マイナスが付くが、分極は P=NqxP=-Nqx なので感受率は正の係数 Nq2mϵ0 \frac{Nq^2}{m\epsilon_0} をもつ形になる。ここで符号を誤ると、低周波で χR>0\chi_R>0 という物理的に自然な結果を失う。

分散曲線の見方

ω<ω0\omega<\omega_0 では電子が電場にほぼ追随するため χR>0\chi_R>0 である。共鳴を越えると応答位相が反転し、χR<0\chi_R<0 になる。問題後半で 1<χ<0-1<\chi<0 としているのは、この共鳴より高い周波数側の透明な領域を理想化していると読める。

境界条件の意味

接線方向の電場連続性は、振幅の関係だけでなく、境界面上での位相一致も要求する。したがって K0x=Kmx=Ktx K_{0x}=K_{mx}=K_{tx} が出る。これは光学でいう Snell の法則の波数版である。

全反射の検算

1<χ<0-1<\chi<0 なので媒質の屈折率は n=1+χ<1n=\sqrt{1+\chi}<1 である。高屈折率側である真空から低屈折率側へ入射しているため、十分大きい入射角で全反射が起こる。臨界条件 sinθc=1+χ \sin\theta_c=\sqrt{1+\chi} はこの直観と一致する。

典型ミス

全反射時の KtzK_{tz} の符号は、波がどちら側で減衰すべきかで決める。誘電体は z0z\le0 にあるため、 eiKtzz e^{iK_{tz}z} zz\to-\infty で減衰するには Ktz=iκK_{tz}=-i\kappa を選ぶ必要がある。逆符号を選ぶと媒質内部で指数発散する。

試験で書くべきポイント

後半は、接線波数保存、真空と誘電体の波数の大きさ、Ktz2K_{tz}^2 の符号、しみ込み長の順に書けばよい。特に z0z_0 のグラフでは、定義域 0<cos2θ0<χ0<\cos^2\theta_0<-\chi と臨界角での発散を明記することが重要である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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