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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。力学1問。テーマタグは6件(二次形式・固有値・固有ベクトル・調和振動子)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・剛体の回転運動・分配関数。

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解説4問/全4問(3,712字)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東大 物理学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1力学剛体振り子と磁気モーメント測定慣性モーメントの見落とし / 符号とモーメントあり
21次元光共振器放射圧の係数 / 共振曲線の読み方あり
3固体の比熱古典極限 / 低温で何が違うかあり
4二次非線形光学とスクイーズ状態スクイーズ変換の意味 / 安定条件あり

この年度の解説には典型ミス4件・試験で書くべきポイント3件・検算1件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に6テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 4問 → 2024年度 4
2024年度で新しく出たテーマ
二次形式調和振動子
2023年度のページを見る

1 — 剛体振り子と磁気モーメント測定

方針

前半は剛体振り子であり,支点まわりの慣性モーメントと重力の復元モーメントを正しく作ればよい。後半はソレノイドのインダクタンスが鉄芯の挿入長に比例することを使い,磁気エネルギーの変化から鉄芯を引き込む力を求める。

慣性モーメントの見落とし

中心軸に垂直な軸まわりでは,棒を細い棒として扱った Ml02/12Ml_0^2/12 だけでは不足する。半径 aa をもつ円柱なので,薄い円板の直径まわりの寄与 Ma2/4Ma^2/4 が残る。最後に支点 OO が重心から h=l1l0/2h=l_1-l_0/2 だけ離れているため,平行軸の定理で Mh2Mh^2 を加える。

符号とモーメント

静止条件では,点 PP に働く水平力のモーメント F1l1cosθ0F_1l_1\cos\theta_0 と,重力のモーメント Mghsinθ0Mgh\sin\theta_0 が反対向きになる。小角近似の周期では外力 F1F_1 はすでに取り除かれているので,復元力は重力だけである。

検算

a0a\to 0 とすれば細い棒の慣性モーメントに戻る。また θ00\theta_0\to0 では Ω00\Omega_0\to0 となり,エネルギー式の極限も自然である。ソレノイド部分では LL の単位は μN2Aξ(NA2)(m2)(m2)(m)=kgm2A2s2\mu N^2A\xi\sim(\mathrm{N\,A^{-2}})(\mathrm{m^{-2}})(\mathrm{m^2})(\mathrm{m})=\mathrm{kg\,m^2\,A^{-2}\,s^{-2}} で,インダクタンスの単位になっている。

典型ミス

鉄芯を引き込む力の向きを,棒に加える外力 F2F_2 の向きと混同しやすい。力の大きさはエネルギー法で F2=(I2/2)L/ξF_2=(I^2/2)\partial L/\partial\xi と求め,最後に支点まわりの腕の長さ l1l_1l0l1l_0-l_1 でつり合いを取る。数値問題では Oe/cm を A/m2^2 に直すとき,cm から m への変換をもう一度掛ける点が失点源である。

剛体振り子と磁気モーメント測定の途中式・最終答をPDFで見る

2 — 1次元光共振器

方針

完全導体鏡では接線電場が節になる。したがって前半は固定端の定在波問題であり,放射圧は鏡面での磁場エネルギー密度から求める。後半は Fabry--Perot 型の多重反射を等比級数として足し合わせ,定在波腹の振幅を調べる。

放射圧の係数

定在波の腹の電場振幅 E0E_0 は,片道進行波の振幅の 2 倍である。そのため完全反射で運動量が 2 倍変化することを直接使っても,Maxwell 応力を使っても P=ε0E02/4 P=\varepsilon_0E_0^2/4 になる。ここで 1/21/2 は時間平均,もう一つの 1/21/2 は鏡面での応力 B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0) から来る,と整理しておくと係数を間違えにくい。

共振曲線の読み方

振幅増大率の分母は (1r)2+4rsin2(kΔ) (1-r)^2+4r\sin^2(k\Delta) である。半値幅の条件は強度ではなく,問題で指定された E0/E1E_0/E_1 の値に対して立てる。最大振幅の 1/21/\sqrt2 なので,分母は最大時の 2\sqrt2 倍になり,上の Δ\Delta が得られる。

典型ミス

光ばねの符号は,力そのものではなく力の変位微分で決まる。鏡 2 が右へ動いたとき放射圧が増えれば,ばねの復元力を打ち消す向きに働き,有効ばね定数は小さくなる。放射圧が減れば,復元力が追加され,有効ばね定数は大きくなる。

試験で書くべきポイント

多重反射の和,半値幅の式,光ばねの符号判定をそれぞれ一行ずつ明示することが重要である。最後の設問は定性的説明を求めているため,結論だけでなく「鏡 2 の正方向変位で共振に近づくか遠ざかるか」を必ず書く。

1次元光共振器の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 固体の比熱

方針

古典模型では等分配則,量子単一振動数模型では Bose 分布,デバイ模型では振動数分布を積分する,という三段階の比較問題である。分配関数から U=βlogZU=-\partial_\beta\log Z を使うと,ゼロ点エネルギーの扱いも含めて最も安全に進められる。

古典極限

1 次元調和振動子 1 個には運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの 2 つの二次形式があり,平均エネルギーは kBTk_BT である。したがって 3 次元固体の 3N3N モードでは C=3NkBC=3Nk_B となる。これは Dulong--Petit の法則であり,高温極限の検算に使える。

低温で何が違うか

単一振動数の量子模型では,基底状態から最初の励起状態まで ω\hbar\omega のギャップがある。そのため低温比熱は eω/(kBT)e^{-\hbar\omega/(k_BT)} で抑制される。一方デバイ模型には ω0\omega\simeq0 の音響モードがあり,低温でも長波長モードが励起できる。この低振動数状態数 g(ω)ω2g(\omega)\propto\omega^2T3T^3 則の原因である。

典型ミス

デバイ模型の内部エネルギーにゼロ点エネルギーを含めても,熱容量では温度微分により消える。低温近似では上限を \infty にしてよいが,高温近似で同じ操作をしてはいけない。高温では x1x\ll1 の展開を使い,モード数が 3N3N であることに戻る。

試験で書くべきポイント

グラフを描く場合は,横軸を TT,縦軸を CC として,CIC_{\mathrm{I}} は水平線,CIIC_{\mathrm{II}} は低温で指数関数的に 0 から立ち上がり高温で 3NkB3Nk_B に漸近,CIIIC_{\mathrm{III}} は低温で T3T^3 から立ち上がり同じ高温値に漸近,と明示すればよい。

固体の比熱の途中式・最終答をPDFで見る

4 — 二次非線形光学とスクイーズ状態

方針

ハミルトニアンが a^2+a^2\hat{a}^{\dagger2}+\hat{a}^2 を含むため,通常の数演算子の固有状態では対角化されない。スクイーズ変換で二次形式を対角化し,基底状態の揺らぎを読むのが本問の中心である。

スクイーズ変換の意味

x^\hat{x}p^\hat{p}x^erx^,p^erp^ \hat{x}\to e^{-r}\hat{x},\qquad \hat{p}\to e^r\hat{p} と変換される。面積 σxσp\sigma_x\sigma_p は変えず,一方の揺らぎを小さくする代わりに他方を大きくする。したがって非線形光学効果は,真空揺らぎを片方の quadrature に押し込む操作として理解できる。

安定条件

ω>Δ\omega>\Delta でのみ tanh2r=Δ/ω\tanh2r=\Delta/\omega を満たす実数 rr が存在する。これは Heisenberg 方程式の固有値が実数である条件と同じである。対角化の存在と時間発展の安定性が同じ不等式で表されることは,答えの重要な検算になる。

典型ミス

S^H^S^\hat{S}^\dagger\hat{H}\hat{S} を計算するとき,a^a^=a^a^+1\hat{a}\hat{a}^\dagger=\hat{a}^\dagger\hat{a}+1 の定数項を落としやすい。この定数項が E(r)E(r) であり,基底エネルギーを求める場合には必要である。また,分散は σx\sigma_x ではなく σx2\sigma_x^2 を問われることが多いため,平方根の位置を確認する。

試験で書くべきポイント

偶数光子成分だけが現れる理由は,式を展開しなくても,S^(r)\hat{S}(r) が光子数を 2 個単位で変える演算子から作られていることを述べれば十分である。臨界点の時間発展では M2=0M^2=0 を示してから指数関数を一次で打ち切ると,計算量を大きく減らせる。

二次非線形光学とスクイーズ状態の途中式・最終答をPDFで見る

東大 物理学 院試 過去問の収録15年度

  • 2026年度(全4問)

    剛体回転と磁気トルク / 調和振動子と突然近似 / ゴム弾性の統計力学

  • 2025年度(全4問)

    減衰振動と揺動応答 / 一次元障壁散乱 / 平均場イジング模型

  • 2024年度(このページ・全4問)

    剛体振り子と磁気モーメント測定 / 1次元光共振器 / 固体の比熱

  • 2023年度(全4問)

    量子井戸と対称性 / 支点加振振り子 / 古典気体の回転平衡

  • 2022年度(全4問)

    回転磁場によるスピン遷移と Ramsey 干渉 / 一次元格子振動 / 二元合金の相分離

  • 2021年度(全4問)

    量子ビットの時間発展とゲート生成 / 等方弾性体の応力と弾性波反射 / 理想ボース気体とボース凝縮

  • 2020年度(全4問)

    固定端ばね鎖の固有振動 / 一軸性結晶中の電磁波 / 理想気体と吸着等温式

  • 2019年度(全6問)

    午前・軌道力学と重力勾配 / 午前・誘導加熱と円環電流 / 午後・デルタ障壁と二粒子干渉

  • 2018年度(全6問)

    午前・半円筒上の滑りと転がり / 午前・球形コンデンサと漏れ電流 / 午後・デルタ井戸と二粒子交換

  • 2017年度(全6問)

    午前・摩擦つき連結物体と安定性 / 午前・電気双極子と鏡像法 / 午後・井戸中の二フェルミ粒子

  • 2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    午前・振り子と二重振り子 / 午前・導体リングと電磁誘導 / 午後・調和振動子のコヒーレント状態

  • 2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    午前・跳ね返る剛体球 / 午前・線電荷と円筒導体の鏡像法 / 午後・二重井戸と二粒子トンネル

  • 2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    午前・中心力とラプラス--ルンゲ--レンツベクトル / 午前・電磁場とLC振動 / 午後・スピン軌道相互作用

  • 2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    粗い円柱のつり合いと滑りから転がりへの移行 / 平行平板間の空間電荷制限電流 / 調和振動子の遷移と非調和摂動

  • 2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    円板に巻き付く糸につながれた質点 / 円柱導体のジュール熱とポインティングベクトル / スピン1の磁気共鳴と四極子摂動