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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2024年度 院試 解答例・解説

東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 物理学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 剛体振り子と磁気モーメント測定

方針

前半は剛体振り子であり,支点まわりの慣性モーメントと重力の復元モーメントを正しく作ればよい。後半はソレノイドのインダクタンスが鉄芯の挿入長に比例することを使い,磁気エネルギーの変化から鉄芯を引き込む力を求める。

慣性モーメントの見落とし

中心軸に垂直な軸まわりでは,棒を細い棒として扱った Ml02/12Ml_0^2/12 だけでは不足する。半径 aa をもつ円柱なので,薄い円板の直径まわりの寄与 Ma2/4Ma^2/4 が残る。最後に支点 OO が重心から h=l1l0/2h=l_1-l_0/2 だけ離れているため,平行軸の定理で Mh2Mh^2 を加える。

符号とモーメント

静止条件では,点 PP に働く水平力のモーメント F1l1cosθ0F_1l_1\cos\theta_0 と,重力のモーメント Mghsinθ0Mgh\sin\theta_0 が反対向きになる。小角近似の周期では外力 F1F_1 はすでに取り除かれているので,復元力は重力だけである。

検算

a0a\to 0 とすれば細い棒の慣性モーメントに戻る。また θ00\theta_0\to0 では Ω00\Omega_0\to0 となり,エネルギー式の極限も自然である。ソレノイド部分では LL の単位は μN2Aξ(NA2)(m2)(m2)(m)=kgm2A2s2\mu N^2A\xi\sim(\mathrm{N\,A^{-2}})(\mathrm{m^{-2}})(\mathrm{m^2})(\mathrm{m})=\mathrm{kg\,m^2\,A^{-2}\,s^{-2}} で,インダクタンスの単位になっている。

典型ミス

鉄芯を引き込む力の向きを,棒に加える外力 F2F_2 の向きと混同しやすい。力の大きさはエネルギー法で F2=(I2/2)L/ξF_2=(I^2/2)\partial L/\partial\xi と求め,最後に支点まわりの腕の長さ l1l_1l0l1l_0-l_1 でつり合いを取る。数値問題では Oe/cm を A/m2^2 に直すとき,cm から m への変換をもう一度掛ける点が失点源である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 1次元光共振器

方針

完全導体鏡では接線電場が節になる。したがって前半は固定端の定在波問題であり,放射圧は鏡面での磁場エネルギー密度から求める。後半は Fabry--Perot 型の多重反射を等比級数として足し合わせ,定在波腹の振幅を調べる。

放射圧の係数

定在波の腹の電場振幅 E0E_0 は,片道進行波の振幅の 2 倍である。そのため完全反射で運動量が 2 倍変化することを直接使っても,Maxwell 応力を使っても P=ε0E02/4 P=\varepsilon_0E_0^2/4 になる。ここで 1/21/2 は時間平均,もう一つの 1/21/2 は鏡面での応力 B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0) から来る,と整理しておくと係数を間違えにくい。

共振曲線の読み方

振幅増大率の分母は (1r)2+4rsin2(kΔ) (1-r)^2+4r\sin^2(k\Delta) である。半値幅の条件は強度ではなく,問題で指定された E0/E1E_0/E_1 の値に対して立てる。最大振幅の 1/21/\sqrt2 なので,分母は最大時の 2\sqrt2 倍になり,上の Δ\Delta が得られる。

典型ミス

光ばねの符号は,力そのものではなく力の変位微分で決まる。鏡 2 が右へ動いたとき放射圧が増えれば,ばねの復元力を打ち消す向きに働き,有効ばね定数は小さくなる。放射圧が減れば,復元力が追加され,有効ばね定数は大きくなる。

試験で書くべきポイント

多重反射の和,半値幅の式,光ばねの符号判定をそれぞれ一行ずつ明示することが重要である。最後の設問は定性的説明を求めているため,結論だけでなく「鏡 2 の正方向変位で共振に近づくか遠ざかるか」を必ず書く。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 固体の比熱

方針

古典模型では等分配則,量子単一振動数模型では Bose 分布,デバイ模型では振動数分布を積分する,という三段階の比較問題である。分配関数から U=βlogZU=-\partial_\beta\log Z を使うと,ゼロ点エネルギーの扱いも含めて最も安全に進められる。

古典極限

1 次元調和振動子 1 個には運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの 2 つの二次形式があり,平均エネルギーは kBTk_BT である。したがって 3 次元固体の 3N3N モードでは C=3NkBC=3Nk_B となる。これは Dulong--Petit の法則であり,高温極限の検算に使える。

低温で何が違うか

単一振動数の量子模型では,基底状態から最初の励起状態まで ω\hbar\omega のギャップがある。そのため低温比熱は eω/(kBT)e^{-\hbar\omega/(k_BT)} で抑制される。一方デバイ模型には ω0\omega\simeq0 の音響モードがあり,低温でも長波長モードが励起できる。この低振動数状態数 g(ω)ω2g(\omega)\propto\omega^2T3T^3 則の原因である。

典型ミス

デバイ模型の内部エネルギーにゼロ点エネルギーを含めても,熱容量では温度微分により消える。低温近似では上限を \infty にしてよいが,高温近似で同じ操作をしてはいけない。高温では x1x\ll1 の展開を使い,モード数が 3N3N であることに戻る。

試験で書くべきポイント

グラフを描く場合は,横軸を TT,縦軸を CC として,CIC_{\mathrm{I}} は水平線,CIIC_{\mathrm{II}} は低温で指数関数的に 0 から立ち上がり高温で 3NkB3Nk_B に漸近,CIIIC_{\mathrm{III}} は低温で T3T^3 から立ち上がり同じ高温値に漸近,と明示すればよい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 二次非線形光学とスクイーズ状態

方針

ハミルトニアンが a^2+a^2\hat{a}^{\dagger2}+\hat{a}^2 を含むため,通常の数演算子の固有状態では対角化されない。スクイーズ変換で二次形式を対角化し,基底状態の揺らぎを読むのが本問の中心である。

スクイーズ変換の意味

x^\hat{x}p^\hat{p}x^erx^,p^erp^ \hat{x}\to e^{-r}\hat{x},\qquad \hat{p}\to e^r\hat{p} と変換される。面積 σxσp\sigma_x\sigma_p は変えず,一方の揺らぎを小さくする代わりに他方を大きくする。したがって非線形光学効果は,真空揺らぎを片方の quadrature に押し込む操作として理解できる。

安定条件

ω>Δ\omega>\Delta でのみ tanh2r=Δ/ω\tanh2r=\Delta/\omega を満たす実数 rr が存在する。これは Heisenberg 方程式の固有値が実数である条件と同じである。対角化の存在と時間発展の安定性が同じ不等式で表されることは,答えの重要な検算になる。

典型ミス

S^H^S^\hat{S}^\dagger\hat{H}\hat{S} を計算するとき,a^a^=a^a^+1\hat{a}\hat{a}^\dagger=\hat{a}^\dagger\hat{a}+1 の定数項を落としやすい。この定数項が E(r)E(r) であり,基底エネルギーを求める場合には必要である。また,分散は σx\sigma_x ではなく σx2\sigma_x^2 を問われることが多いため,平方根の位置を確認する。

試験で書くべきポイント

偶数光子成分だけが現れる理由は,式を展開しなくても,S^(r)\hat{S}(r) が光子数を 2 個単位で変える演算子から作られていることを述べれば十分である。臨界点の時間発展では M2=0M^2=0 を示してから指数関数を一次で打ち切ると,計算量を大きく減らせる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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