東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 物質理工学院 材料系 材料系 B日程筆答専門試験 2022年度 院試 解答例・解説
東京科学大学 物質理工学院 材料系 材料系 B日程筆答専門試験 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全16問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1 数学
積分の要点
内側の 積分を先に見ると指数関数の中に があり扱いにくいが,積分順序を変えると が に変わる。ここが最短経路である。無限級数は正弦関数そのものなので,最終答案に級数を残す必要はない。
共鳴する非同次微分方程式
右辺が で,同次解にも が含まれるため,特殊解は ではなく と置く。この重なりを見落とすと右辺を作れない。
行列式の簡約
③は行列を直接掛ける必要はない。行列式の積の性質だけで が消え, になる。正則条件では は既に仮定されているので,追加条件は が互いに異なることである。
第2問 — I-2 力学
有効質量
滑車は並進しないが回転エネルギーを持つ。糸の速度拘束 によって回転エネルギーは となり,運動方程式では滑車が の有効質量として効く。
位置エネルギーの定数
高さ は絶対的な高さを表す定数であり,ラグランジュ方程式には寄与しない。 と書いてから定数 を捨てても同じ結果になる。
第3問 — I-3 有機化学1
Diels--Alder の切り戻し
六員環中に残る二重結合はジエンの中央結合に対応する。電子求引基を持つアルケンはジエノフィルとして自然であり,カルボニル置換アルケンでは endo 選択性も出やすい。
E1 と E2 の違い
E1 は平面カルボカチオンを経るため熱力学的に安定な多置換アルケンを与えやすい。一方,シクロヘキサンの E2 は反平面条件が強く,脱離できる水素の位置で生成物が制限される。
NMR の読み方
化学シフトの ppm は装置周波数を変えても基本的に変わらない。分裂数は隣接プロトン数で決まり,その種類のプロトンが何個あるかで決まるわけではない。
第4問 — I-4 物理化学
境界条件が量子化を生む
無限井戸では壁の外に存在確率がなく,壁で波動関数が 0 になる。この条件だけで が決まり,エネルギーが離散化する。
古典極限
確率密度は 型なので低い量子数では場所によって偏る。高い量子数では短い波長の振動を平均して見るため,一様分布に近い結果になる。
第5問 — I-5 材料力学
最大モーメントと最大応力は別
曲げモーメントは中央で最大だが,応力は で決まる。段付き丸棒では断面係数の小さい部分が支配的になることがあるため,区間ごとに比較する必要がある。
回転曲げ疲労
軸が曲がったまま回転すると,同じ材料点が引張側と圧縮側を交互に通る。平均応力よりも応力振幅が疲労き裂発生に直接効く。
第6問 — I-6 金属組織学
相律
圧力一定の二元系では を使う。単相なら温度と組成を独立に変えられるので自由度 2,二相ならタイラインで片方が決まるので自由度 1,不変反応点なら自由度 0 である。
てこの規則
二相域の相量比は,対象相とは反対側のタイライン長で決まる。全組成 40 が 20 と 60 のちょうど中間なので,質量比は になる。
第7問 — I-7 有機高分子物性
WAXD と SAXS の使い分け
WAXD は原子間距離に近い短周期を見る手法,SAXS はラメラ積層のような大きな周期を見る手法である。どちらも電子密度差が散乱の源であり,対象の長さスケールが異なる。
粘弾性模型の見分け
応力緩和ならマクスウェル模型,クリープや遅延回復ならフォークト模型をまず対応させる。直列・並列で保存される量を確認すると式を立てやすい。
第8問 — I-8 無機材料化学
岩塩型の見方
岩塩型は「陰イオンの面心立方配列の八面体間隙を陽イオンがすべて占有する」と見ると,単位胞中の個数,配位数,間隙占有率をまとめて判断できる。
符号と距離
マーデルング定数は異符号近接を正,同符号近接を負として数える形にすると,エネルギー式の前に負号を付けられる。距離は必ず最近接距離 で割って無次元化する。
第9問 — II-1 電磁気学
層状誘電体は直列,半球誘電体は並列
半径方向に誘電率が変わる(1)では,各層を同じ電荷 が貫くので直列接続になる。 したがって電位差を各層で積分して足し,最後に とする。 一方,半球に分かれる(2)では二つの誘電体が同じ内外導体間電位差を受けるので並列接続であり,容量を足せばよい。
表面電荷密度の採点点
半球型では は誘電率に反比例するが,表面自由電荷密度は で決まる。 各半球の面積が であることを使い, を面積で重みづけして合計電荷 に戻るかを検算するとよい。
第10問 — II-2 量子力学
係数は交換関係とハミルトニアンの係数比較で決める
と置いたら,まず から を計算し,これを 1 に合わせる。 次に と の の係数を比較すると, と が一意に定まる。
生成消滅演算子の採点点
が に比例することは, から と示す。 比例係数 は規格化 から決まるので,固有値のずれと係数の両方を書くと部分点を落としにくい。
第11問 — II-3 有機化学2
置換位置は既存置換基の配向性で追う
アシル基 は電子求引性でメタ配向性,エチル基とアミノ基はオルト・パラ配向性を示す。 したがって上段では還元でエチルベンゼンにしてからパラニトロ化し,下段ではアシル基のメタ配向性で を決める。 最後のジアゾ化では,次亜リン酸なら を水素に置換し,水中の銅塩ならフェノールへ置換する,という試薬の違いを答案に残す。
重なり配座の採点点
ブタンの 回転重なり形では H--H が 1 組,H--Me が 2 組重なる。 全増加量 から H--H 分 を引き,残りを 2 等分して H--Me の寄与を出す。 回転では Me--Me が 1 組,H--H が 2 組なので, と数え上げる。
第12問 — II-4 無機化学
弱酸・弱塩基の近似
酢酸では を用いる。 アンモニアでは与えられた値がアンモニウムイオンの なので,先に と変換する。 の対数を使うと となる。
Latimer 図の採点点
複数電子過程の電位は単純平均ではなく,電子数で重みづけした平均である。本問はどちらも 1 電子なので通常平均になる。 不均化は「右側の電位が左側の電位より大きい」とき自発的で,ここでは なので進む。
第13問 — II-5 熱力学
Carnot 型サイクルとして整理する
操作 1 と 3 は等温過程なので,理想気体では となり,熱は可逆仕事 に等しい。 操作 2 と 4 は準静的断熱過程なのでエントロピー変化は 0 である。 この二点を押さえると,各操作を別々に積分しなくても全体像を保てる。
体積比の検算
断熱関係から を得る。これを割って を出せば,等温膨張と等温圧縮のエントロピー変化が打ち消す。 - 図では囲まれた長方形の面積が正味仕事であり,上辺が高温等温膨張,下辺が低温等温圧縮である。
第14問 — II-6 金属物理学
すべり線は交線である
表面に見えるすべり線は,すべり方向そのものではなく,すべり面と試料表面の交線である。 そのため で線方向を出し,最後に引張軸との内積で角度を求める。 側面 1 で直角になるという問題文の情報は,側面の取り方を確認する検算にもなる。
段差は面外成分で決まる
すべり方向が観察面内に近いと,表面には線だけが出て段差は小さい。 すべり方向が観察面法線方向の成分を持つと,表面の上下ずれとして見える。 本問では側面 2 で となるため,段差比較の答えは側面 1 である。
第15問 — II-7 有機高分子化学
縮合系ポリマーは結合で切り戻す
アミド結合ならジカルボン酸とジアミン,エステル結合ならジカルボン酸とジオールに戻す。 酸塩化物を使うかカルボン酸を使うかは反応条件の違いであり,構造を問う答案では二官能モノマーの対応が合っていることが重要である。
速度定数と反応速度を混同しない
停止反応の速度定数が大きくても,停止速度はラジカル濃度の二乗に比例する。 ラジカル濃度は極めて低く,モノマー濃度は高いので,成長反応が連続して起こる。 段階重合の は等モル・二官能・副反応なしの理想式であり,官能基量のずれや単官能不純物があると大きく下がる。
第16問 — II-8 無機材料物性
仕事関数と電子親和力の関係
は真空準位から伝導帯下端までのエネルギー差, は真空準位から半導体のフェルミ準位までのエネルギー差である。 n 型では が より上にあり, で表せる。ここで と置けるのは,ドナーが完全イオン化しているという条件があるからである。
空乏層幅の検算
ポアソン方程式を積分した電位は放物線になる。 境界条件 を入れると,界面から空乏層端までの電位差が になる。したがって は に比例し,ドナー濃度が高いほど空乏層が薄くなる。この物理的傾向で式の分母・分子を検算できる。