東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 物質理工学院 材料系 材料系 B日程筆答専門試験 2024年度 院試 解答例・解説
東京科学大学 物質理工学院 材料系 材料系 B日程筆答専門試験 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全12問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1 数学
複素数の扱い
6 乗根は偏角を ずつずらしてから 倍する。 の偏角を だけに固定すると 1 個しか出ないので、 と書くのが安全である。
連立一次方程式の見方
係数行列が対角化できる場合、解は固有モードの線形結合になる。指数関数の肩の数値は固有値そのものであり、固有ベクトルが と の比を決める。
エルミート分解
と は、、 を直接満たす。行列成分を全て書く指定では、共役転置の向きを取り違えないことが最も重要である。
第2問 — I-2 基礎物理学
ばねの伸びの符号
ばねエネルギーは伸びの二乗で決まるため、右端ばねの伸びを と見ても と見ても同じになる。中央のばねだけは相対変位 を使う。
固有振動の判定
振幅比 の符号がモードの形を決める。低角振動数側では両質点が同じ向きに動くので中央ばねの伸縮が比較的小さく、高角振動数側では逆向きに動くため中央ばねが強く効く。
グラフで示すべき内容
正確な曲線美よりも、同相か逆相か、振幅比が何か、1 周期で元に戻ることが採点上の要点である。答案では横軸に を置くと符号関係を明確に示せる。
第3問 — I-3 物理化学
赤外活性の判定
赤外吸収には振動に伴う双極子モーメント変化が必要である。S--C--S の対称伸縮では左右対称性が保たれ双極子が生じないため赤外不活性、非対称伸縮と曲げでは双極子が変化する。
並発反応と逐次反応の違い
並発反応では と の比が最終的に で決まる。逐次反応では中間体 がいったん増え、その後減る。濃度曲線を描くとき、この形の違いを出すと反応形式の理解が伝わる。
単位換算
波数を m に直すため、cm には を掛ける。ここを忘れるとエネルギーが 100 倍ずれる。
第4問 — I-4 有機化学1
置換と脱離の見分け方
基質が第三級で強酸・加熱ならカルボカチオンを経る脱離、第一級ハロゲン化物に強い求核剤なら SN2 が第一候補である。速度式は律速段階に入る分子だけで決まる。
アルキン反応
内部対称アルキンなので位置異性を考えずに済む。酸化的開裂はカルボン酸、水和はケトン、Li/NH は anti 付加に相当して trans-アルケンを与える。
NMR の読み方
tert-ブチル基は隣接水素を持たない 9H 一重線になりやすい。芳香族領域が A で 5H 相当、B で 4H 相当になり、B のアルキル領域が 18H 相当になることから二置換体と判断できる。
第5問 — I-5 金属物理学
ステレオ投影の読み方
001 標準投影では中心が 、外周上に や が来る。中心に近いほど 成分が大きく、外周に近いほど 成分が小さい。この対応で符号を決める。
シュミット因子
引張軸、すべり面法線、すべり方向の 3 つの角度関係だけで決まる。fcc では の全候補を試し、 が最大のものを選ぶのが機械的で確実である。
注意
図の読み取りを伴う問題なので、ステレオ投影図のラベルの取り方により等価な指数表記が現れることがある。符号を同時反転した方向は同じ結晶軸を表す場合があるが、ここでは図の象限に合わせた指数で示した。
第6問 — I-6 無機化学
酸性度の順序
同一系列の多塩基酸では、負電荷が増えるほど次のプロトンを失いにくい。これは という形で覚えてよい。
硫酸の濃度計算
全濃度 M と測定された の差 M が第二解離の進行量である。二段階目の解離で は同じ量だけ減る点を忘れない。
スピン状態
と対形成エネルギー の大小比較が本質である。弱配位子場なら高スピン、強配位子場なら低スピンになりやすい。
第7問 — II-1 熱力学
符号規約
「気体が外部になす仕事」を正にすると、圧縮過程の仕事は負になる。式が正の値しか出ない場合は、外部が気体になす仕事を計算している可能性がある。
オットーサイクルの本質
定積過程でだけ熱の出入りがあるため、効率は温度差の比で書ける。さらに断熱関係を使うと、熱源温度の詳細ではなく圧縮比だけで決まる。
二原子分子の比熱
振動自由度を無視する指定があるので 。この指定を落とすと が変わり、効率も変わる。
第8問 — II-2 量子力学
交換関係の符号
と は交換しないため、 の展開で が出る。この項が零点エネルギー の起源である。
生成演算子の規格化
だけでは長さが 倍になる。規格化ケットを求める設問では必ず で割る。
段差ポテンシャル
でも、波数が変わる境界では反射が生じる。古典的に通過できることと量子的に反射率が 0 であることは同じではない。
第9問 — II-3 有機化学2
構造式問題の読み方
反応列は官能基変換を一つずつ追う。酸塩化物からアミド、アミドから炭素数が 1 少ないアミンになる Hofmann 転位は、生成物 D を決める鍵である。
Diels--Alder の逆合成
生成物の新しい 6 員環で、二重結合が残っている辺の反対側に結合を切るとジエンとジエノフィルが見える。置換基の相対配置は endo 則で説明する。
配向性と反応性
ハロゲンは o,p 配向性である一方、反応性はベンゼンより低い。この二つを混同しないことが重要である。
第10問 — II-4 金属組織学
相律の使い方
二元系を一定圧力で見ると である。三相平衡では なので、温度不変の水平線として現れ、組成も各相で決まる。
TTT 図の読み方
保持温度までの急冷中に拡散変態開始線を通らない指定があるため、保持中にどの開始線・終了線を越えるかだけを読めばよい。最後の室温急冷では残留オーステナイトが 以下でマルテンサイト化する。
C 曲線
変態速度は駆動力だけでも拡散速度だけでも決まらない。高温と低温の両端で遅く、中間で速いという競合が C 字型の理由である。
第11問 — II-5 無機固体物性学
半径比則
限界半径比は「陽イオンがちょうど孔に入る」幾何で出す。陰イオン同士も陽イオン--陰イオンも接触しているという指定を、同じ格子定数 で表すのが導出の中心である。
ベガード則
格子定数が組成に対して線形に変わるという仮定である。端成分の格子定数の間を内分するだけなので、単位をそろえて計算する。
X 線強度
NaCl 型では全ての奇数指数反射と全ての偶数指数反射で、二種イオンの散乱因子が差か和で現れる。KCl の 111 が弱い理由は、消滅則ではなく構造因子の差が小さいことである。
第12問 — II-6 有機高分子化学
繰返し単位からモノマーへ戻す
ビニル重合体では主鎖の C--C 単結合を二重結合へ戻す。縮合系ではアミド結合やエーテル結合を切り、ジアミン・ジ酸塩化物・ジオールなどの組合せに戻す。
数平均と重量平均
同じモル数という条件は「分子数が同じ」という意味である。重量平均では重い分子が二乗で効くため、 は より大きくなる。
ビニロン
ポリビニルアルコールの水酸基をホルムアルデヒドでアセタール化する点が本質である。単なる架橋という語だけでなく、アセタール結合ができることを書くと反応式として明確になる。