東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 物質理工学院 材料系 材料系 B日程筆答専門試験 2021年度 院試 解答例・解説
東京科学大学 物質理工学院 材料系 材料系 B日程筆答専門試験 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全16問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1 数学
微分方程式
左辺に が掛かっている形は、 を含むかどうかで扱いが変わる。本問は とされているため割り算が正当化され、最も単純な指数型方程式に落ちる。
重積分
積分範囲を先に図示すると、 方向に積分してから 方向に積分するのが自然である。被積分関数が一次式なので、内側の計算で二次式、外側の計算で三次式になる。
行列問題の注意
OCRでは一部の係数が不鮮明である。固有値条件はトレースと行列式で即座に整合性を確認できるので、答案ではまず と を書くと、読み違いにも気づきやすい。累乗は対角化できるとき、固有ベクトルを列に並べた行列で処理するのが最短である。
第2問 — I-2 力学
幾何の取り方
円柱中心は台座の円弧そのものではなく、接触法線方向に円柱半径 だけ離れた円弧を動く。そのため速度にも高さにも が現れる。
滑りなし条件の符号
問題では反時計回りを正とする。円柱が下方へ転がると、中心の円弧運動と自転の向きは逆になるため、 に負号が付く。エネルギーだけなら符号は消えるが、角速度を問われたときは符号まで書く。
ラグランジアン
転がりでは並進と回転の両方に同じ が効く。均質円柱なので回転分は並進分の半分となり、合計係数が になる。
第3問 — I-3 有機化学1
カルボニル反応
ヒドラジンはイミン形成、シアン化水素はシアノヒドリン形成、水素化ホウ素ナトリウムはアルコールへの還元、Wittig 試薬はアルケン化である。LDA は速度論的エノラートを作るため、単純な環状ケトンでは -メチル化を与える。
芳香族エステルの加水分解
置換基効果は Hammett の 値で整理できる。-アセチル基と -クロロ基は電子を引き、-メトキシ基は共鳴供与で電子を押し込む。カルボニル炭素が電子不足なほど水酸化物イオンが入りやすい。
Diels--Alder の答案
図を描く問題では、結合形成位置と endo/exo の区別が採点点になる。本文では公式図を転載しないため名称で示したが、答案用紙では六員環の二重結合位置を保持して逆合成矢印を書くとよい。
第4問 — I-4 物理化学
符号の確認
Hückel 法では とする流儀が多い。この場合、 は数値として より小さく、結合性軌道である。符号を取り違えると HOMO/LUMO の順序が逆になる。
共役安定化
ブタジエンの全 電子エネルギーをエチレン二分子と比べると、共役により電子が四炭素上へ非局在化し、結合次数が隣接結合に分配される。中央の単結合にも部分的な二重結合性が生じるため、単純な二重結合二本の和より低エネルギーになる。
第5問 — I-5 材料力学
薄肉近似
肉厚方向の応力分布を平均化し、応力は膜応力として扱う。円筒では円周方向と軸方向で受け持つ有効断面が異なるため、円周方向応力が軸方向応力の二倍になる。
単位
MPa は N/mm と同じ次元で扱えるので、 を MPa、 を mm でそろえると応力は MPa で出る。atm の換算を忘れると二桁程度ずれる。
第6問 — I-6 金属組織学
相律
温度と組成を軸にした定圧二元系状態図では、単相域が面、二相域が面、三相反応が水平線として現れる。三相反応は なので 、温度も各相組成も固定される。
てこの規則
質量分率は、目的組成から反対側の相境界までの距離に比例する。たとえば の量は 側境界までの距離で決まる。この「反対側」を使う点が頻出のミスである。
第7問 — I-7 有機高分子物性
配置と配座
configuration と conformation の差は「結合を切る必要があるか」で判断する。この基準で書けば、立体規則性、ゴーシュ/トランス、ゴム弾性の説明が混ざらない。
球晶の観察
結晶性高分子を融点以上から徐冷すると、核生成後にラメラが放射状に成長して球晶をつくる。直交ニコルでは方位に応じて消光し、マルタ十字が見える。検板を入れると複屈折の符号と配向方向が色で判別できる。
第8問 — I-8 無機材料化学
逆格子の規約
結晶学では を含める規約と含めない規約がある。本問は と明記されているため、 は入れない。
消滅則
fcc の消滅は原子散乱因子の大小ではなく、面心位置からの散乱波の位相差で決まる。偶奇混在の反射では四つの項が打ち消し合う。
第9問 — II-1 電磁気学
電圧一定と電荷一定
電池につながっている間は電圧一定、スイッチを開いた後は電荷一定である。同じ誘電体操作でも、どちらが拘束条件かでエネルギーの式と力の向きの解釈が変わる。
外力の符号
誘電体はコンデンサ内へ引き込まれる。したがって取り出すには外力が正の仕事をする。式が正になることは物理的な符号確認にもなる。
第10問 — II-2 量子力学
離散化の理由
井戸内の微分方程式だけなら連続的な が許される。離散化を生むのは両端で波動関数がゼロになる境界条件であり、半波長が井戸幅に整数個入る条件と同じである。
運動量期待値
基底状態は実関数で左右対称な定在波である。右向きと左向きの運動量成分が等しく含まれるため平均はゼロだが、運動エネルギーは正なので分散はゼロではない。
第11問 — II-3 有機化学2
付加の位置選択性
HBr とオキシ水銀化は Markovnikov 型、水素化ホウ素酸化は anti-Markovnikov 型である。ハロヒドリン化では環状ハロニウムを水がより置換炭素側から開くため、OH と Cl は anti になる。
側鎖酸化
アルキルベンゼンはベンジル水素を持てば KMnO で炭素数に関係なく安息香酸まで酸化される。そこからのニトロ化は置換基効果を問う標準問題である。
第12問 — II-4 無機化学
Jahn--Teller 効果
Cu(II) の軸方向伸長は配位化学で非常に頻出である。単に「結合が長い」と書くより、 軌道の縮退が解けることと、軸方向配位子との反発が弱まることを結び付けると答案として強い。
電子数
18電子則は絶対法則ではない。Wilkinson 触媒型の Rh(I) 平面四配位錯体は16電子で、空き配位座を利用して基質を取り込み触媒として働く。
第13問 — II-5 熱力学
仕事の符号
本問は「気体になされた仕事」と表現されているので、圧縮断熱で正になる。気体が外界へした仕事を正とする流儀なら符号が逆になるため、答案では定義を明記する。
T-S 図
可逆断熱は等エントロピーである。熱の出入りがある定積過程では だから、温度上昇ではエントロピーが増加し、温度低下では減少する。
第14問 — II-6 金属物理学
Schmid 因子
すべり面法線とすべり方向の両方が引張軸に対して適度な角度を持つと分解せん断応力が大きい。どちらかが直交または平行に偏りすぎると因子は小さくなる。
S-S 曲線
単一すべりの初期段階では加工硬化率が小さい。二次すべりが始まると転位同士の交切・反応が増え、曲線の傾きが急に大きくなる。したがって傾き変化の始点を選ぶ。
第15問 — II-7 有機高分子化学
開始剤効率
発生した一次ラジカルがすべて重合開始に使われるわけではない。かご効果、再結合、溶媒や開始剤由来ラジカルの副反応により、実効的な開始剤効率が決まる。
三連子
立体規則性は隣接不斉中心の相対配置で表す。三連子表記は NMR 解析にも直結し、isotactic、syndiotactic、heterotactic の三種類を区別する。
第16問 — II-8 無機材料物性
分極の作り方
自発分極は「電荷 変位」の総和を単位胞体積で割った量である。図の変位方向と符号規約を最初に決めると、式の符号で迷わない。
BaTiO3 の相系列
降温に伴い立方晶、正方晶、斜方晶、菱面体晶へ変化し、分極方向も 、、 と変わる。強誘電体の履歴曲線では残留分極と抗電場を必ず図中に示す。