東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2023年度 院試 解答例・解説
東京科学大学 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 地球内部・海洋・大気
方針
本問は暗記項目の羅列ではなく、観測・分配・相転移・物質循環を「なぜそう推定できるか」まで結びつけて書くと安定する。特に 1-2 は Hf と W の親和性の違い、1-3 はクラペイロン勾配の符号、1-5 は元素ごとに供給源と沈殿・変質反応を分けることが採点上の要点である。
検算と注意点
スラブ滞留では 410 km 相転移の正のクラペイロン勾配だけを述べても不十分で、滞留の障壁として重要な 660 km 付近の負のクラペイロン勾配に触れる必要がある。中央海嶺では「高温だから融ける」ではなく、上昇に伴う減圧でソリダスを横切ると書く。海水中の S は硫化物ではなく、酸化的な現在の海洋では硫酸イオンが主成分である点を間違えやすい。
試験で書くべきポイント
短答では、各設問に一つずつ因果の鎖を入れる。例えば「S 波が通らないので外核は液体」「Hf はマントル、W は核へ分配」「水蒸気凝結の潜熱で湿潤断熱減率になる」のように、観測または過程と結論を一文内で結ぶと、行数が限られていても失点しにくい。
第2問 — 化学分析法
方針
前半は電磁波と顕微鏡の基本式、後半は鉱物分析の原理を問う構成である。数値問題では を最初に書く。鉱物式は酸化物重量を mol に直し、酸素数または陽イオン比で規格化する。
検算
波長 は赤外線なので、エネルギーが可視光の数 eV より小さい 程度になるのは妥当である。試料 1 は で輝石型、試料 2 は でかんらん石型となり、酸素数もそれぞれ , に対応する。
典型ミス
電子の波長を非相対論式だけで答えると、加速電子の運動量増加を落とす。X 線分析では連続 X 線は背景であり、元素同定に直接使うのは特性 X 線である。黒体放射では、温度上昇でピークが長波長側へ行くと逆に書かないこと。
試験で書くべきポイント
Bragg 条件の導出では、角度 は入射線と回折線の開きであり、式に入る は結晶面との角であることを明記するとよい。分析法の説明は「何を測るか」と「地球惑星科学で何に使うか」を一組で書く。
第3問 — 線形方程式と熱方程式
方針
前半は固有ベクトル展開で各成分を 1 次元の指数減衰に分ける問題である。差分化後は Euler 法の増幅因子 を見れば安定性が判定できる。後半は偶関数の Fourier 余弦変換を使って熱方程式の基本解を導く問題である。
主要式
熱方程式は なので、波数 のモードは で減衰する。初期分布を余弦変換し、逆変換で戻すと、ガウス核 が現れる。係数の は、全実軸で積分したとき になる正規化定数である。
検算
安定条件で とすれば だが を満たし、時間発展はゆっくり減衰する。逆に では となり、符号を反転しながら発散する。熱核は でデルタ関数に近づき、 を回復する。
典型ミス
差分法の条件を だけで終えると、負側の発散 を見落とす。熱方程式では 積分を からではなく全実軸で扱っているため、係数 と積の公式の 2 倍を丁寧に追う必要がある。
第4問 — 剛体回転と衝撃波
方針
剛体部分は、拘束条件 を先に立てれば 1 自由度のラグランジアンになる。衝撃波部分は、保存量を「質量流束、運動量流束、エネルギー流束」の順に積分形で扱うと式変形が見通しやすい。
主要式
円板の降下加速度 は、並進運動に加えて回転運動へも重力エネルギーが分配されることを表す。慣性モーメントが大きいほど同じ重力で角加速度が小さくなり、降下加速度も小さくなる。
衝撃波では を最後に評価する。圧力増加だけでなく密度増加も同時に起こるため、 だけではエントロピー増加の証明にならない。
検算と注意点
とすれば円板は回転にエネルギーを使わず、 となる。薄い輪の極限 では で、よく知られたヨーヨー型の結果と一致する。衝撃波では で となり、衝撃波が消える極限と合う。
典型ミス
ポテンシャルエネルギーは下向き座標を正に取っているため である。符号を逆にすると運動方程式の加速度が上向きになる。衝撃波では を使わずに式を進めると、密度比と速度比を取り違えやすい。
第5問 — 化学結合
方針
混成軌道の問題では、電子数だけでなく「どの軌道がどの方向を向くか」を述べる。酸塩基計算では、5-9 は弱酸単独、5-10 は共役酸塩基対の緩衝液として分ける。
主要式
5-9 の計算は が出発点である。5-10 は Henderson--Hasselbalch 型の を使う。pH 3.5 と pKa 3.20 の差が 0.30 なので、比はほぼ 2 である。
検算と注意点
5-9 で に対し、求めた全濃度は であり、弱酸として解離度は数 \% 程度で自然である。5-10 の CsF は 0.66 mol 程度なので、分子量 152 を掛けて約 100 g となる。桁として 10 g ではなく 100 g である点に注意する。
典型ミス
の結合を「1 本だけ配位結合なので特別」としたままにしない。生成後は 4 本の N--H 結合が等価に扱える。HF が弱酸である理由を「F が電気陰性だから H が取れやすい」とだけ書くと逆方向で、強い H--F 結合を明記する必要がある。
第6問 — 火山岩と相平衡
方針
火山岩分類は観察記載、全岩化学組成、相図をつなげて答える。薄片記載では「干渉色・消光・双晶・不透明性」を鉱物名に結びつけ、相図では最初の液、共存固相、液組成の移動方向を分けて書く。
主要式
液相濃集元素が固相に入らない場合、源岩濃度 、液濃度 、融解度 は で結ばれる。結晶分化後の残液濃度は、成分質量を残液質量で割ればよい。かんらん石を 40 wt\% 除く計算では、残液質量が 60 g になる点が最も重要である。
検算と注意点
1250 の液は が高いので、融解度は小さく見積もられる。1400 の液はより多量の融解で希釈されるため、アルカリ濃度が低い。これは計算結果 と の大小関係と整合する。
典型ミス
粗面岩質という語だけからホットスポット的なアルカリ岩と決めつけない。ここでは島弧という造構場を保ったまま、岩石系列と結晶分化で説明する。相図問題では、無水条件と含水条件を混同しない。水は単に温度を少し下げるだけでなく、低温で に富む液を生じやすくする。
第7問 — 電磁波吸収と量子統計
方針
電磁波部分は、入射エネルギーを Poynting ベクトルで、吸収を減衰振動子への仕事率で評価する。統計力学部分は、エネルギー固有値の体積依存性 だけを使えば、Bose 統計の詳細に立ち入らずに状態方程式が出る。
主要式
仕事率の時間平均で吸収が残るのは、変位の電場に対する位相遅れを表す の項である。抵抗がなければ となり、1 周期平均の吸収は消える。
検算
では振動子は外力にほぼ追随し、位相遅れは小さい。そのため吸収が低周波で に落ちるのは自然である。自由粒子の関係 は古典理想気体と同じ形で、非相互作用粒子の運動エネルギーが二次分散を持つことの帰結である。
典型ミス
電磁波のエネルギー密度を電場分だけ としてしまうと、磁場分を落として係数が半分になる。平面波では電場と磁場のエネルギーが等しく、全エネルギー密度は である。
第8問 — ラプラス変換と Chebyshev 多項式
方針
8-1 は、減衰を持つ 2 階方程式をラプラス変換で畳み込み応答に直す問題である。8-2 は、与えられた母関数で定義される多項式が Chebyshev 多項式であることを示し、直交性を使って を展開する。
主要式
確率過程の分散では、白色雑音の相関 により二重積分が一重積分へ潰れる。ここを書けば、最後の式は通常の指数関数の積分だけになる。
Chebyshev 展開では、重み は によって単なる に変わる。この変換が直交性の本体である。
検算
では分散式の括弧内は 0 から始まるため、初期条件 と合う。長時間では指数項が消え、 となり、ランダム加速度を積分した粒子位置が拡散的に広がることを表す。Chebyshev 係数では が を中心に奇対称な余弦級数になるため、偶数次係数が 0 になる。
典型ミス
ラプラス変換で初期条件項を落とすのは、初期条件が 0 だからであり、一般には と が残る。8-2-5 の は通常の Fourier 余弦級数の定義に従い、他の係数と同じ を掛けない点に注意する。