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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2024年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 確率・ルジャンドル多項式・中心力

方針

第1問は,確率分布の作り方,母関数の係数比較,ベクトル保存量の微分という3種類の標準問題である。いずれも最終結果だけを書くと根拠が弱くなるので,「どの量を確率変数にするか」「どの級数の係数を比較するか」「どの項がゼロになるか」を明記する。

確率計算の検算

1点切断では長い方の長さは必ず 1/21/2 以上 11 以下で,平均 3/43/4 はこの範囲の中央にある。2点切断の中央部分 XY|X-Y| は小さい値ほど起こりやすいので,平均が 1/21/2 ではなく 1/31/3 になる。密度 2(1d)2(1-d) を得た時点で,012(1d)dd=1\int_0^1 2(1-d)\,dd=1 を確認しておくと安全である。

ルジャンドル多項式で見るべき点

母関数の二乗を積分すると,積分の中身は F(x,t)2F(x,t)^2 であり,これは J(t)J(t) そのものである。直交性で交差項が消えるため,J(t)J(t) には偶数冪しか残らない。典型ミスは,m+n=2nm+n=2n となる組をすべて残してしまうことである。残るのは m=nm=n の項だけであり,そのため係数は Pn2dx\int P_n^2\,dx になる。

保存ベクトルの意味

第3部の E\mathbf{E} は,逆二乗中心力で現れるラプラス・ルンゲ・レンツ型の保存ベクトルである。試験では名称よりも,dL/dt=0d\mathbf{L}/dt=0 を先に示し,続いて ddt(Rr)=VrR(RV)r3 \frac{d}{dt}\left(\frac{\mathbf{R}}{r}\right) =\frac{\mathbf{V}}{r}-\frac{\mathbf{R}(\mathbf{R}\cdot\mathbf{V})}{r^3} を正しく書けることが重要である。ここで符号を一つ間違えると保存性が消えてしまう。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 解析力学と電磁場

円錐上の運動の注意

rr は水平半径ではなく,円錐の頂点から母線に沿った距離である。そのため方位角方向の円運動の半径は rsinαr\sin\alpha であり,運動エネルギーの方位角項は m1r2sin2αφ˙2/2m_1r^2\sin^2\alpha\,\dot\varphi^2/2 になる。ここを r2φ˙2/2r^2\dot\varphi^2/2 としてしまうと,後の円運動条件がすべてずれる。

ポテンシャルの符号

質点 B は z=rlz=r-l にある。rr が増えると B は上昇するため,B の重力ポテンシャルは m2g(rl)m_2g(r-l) だけ増える。定数 m2gl-m_2gl は運動方程式には効かないが,基準面に対するポテンシャルとしては含めておくと符号を確認しやすい。

摂動計算のポイント

微小摂動では φ˙\dot\varphi を一定とおいてはいけない。保存するのは角速度ではなく角運動量 pφp_\varphi である。したがって遠心項は rφ˙2r\dot\varphi^2 ではなく,角運動量で消去した r3r^{-3} 型の項として展開する。この r3r^{-3} の微分から係数 33 が出る。

帯電板の磁場の符号

電流が +x+x 方向で,観測点が板の上側 z>0z>0 にあるとき,右ねじの向きから磁場は y-y 方向である。境界条件で確認すると符号の取り違えを避けられる。低速変換の結果 By=By+vEzc2 B_y'=B_y+\frac{vE_z}{c^2} は,非相対論的極限の場の変換式 B=Bv×E/c2\mathbf{B}'=\mathbf{B}-\mathbf{v}\times\mathbf{E}/c^2 とも整合する。

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3 — 地球内部熱史と放射平衡

短答問題での書き方

語句指定のある設問では,指定語をただ並べるだけでは不十分である。たとえば S 波なら「せん断変形を戻す弾性復元力」と「剛性率がゼロなら速度もゼロ」をつなげると,物理的理由が明確になる。

熱流量の符号

zz が鉛直下向きを正に取られているため,地表から深部に向かって温度が上がると dT/dz>0dT/dz>0 であり,問題で定義された Q=kdT/dzQ=k\,dT/dz も正になる。通常のフーリエ則のベクトル表記では熱は温度勾配と逆向きに流れるので,座標の向きとスカラー量の定義を混同しない。

3-4-3の検算

地球表面積はおよそ 5.1×1014 m25.1\times10^{14}\ \mathrm{m^2} である。熱流量 8.7×102 Wm28.7\times10^{-2}\ \mathrm{W\,m^{-2}} を掛けると全地球で約 4.5×1013 W4.5\times10^{13}\ \mathrm{W} となる。さらに 3.2×107 s3.2\times10^7\ \mathrm{s} を掛けるので,答えは 1021 J10^{21}\ \mathrm{J} の桁になる。

放射平衡温度の典型ミス

地球が太陽光を受ける面積は円盤の面積 πRE2\pi R_E^2 であるが,地球が赤外線を放射する面積は球の表面積 4πRE24\pi R_E^2 である。この因子 44 を落とすと,放射平衡温度を高く見積もってしまう。また,アルベドは吸収率を (1A)(1-A) にする形で入る。

試験で書くべきポイント

大陸と海洋底の熱流量差では,単に「海洋底が若い」と書くだけでなく,「若いリソスフェアほど薄く高温で,温度勾配が大きい」と書くと理由になる。マントル対流では「粘性が大きいのに対流する」の答えとして,対流層の厚さがレイリー数を大きくする点と,熱伝導だけでは不十分である点を入れる。

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4 — 太陽系元素存在度と熱力学サイクル

暗線の説明で必要な要素

暗線形成では,「特定波長が吸収される」だけでなく,「なぜ特定波長なのか」を原子のエネルギー準位差に結びつける。存在度決定では,線の有無が元素の種類,線の強さが存在量に関係する。ただし線の強さは温度や電離状態にも依存するので,モデル大気が必要である点まで書くと答案として強い。

バルマー系列の範囲

可視域の水素線では n1=2n_1=2 を固定する。n2=3,4,5,6n_2=3,4,5,6400400--700nm700\,\mathrm{nm} に入り,n2=7n_2=7 以降は紫外側へ外れる。リュードベリ定数を前問の数値から求めているため,実測でよく知られる 656nm656\,\mathrm{nm} などとは少しずれるが,問題内の数値に従う。

仕事の符号

熱力学サイクルでは,仕事の符号規約を最初に宣言することが重要である。本解答では「系が受け取る仕事」を正にしたので,膨張過程の w1w_1 は負,圧縮過程の w3w_3 は正になる。熱量 qH,qLq_H,q_L は大きさとして正に扱った。

断熱条件の使い方

断熱の2経路から THVBγ1=TLVCγ1,TLVDγ1=THVAγ1 T_HV_B^{\gamma-1}=T_LV_C^{\gamma-1},\qquad T_LV_D^{\gamma-1}=T_HV_A^{\gamma-1} を立てると,体積比 VB/VA=VC/VDV_B/V_A=V_C/V_D が出る。これにより qH/qL=TH/TLq_H/q_L=T_H/T_L が簡潔に示せる。典型ミスは,等温過程の体積比を独立のままにして,Carnot サイクルの関係を使い忘れることである。

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5 — 線形微分方程式と複素積分

線形系の見方

固有値がどちらも負なので原点は安定な節点である。e3te^{-3t} の成分は ete^{-t} より速く減衰するため,長時間の軌道は固有値 1-1 の固有方向 (1,1)(1,1) に沿って原点へ入る。図示では初期点での速度ベクトル (6,12)(6,-12) を確認すると向きを間違えにくい。

ヌルクラインの意味

dx1/dt=0dx_1/dt=0 の直線 x2=2x1x_2=2x_1 では軌道の接線が鉛直,dx2/dt=0dx_2/dt=0 の直線 x1=2x2x_1=2x_2 では接線が水平になる。解軌道の説明では,これらの直線を単なる補助線ではなく,成分の増減が切り替わる境界として読む。

複素積分の符号

小半円 C2C_2 は上半平面側にあるが,進行方向は Ωr\Omega-r から Ω+r\Omega+r へ向かう時計回りである。そのため積分は +iπg(Ω)+i\pi g(\Omega) ではなく iπg(Ω)-i\pi g(\Omega) になる。この符号が,最終的なヒルベルト変換の符号を決める。

主値積分が出る理由

実軸上に極があるため,通常の広義積分ではなく,極の左右を同じ幅だけ除いた極限を取る。これがコーシーの主値である。大半円の寄与が消える条件は,問題で与えられた g(ω)0g(\omega)\to0 と,分母の 1/ω1/\omega の減衰で保証される。

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6 — 断熱減率と量子力学の基礎

断熱減率の導出

最短の導出はエンタルピーを使う方法である。dH=δQ+VdpdH=\delta Q+VdpdH=cpdTdH=c_p dT から,断熱ならすぐに cpdT=Vdpc_p dT=Vdp が得られる。ここで cpc_p はモル比熱なので,静水圧平衡では密度を ρ=μ/V\rho=\mu/V と書く必要がある。

数値確認

乾燥空気のモル質量 2.9×102 kgmol12.9\times10^{-2}\ \mathrm{kg\,mol^{-1}} と,二原子分子の cp29 Jmol1K1c_p\simeq 29\ \mathrm{J\,mol^{-1}\,K^{-1}} を使うと,102 Km110^{-2}\ \mathrm{K\,m^{-1}} の桁になる。これを km あたりに直すと 10 Kkm110\ \mathrm{K\,km^{-1}} である。

演算子の符号

時間因子が exp[iωt]\exp[-i\omega t] なので,/t\partial/\partial tiω-i\omega を出す。したがってエネルギー演算子は i/ti\hbar\partial/\partial t である。空間因子は exp(ikx)\exp(i\mathbf{k}\cdot\mathbf{x}) なので,運動量演算子は i-i\hbar\nabla になる。

水素原子半径の一致

古典的なド・ブロイ条件から得た半径と,シュレーディンガー方程式の基底状態で確率が最大になる半径は同じ a0=4πε02mee2 a_0=\frac{4\pi\varepsilon_0\hbar^2}{m_ee^2} である。ただし意味は異なる。前者は軌道模型の半径,後者は確率分布 Pr(r)P_r(r) の最大位置である。

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7 — マントル鉱物と火星内部

分類名の対応

かんらん岩分類では,単斜輝石を十分に含むものがレルゾライト,単斜輝石に乏しいものがハルツバージャイト,かんらん石が 90 vol\% 以上のものがダナイトである。融け残りが進むほど,メルトに入りやすい単斜輝石成分が減り,よりかんらん石に富む方向へ移る。

反応式の検算

反応式は元素数で検算する。左辺は Mg 4,Ca 1,Al 2,Si 4,O 16,右辺も Mg 4,Ca 1,Al 2,Si 4,O 16 で一致する。試験では鉱物名だけでなく,化学式でバランスが取れていることを示す。

ノルムとモード

問 7-1-4 の計算は,全岩化学組成を理想端成分へ分配するノルム計算である。実際の岩石のモードは,温度圧力条件と固溶体組成で決まり,端成分比とは一致しない。ここを区別することが 7-1-5 の要点である。

火星内部計算の注意

中心核密度は「全質量からマントル質量を引く」手順で求める。中心核体積だけに平均密度を掛けると,火星全体の平均密度を使っただけになり,2層モデルの意味がなくなる。Fe 濃度計算では,Si が中心核に入らないという仮定により,バルク Si 量をマントル Mg/Si から決めている。

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8 — Al-Mg年代測定と分析統計

アイソクロンの読み方

横軸は 27Al/24Mg^{27}\mathrm{Al}/{}^{24}\mathrm{Mg},縦軸は 26Mg/24Mg^{26}\mathrm{Mg}/{}^{24}\mathrm{Mg} である。初期 26Al/27Al^{26}\mathrm{Al}/{}^{27}\mathrm{Al} 比が大きいほど,Al に富む点ほど放射起源の 26Mg^{26}\mathrm{Mg} 過剰が大きくなり,直線の傾きが大きくなる。

年代計算の検算

コンドリュールの初期比は CAI の 1/51/5 なので,CAI から数半減期後ではないかと見積もれる。log252.3\log_2 5\simeq2.3 半減期であり,0.720.72 Myr を掛けると約 1.71.7 Myr になる。計算結果と整合する。

精度と正確度

精度はばらつき,正確度は真値への近さである。ラボ B は標準偏差が小さいので精度が高いが,平均値のずれが大きいので系統誤差をもつ可能性がある。ラボ A はばらつきが大きいが,平均値は信頼値に近い。

最小二乗法の注意

通常の最小二乗法は「横軸は正確,縦軸だけに独立な誤差がある」という仮定で導かれる。Al-Mg アイソクロンでは両方の比に分析誤差があり,さらに同じ分母を使う比どうしで誤差が相関するため,実務では誤差楕円を考慮した回帰を使う。

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