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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2021年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 隕石と母天体の熱史

方針

この問題は、隕石名を暗記しているかではなく、組織、同位体、熱史を結びつけて説明できるかを見ている。 特に「溶融していない」とは、全岩が均質な液体になって分化した証拠がないという意味であり、個々のコンドリュールが一時的に溶けたこととは矛盾しない。

放射年代の書き方

年代測定では、単に「同位体比を測る」と書くだけでは不十分である。 親核種が既知の壊変定数 λ\lambda で娘核種へ壊変すること、閉鎖系になった時刻以後の蓄積量を同位体比から読むこと、初生成分を補正することを書くと答案として強い。 CAI は太陽系の時刻原点として扱われるので、以後の「集積年代」は CAI 形成からの経過時間として解釈する。

検算と物理的意味

26Al^{26}\mathrm{Al} が主熱源なら、半減期が Myr より短いことから、横軸の 11--44 Myr の差が最高温度を大きく変えることが自然に分かる。 最高温度が数百度程度なら変成はしても全体溶融しにくく、千数百度以上なら珪酸塩メルトや金属分離が可能になる。 この温度スケールを意識すると、A を分化天体、E をコンドライトと判定できる。

典型ミス

サンプルリターンを「必ず隕石より正しい」とだけ書くのは危険である。 採取地点が限られるため代表性の問題があり、微量成分を議論するほど人工汚染や粒径選別の影響も効く。 また、酸化還元状態では「鉄が多いか少ないか」ではなく、鉄が金属相にあるか FeO として珪酸塩相にあるかを区別する必要がある。

試験で書くべきポイント

1-5 では熱源名だけでなく、「なぜ集積が遅いと温度が低いか」を半減期と結びつけて書く。 B と C の差は、母天体の大きさ、断熱性、熱拡散率、初期組成の違いなど、同じ発熱量でなく同じ最高温度を実現する条件差として説明すればよい。 原始地球の溶融では、微惑星スケールの 26Al^{26}\mathrm{Al} だけに寄せず、衝突エネルギーと核形成エネルギーを必ず入れる。

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2 — プレートテクトニクスと火成岩

方針

この大問は、数値計算、プレート運動、島弧火成作用、深成岩分類が混在している。 計算問題では単位と符号を先にそろえ、記述問題では「どのプレートがどちらへ動くか」「どの相図のどの領域を読むか」を明示する。

アイソスタシーの検算

求めた 16.5km16.5\,\mathrm{km} は、典型的な大陸地殻全体の厚さより薄いが、大陸棚下の伸長・薄化した大陸地殻としては不自然ではない。 水深差が約 3.4km3.4\,\mathrm{km} あり、海洋地殻と大陸地殻の密度差が 0.30gcm30.30\,\mathrm{g\,cm^{-3}}、大陸地殻とマントルの密度差が 0.60gcm30.60\,\mathrm{g\,cm^{-3}} で効くため、十数 km という値になる。

典型ミス

2-6 では角速度を度のまま使うと、速度を約 57 倍大きく見積もる。 必ず radyr1\mathrm{rad\,yr^{-1}} へ変換する。 また、速度は地球半径そのものではなく、回転軸からの距離 RsinθR_\oplus\sin\theta に比例する。

島弧断面の書き方

断面図は写実的である必要はないが、沈み込むスラブ、海溝、火山フロント、火山帯、 1000C1000^\circ\mathrm{C} 等温線、部分融解領域の相対位置をそろえることが重要である。 火山フロントは単に「火山が並ぶ場所」ではなく、脱水したスラブ上のマントルウェッジが融けやすくなる位置の地表投影として描く。

花崗岩質岩石の判定

QAPF 図では有色鉱物を除き、石英 QQ、アルカリ長石 AA、斜長石 PP の和を 100 に規格化して読む。 岩石 a は石英を 20\% 以上含み、長石はほぼ斜長石なのでトーナル岩である。 岩石 b は石英が多く、アルカリ長石と斜長石が同程度なのでモンゾ花崗岩になる。

試験で書くべきポイント

プレート運動の記述では、絶対速度と相対速度を混同しない。 沈み込み速度は海洋プレート単独の速さではなく、相手プレートとの相対収束速度で決まる。 斜長石の累帯構造では、Ab/An の化学式と「中心が Ca に富み、縁が Na に富む」という向きをセットで書くと失点しにくい。

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3 — 線形代数・複素積分・確率

方針

3-1 は「固有値が相異なる」ことを最後に使う。 3-2 は正の実軸を枝切りにした鍵穴型積分で、上側と下側の位相差 e2πipe^{2\pi ip} を読む。 3-3 はベルヌーイ変数の和として処理し、正規近似では logf\log f を最大点まわりで 2 次展開する。

複素積分の注意点

分母の極は z=1z=-1 であり、選んだ枝では (1)p=eiπp(-1)^p=e^{i\pi p} である。 ここを eiπpe^{-i\pi p} としてしまうと符号がずれる。 また、1<p<0-1<p<0 だから大円弧では Rp0R^p\to0、小円弧では εp+10\varepsilon^{p+1}\to0 となり、円弧の寄与が消える。

検算

p=1/2p=-1/2 とすると I=0x1/21+xdx=πsin(π/2)=π I=\int_0^\infty \frac{x^{-1/2}}{1+x}\,dx =-\frac{\pi}{\sin(-\pi/2)}=\pi となる。 これは置換 x=t2x=t^202/(1+t2)dt=π\int_0^\infty 2/(1+t^2)\,dt=\pi と一致する。

典型ミス

E(XiXj)E(X_iX_j)pp ではなく p2p^2 である。 独立性を使って E(XiXj)=E(Xi)E(Xj)E(X_iX_j)=E(X_i)E(X_j) とする。 分散を求めるときは交差項が共分散として消えるため、単に NN 個分の p(1p)p(1-p) を足せばよい。

試験で書くべきポイント

二項分布の正規近似では、平均と分散だけでなく f(n)12πV(n)exp ⁣[(nE(n))22V(n)] f(n)\simeq \frac{1}{\sqrt{2\pi V(n)}}\exp\!\left[-\frac{(n-E(n))^2}{2V(n)}\right] という具体形を示すと、3-3-3 の要求を満たしやすい。

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4 — 熱機関と重力場

方針

オットーサイクルでは、仕事の符号を「気体が外界にした仕事」で統一する。 圧縮 121\to2dV<0dV<0 なので W12<0W_{12}<0、膨張 343\to4W34>0W_{34}>0 である。 重力場の問題では、球対称なら球面、円柱対称なら円柱面をガウス面に選ぶ。

効率の検算

圧縮比を r=V1/V2>1r=V_1/V_2>1 とすると η=1r1γ \eta=1-r^{1-\gamma} である。 γ>1\gamma>1 なので 0<r1γ<10<r^{1-\gamma}<1、したがって 0<η<10<\eta<1 となる。 圧縮比が大きいほど効率が高くなることも、オットーサイクルの物理的直観と合う。

重力場の符号

g\boldsymbol{g} は質量へ向かうため、点質量の球面上では外向き面素 dSd\boldsymbol{S} と逆向きである。 そのためフラックスは負になり、g=kρ\nabla\cdot\boldsymbol{g}=-k\rho の右辺と整合する。 符号を落とすと k=4πGk=-4\pi G と誤るので注意する。

柱状ガス雲の注意点

円柱対称では重力場のフラックスに上下の蓋は寄与しない。 側面だけが寄与し、面積は 2πRL2\pi RL である。 圧力勾配力は高圧の中心から低圧の外側へ向かうため外向き、重力は内向きであり、つり合いでは大きさだけを等置する。

試験で書くべきポイント

4-2-3-3 では、まず単位体積あたりの重力 ρg=kρ02R2(1+αR2)3 \rho g=\frac{k\rho_0^2R}{2(1+\alpha R^2)^3} を明示する。 圧力勾配力と分母・RR 依存性が完全に同じ形になり、全半径でつり合う条件として ρ0=8αc2/k\rho_0=8\alpha c^2/k が出ることを示すとよい。

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5 — 階段ポテンシャルと光の経路

方針

階段ポテンシャルでは、境界で連続にする量は波動関数とその 1 階微分である。 透過率は振幅比だけでなく、速度に相当する波数比 k/kk'/k を掛ける。 光の問題では、離散的な屈折はフェルマー原理から Snell の法則を導き、連続媒質では同じ原理を変分問題として扱う。

検算

k=kk'=k すなわち段差がない場合、 T=4k2(2k)2=1 T=\frac{4k^2}{(2k)^2}=1 となる。 また EV0+0E\to V_0+0 では k0k'\to0 なので T0T\to0 となり、段差上で粒子の速度が極端に小さくなる直観と合う。

典型ミス

0<E<V00<E<V_0 のとき、波動関数の減衰長 1/κ1/\kappa と確率密度の減衰長を混同しやすい。 確率密度は波動関数の絶対値二乗なので e2κxe^{-2\kappa x} で減衰し、exp(1)\exp(-1) になる位置は 1/(2κ)1/(2\kappa) である。

連続媒質の注意点

n(y)=n0(1αy2)n(y)=n_0(1-\alpha y^2) では、y=0y=0 付近の屈折率が大きく、光線は高屈折率側へ曲がる。 近似方程式 y+2αy=0y''+2\alpha y=0 は、正の yy で下向きに曲がることを表しており、物理的な向きと整合する。

試験で書くべきポイント

変分の証明では、部分積分後の境界項が端点固定条件で消えることを書く。 ここを書かないと Euler--Lagrange 方程式をただ暗記して代入した答案に見える。

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6 — 微分方程式とフーリエ変換

方針

6-1 は感染・反応型の連立方程式として読める。 初期の増減は BB の線形化で決まり、α=0\alpha=0 では A+BA+B の保存量を使って 1 変数のロジスティック方程式へ落とす。 6-2 と 6-3 は、ガウス関数と円対称関数のフーリエ変換である。

検算

α=0\alpha=0C(0)=0C(0)=0 の解では limxB(x)=1 \lim_{x\to\infty}B(x)=1 であり、保存量 A+B=1A+B=1 と矛盾しない。 初期値 B(0)=0.1B(0)=0.1 を代入しても B(0)=11+9=0.1 B(0)=\frac{1}{1+9}=0.1 となる。

複素積分の注意点

平方完成後に積分路をずらすとき、被積分関数 ez2e^{-z^2} は全平面で正則なので Cauchy の定理を使える。 ただし、無限遠の縦辺が消えることを述べると答案として丁寧である。

ベッセル関数の使い方

円対称関数の 2 次元フーリエ変換では、角度積分が J0J_0 になる。 これは直交座標で無理に二重積分するより安定した方法である。 円盤関数の変換 2πJ1(k)/k2\pi J_1(k)/k は、中心で面積 π\pi に近づくことを確認するとよい。

典型ミス

V(p,q)V(p,q)ppqq に別々に依存する形で残すと、円対称性を使い切れていない。 最終結果は k=p2+q2k=\sqrt{p^2+q^2} のみの関数になる。

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7 — 惑星大気・海洋化学

方針

大気量は「圧力 = 単位面積あたりの重量」から求める。 海洋化学は、酸解離平衡と Henry の法則を分けて使う。 光化学では、CO2_2 1 分子の光解離で O 原子 1 個、O2_2 1 分子には O 原子 2 個が必要という化学量論を落とさない。

検算

惑星 X は地球より軽いが半径も小さいため、重力は地球の約 0.380.38 倍である。 CO2_2 大気のスケールハイト 15km15\,\mathrm{km} は、重力が弱い分だけ地球大気の典型値より大きく、CO2_2 の分子量が大きい分だけ過度には大きくならない。

典型ミス

pH 6.4 は「中性」ではなく、与えられた 2 種の炭酸種が等濃度という条件から直接出る。 また、Henry 定数から出るのは CO2(aq)\mathrm{CO_2(aq)} の濃度だけであり、全溶存炭酸量を出すには HCO3\mathrm{HCO_3^-} を加える必要がある。

試験で書くべきポイント

7-3 では、単に速度定数比 20 から 1/201/20 とするのではなく、O2_2 生成に O 原子 2 個が必要なため 1/401/40 になることを書く。 最後に体積混合比へ直すと 1/(40+1)1/(40+1) で約 2.4%2.4\% となる。

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8 — Fe--Ni 相図・隕石・マントル鉱物

方針

この大問では、相図の読み取り、結晶構造、鉱物名、簡単な密度計算を横断する。 相図の数値は厳密値ではなく、図から読める範囲で「おおよそ」を付けて答える。 一方、密度計算は単位変換まで含めて数値を明示する。

相図の注意点

二相領域での相組成は、全組成ではなく、同じ温度のタイラインが相境界と交わる点で読む。 量比はてこの規則で決まり、全組成がどちらの相境界に近いかで多い相が決まる。 Fe--10 at.\% Ni は α\alpha 側に近いので、カマサイトが多い。

隕鉄組織のポイント

ヘキサヘドライトは低 Ni でほぼカマサイト単相、オクタヘドライトは中程度 Ni でカマサイトとテーナイトの共存組織を作る。 ウィドマンシュテッテン構造は、非常に遅い冷却により金属中で Ni が拡散し、特定結晶面に沿って相分離した証拠である。

密度計算の検算

純粋な苦土かんらん石の式量は 140140、鉄かんらん石は 204204 であり、Fe 成分が 12\% 程度なら式量は 140140 より少し大きい。 単位胞体積は 2.92×1022cm32.92\times10^{-22}\,\mathrm{cm^3} なので、密度が 33 台の gcm3\mathrm{g\,cm^{-3}} になるのは妥当である。

クラペイロン勾配の書き方

式だけでなく、ΔS\Delta SΔV\Delta V の符号を述べると理由になる。 高圧多形では一般に構造が密になり体積が小さくなるため、ΔV<0\Delta V<0 をまず押さえる。 かんらん石多形間の遷移では ΔS<0\Delta S<0 として正勾配、ポストスピネル転移まで含めるなら負勾配と整理する。

試験で書くべきポイント

8-10 は「太陽系値より上部マントル値が大きい」という比較から、深部は相補的に Si に富むと結論する。 単に「下部マントルはかんらん岩」と書くと、Mg/Si の収支を説明したことにならない。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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