院試hub

東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2025年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — ルジャンドル多項式と多次元ガウス積分

方針

前半はルジャンドル多項式の標準的な性質を,生成関数と固有値問題として使う問題である。作用素 ddx{(1x2)ddx} -\frac{d}{dx}\left\{(1-x^2)\frac{d}{dx}\right\} を見たら,PnP_n が固有関数で固有値が n(n+1)n(n+1) であることを使う。右辺が P2P_2 に比例するため,直交展開では n=2n=2 の係数だけが残る。

途中式の要点

ルジャンドル方程式の証明では,二つの漸化式をただ引用するだけでなく,どちらを微分し,どこに代入するかを明示する。特に dPn1dx=nPn+xPn \frac{dP_{n-1}}{dx}=-nP_n+xP_n' を右辺に入れると nxPnnxP_n' が相殺され,目的の形が一気に出る。

検算

f(x)=BP2(x)/(A+6)f(x)=B P_2(x)/(A+6) を代入すると L[f]+Af=BA+6(6+A)P2=BP2 L[f]+Af=\frac{B}{A+6}(6+A)P_2=BP_2 となる。さらに P2(x)=3xP_2'(x)=3x なので,(1x2)f(x)(1-x^2)f'(x)x=±1x=\pm1 で 0 になる。定数倍や符号の誤りはこの二つの代入で発見できる。

典型ミス

L[Pn]L[P_n] の符号を逆にして (A6)(A-6) を分母にしてしまう誤りが多い。ルジャンドル方程式は ddx{(1x2)Pn}+n(n+1)Pn=0 \frac{d}{dx}\{(1-x^2)P_n'\}+n(n+1)P_n=0 なので,マイナス付きの作用素では固有値は +n(n+1)+n(n+1) である。

多次元積分の考え方

InI_n は極座標で計算してもよいが,最初の設問では直交座標に分けるのが最短である。一方,球体積係数 cnc_n を求める段階では殻の体積 dVn=ncnrn1drdV_n=nc_nr^{n-1}dr を使う。この二つを組み合わせるのが全体の設計である。

試験で書くべきポイント

カイ二乗分布の導出では,q=r2q=r^2 とおいた後に dr=dq2q dr=\frac{dq}{2\sqrt q} を書くことが重要である。ここを省略すると,指数 q(n2)/2q^{(n-2)/2} の由来が不明になり,q(n1)/2q^{(n-1)/2} と誤る原因になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 中心力による捕獲断面積と抵抗を受ける斜方投射

方針

前半は重力集積で現れる「焦点効果」と同じ構造である。無限遠ではポテンシャルエネルギーを 0 にし,表面でのエネルギーと角運動量を比べれば,球に当たる最大のインパクトパラメータが決まる。

符号の確認

引力なので qϕs<0q\phi_s<0 である。したがって 12qϕsmv2>1 1-\frac{2q\phi_s}{mv^2}>1 となり,衝突断面積は幾何学的断面積 πa2\pi a^2 より大きくなる。答えが小さくなった場合は,ポテンシャルエネルギーの符号を逆にしている。

マクスウェル平均

積分で必要なのは v\langle v\rangle1/v\langle 1/v\rangle の二つだけである。速度空間の体積要素を d3v=4πv2dvd^3v=4\pi v^2dv として v=4πC0v3eαv2dv,1v=4πC0veαv2dv \langle v\rangle=4\pi C\int_0^\infty v^3e^{-\alpha v^2}dv,\qquad \left\langle\frac1v\right\rangle =4\pi C\int_0^\infty ve^{-\alpha v^2}dv を計算すればよい。ここで C=(m/2πkT)3/2C=(m/2\pi kT)^{3/2}α=m/(2kT)\alpha=m/(2kT) である。

斜方投射の途中式

線形抵抗の運動方程式は速度について一次方程式になる。したがって位置を求めるには,まず x˙,y˙\dot{x},\dot{y} を解き,それをもう一度積分する。鉛直方向では終端速度に対応する g/βg/\beta が現れるので,符号を落とさないようにする。

弱抵抗近似に関する注意

閉じた解をそのまま無次元化すると,到達時刻 TT(1+ϵ2)(1eβT)=βT \left(1+\frac{\epsilon}{2}\right)(1-e^{-\beta T})=\beta T を満たす。この式を全ての一次寄与を保って展開すると,問題で指定された近似係数とは異なる係数が出る。上の解答では,設問で示された形を得るため,抵抗による初速項の減衰を一次補正として採用した。答案では,どの近似を残したかを明記しておくとよい。

典型ミス

最大角の議論で,抵抗がある場合にも sin2θ\sin2\theta だけを見て π/4\pi/4 としてしまう誤りが多い。抵抗補正 ϵ(θ)\epsilon(\theta)sinθ\sin\theta に比例するので,高角度側ほど飛行時間が長く,抵抗の不利を強く受ける。このため最大角は低角度側へずれる。

試験で書くべきポイント

衝突断面積ではエネルギー保存と角運動量保存を別々に書く。斜方投射では x(t),y(t)x(t),y(t) の閉じた解を示した上で,ϵ=κT1/m\epsilon=\kappa T_1/m を使って近似する。最後の大小比較は X2(π/4)<0X_2'(\pi/4)<0 を示せば十分である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 自己重力ガス球とカノニカル分布

方針

ガス球は「圧力勾配力が外向き,重力が内向き」という符号を最初に固定すると計算しやすい。一様密度の部分は Mrr3M_r\propto r^3 を使って dP/drrdP/dr\propto -r とし,表面圧力 0 から積分する。

安定性の見方

収縮 dR<0dR<0 に対して,自己重力は内向きに強くなる。一方,断熱圧縮では圧力も上がる。復元力の判定は dFG+dFP(43γ)dR dF_G+dF_P\propto (4-3\gamma)dR の符号だけを見ればよい。 γ>4/3\gamma>4/3 なら収縮に対して外向きの合力が生じ,安定である。

検算

一様密度球の表面で 2PcR=3GM24πR5 \frac{2P_c}{R}=\frac{3GM^2}{4\pi R^5} であり,自己重力の大きさ GMρR2=3GM24πR5 \frac{GM\rho}{R^2}=\frac{3GM^2}{4\pi R^5} と一致する。ここが合わないと,中心圧力または圧力勾配の係数を誤っている。

典型ミス

断熱変化で dP/P=γdρ/ρdP/P=\gamma d\rho/\rho を使わず,一様密度球の平衡式 PcR4P_c\propto R^{-4} をそのまま摂動後の圧力変化に使ってしまうと,安定条件が出ない。摂動は断熱的な熱力学変化として扱う。

統計力学のポイント

等分配則の証明は,部分積分の境界項が消えることを書くのが重要である。また,エネルギーゆらぎは 2lnZβ2 \frac{\partial^2\ln Z}{\partial\beta^2} から出すと符号を間違えにくい。最終的に相対ゆらぎが 1/N1/N で小さくなることが,熱力学量が巨視的に安定して見える理由である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — プレートの熱構造・強度・沈み込み帯地震

方針

4-2 は年代を秒に直し,kt\sqrt{kt} を求めれば終わる。厚さの式から底部では η=1.16\eta=1.16 が自動的に決まるので,表の誤差関数をそのまま使える。

単位の注意

熱拡散率 1mm2/s1\,\mathrm{mm^2/s}106m2/s10^{-6}\,\mathrm{m^2/s} である。ここを km2/s\mathrm{km^2/s}cm2/s\mathrm{cm^2/s} のまま扱うと,厚さが桁違いになる。表の kt=50228m\sqrt{kt}=50228\,\mathrm{m} は 80 Myr に対応しており,計算のよい確認になる。

強度計算の検算

PV=(3GPa)(14cm3/mol)=42kJ/molPV=(3\,\mathrm{GPa})(14\,\mathrm{cm^3/mol})=42\,\mathrm{kJ/mol} で,活性化エネルギーより一桁小さいが無視はできない。指数部は約 46,ln(ε˙/A)\ln(\dot{\varepsilon}/A) は約 48-48 なので,lnσ\ln\sigma が 0 に近い負の値になる。したがって σ\sigma1MPa1\,\mathrm{MPa} より少し小さい値になるのが妥当である。

相図読解のポイント

低温高圧側は青色片岩,より高圧ではエクロジャイト,高温低圧側では角閃岩からグラニュライトへ移る,という変成相の標準的な並びを使って読む。公式図を写す必要はなく,矢印が低温側か高温側か,含水相を横切るかを言葉で説明すればよい。

典型ミス

間隙水圧を N+PpN+P_p として摩擦強度を大きくしてしまう誤りがある。流体圧は断層面を開く向きに働くため,有効法線応力は NPpN-P_p である。この符号が脱水脆性化の核心である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 親鉄元素・イオン交換・重量分析

方針

5-1 は元素の分類,分配係数の質量収支,イオン交換の三段階である。分配係数の計算では,濃度だけでなくコアとマントルの質量分率を必ず掛ける。

Ni 分配の検算

0.32(4.03×104)+0.68(1.61×103)1.40×104 0.32(4.03\times10^4)+0.68(1.61\times10^3) \simeq1.40\times10^4 となり,分化前の平均存在度に戻る。コア濃度だけを 25×1400025\times14000 とすると質量収支を満たさない。

イオン交換の注意点

陰イオン交換樹脂を使う理由は,塩酸中でのクロロ錯体形成により元素間の分配係数差が大きくなるからである。Ni は保持されにくく,Fe は高塩酸濃度で強く保持される,という対比を文章に入れると説明が締まる。

重量分析のポイント

斜長石の計算では,CaO からアノーサイト量を決め,残りの Al をアルバイト量に割り当てる。SiO2 からも 3n(Ab)+2n(An)n(Si) 3n(\mathrm{Ab})+2n(\mathrm{An})\simeq n(\mathrm{Si}) が確認でき,分析値の整合性を検算できる。

酸塩基計算の注意

pH が 0.15 と小さいため,[H+][\mathrm{H^+}]0.15mol/L0.15\,\mathrm{mol/L} ではない。必ず 100.1510^{-0.15} を使う。中和後の温度計算では,NaOH 溶液の体積も混合液の質量に含める。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 有機地球化学分析と海洋元素循環

方針

IR の O-H,C=O,C-O を同時に満たす分子量 60 の候補を考えると,カルボン酸が自然である。そこから質量分析の m/z=43m/z=43 のアシリウムイオン,m/z=45m/z=45 のカルボキシル由来イオンを対応させる。

有機化学の注意

エタノールと脱水縮合できるのはカルボン酸であり,生成物はエステルである。IUPAC 名を書く設問では,慣用名だけでなくプロパン酸,ブタン酸のような系統名を添えると安全である。

定量計算の検算

濃度換算は「標準 10 nmol」「試料 0.200 g」をまとめて C=50I/5170 C=50I/5170 とすると速い。ノイズが 2 なので,検出限界信号は 6,定量限界信号は 20 である。試料 d は信号 10 で S/N=5S/N=5 のため,検出はできるが定量値としては扱わない。

同位体の解釈

δ\delta 値は標準物質からの千分率偏差である。正の値は標準より 13C{}^{13}\mathrm{C} に富むことを表す。地球上の多くの生物起源有機物は負の値を示すため,正の値は地球外起源を支持するが,ブランク管理や他同位体との組合せで確認する必要がある。

海洋循環の答案ポイント

「どの元素が制限するか」は一つに固定しない。成層外洋では N/P,HNLC 海域では Fe,沿岸や高生産域では光やケイ素も関わる,という海域依存性を書く。CO2 増加については,酸性化と成層強化を分けて述べると,炭素循環と栄養塩循環の両方に触れられる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

東京科学大学 地球惑星科学系 専門科目 — 他の年度