院試hub

東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 工学院 情報通信系 情報通信 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。線形代数1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問。テーマタグは9件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・正定値行列)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

最終更新:

このページで公開
解説5問/全5問(1,963字)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東京科学大 情報通信 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は線形代数1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1微分積分・解析ガンマ関数とWallis積部分積分の境界項 / ガウス積分への帰着あり
2線形代数Gram行列と固有値Gram行列として見る / 非零固有値だけが一致する理由あり
3二項分布とロジスティック回帰二項分布への帰着 / ロジット変換の意味あり
4電磁気学・回路RLC回路と過渡応答インピーダンスの分解 / 過渡応答の初期値と終値あり
5状態遷移と最短路状態遷移は意味から作る / Dijkstra法の空欄あり

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に9テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2022年度のページを見る

1 — ガンマ関数とWallis積

部分積分の境界項

Γ(ξ+1)\Gamma(\xi+1) の部分積分では,tξett^\xi e^{-t}tt\to\infty で 0 に近づき,ξ>0\xi>0 なら t0t\to0 でも 0 に近づく。この境界項の確認を書いておくと,漸化式の導出が厳密になる。

ガウス積分への帰着

Γ(1/2)\Gamma(1/2) は一変数のままでは直接評価しにくいが,二乗して二重積分にすると円対称性が現れる。極座標変換のヤコビアン rr が入ることで,0er2rdr\int_0^\infty e^{-r^2}r\,dr という初等的な積分になる。

Wallis積の位置づけ

最後の無限積は,ガンマ関数の極限表示を ξ=1/2\xi=1/2 に特殊化したものである。単に既知公式として書くより,Γ(1/2)=π\Gamma(1/2)=\sqrt{\pi} と有限積の極限を結びつける流れを示すと,設問全体の意図に合う。

ガンマ関数とWallis積の途中式・最終答をPDFで見る

2 — Gram行列と固有値

Gram行列として見る

PTPP^TP は列ベクトル同士の内積を並べた Gram 行列である。Gram 行列が半正定値になることは,二次形式がノルムの二乗になることから一行で示せる。

非零固有値だけが一致する理由

PTuP^TuPvPv を通じて固有ベクトルを移すため,移したベクトルが零にならないことが必要である。ここで λ0\lambda\ne0 を使う。零固有値については,PP の行数と列数が異なると個数がずれるので,同じとは限らない。

具体計算の短縮

3次の BB を直接対角化するより,2次の A=PPTA=PP^T を先に対角化する方が速い。非零固有値の一致を使うことで,固有値計算が大幅に軽くなる。

Gram行列と固有値の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 二項分布とロジスティック回帰

二項分布への帰着

個体ごとの回復が独立で,回復確率が一定なら,回復数は二項分布である。平均と分散は暗記で済ませず,独立な Bernoulli 変数の和として理解しておくと,後半の近似分散にもつながる。

ロジット変換の意味

ロジスティック分布の累積分布関数は q(m)=1/(1+eβ(mα))q(m)=1/(1+e^{-\beta(m-\alpha)}) である。この両辺をロジット変換すると l(m)=βmβαl(m)=\beta m-\beta\alpha となり,直線回帰の形になる。解析的な最尤推定が難しいため,ロジット変換後の最小二乗に切り替えるのが問題の流れである。

信頼区間の分散

log{q/(1q)}\log\{q/(1-q)\} の微分は 1/[q(1q)]1/[q(1-q)] である。この微分係数に二項比率の分散 q(1q)/nq(1-q)/n を掛けると 1/[nq(1q)]1/[nq(1-q)] になる。最後に qqq^=k/n\hat q=k/n で置き換えることで,答案に使える形になる。

二項分布とロジスティック回帰の途中式・最終答をPDFで見る

4 — RLC回路と過渡応答

インピーダンスの分解

回路を直接一つの式にしようとすると複雑に見えるが,並列部分を二つ作ってから直列和を取ればよい。係数比較では,分子が分母の定数倍になることが「周波数によらない抵抗」の条件である。

過渡応答の初期値と終値

ステップ応答では,初期時刻のコンデンサは短絡,十分後のコンデンサは開放として扱う。初期値と終値を先に決めると,一次遅れ応答の形を迷わず書ける。

ばらつき範囲

時定数は (R1R2)C(R_1\parallel R_2)C である。抵抗値と容量値が独立に範囲を動くとき,正規化した式にして単調性を確認すると,端点だけを調べればよいことが分かる。

RLC回路と過渡応答の途中式・最終答をPDFで見る

5 — 状態遷移と最短路

状態遷移は意味から作る

3枚で切符が出て初期状態に戻るので,投入時の遷移は3状態の巡回になる。入力なしの自己ループと,投入時の巡回遷移を分けて考えると,出力が Q2Q_2 かつ投入ありの場合だけ 1 になることが見える。

Dijkstra法の空欄

プログラムは「確定していない点のうち,現在分かっている距離が最小の点を次に確定する」という処理である。`st` は今回確定する点,`nt` は次に確定する候補点であり,更新式は現在距離に辺の重みを足す形になる。

用語問題の落とし穴

状態の区別不能性は,完全定義回路では等価性,不完全定義回路では両立性として扱う。グラフ用語と順序回路用語が混在しているため,文脈ごとに使う語を切り替える必要がある。

状態遷移と最短路の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 情報通信 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全3問)

    極限・二重積分・数列の収束 / 対称行列と二次曲面 / 情報通信分野の論述

  • 2024年度(全3問)

    二重積分と級数和 / 対称行列と最小ノルム補正 / 情報通信系論述

  • 2023年度(このページ・全5問)

    ガンマ関数とWallis積 / Gram行列と固有値 / 二項分布とロジスティック回帰

  • 2022年度(全5問)

    多変数微分と体積 / 線形写像と対称行列 / 2状態Markov連鎖

  • 2020年度(全5問)

    変数変換と二変数関数の極値 / 正定値行列と対称化写像 / ガウス分布のモーメント