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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 工学院 情報通信系 情報通信 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。線形代数1問・微分積分・解析1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・電磁波)。2020年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・ヒルベルト空間。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東京科学大 情報通信 2022年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析多変数微分と体積楕円体上の積最大 / 接するという幾何的意味あり
第2問線形代数線形写像と対称行列核の基底 / 重複固有値の扱いあり
第3問—2状態Markov連鎖列ベクトルの向き / 定常分布あり
第4問—変位電流と電磁波変位電流 / 波速の導出あり
第5問—ソートとプロセッサ性能ソートの空欄 / CPIと性能あり

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に7テーマが出ています。

前年度(2020年度)との違い

大問数
2020年度 5問 → 2022年度 5問
2020年度のページを見る

第1問 — 多変数微分と体積

楕円体上の積最大

半軸長が 1,2,41,2,4 の楕円体なので,正規化座標で見ると,最大点は三つの正規化成分が等しくなる点である。Lagrange の式を書けば,この直感が 16x2=4y2=z216x^2=4y^2=z^2 として現れる。

接するという幾何的意味

制約付き極値では,制約曲面と目的関数の等値面が極値点で接する。したがって二つの法線ベクトルが平行になる。この幾何的説明は,Lagrange 乗数法の式を丸暗記ではなく意味から説明する答案になる。

特異点を持つ体積

log⁡(1/r2)\log(1/r^2) は r=0r=0 で発散するが,面積要素 r dr dθr\,dr\,d\theta が付くため体積は有限になる。d2log⁡d→0d^2\log d\to0 の確認が,最後の極限で重要である。

解答

直方体の対角線が原点と点 (x,y,z)(x,y,z) を結ぶので,体積は V1=xyz V_1=xyz である。制約は 16x2+4y2+z2=16 16x^2+4y^2+z^2=16 であるから,これは半軸長 1,2,41,2,4 の楕円体の第一象限部分である。xyxy 平面との交線は x2+y24=1 x^2+\frac{y^2}{4}=1 で,第一象限では (1,0),(0,2)(1,0),(0,2) を結ぶ楕円弧になる。

極値条件は,制約曲面と等値面 xyz=const.xyz=\text{const.} が接すること,すなわち法線ベクトルが平行になることを意味する。Lagrange の未定乗数法を用いると yz=32λx,xz=8λy,xy=2λz, yz=32\lambda x,\qquad xz=8\lambda y,\qquad xy=2\lambda z, 16x2+4y2+z2=16 16x^2+4y^2+z^2=16 である。x,y,z>0x,y,z>0 として割り算すると 16x2=4y2=z2 16x^2=4y^2=z^2 である。制約式に代入して x=13,y=23,z=43 x=\frac1{\sqrt3},\qquad y=\frac2{\sqrt3},\qquad z=\frac4{\sqrt3} を得る。したがって最大体積は V1,max⁡=833. V_{1,\max}=\frac{8}{3\sqrt3}.

次に z=log⁡1x2+y2 z=\log\frac1{x^2+y^2} と xyxy 平面で囲まれる部分を考える。z=0z=0 との交線は x2+y2=1x^2+y^2=1 であり,xzxz 平面との交線は z=log⁡1x2(0<∣x∣≤1) z=\log\frac1{x^2}\qquad (0<|x|\le1) である。極座標では z=log⁡1r2=−2log⁡r. z=\log\frac1{r^2}=-2\log r. 原点近傍を r≥dr\ge d で切り取った体積は V2(d)=∫02π∫d1rlog⁡1r2 dr dθ=π(1−d2+2d2log⁡d). V_2(d)=\int_0^{2\pi}\int_d^1 r\log\frac1{r^2}\,dr\,d\theta = \pi(1-d^2+2d^2\log d). d→0+d\to0+ とすると d2log⁡d→0d^2\log d\to0 なので V2=π. V_2=\pi.

最終答

V1=xyz,(x,y,z)=(13,23,43),V1,max⁡=833. V_1=xyz,\qquad (x,y,z)=\left(\frac1{\sqrt3},\frac2{\sqrt3},\frac4{\sqrt3}\right),\qquad V_{1,\max}=\frac{8}{3\sqrt3}. V2(d)=π(1−d2+2d2log⁡d),V2=π. V_2(d)=\pi(1-d^2+2d^2\log d),\qquad V_2=\pi.

第2問 — 線形写像と対称行列

核の基底

階数が3なので,次元定理より5次元空間から4次元空間への線形写像の核は2次元である。指定された正規化ベクトルを含める必要があるため,もう一つは零空間内で直交化して選ぶ。

重複固有値の扱い

−1-1 の固有空間は2次元であり,その中の任意の正規直交基底を選べば対角化できる。固有値が重複している場合,固有ベクトルは一意ではない。

対称行列の冪零性

一般の行列では冪零でも零行列とは限らない。しかし実対称行列は直交対角化できるため,冪零性は全固有値が0であることを意味し,結局零行列になる。

線形写像と対称行列の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 2状態Markov連鎖

列ベクトルの向き

遷移確率を aij=P(St+1=j∣St=i)a_{ij}=P(S_{t+1}=j\mid S_t=i) と置いているので,分布を列ベクトルで持つ場合は ATA^T を掛ける。ここを AA のままにすると成分が入れ替わる。

定常分布

長期分布は q=ATqq=A^Tq を満たす固有値1の固有ベクトルである。確率分布なので,最後に成分和が1になるように正規化する必要がある。

割引和の計算

qt=(AT)t−1q1q_t=(A^T)^{t-1}q_1 と書けば,割引和は行列の等比級数になる。期待値を直接足しても同じ結果が得られるが,行列式の形を保つと問題中の f(γ)f(\gamma) が γN\gamma^N であることが見えやすい。

2状態Markov連鎖の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 変位電流と電磁波

変位電流

変位電流は実際に電荷が誘電体中を横切って流れる電流ではなく,時間変化する電場が磁場を作る効果を電流密度の形で表したものである。コンデンサの交流応答を Maxwell 方程式とつなぐための重要な概念である。

波速の導出

平面波を波動方程式へ代入すると,空間微分から (2π/λ)2(2\pi/\lambda)^2,時間微分から (2πν)2(2\pi\nu)^2 が出る。符号は両辺で同じように消えるので,λν=1/μ0ε0\lambda\nu=1/\sqrt{\mu_0\varepsilon_0} が得られる。

同偏波と直交偏波

同じ偏波を同位相で重ねると電場振幅が2倍になり,強度は4倍になる。一方,直交偏波では二乗和として足されるため,単純に2本分の強度になる。この違いが平均エネルギーの係数差になる。

変位電流と電磁波の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ソートとプロセッサ性能

ソートの空欄

バブルソートは隣接交換,選択ソートは未整列部分の最小値探索である。擬似コードの変数名を追うだけでなく,どのアルゴリズムの不変条件を保っているかを見ると空欄を誤りにくい。

CPIと性能

性能は実行時間の逆数であり,実行時間は「命令数 ×\times CPI // 周波数」で決まる。命令数が変わらない条件では,CPIと周波数だけを比較すればよい。

キャッシュヒット率

キャッシュの効果は,メモリ参照命令のCPIをヒット時とミス時の重み付き平均で置き換えるだけで計算できる。全命令に占めるメモリ参照の割合を最後に掛ける点を落としやすい。

ソートとプロセッサ性能の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 情報通信 院試 過去問の収録4年度

  • 2025年度(全3問)

    極限・二重積分・数列の収束 / 対称行列と二次曲面 / 情報通信分野の論述

  • 2023年度(全5問)

    ガンマ関数とWallis積 / Gram行列と固有値 / 二項分布とロジスティック回帰

  • 2022年度(このページ・全5問)

    多変数微分と体積 / 線形写像と対称行列 / 2状態Markov連鎖

  • 2020年度(全5問)

    変数変換と二変数関数の極値 / 正定値行列と対称化写像 / ガウス分布のモーメント