京都大学 院試 過去問 解答例
京大 情報学研究科 社会情報学コース 2024年度 院試 解答例・解説
京都大学 情報学研究科 社会情報学コース 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全25問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 情報学基礎:マシン語
オーバーフロー判定
自然数が2の補数表記で入っているため、入力値の符号ビットは0である。したがって、和の符号ビットが1になったときだけ正のオーバーフローが起きている。 とのビット積で最上位ビットを抽出し、それを回転して に変換すればフラグとして使える。
制約の読み方
この問題は「何を計算するか」だけでなく、LOAD、JUMP、ROTATEなどの命令数制約が採点対象になる。 最初の3命令で固定すべきレジスタを読み込み、その後は別レジスタだけを使うのが安全である。
第2問 — 情報学基礎:マージソート
併合の不変条件
2つの入力リストが整列済みなら、先頭同士を比べて小さい方を出力へ送るだけで、出力リストの整列性は保たれる。 片方が空になった後は、もう片方の残りはすでに整列済みなのでそのまま追加できる。
定数時間の前提
通常の配列スライスや先頭削除はコピーやシフトを伴うため定数時間ではない。 問題文の仮定を満たすには、ビューやポインタ更新で処理できる表現を明示する必要がある。
第3問 — 情報学基礎:プログラミング言語
Prolog の応答
Prologでは変数に代入される値の組を列挙する。 推移律を入れた場合、直接の事実だけでなく、間に人を挟む関係も答えに含まれる。
規則の変数順
規則AとBは、身長条件の向きが逆である。 と を取り違えると、BMIと体型の答えが逆になる。
第4問 — 情報学基礎:データベース
正規化の意義
正規化は単に表を分ける作業ではない。 更新、挿入、削除の異常を避け、同じ事実を一箇所で管理するための設計原理である。
JOIN と SELECT の順序
関係代数では、先に条件で絞ってから結合すると中間結果が小さくなる。 この問題では ClubID=1 で絞ってから Student と結合するのが分かりやすい。
第5問 — 情報学基礎:計算量
内側ループを数式化する
内側ループは単に 回 を増やしているだけである。 この回数を直接足せば、結果を変えずにループを1段減らせる。
計算量の改善
Algorithm 1 は各 で最大 回の内側反復を行う。 Algorithm 2 はその反復を定数時間の加算に置き換えるため、外側の 回だけで済む。
第6問 — 専門 T1:確率的推論
分解形から構造を読む
条件付き確率表の左側に現れる変数が親ノードである。 と から は の親であり、 から は の親である。
サンプリングの位置づけ
サンプリングは厳密推論の代替であり、万能ではない。 標本数が不足すると分散が大きく、証拠の確率が小さい場合には有効標本が得られにくい。
第7問 — 専門 T2:情報検索とグラフ中心性
precision と recall
recall は「正解集合のうち、上位 に含まれた割合」であるため、 を増やしても下がらない。 precision は分母も増えるので、正解が追加されるか不正解が追加されるかで上下する。
中心と近接中心性の違い
中心は最遠点までの距離、すなわち最大距離だけを見る。 近接中心性は全頂点への距離の総和を見る。 したがって、最遠点まで少し遠くても、多数の頂点に近い頂点が近接中心性最大になることがある。
第8問 — 専門 T3:ソフトウェア工学
開発プロセスの比較
インクリメンタルと反復は併用されることが多い。 実務では「小さく機能を追加しながら、各機能も反復的に改善する」形になるが、試験では重点の違いを明確に書くとよい。
UMLの多重度
UMLの多重度は、線の反対側の1インスタンスに対して、その端に何個のインスタンスが対応するかを表す。 ラベルの位置だけでなく、どちらのクラスに付いている数字かを取り違えないことが重要である。
第9問 — 専門 T4:ヒューマンインタフェース
Norman原理の書き分け
アフォーダンスは「できそうに見える性質」、シグニファイアは「それを示す記号や手がかり」である。 両者を区別して書くと答案が明確になる。
オンライン調査の評価軸
長所は効率性、短所は代表性と信頼性に整理できる。 単に便利と書くだけでなく、回答者の偏りや測定誤差に触れるとよい。
第10問 — 専門 B5:予測手法
予測手法の選び方
観測データの範囲内で高精度に当てたいなら機械学習が有利になりやすい。 係数の意味や因果解釈が重要なら統計モデル、未知の将来シナリオやメカニズムが重要なら数値モデルが有利である。
第11問 — 専門 B6:動物の回遊
進化的説明
単に「餌を求めて移動する」と書くだけでは不十分である。 移動による利益が生存率や繁殖成功を高め、その利益がコストを上回るという適応度の観点で説明する。
調査方法の整理
直接追跡法は経路に強く、化学・遺伝的手法は由来や利用海域の推定に強い。 複数手法を組み合わせると、移動経路と個体群構造を補完的に理解できる。
第12問 — 専門 B7:森林流域の水収支
水収支の近似
貯留量変化を長期平均で無視すれば、降水量から蒸発散量を引いた値が流出量になる。 問題は「概算」を求めているため、この単純な年水収支で十分である。
第13問 — 専門 B8:FSC認証と哺乳類相
遭遇率の読み方
カメラトラップの遭遇率は、個体数密度、活動量、移動経路、検出確率が合わさった指標である。 したがって、結果を解釈するときは「個体数が多い」と断定せず、「検出頻度が高い」と表現するのが安全である。
第14問 — 専門 B9:生態・統計の短答
選択問題への対応
本番では4問だけ選べばよいが、短答問題は周辺知識の確認に使いやすい。 血縁度、標準誤差、CAM植物のように式や機構を1つ添えると答案が締まる。
第15問 — 専門 D10:自然災害のリスク管理と危機管理
答案の骨格
自然災害では「予防・軽減」と「発災時対応」を分けて書くと整理しやすい。 手順は、評価、対策、実施、見直しという管理サイクルでまとめる。
第16問 — 専門 D11:災害リスクの構成要素
3要素を分ける
災害リスクは自然現象の大きさだけでは決まらない。 同じハザードでも、そこに人や資産があるか、被害を受けやすい構造かで結果は大きく変わる。
第17問 — 専門 D12:防災研究とオープンサイエンス
防災分野での意義
災害時には時間が重要である。 平時からデータ形式やライセンスを整えておくことで、発災時の分析、情報共有、意思決定が速くなる。
第18問 — 専門 D13:地区防災計画
行政計画との違い
地区防災計画は、上位計画を地域の生活空間に落とし込む役割を持つ。 誰が、いつ、どこへ、どの経路で、誰を支援するかまで具体化することが重要である。
第19問 — 専門 D14:ISO 19123 と Coverage
Coverage の理解
coverageは、空間上の位置から属性値への写像である。 離散格子coverageでは、連続面全体ではなく、有限個の格子点またはセルに値が対応する。
第20問 — 専門 D15:NIMS/ESF と情報
情報の観点
ESFの機能そのものを説明するだけでなく、どの情報を、誰が、どの意思決定に使うかを書くと設問に合う。 交通は空間情報、避難支援は個人・施設・物資情報が中心になる。
第21問 — 専門 M16:病院情報システム
この設問は図表を含むため、解説はPDF版でご確認いただけます。
完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録第22問 — 専門 M17:医療分野の機械学習
300字問題の構成
背景、場面、利用者、便益を1文ずつ入れると、短い字数でも設問の要求を満たせる。 医療AIでは、便益だけでなく偽陰性や説明可能性にも触れられると評価が高い。
第23問 — 専門 M18:前向き介入試験の選択バイアス
選択バイアスの本質
選択バイアスは、治療群の選ばれ方がアウトカムに関係する背景因子と結びつくことで起こる。 治療そのものの効果と、患者背景の違いを分離できなくなる点が問題である。
第24問 — 専門 M19:CT画像データ量
単位変換
この問題では と指定されている。 通信速度の Mbps は bit/s なので、byte に直すときは8で割る。
第25問 — 専門 M20:病院のサプライチェーン攻撃
ファイアウォールだけでは不十分な理由
サプライチェーン攻撃は、信頼された取引先、更新経路、保守アカウントを利用する。 そのため、境界防御だけでなく、ゼロトラスト、権限管理、監査、復旧能力を組み合わせる必要がある。