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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 工学院 システム制御系 システム制御系 数学 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。確率・統計1問・線形代数1問・微分積分・解析1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
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途中式と最終答(最終答つき4問)
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東京科学大 システム制御系 数学 2021年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は確率・統計1問・線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—本試験:極限・複素積分・二項級数途中式 / 端点判定の補足あり
第2問線形代数固有値・Jordan標準形・行列指数途中式あり
第3問確率・統計確率分布・モーメント母関数途中式 / 別解による平均確認あり
第4問微分積分・解析波動方程式のラプラス変換途中式 / 逆変換の導き方あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に7テーマが出ています。

第1問 — 本試験:極限・複素積分・二項級数

方針

問1は分子も分母も x2x^2 まで相殺されるため,最初に残る x4x^4 の係数を比較する。 問2は積分路の内部にある極を確認し,1位の極なら通常のコーシーの積分公式,3位の極なら微分形を使う。 問3は一般化二項級数である。まず係数を微分で求め,その後に比の判定法で収束半径を出し,最後に端点を別に調べる。

途中式

問1で必要なのは ex+e−x=2+x2+x412+O(x6),sin⁡2x=x2−x43+O(x6) e^x+e^{-x}=2+x^2+\frac{x^4}{12}+O(x^6), \qquad \sin^2x=x^2-\frac{x^4}{3}+O(x^6) の2本である。どちらも偶関数なので奇数次の項は消える。 特に sin⁡2x\sin^2x は (x−x36+O(x5))2=x2−x43+O(x6) \left(x-\frac{x^3}{6}+O(x^5)\right)^2 =x^2-\frac{x^4}{3}+O(x^6) と,2次まででなく4次まで計算する必要がある。

問2(2)では3位の極を留数展開で処理してもよい。 e2z=e−2ie2(z+i)=e−2i{1+2(z+i)+42!(z+i)2+⋯ } e^{2z} = e^{-2i}e^{2(z+i)} = e^{-2i}\left\{1+2(z+i)+\frac{4}{2!}(z+i)^2+\cdots\right\} だから, e2z(z+i)3=e−2i{1(z+i)3+2(z+i)2+2z+i+⋯ }. \frac{e^{2z}}{(z+i)^3} = e^{-2i}\left\{ \frac{1}{(z+i)^3} +\frac{2}{(z+i)^2} +\frac{2}{z+i} +\cdots \right\}. 留数は 2e−2i2e^{-2i} であり,積分値は 2πi⋅2e−2i=4πie−2i 2\pi i\cdot2e^{-2i}=4\pi i e^{-2i} となる。これはコーシーの微分公式で得た値と一致する。

検算

問1の分母は x≠0x\neq0 で sin⁡2x−x2<0 \sin^2x-x^2<0 に近い形になる。実際,sin⁡x\sin x は xx より小さい大きさなので,分母の主項が負になるのは自然である。 分子は cosh⁡x\cosh x 型の偶関数から 2+x22+x^2 を引いたもので,主項は正である。 したがって極限値が負になることは符号の検算になる。

問2(1)では,極がちょうど円の中心にあるので内部判定で迷う余地がない。 cosh⁡(πi/4)=2/2\cosh(\pi i/4)=\sqrt2/2 は実数なので,積分値が純虚数になることも 2πi×実数 2\pi i\times\text{実数} という形から確認できる。

問3では,α=1\alpha=1 なら 1+x1+x,α=2\alpha=2 なら 1+2x+x21+2x+x^2 で級数が止まる。 この特殊例を代入すると,一般係数の式が通常の二項定理と同じになっていることを確認できる。

端点判定の補足

端点で混乱しやすいのは,(αn)\binom{\alpha}{n} の符号と,代入する xnx^n の符号が重なる点である。 非負整数でない α\alpha について (−1)n(αn)∼Cn−α−1(C≠0) (-1)^n\binom{\alpha}{n} \sim C n^{-\alpha-1} \qquad (C\neq0) と見れば,x=−1x=-1 では (αn)(−1)n∼Cn−α−1 \binom{\alpha}{n}(-1)^n\sim Cn^{-\alpha-1} となり,同符号の pp 級数型になる。 したがって x=−1x=-1 は α+1>1\alpha+1>1,すなわち α>0\alpha>0 のときだけ収束する。 一方 x=1x=1 では (αn)∼(−1)nCn−α−1 \binom{\alpha}{n}\sim (-1)^n Cn^{-\alpha-1} で交代級数型になるため,項が0に近づく α>−1\alpha>-1 なら条件収束まで含めて収束する。 α≤−1\alpha\leq -1 では項が0に近づかないか,少なくとも交代級数として収束を保証できないので端点に入れない。 この整理を先に作ると, [−1,1],(−1,1],(−1,1) [-1,1],\quad (-1,1],\quad (-1,1) のどれを選ぶかを機械的に判断できる。 収束の種類まで含めると,非負整数でない場合は次の表になる。 α の範囲x=−1x=1α>0絶対収束絶対収束−1<α<0発散条件収束α≤−1発散発散 \begin{array}{c|c|c} \alpha\text{ の範囲} & x=-1 & x=1\\ \hline \alpha>0 & \text{絶対収束} & \text{絶対収束}\\ -1<\alpha<0 & \text{発散} & \text{条件収束}\\ \alpha\leq -1 & \text{発散} & \text{発散} \end{array} 負の整数はここでいう α≤−1\alpha\leq -1 に含まれ,級数は途中で止まらない。 「整数なら二項定理で終わる」とまとめず,止まるのは α=0,1,2,…\alpha=0,1,2,\ldots の場合だけである点を分けておく。

典型ミス

問1では,ex+e−xe^x+e^{-x} の x4x^4 係数を 1/241/24 としてしまうミスが多い。 それは exe^x 単体の係数であり,e−xe^{-x} からも同じ x4/24x^4/24 が出るので合計は x4/12x^4/12 である。 また,sin⁡2x\sin^2x の4次項の符号を正にすると,答えの符号が逆になる。

問2では,積分路の向きによる符号と,微分公式の階数を取り違えやすい。 (z+i)3=(z−(−i))3(z+i)^3=(z-(-i))^3 は n+1=3n+1=3,つまり2階微分である。 3階微分ではない。

問3では,α\alpha が非負整数のときだけ級数が途中で止まる。 負の整数では係数は止まらず,むしろ端点で項が0に近づかない場合がある。 また,収束半径だけを書いて端点を調べない答案は,収束範囲を完全には答えていない。

試験で書くべきポイント

問1は4次の主項を明示してから係数比を取る。ロピタルの定理を繰り返す方法でもよいが,計算量が増えるため,この問題ではテイラー展開の方が答案を短く保てる。

問2は「内部の極」と「積分路の向き」を一行で確認するだけで,その後の公式適用が正当化される。 特に問2(2)では 2πi2!f′′(−i) \frac{2\pi i}{2!}f''(-i) の形を答案に残すと,3位の極を正しく扱っていることが採点者に伝わる。

問3は次の順に書くとまとまりやすい。 f(n)(0)⟶(αn)⟶比の判定法⟶x=±1 の端点判定. f^{(n)}(0)\quad\longrightarrow\quad \binom{\alpha}{n}\quad\longrightarrow\quad \text{比の判定法}\quad\longrightarrow\quad x=\pm1\text{ の端点判定}. 端点の結論は α\alpha の範囲で場合分けして,非負整数の場合だけ別枠にするのが最も誤解が少ない。

解答

問1

x=0x=0 のまわりで4次の項まで見る。まず ex+e−x=2+x2+x412+O(x6) e^x+e^{-x} =2+x^2+\frac{x^4}{12}+O(x^6) であるから,分子は ex+e−x−x2−2=x412+O(x6) e^x+e^{-x}-x^2-2 =\frac{x^4}{12}+O(x^6) となる。また sin⁡x=x−x36+O(x5) \sin x=x-\frac{x^3}{6}+O(x^5) より sin⁡2x=x2−x43+O(x6) \sin^2x =x^2-\frac{x^4}{3}+O(x^6) である。したがって分母は sin⁡2x−x2=−x43+O(x6). \sin^2x-x^2 =-\frac{x^4}{3}+O(x^6). よって lim⁡x→0ex+e−x−x2−2sin⁡2x−x2=1/12−1/3=−14. \lim_{x\to0} \frac{e^x+e^{-x}-x^2-2}{\sin^2x-x^2} = \frac{1/12}{-1/3} =-\frac14.

問2(1)

cosh⁡(z/4)\cosh(z/4) は整関数であり,積分路の内部にある特異点は z=πi z=\pi i の1位の極だけである。積分路は正の向きなので,コーシーの積分公式から ∮Ccosh⁡(z/4)z−πi dz=2πicosh⁡πi4. \oint_C\frac{\cosh(z/4)}{z-\pi i}\,\mathrm dz =2\pi i\cosh\frac{\pi i}{4}. cosh⁡(iθ)=cos⁡θ\cosh(i\theta)=\cos\theta を用いると cosh⁡πi4=cos⁡π4=22. \cosh\frac{\pi i}{4}=\cos\frac{\pi}{4}=\frac{\sqrt2}{2}. したがって ∮Ccosh⁡(z/4)z−πi dz=2 πi. \oint_C\frac{\cosh(z/4)}{z-\pi i}\,\mathrm dz =\sqrt2\,\pi i.

問2(2)

e2ze^{2z} は整関数であり,∣z∣=2|z|=2 の内部に z=−iz=-i がある。 コーシーの積分公式の微分形 ∮Cf(z)(z−a)n+1 dz=2πin!f(n)(a) \oint_C\frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}\,\mathrm dz =\frac{2\pi i}{n!}f^{(n)}(a) を f(z)=e2zf(z)=e^{2z},a=−ia=-i,n=2n=2 に適用する。 f′′(z)=4e2z f''(z)=4e^{2z} であるから ∮Ce2z(z+i)3 dz=2πi2! 4e−2i=4πie−2i. \oint_C\frac{e^{2z}}{(z+i)^3}\,\mathrm dz = \frac{2\pi i}{2!}\,4e^{-2i} =4\pi i e^{-2i}.

問3

α\alpha が実数のとき, f(n)(x)=α(α−1)⋯(α−n+1)(1+x)α−n(n≥1) f^{(n)}(x) = \alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)(1+x)^{\alpha-n} \qquad (n\geq1) である。したがって x=0x=0 での係数は f(n)(0)n!=(αn)=α(α−1)⋯(α−n+1)n! \frac{f^{(n)}(0)}{n!} = \binom{\alpha}{n} = \frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!} となる。ただし (α0)=1\binom{\alpha}{0}=1 とする。よってマクローリン級数は (1+x)α=∑n=0∞(αn)xn=1+αx+α(α−1)2!x2+α(α−1)(α−2)3!x3+⋯ (1+x)^\alpha = \sum_{n=0}^{\infty}\binom{\alpha}{n}x^n = 1+\alpha x+\frac{\alpha(\alpha-1)}{2!}x^2 +\frac{\alpha(\alpha-1)(\alpha-2)}{3!}x^3+\cdots である。

α=0,1,2,…\alpha=0,1,2,\ldots のときは,ある次数以降の係数が0になり,多項式で終わる。 この場合はすべての実数 xx で収束する。

以下では α\alpha が非負整数でない場合を考える。このとき隣り合う項の比は ∣(αn+1)xn+1(αn)xn∣=∣α−nn+1∣ ∣x∣⟶∣x∣ \left| \frac{\binom{\alpha}{n+1}x^{n+1}} {\binom{\alpha}{n}x^n} \right| = \left|\frac{\alpha-n}{n+1}\right|\,|x| \longrightarrow |x| であるから,収束半径は1である。したがって ∣x∣<1|x|<1 では収束し, ∣x∣>1|x|>1 では発散する。

端点では係数の標準的な漸近式 (−1)n(αn)∼1Γ(−α) n−α−1(n→∞) (-1)^n\binom{\alpha}{n} \sim \frac{1}{\Gamma(-\alpha)}\,n^{-\alpha-1} \qquad (n\to\infty) を用いる。ここで,いま考えている α\alpha は非負整数でないので Γ(−α)\Gamma(-\alpha) は有限である。 よって x=−1x=-1 では n−α−1n^{-\alpha-1} 型の正負が交替しない級数になり,α>0\alpha>0 のときだけ収束する。 一方,x=1x=1 では符号が交互に現れるため,交代級数として,項が0に近づく α>−1\alpha>-1 の範囲で収束する。 補足すると,α>0\alpha>0 では α+1>1\alpha+1>1 なので端点の級数は絶対収束する。 −1<α<0-1<\alpha<0 では 0<α+1<10<\alpha+1<1 となり,x=1x=1 では交代級数として条件収束するが,x=−1x=-1 では同符号の pp 級数型になって発散する。 α≤−1\alpha\leq -1 では係数自体が0に近づかないか,近づいても十分でないため,端点はいずれも収束しない。 以上より,非負整数でない α\alpha に対する収束範囲は {[−1,1],α>0,(−1,1],−1<α<0,(−1,1),α≤−1 \begin{cases} [-1,1], & \alpha>0,\\ (-1,1], & -1<\alpha<0,\\ (-1,1), & \alpha\leq -1 \end{cases} である。

最終答

% 問1 −14,問2(1) 2 πi,問2(2) 4πie−2i,問3 (1+x)α=∑n=0∞(αn)xn,(αn)=α(α−1)⋯(α−n+1)n!(n≥1),(α0)=1. \begin{gathered} \text{問1}\ -\frac14,\\ \text{問2(1)}\ \sqrt2\,\pi i,\qquad \text{問2(2)}\ 4\pi i e^{-2i},\\ \text{問3}\ (1+x)^\alpha =\sum_{n=0}^{\infty}\binom{\alpha}{n}x^n,\\ \binom{\alpha}{n} = \frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!} \quad (n\geq1),\qquad \binom{\alpha}{0}=1. \end{gathered} 収束範囲は,α=0,1,2,…\alpha=0,1,2,\ldots ではすべての実数 xx。 それ以外では {[−1,1],α>0,(−1,1],−1<α<0,(−1,1),α≤−1. \begin{cases} [-1,1], & \alpha>0,\\ (-1,1], & -1<\alpha<0,\\ (-1,1), & \alpha\leq -1. \end{cases}

第2問 — 本試験:固有値・Jordan標準形・行列指数

方針

この問題の要点は,λ=2\lambda=2 の代数的重複度が 22 である一方,固有ベクトルが1本しか出ないことである。 したがって,通常の対角化ではなく (A−2I)r=q (A-2I)r=q を満たす一般化固有ベクトルを使って Jordan ブロックを作る。 P=(p q r)P=(p\ q\ r) の順に列を並べると, Ap=0,Aq=2q,Ar=q+2r Ap=0,\qquad Aq=2q,\qquad Ar=q+2r がそのまま BB の列になるため,計算の見通しがよい。

途中式

特性多項式の計算では,符号を含めて det⁡(A−λI)=(1−λ)det⁡(1−λ−102−λ)+det⁡(0−1−12−λ)−det⁡(01−λ−10)=(1−λ)2(2−λ)−1−(1−λ)=−λ(λ−2)2 \begin{aligned} \det(A-\lambda I) &=(1-\lambda) \det\begin{pmatrix}1-\lambda&-1\\0&2-\lambda\end{pmatrix} +\det\begin{pmatrix}0&-1\\-1&2-\lambda\end{pmatrix} -\det\begin{pmatrix}0&1-\lambda\\-1&0\end{pmatrix} \\ &=(1-\lambda)^2(2-\lambda)-1-(1-\lambda)\\ &=-\lambda(\lambda-2)^2 \end{aligned} となる。ここで λ=2\lambda=2 の固有空間は (A−2I)x=0⟹x1=0,x2=−x3 (A-2I)x=0 \quad\Longrightarrow\quad x_1=0,\quad x_2=-x_3 で1次元である。これにより,固有値 22 に対応するブロックが 22 次 Jordan ブロックになる。

検算

まず正規化は ∑i∣pi∣=1,∑i∣qi∣=1 \sum_i |p_i|=1,\qquad \sum_i |q_i|=1 を満たしている。また, (A−2I)(−1/21/41/4)=(0−1/21/2)=q (A-2I) \begin{pmatrix} -1/2\\1/4\\1/4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0\\-1/2\\1/2 \end{pmatrix} =q であり,rr が指定された方程式を満たすことも確認できる。 さらに P−1P=I P^{-1}P=I を掛け算で確認すると,求めた逆行列の取り違えを検出できる。 最後に e−B⋅0=I e^{-B\cdot0}=I であること,および 22 次 Jordan ブロックの非対角成分が −te−2t-te^{-2t} になることを見れば,行列指数の符号も確認できる。 さらに ddte−Bt=−Be−Bt \frac{\mathrm d}{\mathrm dt}e^{-Bt}=-Be^{-Bt} を 22 次ブロックで確認すると,右上成分の微分が ddt(−te−2t)=−e−2t+2te−2t \frac{\mathrm d}{\mathrm dt}(-te^{-2t}) =-e^{-2t}+2te^{-2t} となり,−Je−Jt-J e^{-Jt} の右上成分と一致する。 この検算は,Jordan ブロックの指数で符号を落としたときにすぐ気づける。

典型ミス

成分の絶対値の和を 11 にする正規化であり,ユークリッドノルムを 11 にする正規化ではない。 また,λ=2\lambda=2 は重解なので固有ベクトルが2本あると決めつけると,PP を作れなくなる。 この問題では qq の符号を逆に取ってもよいが,その場合は (A−2I)r=q(A-2I)r=q を解き直し,rr と P−1P^{-1} も同時に変える必要がある。 行列指数では [数式] であり,右上成分の符号を +te−2t+t e^{-2t} としないように注意する。

試験で書くべきポイント

答案では,固有値を出すだけでなく,λ=2\lambda=2 の固有空間が1次元であることを書いておくと,なぜ一般化固有ベクトル rr が必要かが明確になる。 最小ノルム条件については,一般解 r=(−1/2, 1/2−s, s)T r=(-1/2,\ 1/2-s,\ s)^T まで出してから ∥r∥2\|r\|^2 を最小化する流れを書けば十分である。 最後の e−Bte^{-Bt} は,Jordan ブロックを 2I2+N,N2=0 2I_2+N,\qquad N^2=0 と分けて計算すると,指数の級数展開を長く書かずに全成分を正確に求められる。

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第3問 — 本試験:確率分布・モーメント母関数

方針

この問題は,分散の基本恒等式とモーメント母関数の使い方を順に確認する構成である。 平均は M′(0)M'(0),2次モーメントは M′′(0)M''(0) から得られ,分散は Var⁡(S)=E[S2]−{E[S]}2 \operatorname{Var}(S)=\mathrm E[S^2]-\{\mathrm E[S]\}^2 で計算する。独立な和については,モーメント母関数が積に分解されることを使う。

途中式

ポアソン分布では MX(t)M_X(t) を直接微分すればよい。 MX′(t)=λetMX(t),MX′′(t)=(λet+λ2e2t)MX(t) M_X'(t)=\lambda e^t M_X(t),\qquad M_X''(t)=\left(\lambda e^t+\lambda^2e^{2t}\right)M_X(t) であり,t=0t=0 では MX(0)=1M_X(0)=1 になる。 したがって E[X]=λ,E[X2]=λ+λ2 \mathrm E[X]=\lambda,\qquad \mathrm E[X^2]=\lambda+\lambda^2 と読める。

幾何分布側では,和が y=1y=1 から始まる点に注意する。 ∑y=1∞ety(1−q)qy−1=(1−q)et∑k=0∞(qet)k \sum_{y=1}^{\infty} e^{ty}(1-q)q^{y-1} = (1-q)e^t\sum_{k=0}^{\infty}(qe^t)^k と添字を k=y−1k=y-1 に直すと,初項と公比が見えやすい。 このとき 0<q<10<q<1 なので,t=0t=0 は必ず収束範囲に入る。 平均を求めるために 00 近傍で微分するには,少なくとも t<−log⁡qt<-\log q という 開区間で母関数が定義されていることを確認しておくとよい。

別解による平均確認

問5では,モーメント母関数を最後まで微分してもよいが,平均だけなら独立和の性質を使うほうが速い。 正の整数から始まる幾何分布について E[Y]=∑y=1∞y(1−q)qy−1=(1−q)1(1−q)2=11−q \mathrm E[Y] = \sum_{y=1}^{\infty}y(1-q)q^{y-1} = (1-q)\frac{1}{(1-q)^2} = \frac{1}{1-q} である。q=1/2q=1/2 では E[Y]=2\mathrm E[Y]=2,ポアソン分布側は E[X]=1\mathrm E[X]=1 なので, E[Z]=E[X]+E[Y]=3 \mathrm E[Z]=\mathrm E[X]+\mathrm E[Y]=3 となる。これは微分結果の強い検算になる。

検算

母関数を書いたら,まず t=0t=0 を代入して MX(0)=1,MY(0)=1−q1−q=1,MZ(0)=1 M_X(0)=1,\qquad M_Y(0)=\frac{1-q}{1-q}=1,\qquad M_Z(0)=1 を確認する。母関数は 00 で 11 にならなければならないので,この確認だけで 係数や先頭の ete^t の抜けをかなり検出できる。 さらに問5では MZ(t)=exp⁡(et−1)et2−et M_Z(t)=\exp(e^t-1)\frac{e^t}{2-e^t} であり,t=0t=0 が収束範囲 t<log⁡2t<\log 2 の内側にあることも確認できる。

典型ミス

YY の分布は 1,2,3,…1,2,3,\ldots から始まる型である。 そのため MY(t)=1−q1−qet M_Y(t)=\frac{1-q}{1-qe^t} としてしまうと,先頭の ete^t が抜けている。 この誤りをすると MY(0)=1M_Y(0)=1 は偶然保たれるが,平均が q/(1−q)q/(1-q) になってしまい,本問の設定とずれる。

また,MZ(t)=MX(t)MY(t)M_Z(t)=M_X(t)M_Y(t) と書けるのは X,YX,Y が独立だからである。 独立性に触れずに積へ進むと,答案としては根拠が不足する。

試験で書くべきポイント

等比級数を使う問3では,収束条件 ∣qet∣<1⟺t<−log⁡q |qe^t|<1 \quad\Longleftrightarrow\quad t<-\log q を必ず添える。問4でも,ポアソン分布のモーメント母関数はすべての実数 tt で定義できるが, 積全体の定義域は YY 側に合わせて t<−log⁡qt<-\log q になる。

問5の微分では,商の微分を雑に処理すると分母の2乗を落としやすい。 (et2−et)′=2et(2−et)2 \left(\frac{e^t}{2-e^t}\right)' = \frac{2e^t}{(2-e^t)^2} を別行で示しておくと,途中点を取りやすく,最後の平均計算も安定する。

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第4問 — 本試験:波動方程式のラプラス変換

方針

この問題は,tt についてラプラス変換すると,偏微分方程式が xx だけの常微分方程式に変わる。 初期条件がすべて 00 なので,Lt[utt]\mathcal L_t[u_{tt}] に余分な初期値項が残らない点が計算を大きく簡単にしている。

右辺の xx 依存性が sin⁡(πx)\sin(\pi x) であり,境界条件 u(0,t)=u(1,t)=0u(0,t)=u(1,t)=0 とも相性がよい。 したがって,ラプラス変換後の解も sin⁡(πx)\sin(\pi x) 型になると予想できる。 実際,sin⁡(πx)\sin(\pi x) は d2dx2sin⁡(πx)=−π2sin⁡(πx) \frac{d^2}{dx^2}\sin(\pi x)=-\pi^2\sin(\pi x) を満たすため,微分方程式は係数 A(s)A(s) を決めるだけの計算に落ちる。 この見方を時間側で書けば, u(x,t)=q(t)sin⁡(πx) u(x,t)=q(t)\sin(\pi x) とおいたとき q′′(t)+π2q(t)=sin⁡(πt),q(0)=q′(0)=0 q''(t)+\pi^2q(t)=\sin(\pi t),\qquad q(0)=q'(0)=0 という 1 自由度の強制振動に落ちている。 本問はラプラス変換を求めているので答案では U(x,s)U(x,s) を経由するが,このモード分解を頭に置くと,分母が (s2+π2)2(s^2+\pi^2)^2 になる理由を見通しやすい。 すなわち,左辺の固有値から来る s2+π2s^2+\pi^2 と,外力 sin⁡(πt)\sin(\pi t) のラプラス変換から来る s2+π2s^2+\pi^2 が重なっている。

途中式

問2では,最初から U(x,s)=A(s)sin⁡(πx) U(x,s)=A(s)\sin(\pi x) としても答えに到達できる。ただし,答案としては斉次解 C1(s)cosh⁡(sx)+C2(s)sinh⁡(sx) C_1(s)\cosh(sx)+C_2(s)\sinh(sx) を一度書き,境界条件から C1(s)=C2(s)=0C_1(s)=C_2(s)=0 となることを示すと,常微分方程式を完全に解いたことが明確になる。 特に x=1x=1 で sin⁡π=0\sin\pi=0 となるため,特解が境界条件を自動的に満たしている点を見落とさない。 また,C2(s)sinh⁡s=0C_2(s)\sinh s=0 から C2(s)=0C_2(s)=0 とするところでは,ラプラス変換の収束域を Re⁡s>0\operatorname{Re}s>0 と見ていることが理由になる。 sinh⁡s\sinh s は複素平面では零点を持つので,単に「sinh⁡s≠0\sinh s\neq0」とだけ書くより,収束域で議論していることを一言添えると答案が締まる。

逆変換の導き方

逆ラプラス変換の公式を忘れた場合は,既知の Lt[sin⁡(at)]=as2+a2 \mathcal L_t[\sin(at)]=\frac{a}{s^2+a^2} を aa で微分して作れる。左辺は ∂∂asin⁡(at)=tcos⁡(at) \frac{\partial}{\partial a}\sin(at)=t\cos(at) であり,右辺は ∂∂a(as2+a2)=s2−a2(s2+a2)2. \frac{\partial}{\partial a} \left(\frac{a}{s^2+a^2}\right) = \frac{s^2-a^2}{(s^2+a^2)^2}. したがって Lt[tcos⁡(at)]=s2−a2(s2+a2)2 \mathcal L_t[t\cos(at)] = \frac{s^2-a^2}{(s^2+a^2)^2} が得られる。これを Lt[sin⁡(at)]=a(s2+a2)(s2+a2)2 \mathcal L_t[\sin(at)] = \frac{a(s^2+a^2)}{(s^2+a^2)^2} と同じ分母にそろえると, Lt[sin⁡(at)−atcos⁡(at)]=a(s2+a2)−a(s2−a2)(s2+a2)2=2a3(s2+a2)2 \mathcal L_t[\sin(at)-at\cos(at)] = \frac{a(s^2+a^2)-a(s^2-a^2)}{(s^2+a^2)^2} = \frac{2a^3}{(s^2+a^2)^2} となる。 この導出を書ければ,公式暗記に頼らず係数 2a32a^3 の取り違えを防げる。

検算

得られた解を u(x,t)=q(t)sin⁡(πx),q(t)=sin⁡(πt)−πtcos⁡(πt)2π2 u(x,t)=q(t)\sin(\pi x),\qquad q(t)=\frac{\sin(\pi t)-\pi t\cos(\pi t)}{2\pi^2} とおく。このとき q(0)=0,q′(t)=tsin⁡(πt)2,q′(0)=0 q(0)=0,\qquad q'(t)=\frac{t\sin(\pi t)}{2},\qquad q'(0)=0 より初期条件を満たす。また q′′(t)=sin⁡(πt)+πtcos⁡(πt)2 q''(t) = \frac{\sin(\pi t)+\pi t\cos(\pi t)}{2} なので, q′′(t)+π2q(t)=sin⁡(πt) q''(t)+\pi^2q(t)=\sin(\pi t) が成り立つ。さらに uxx=−π2q(t)sin⁡(πx)u_{xx}=-\pi^2q(t)\sin(\pi x) であるから, utt=uxx+sin⁡(πt)sin⁡(πx) u_{tt} = u_{xx}+\sin(\pi t)\sin(\pi x) が確かに成立する。境界条件は sin⁡(0)=sin⁡π=0\sin(0)=\sin\pi=0 から直ちに確認できる。 小さい tt での挙動も確認になる。展開すると sin⁡(πt)−πtcos⁡(πt)=π3t33+O(t5) \sin(\pi t)-\pi t\cos(\pi t) = \frac{\pi^3t^3}{3}+O(t^5) なので q(t)=πt36+O(t5). q(t)=\frac{\pi t^3}{6}+O(t^5). これは q(0)=q′(0)=q′′(0)=0q(0)=q'(0)=q''(0)=0 かつ q′′′(0)=π q'''(0)=\pi を意味する。右辺 sin⁡(πt)\sin(\pi t) が t=0t=0 で 0 から立ち上がるため,解が t3t^3 から始まるという整合性が見える。

典型ミス

最も多いミスは,ラプラス変換後の符号を Uxx−s2U U_{xx}-s^2U ではなく s2U−Uxxs^2U-U_{xx} のまま右辺と混同することである。 もとの式が utt=uxx+u_{tt}=u_{xx}+ 外力であるため, s2U=Uxx+πs2+π2sin⁡(πx) s^2U=U_{xx}+\frac{\pi}{s^2+\pi^2}\sin(\pi x) を一度書いてから整理すると符号を落としにくい。

もう一つの注意点は逆ラプラス変換である。 π(s2+π2)2 \frac{\pi}{(s^2+\pi^2)^2} は単なる sin⁡(πt)\sin(\pi t) ではなく,重複した二次因子によって tcos⁡(πt)t\cos(\pi t) の項が現れる。 これは外力の時間周波数 π\pi と,空間モード sin⁡(πx)\sin(\pi x) の固有周波数 π\pi が一致する共鳴を表している。 共鳴といっても,本問の右辺は正弦なので最終式に tcos⁡(πt)t\cos(\pi t) が現れる。 符号を逆にして πtcos⁡(πt)−sin⁡(πt) \pi t\cos(\pi t)-\sin(\pi t) としてしまうと,q′′+π2q=−sin⁡(πt)q''+\pi^2q=-\sin(\pi t) となり,外力の符号が反転する。 最後に q′′+π2qq''+\pi^2q を計算すればこのミスはすぐ発見できる。

境界条件の読み取りにも注意する。答案では区間端点の条件を u(0,t)=0,u(1,t)=0 u(0,t)=0,\qquad u(1,t)=0 として使う。印刷や OCR では添字や引数が崩れて見えることがあるが,0<x<10<x<1 の波動方程式であること,および問2で xx に関する境界値問題を解くことから,右端は x=1x=1 の条件として扱うのが自然である。

試験で書くべきポイント

答案では次の三点を必ず明示したい。 第一に,初期条件を使って Lt[utt]=s2U \mathcal L_t[u_{tt}]=s^2U となること。第二に,境界条件もラプラス変換されて U(0,s)=U(1,s)=0 U(0,s)=U(1,s)=0 となること。第三に,逆変換では Lt−1[1(s2+a2)2]=sin⁡(at)−atcos⁡(at)2a3 \mathcal L_t^{-1} \left[ \frac{1}{(s^2+a^2)^2} \right] = \frac{\sin(at)-at\cos(at)}{2a^3} を使うか,その場で導くこと。 最終的な u(x,t)u(x,t) だけを書くのではなく,U(x,s)U(x,s) までを段階的に示すことが,本問の配点に対応した書き方である。 さらに時間があれば,最後に q′′+π2q=sin⁡(πt) q''+\pi^2q=\sin(\pi t) を一行で確認しておくとよい。 この検算は計算量が少ない一方で,ラプラス変換後の符号,逆変換の係数,および共鳴項の符号を同時に確認できる。

本試験:波動方程式のラプラス変換の途中式・最終答をPDFで見る

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