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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 工学院 システム制御系 システム制御系 数学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。線形代数1問・微分積分・解析1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・フーリエ変換)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・正定値行列。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
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東京科学大 システム制御系 数学 2025年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析ベクトル解析・極値・フーリエ変換—あり
第2問線形代数線形代数・最小二乗最小二乗の意味あり
第3問—多項分布・検定・KLダイバージェンス分散と共分散 / 検定の読み方あり
第4問—線形微分方程式・複素関数・非線形系正定値関数の役割 / 境界での議論あり

この年度の解説には試験で書くべきポイント4件・検算3件・典型ミス3件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に5テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 4問 → 2025年度 4問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・正定値行列
2024年度のページを見る

第1問 — ベクトル解析・極値・フーリエ変換

方針

問1は体積積分と面積分が発散定理で一致する構造である。面積分を直接計算しても, ∇⋅A=4\nabla\cdot A=4 から発散定理で確認しても同じ値になる。

検算

問1(3)の答えが問1(2)と一致していることは強い検算になる。球面の対称性を使う場合は, x2,y2,z2x^2,y^2,z^2 の球面積分が等しいことと,和が R2R^2 の面積分になることを必ず書く。

典型ミス

問2では xyz=1xyz=1 なので符号の組を落としやすい。正の解だけではなく,負号が2個ある 3通りも等号成立条件を満たす。問3(2)では微分公式の符号を誤りやすいので, ddωe−iωx=−ixe−iωx\frac{d}{d\omega}e^{-i\omega x}=-ixe^{-i\omega x} から確認するとよい。

試験で書くべきポイント

問1は球座標のヤコビアン,発散の計算,外向き法線の向きを明示する。問2は不等式の 等号成立条件まで書く。問3はフーリエ変換の規格化定数を最後まで残し,通常の ∫f(x)e−iωx dx\int f(x)e^{-i\omega x}\,dx だけで終わらせないことが重要である。

解答

問1

(1) 球領域の体積を重積分で求める。球座標 x=rsin⁡θcos⁡φ,y=rsin⁡θsin⁡φ,z=rcos⁡θ x=r\sin\theta\cos\varphi,\quad y=r\sin\theta\sin\varphi,\quad z=r\cos\theta を用いると,ヤコビアンは r2sin⁡θr^2\sin\theta である。したがって Vol⁡(V)=∫0R∫0π∫02πr2sin⁡θ dφ dθ dr=R33⋅2⋅2π=4πR33. \operatorname{Vol}(V) =\int_0^R\int_0^\pi\int_0^{2\pi} r^2\sin\theta\,d\varphi\,d\theta\,dr =\frac{R^3}{3}\cdot 2\cdot 2\pi =\frac{4\pi R^3}{3}.

(2) ベクトル場の発散は ∇⋅A=∂(2x)∂x+∂y∂y+∂z∂z=2+1+1=4. \nabla\cdot A =\frac{\partial(2x)}{\partial x} +\frac{\partial y}{\partial y} +\frac{\partial z}{\partial z} =2+1+1=4. よって ∭V∇⋅A dV=4Vol⁡(V)=16πR33. \iiint_V \nabla\cdot A\,dV =4\operatorname{Vol}(V) =\frac{16\pi R^3}{3}.

(3) 球面上の外向き単位法線ベクトルは n=1R(x,y,z) n=\frac{1}{R}(x,y,z) である。したがって A⋅n=2x2+y2+z2R. A\cdot n =\frac{2x^2+y^2+z^2}{R}. 球面上では対称性により ∬Sx2 dS=∬Sy2 dS=∬Sz2 dS=13∬SR2 dS=4πR43. \iint_S x^2\,dS=\iint_S y^2\,dS=\iint_S z^2\,dS =\frac{1}{3}\iint_S R^2\,dS =\frac{4\pi R^4}{3}. これを用いると ∬SA⋅n dS=1R(2∬Sx2 dS+∬Sy2 dS+∬Sz2 dS)=16πR33. \iint_S A\cdot n\,dS =\frac{1}{R}\left( 2\iint_S x^2\,dS+\iint_S y^2\,dS+\iint_S z^2\,dS \right) =\frac{16\pi R^3}{3}.

問2

制約条件から x,y,zx,y,z はいずれも 00 ではない。相加相乗平均の不等式を x2,4y2,16z2x^2,4y^2,16z^2 に適用すると x2+4y2+16z2≥3x2⋅4y2⋅16z23=364(xyz)23=12. x^2+4y^2+16z^2 \ge 3\sqrt[3]{x^2\cdot 4y^2\cdot 16z^2} =3\sqrt[3]{64(xyz)^2} =12. 等号成立条件は x2=4y2=16z2 x^2=4y^2=16z^2 である。制約 xyz=1xyz=1 と合わせると ∣x∣=2,∣y∣=1,∣z∣=12 |x|=2,\qquad |y|=1,\qquad |z|=\frac12 で,符号は積が正になる組だけである。したがって最小値は 1212,そのときの点は (x,y,z)=(2,1,12),(2,−1,−12),(−2,1,−12),(−2,−1,12). (x,y,z)= \left(2,1,\frac12\right),\quad \left(2,-1,-\frac12\right),\quad \left(-2,1,-\frac12\right),\quad \left(-2,-1,\frac12\right).

問3

(1) 定義に従い,絶対値のため積分範囲を x<0x<0 と x>0x>0 に分ける。 F(ω)=12π{∫−∞0exe−iωx dx+∫0∞e−xe−iωx dx}=12π(11−iω+11+iω)=2π11+ω2. \begin{aligned} \mathcal{F}(\omega) &=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \left\{ \int_{-\infty}^{0} e^{x}e^{-i\omega x}\,dx +\int_{0}^{\infty} e^{-x}e^{-i\omega x}\,dx \right\} \\ &=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \left( \frac{1}{1-i\omega}+\frac{1}{1+i\omega} \right) =\sqrt{\frac{2}{\pi}}\frac{1}{1+\omega^2}. \end{aligned}

(2) g(x)=e−∣x∣g(x)=e^{-|x|} とおく。フーリエ変換の定義から ddωF[g](ω)=12π∫−∞∞g(x)(−ix)e−iωx dx=−iF[xg(x)](ω). \frac{d}{d\omega}\mathcal{F}[g](\omega) =\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} g(x)(-ix)e^{-i\omega x}\,dx =-i\mathcal{F}[xg(x)](\omega). したがって F[xe−∣x∣](ω)=iddω(2π11+ω2)=−2i2πω(1+ω2)2. \mathcal{F}[xe^{-|x|}](\omega) =i\frac{d}{d\omega} \left(\sqrt{\frac{2}{\pi}}\frac{1}{1+\omega^2}\right) =-2i\sqrt{\frac{2}{\pi}}\frac{\omega}{(1+\omega^2)^2}.

最終答

% 問1: Vol⁡(V)=4πR3/3\operatorname{Vol}(V)=4\pi R^3/3, ∭V∇⋅A dV=16πR3/3\iiint_V\nabla\cdot A\,dV=16\pi R^3/3, n=(x,y,z)/Rn=(x,y,z)/R, ∬SA⋅n dS=16πR3/3\iint_S A\cdot n\,dS=16\pi R^3/3。 問2:最小値は 1212,点は (2,1,1/2),(2,−1,−1/2),(−2,1,−1/2),(−2,−1,1/2)(2,1,1/2),(2,-1,-1/2),(-2,1,-1/2),(-2,-1,1/2)。 問3: F[e−∣x∣](ω)=2/π/(1+ω2)\mathcal{F}[e^{-|x|}](\omega)=\sqrt{2/\pi}/(1+\omega^2), F[xe−∣x∣](ω)=−2i2/π ω/(1+ω2)2\mathcal{F}[xe^{-|x|}](\omega)=-2i\sqrt{2/\pi}\,\omega/(1+\omega^2)^2。

第2問 — 線形代数・最小二乗

方針

問1は三角行列であることを使うと固有値の計算が短い。対角化では,対角行列の対角成分 の順序と,PP の列に並べる固有ベクトルの順序を一致させることが最重要である。

最小二乗の意味

問2(1)の正規方程式は,残差 Wx^−bW\widehat{x}-b が WW の列空間に直交するという条件 である。WTWW^TW が正則なので,最小二乗解は一意に定まる。

検算

Wx^=(11/34/37/3),WT(Wx^−b)=0 W\widehat{x} = \begin{pmatrix} 11/3\\ 4/3\\ 7/3 \end{pmatrix}, \qquad W^T(W\widehat{x}-b)=0 となり,正規方程式の直交条件を満たす。また WT(1,−1,−1)T=(00) W^T(1,-1,-1)^T = \begin{pmatrix} 0\\ 0 \end{pmatrix} なので,核の生成ベクトルも確認できる。

典型ミス

WWTz=0WW^Tz=0 から Wz=0Wz=0 としてしまうのは次元が合わない誤りである。本問では WW は 3×23\times 2 行列なので,z∈R3z\in\mathbb{R}^3 に作用するのは WWTWW^T であり, 核は WTz=0W^Tz=0 として求める。

試験で書くべきポイント

線形独立性は「係数がすべてゼロになる」ことを1行で示せば十分である。対角化は 答えの候補だけでなく,列が固有ベクトルであることが分かる形にしておくと採点者に 伝わりやすい。

線形代数・最小二乗の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 多項分布・検定・KLダイバージェンス

方針

問1は多項定理をモーメント母関数に適用するだけである。多項分布は nn 回の独立なカテゴリ選択の和なので,平均は「試行回数 ×\times 確率」となる。

分散と共分散

各カテゴリの度数だけを見ると二項分布と同じく npi(1−pi)np_i(1-p_i) である。一方で, 合計が常に nn で固定されるため,あるカテゴリが増えると他のカテゴリは減りやすく, 共分散は負になる。この構造を理解していると,分散共分散行列を問われても対応しやすい。

検定の読み方

χ2=5.0\chi^2=5.0 は臨界値 5.995.99 より小さいので,棄却しない。ここで 「帰無仮説が正しいと証明された」と書くのは誤りである。検定で言えるのは, 有意水準 5%5\% では棄却するだけの証拠がない,という範囲に限られる。

KLダイバージェンスの注意

KLダイバージェンスは距離のように使われるが,一般には対称ではない。 DKL(P∥Q)D_{\mathrm{KL}}(P\|Q) と DKL(Q∥P)D_{\mathrm{KL}}(Q\|P) は別の値になり得る。本問では 観測分布を基準にして予測分布を比較しているため,値が小さい予測を「観測結果に近い」 と判断する。

試験で書くべきポイント

カイ二乗統計量では観測度数と期待度数の対応を表にする意識で計算するとミスが少ない。 KLダイバージェンスでは最後の第3項が log⁡1=0\log 1=0 になることを書いておくと,計算の 見通しがよくなる。

多項分布・検定・KLダイバージェンスの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 線形微分方程式・複素関数・非線形系

方針

問1(1)は「回転を表す行列」を見抜く問題である。角速度が 22 なので, (0−220)\begin{pmatrix}0&-2\\2&0\end{pmatrix} が現れる。問1(3)は直接積分でもよいが, f(z)=−z2f(z)=-z^2 が全平面で正則であり原始関数 −z3/3-z^3/3 をもつことから,閉曲線上の 積分は 00 とすぐ分かる。

正定値関数の役割

ϕ(w)=2x2+y2\phi(w)=2x^2+y^2 は原点からの重み付き距離の二乗である。解に沿って ϕ˙=−4x3<0\dot{\phi}=-4x^3<0 となるので,D+\mathcal{D}_+ 内では軌道が ϕ\phi の等高線を外側へ横切ることはない。この性質により,明示解を使わずに 収束先を絞り込める。

境界での議論

x=0x=0 上で g(0,y)=(y2,0)Tg(0,y)=(y^2,0)^T となることを必ず書く。特に y≠0y\ne0 では 右向き,つまり D+\mathcal{D}_+ の内側向きである。原点だけはベクトル場がゼロだが, そこは平衡点であり,内側から有限時刻で到達して通過する点ではない。

検算

複素数 z=x+iyz=x+iy を使うと,この非線形系は形式的に z˙=−z2\dot{z}=-z^2 と書ける。 初期値の実部が正なら解は z(t)=z(0)/(1+z(0)t)z(t)=z(0)/(1+z(0)t) と表せ,t→∞t\to\infty で 00 に近づく。これは上のリアプノフ関数による議論と同じ結論を与える。

典型ミス

ϕ˙\dot{\phi} の計算で 4xy24xy^2 と −4xy2-4xy^2 が打ち消えることを見落とすと, 符号判定が複雑になる。問1(3)では tt が 00 から π\pi まで動くため, 偏角 2t2t は 00 から 2π2\pi まで動き,閉曲線を1周する。

試験で書くべきポイント

問2(4)では「ϕ\phi が減少する」だけでは収束先は決まらない。境界上で不変に とどまれる集合が原点だけである,という一文を添えると,収束先が (0,0)T(0,0)^T である 理由が明確になる。

線形微分方程式・複素関数・非線形系の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 システム制御系 数学 院試 過去問の収録6年度

  • 2025年度(このページ・全4問)

    ベクトル解析・極値・フーリエ変換 / 線形代数・最小二乗 / 多項分布・検定・KLダイバージェンス

  • 2024年度(全4問)

    微積分・複素積分 / 線形代数 / 多変量正規分布

  • 2023年度(全4問)

    ベクトル解析 / 線形代数と二次形式 / 確率と最小二乗法

  • 2023年4月入学追試験(全4問)

    追試験:微積分・複素写像・体積 / 追試験:行列・連立一次方程式・最小二乗 / 追試験:統計量と仮説検定

  • 2022年4月入学追試験(全4問)

    極限・複素積分・面積と体積 / 行列と微分写像 / ベイズ推定と最尤推定

  • 2021年度(全4問)

    本試験:極限・複素積分・二項級数 / 本試験:固有値・Jordan標準形・行列指数 / 本試験:確率分布・モーメント母関数