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東大 新領域創成科学研究科 物質系専攻 専門科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説10項目)

解説10項目の分野は化学1項目、熱・統計力学1項目、物性物理1項目です。分配関数、固有値・固有ベクトル、調和振動子などが出ています。2025年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、調和振動子、剛体の回転運動です。解説は2問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。原題の条件だけでは答えが一つに決まらないため、確定答案を収録していない箇所が1項目あります。各項目に対象の小問と収録範囲を記載しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 床を滑る二質点剛体の倒れと反発

床を滑る二質点剛体の倒れと反発の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 相互誘導コイルとRC積分による電流計測

相互誘導コイルとRC積分による電流計測の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 二準位系の混合角・遷移確率・断熱掃引

二準位系の混合角・遷移確率・断熱掃引の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ドナーのスピン縮退・化学平衡・低温の電子数

(1) ドナー電子の内部エネルギー

内部エネルギーは、与えたモデルの各粒子のエネルギーを合計したものである。本問は全てのドナー準位が同じ −ED-E_{\mathrm D} にあり、占有数による準位の変化や電子同士の相互作用を追加していない。従って占有されたサイト数だけ同じエネルギーを足す。

エネルギーの原点は伝導帯の底である。束縛された準位はその下にあるため負で、占有電子を伝導帯の底まで一つ励起するには ED>0E_{\mathrm D}>0 が必要になる。電子が一つ増えたときの変化 UD(nD+1)−UD(nD)=−EDU_{\mathrm D}(n_{\mathrm D}+1)-U_{\mathrm D}(n_{\mathrm D})=-E_{\mathrm D} からも符号を確かめられる。

この段階ではドナーに残った電子系だけを扱っている。伝導帯へ励起された電子の運動エネルギーをここへ足さず、後の伝導帯の状態数と分布で別に扱う。スピンの二通りは同じエネルギーを持つので、内部エネルギーに係数2を掛ける理由にはならない。二通りであることは次のエントロピーに現れる。

+nDED+n_{\mathrm D}E_{\mathrm D} とすると、束縛準位に電子を置く方が伝導帯の底より高くなり、原図のエネルギー順と逆になる。原点と準位の符号を決めてから足す。

(2) 占有サイトとスピンを数える

熱力学のエントロピーと状態数を結ぶBoltzmannの関係 S=kln⁡ΩS=k\ln\Omega は、固定した巨視的条件を実現する微視的状態を数える。本問の条件では、一つのドナーサイトの状態は空、上向き1電子、下向き1電子の三つで、同じサイトへの二重占有は許されない。

占有数を固定すると、まず空でないサイトの組合せが (NDnD)\binom{N_{\mathrm D}}{n_{\mathrm D}} 通りになる。そのそれぞれに、独立な二択が nDn_{\mathrm D} 個あるので 2nD2^{n_{\mathrm D}} を掛ける。例えば4サイトに2電子なら 6×4=246\times4=24 通りである。電子を区別してサイトへ順に並べると、同じ占有配置を重複して数えてしまう。

nDn_{\mathrm D} と ND−nDN_{\mathrm D}-n_{\mathrm D} がともに大きい範囲では、Stirling近似で SD≃−k[nDln⁡nDND+(ND−nD)ln⁡ND−nDND]+knDln⁡2. S_{\mathrm D}\simeq-k\left[n_{\mathrm D}\ln\frac{n_{\mathrm D}}{N_{\mathrm D}} +(N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D})\ln\frac{N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D}}{N_{\mathrm D}}\right] +kn_{\mathrm D}\ln2. 配置の混合による項と、占有サイトのスピンによる項を分けて読める。

空なら Ω=1\Omega=1 で S=0S=0、全サイトを占有していても、この相互作用なしの模型では Ω=2ND\Omega=2^{N_{\mathrm D}} とスピンの状態数が残る。2ND2^{N_{\mathrm D}} を常に掛けると空サイトにもスピンを数える誤りになる。また有限の端点近くでは階乗による正確な式とStirling近似の適用範囲を区別する。

(3) Helmholtz自由エネルギー

Helmholtz自由エネルギーは、温度と体積、粒子数を指定した系で、内部エネルギーから温度とエントロピーの積を引いた量である。前問で数えた各配置は同じ内部エネルギーを持つので、正準分配関数を使っても ZnD=ΩDenDED/(kT),FD=−kTln⁡ZnD Z_{n_{\mathrm D}}=\Omega_{\mathrm D}e^{n_{\mathrm D}E_{\mathrm D}/(kT)},\qquad F_{\mathrm D}=-kT\ln Z_{n_{\mathrm D}} となり、同じ式が得られる。

Stirling近似で書き直すと FD≃−nDED+kT[nDln⁡nDND+(ND−nD)ln⁡ND−nDND]−kTnDln⁡2. \begin{aligned} F_{\mathrm D}\simeq {}&-n_{\mathrm D}E_{\mathrm D} +kT\left[n_{\mathrm D}\ln\frac{n_{\mathrm D}}{N_{\mathrm D}} +(N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D})\ln\frac{N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D}}{N_{\mathrm D}}\right]\\ &-kTn_{\mathrm D}\ln2. \end{aligned} 温度が上がると、状態数の多い配置ほどエントロピー項によって自由エネルギーが下がる。内部エネルギーだけでは温度依存の占有を決められない理由である。

ここでは −μnD-\mu n_{\mathrm D} を引かない。それをさらに引いたものは、粒子をやり取りする大正準系のポテンシャルであり、求めるHelmholtz自由エネルギーとは異なる。次問で化学ポテンシャルを求める際に ∂FD/∂nD\partial F_{\mathrm D}/\partial n_{\mathrm D} を使うので、先に −μnD-\mu n_{\mathrm D} を混ぜると定義が循環してしまう。

T→0T\to0 の形式的なエネルギー項は −nDED-n_{\mathrm D}E_{\mathrm D} に戻る。各項の単位もエネルギーで、対数の中は無次元の状態数になっている。

(4) 化学ポテンシャルと占有数

化学ポテンシャルは、温度などを一定にして粒子を一つ増やすときの自由エネルギーの増分に対応する。Stirling近似を使った滑らかな FDF_{\mathrm D} を微分すると、混合項から kTln⁡[nD/(ND−nD)]kT\ln[n_{\mathrm D}/(N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D})]、スピン項から −kTln⁡2-kT\ln2 が出る。二つをまとめて答案の対数になる。

指数化して nD/{2(ND−nD)}=e(μ+ED)/(kT)n_{\mathrm D}/\{2(N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D})\}=e^{(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)} とし、nDn_{\mathrm D} を含む項を移項すれば占有数を得る。分母の 1/21/2 は占有状態のスピン縮退から来ており、通常の一状態あたりのFermi分布をそのままサイト占有へ当てはめたものとは違う。

一サイトの大正準分配関数でも確認できる。空状態の重みは1、占有状態の重みはスピンを含めて 2e(μ+ED)/(kT)2e^{(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)} なので Z1=1+2e(μ+ED)/(kT),nDND=2e(μ+ED)/(kT)Z1. Z_1=1+2e^{(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)},\qquad \frac{n_{\mathrm D}}{N_{\mathrm D}}=\frac{2e^{(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)}}{Z_1}. この独立サイトの結果は、熱力学的な微分で得た式と一致する。

μ+ED\mu+E_{\mathrm D} が大きく正ならほぼ全占有、大きく負ならほぼ空になる。半分占有は μ=−ED−kTln⁡2\mu=-E_{\mathrm D}-kT\ln2 であり、μ=−ED\mu=-E_{\mathrm D} とするとスピンの効果で占有率は 2/32/3 である。縮退係数を落とすと、この簡単な確認でも違いが出る。

(5) 電子数保存で伝導帯の数を表す

各ドナーは一つの電子を供給し、その電子は束縛準位に残るか伝導帯に励起される。原題では価電子帯からの励起を無視できる温度領域を扱うため、この二つの場所で総電子数を保存すればよい。正孔や他の不純物、外部からの注入を追加しない。

前問の式を q=e(μ+ED)/(kT)q=e^{(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)} で書けば nD=2qND/(1+2q)n_{\mathrm D}=2qN_{\mathrm D}/(1+2q) である。従って ND−nD=ND(1−2q1+2q)=ND1+2q. N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D} =N_{\mathrm D}\left(1-\frac{2q}{1+2q}\right) =\frac{N_{\mathrm D}}{1+2q}. 占有数から引く際に、指数の符号を取り違えないよう、分母をそろえて計算する。

これは同じ電子をドナー側から数えた式である。後で伝導帯の状態密度から数えた nn と等しくすることにより、未知の μ(T)\mu(T) が決まる。温度が変わっても任意に μ\mu を固定してよいわけではない。

極限も逆向きに対応する。ドナーの占有率が1に近ければ伝導帯は少なく、占有率が0に近ければ nn は NDN_{\mathrm D} に近づく。全ての温度で n=NDn=N_{\mathrm D} と置くと、低温で電子がドナーに凍結する領域を失う。一方 n+nD=2NDn+n_{\mathrm D}=2N_{\mathrm D} とするのは、二通りのスピンを二個の電子と誤って数えることになる。

(6) ドナーがほぼ占有される低温の近似

前問の分母を 2eη2e^\eta でくくる。η=(μ+ED)/(kT)\eta=(\mu+E_{\mathrm D})/(kT) とすると n=ND2e−η11+12e−η=ND2e−η[1−12e−η+O(e−2η)]. n=\frac{N_{\mathrm D}}2e^{-\eta} \frac1{1+\frac12e^{-\eta}} =\frac{N_{\mathrm D}}2e^{-\eta}\left[1-\frac12e^{-\eta}+O(e^{-2\eta})\right]. 小さい量は e−η/2e^{-\eta}/2 である。単に温度という語を使うのでなく、化学ポテンシャルとドナー準位の差が熱エネルギーより十分大きいことを条件にする。

この条件では n/ND≪1n/N_{\mathrm D}\ll1、すなわちドナーはほぼ占有されている。小さい方のイオン化数を、分母の大きい指数項で求める近似である。化学ポテンシャルがドナー準位より上にあることと、伝導帯の底より下にあることは両立できる。

原題の ε−μ≫kT\varepsilon-\mu\gg kT は、伝導帯のFermi分布を近似する条件である。それだけを論理的に使って、別の差 μ+ED\mu+E_{\mathrm D} の大きさまで直ちに決めることはできない。後の自己無撞着な解で μ→−ED/2\mu\to-E_{\mathrm D}/2 となるので、十分低温では両方の差が正で大きくなり、ここで使った近似も成立する。

分母の1を残して指数項を捨てると n≃NDn\simeq N_{\mathrm D} となり、逆の完全イオン化に近い領域を選んでしまう。どちらが大きいかを先に比較する。

(7) Fermi分布の非縮退近似

Fermi分布 f(ε)=1/{e(ε−μ)/(kT)+1}f(\varepsilon)=1/\{e^{(\varepsilon-\mu)/(kT)}+1\} は、一つの一粒子状態を電子が占有する平均確率である。指数が十分大きいとき、分母の1を省くことでBoltzmann分布の形になる。相対的な補正は e−(ε−μ)/(kT)e^{-(\varepsilon-\mu)/(kT)} の次数である。

具体的には q=e−(ε−μ)/(kT)≪1q=e^{-(\varepsilon-\mu)/(kT)}\ll1 と置けば、f=q/(1+q)=q−q2+⋯f=q/(1+q)=q-q^2+\cdots。指数関数に近似した方が、厳密な値より少し大きいことも分かる。占有確率が小さいため、Pauli排他の影響が主要な分布の形には現れない非縮退領域になる。

本問の伝導帯は ε≥0\varepsilon\ge0 である。特に底の ε=0\varepsilon=0 でも −μ≫kT-\mu\gg kT であれば、それより上のエネルギーでも同じ小ささが保証される。後で得る低温の μ\mu は負なので、この条件と整合する。

低温なら必ずBoltzmann近似になる、という一般論ではない。例えば金属で μ>0\mu>0 の場合、ε<μ\varepsilon<\mu の状態は低温でほぼ埋まり、Boltzmannの式を入れると1を越えることさえある。条件は温度だけでなく ε−μ\varepsilon-\mu の符号と大きさで決まる。またスピンの数は状態密度で既に数えられており、分布関数そのものを2倍しない。

(8) 状態密度を積分して電子数を求める

状態密度 D(ε)dεD(\varepsilon)d\varepsilon は、そのエネルギー区間の一粒子状態数である。それぞれの占有率 f(ε)f(\varepsilon) を掛けて全区間を足すと、総電子数 n=∫Df dεn=\int Df\,d\varepsilon になる。ここで DD は原題のスピン込みの定義をそのまま使う。

変数変換では dε=kT dxd\varepsilon=kT\,dx に加え、ε=(kT)1/2x\sqrt\varepsilon=(kT)^{1/2}\sqrt x が出る。両方を合わせて (kT)3/2(kT)^{3/2} なので ∫0∞εe−ε/(kT)dε=(kT)3/2∫0∞xe−xdx=(kT)3/2π2. \int_0^\infty\sqrt\varepsilon e^{-\varepsilon/(kT)}d\varepsilon =(kT)^{3/2}\int_0^\infty\sqrt x e^{-x}dx =(kT)^{3/2}\frac{\sqrt\pi}{2}. 元の係数 2/π2/\sqrt\pi とちょうど打ち消し合う。

D0D_0 はこの状態密度の定義に対応する定数で、D0(kT)3/2D_0(kT)^{3/2} が状態数になる次元を持つ。体積を含んだ総数の定義と、単位体積あたりの密度を混ぜない。本問は電子数とドナー数なので、両側を同じ基準にそろえる。

積分の変数だけを変えて dεd\varepsilon の係数を落とすと、温度依存が T1/2T^{1/2} になってしまう。またスピンのためにさらに2を掛けると、ドナー側の縮退因子とは別に伝導帯の状態を重複して数える。どの係数が既に与えられた定義へ含まれているかを確認する。

(9) 二つの数え方を一致させて化学ポテンシャルを決める

熱平衡ではドナー準位と伝導帯の間で電子をやり取りしても、系全体として同じ化学ポテンシャルを持つ。電子総数は保存されるので、同じ nn を二つの側から数えた結果を一致させればよい。どちらか一方の占有分布だけでは μ(T)\mu(T) は決まらない。

等式の両辺に eμ/(kT)e^{\mu/(kT)} を掛けてから対数を取ると 2μkT=ln⁡ND2Nc(T)−EDkT. \frac{2\mu}{kT}=\ln\frac{N_{\mathrm D}}{2N_c(T)}-\frac{E_{\mathrm D}}{kT}. 両側に μ\mu が一つずつ現れるため係数2になる。ここを一つだけとして解くと、低温極限の −ED/2-E_{\mathrm D}/2 を −ED-E_{\mathrm D} と誤る。

Tln⁡T→0T\ln T\to0 なので、連続的な熱力学模型の低温極限では μ→−ED/2\mu\to-E_{\mathrm D}/2 になる。ドナー準位 −ED-E_{\mathrm D} と伝導帯の底0の間に位置するため、μ+ED\mu+E_{\mathrm D} と −μ-\mu はともにおよそ ED/2>0E_{\mathrm D}/2>0。従って十分低温なら (6) のほぼ占有と (7) の非縮退を同時に満たす。

対数の中は状態数の比で無次元である。温度を上げて計算結果がこれらの小ささの条件を満たさなくなれば、同じ近似を延長せず完全な占有式とFermi積分へ戻る。また有限のごく少ない電子数を厳密な0Kまで追うことと、巨視的な数にStirling近似を使った本問の温度領域は区別する。

(10) 凍結領域の電子数と活性化エネルギー

平方根が生じるのは、伝導帯へ励起される数を増やすとドナーの空き数も増え、両側の化学平衡を同時に変えるためである。μ\mu を温度によらず −ED-E_{\mathrm D} に固定して一粒子の励起因子だけを付けるのでは、電子数保存の平衡を満たさない。

Nc=D0(kT)3/2N_c=D_0(kT)^{3/2} を平方根へ入れるので、べきの因子は T3/4T^{3/4} になる。指数部分の活性化エネルギーは ED/2E_{\mathrm D}/2。これはドナー1電子を底まで上げるエネルギー EDE_{\mathrm D} と矛盾せず、平衡の占有と化学ポテンシャルの移動を含んだ電子数の温度依存を表す。

低温での式を規格化すれば ln⁡nNDNc(T)/2≃−ED2kT. \ln\frac{n}{\sqrt{N_{\mathrm D}N_c(T)/2}} \simeq-\frac{E_{\mathrm D}}{2kT}. 横軸を ED/(kT)E_{\mathrm D}/(kT) としたとき、この対数は傾き −1/2-1/2 の直線になる。対数の中も横軸も無次元で、べき因子と指数因子を別々に確かめられる。

T→0T\to0 では指数の減少がべきより速く、n→0n\to0 でドナーはほぼ占有される。実際に n/ND≪1n/N_{\mathrm D}\ll1 と n/Nc≪1n/N_c\ll1 を確かめると、先に使った二つの近似条件へ戻れる。EDE_{\mathrm D} を指数の分子へそのまま残して半分にし忘れる、または T3/2T^{3/2} を平方根の外でも維持するのが起こりやすい誤りである。高温で完全イオン化へ近づく領域には、この凍結領域の式をそのまま延長しない。

解答

(1) ドナー電子の内部エネルギー

伝導帯の底を0とし、各ドナー電子のエネルギーを −ED-E_{\mathrm D} とする。独立なドナー準位に nDn_{\mathrm D} 個の電子があるとき

(2) 占有サイトとスピンを数える

NDN_{\mathrm D} サイトから占有する nDn_{\mathrm D} サイトを選び、各電子のスピンを2通りずつ選ぶ。状態数とエントロピーは ΩD=(NDnD)2nD,SD=kln⁡ΩD. \Omega_{\mathrm D}=\binom{N_{\mathrm D}}{n_{\mathrm D}}2^{n_{\mathrm D}},\qquad S_{\mathrm D}=k\ln\Omega_{\mathrm D}.

(3) Helmholtz自由エネルギー

粒子数を固定したドナー電子系のHelmholtz自由エネルギーは F=U−TSF=U-TS なので

巨視的な占有数については、前問のStirling近似をエントロピーへ代入する。

(4) 化学ポテンシャルと占有数

巨視的な占有数について μ=(∂FD/∂nD)T,ND\mu=(\partial F_{\mathrm D}/\partial n_{\mathrm D})_{T,N_{\mathrm D}} を使うと μ=−ED+kTln⁡nD2(ND−nD). \mu=-E_{\mathrm D}+kT\ln\frac{n_{\mathrm D}}{2(N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D})}. これを占有数について解けば

(5) 電子数保存で伝導帯の数を表す

価電子帯からの励起を無視し、ドナー由来の電子だけを数える。伝導帯電子数を nn とすると n+nD=NDn+n_{\mathrm D}=N_{\mathrm D} なので

(6) ドナーがほぼ占有される低温の近似

低温の凍結領域で μ+ED≫kT\mu+E_{\mathrm D}\gg kT とすると、分母の指数項が1より十分大きい。従って

この占有側の条件は、伝導帯の非縮退条件とともに、後で求める μ(T)\mu(T) について確かめる。

(7) Fermi分布の非縮退近似

伝導帯電子に対して ε−μ≫kT\varepsilon-\mu\gg kT なら、e(ε−μ)/(kT)≫1e^{(\varepsilon-\mu)/(kT)}\gg1 なので

(8) 状態密度を積分して電子数を求める

スピンを含む状態密度 D(ε)=(2/π)D0εD(\varepsilon)=(2/\sqrt\pi)D_0\sqrt\varepsilon と前問の近似から n≃2πD0eμ/(kT)∫0∞ε e−ε/(kT)dε. n\simeq\frac2{\sqrt\pi}D_0e^{\mu/(kT)} \int_0^\infty\sqrt\varepsilon\,e^{-\varepsilon/(kT)}d\varepsilon. x=ε/(kT)x=\varepsilon/(kT) と置き、与えられた積分を使うと

(9) 二つの数え方を一致させて化学ポテンシャルを決める

ドナー側の近似と伝導帯側の近似を等置すると ND2e−(μ+ED)/(kT)=Nc(T)eμ/(kT). \frac{N_{\mathrm D}}2e^{-(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)} =N_c(T)e^{\mu/(kT)}. 従って e2μ/(kT)={ND/(2Nc)}e−ED/(kT)e^{2\mu/(kT)}=\{N_{\mathrm D}/(2N_c)\}e^{-E_{\mathrm D}/(kT)} であり

(10) 凍結領域の電子数と活性化エネルギー

前問を n=Nceμ/(kT)n=N_c e^{\mu/(kT)} へ代入すると n≃Nc(ND2Nc)1/2e−ED/(2kT). n\simeq N_c\left(\frac{N_{\mathrm D}}{2N_c}\right)^{1/2} e^{-E_{\mathrm D}/(2kT)}.

最終答

(1) ドナー電子の内部エネルギー

UD=−nDED\displaystyle U_{\mathrm D}=-n_{\mathrm D}E_{\mathrm D}。

(2) 占有サイトとスピンを数える

SD=kln⁡ND!nD!(ND−nD)!+knDln⁡2\displaystyle S_{\mathrm D}=k\ln\frac{N_{\mathrm D}!}{n_{\mathrm D}!(N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D})!}+kn_{\mathrm D}\ln2。

(3) Helmholtz自由エネルギー

FD=−nDED−kTln⁡[(NDnD)2nD]\displaystyle F_{\mathrm D}=-n_{\mathrm D}E_{\mathrm D} -kT\ln\left[\binom{N_{\mathrm D}}{n_{\mathrm D}}2^{n_{\mathrm D}}\right]。

(4) 化学ポテンシャルと占有数

nD=ND1+12exp⁡[−(μ+ED)/(kT)]\displaystyle n_{\mathrm D}=\frac{N_{\mathrm D}}{1+\frac12\exp[-(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)]}。

(5) 電子数保存で伝導帯の数を表す

n=ND−nD=ND1+2exp⁡[(μ+ED)/(kT)]\displaystyle n=N_{\mathrm D}-n_{\mathrm D} =\frac{N_{\mathrm D}}{1+2\exp[(\mu+E_{\mathrm D})/(kT)]}。

(6) ドナーがほぼ占有される低温の近似

n≃ND2exp⁡[−μ+EDkT]\displaystyle n\simeq\frac{N_{\mathrm D}}2 \exp\left[-\frac{\mu+E_{\mathrm D}}{kT}\right]。

(7) Fermi分布の非縮退近似

f(ε)≃exp⁡[−(ε−μ)/(kT)]\displaystyle f(\varepsilon)\simeq \exp[-(\varepsilon-\mu)/(kT)]。

(8) 状態密度を積分して電子数を求める

n≃D0(kT)3/2eμ/(kT)=Nc(T)eμ/(kT),Nc(T)=D0(kT)3/2\displaystyle n\simeq D_0(kT)^{3/2}e^{\mu/(kT)} =N_c(T)e^{\mu/(kT)},\qquad N_c(T)=D_0(kT)^{3/2}。

(9) 二つの数え方を一致させて化学ポテンシャルを決める

μ(T)≃−ED2+kT2ln⁡ND2D0(kT)3/2\displaystyle \mu(T)\simeq-\frac{E_{\mathrm D}}2 +\frac{kT}{2}\ln\frac{N_{\mathrm D}}{2D_0(kT)^{3/2}}。

(10) 凍結領域の電子数と活性化エネルギー

n(T)≃NDD02 (kT)3/4exp⁡[−ED2kT]\displaystyle n(T)\simeq \sqrt{\frac{N_{\mathrm D}D_0}{2}}\,(kT)^{3/4} \exp\left[-\frac{E_{\mathrm D}}{2kT}\right]。

第5問 — 実在気体の仕事・内部エネルギーと相変化のエントロピー

実在気体の仕事・内部エネルギーと相変化のエントロピーの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 有機反応・クラウンエーテル・塩基性とポリアミド

有機反応・クラウンエーテル・塩基性とポリアミドの途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 錯体・自己集合・分光・結晶とキャリア輸送

錯体・自己集合・分光・結晶とキャリア輸送の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 反応平衡・速度式と円筒壁の熱伝導

一部の確定答案なし

B(標準反応エントロピー)の無条件の符号のみ。A<0は確定。通常の会合で全エントロピーが減ると仮定すればB<0。一般式と内部縮退の反例を本文に記載。

標準反応エントロピーは、生成物と反応物の標準モルエントロピーを化学量論係数付きで差し引いた量である。分子数が減る会合反応でも、化学種や内部状態を指定しなければ、その差の符号までは一つに決まらない。通常の会合で全エントロピーが減るという追加仮定を置いた結論と、内部状態数の増加が符号を変える反例を区別する。本書ではBの無条件の符号だけを確定せず、平衡定数の式や他の設問は収録している。

PDFの収録範囲と資料制約を確認する

第9問 — 析出の熱力学・せん断変形・高温クリープ

析出の熱力学・せん断変形・高温クリープの途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 半導体の伝導率とSi融液の不純物分配

半導体の伝導率とSi融液の不純物分配の途中式・最終答をPDFで見る

物質系専攻 専門科目の解答・解説PDF

2022〜2026年度(5年度) · ¥2,880

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(このページ・解説10項目)

    床を滑る二質点剛体の倒れと反発 / 相互誘導コイルとRC積分による電流計測 / 二準位系の混合角・遷移確率・断熱掃引

  • 2025年度(解説10項目)

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  • 2024年度(解説10項目)

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  • 2023年度(解説10項目)

    自然長を持つ中心力・二体運動と衝突条件 / 動く導体棒・誘導電流と電池駆動の過渡応答 / 無限深井戸の摂動・準位混合と存在確率

  • 2022年度(解説10項目)

    慣性をもつ滑車とばね・拘束条件・減衰振動 / 充電中のコンデンサー・変位電流・面電流の保存 / 角運動量1の固有状態・連続測定・磁場中の時間発展

2026年度の出題内容

解説10項目

この10問の分野は化学1問・熱・統計力学1問・物性物理1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学床を滑る二質点剛体の倒れと反発—あり
第2問—相互誘導コイルとRC積分による電流計測—あり
第3問—二準位系の混合角・遷移確率・断熱掃引—あり
第4問化学ドナーのスピン縮退・化学平衡・低温の電子数—あり
第5問—実在気体の仕事・内部エネルギーと相変化のエントロピー—あり
第6問—有機反応・クラウンエーテル・塩基性とポリアミド—あり
第7問—錯体・自己集合・分光・結晶とキャリア輸送—あり
第8問—反応平衡・速度式と円筒壁の熱伝導—一部の確定答案なし
第9問熱・統計力学析出の熱力学・せん断変形・高温クリープ—あり
第10問物性物理半導体の伝導率とSi融液の不純物分配—あり

同じテーマを出した他大学・他年度

13テーマ

2026年度は9問に13テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
分配関数第4問・第8問16大学・92問
固有値・固有ベクトル第3問25大学・555問
調和振動子第7問16大学・116問
伝達関数第2問12大学・114問
剛体の回転運動第1問16大学・106問
ハミルトン形式第3問15大学・74問
結晶構造第7問9大学・53問
転位第9問7大学・50問
RC回路の過渡応答第2問12大学・49問
状態図・相変態第9問9大学・30問
熱力学第一・第二法則第5問10大学・23問
PN接合第10問8大学・21問
バンド理論第10問2大学・6問

前年度(2025年度)との違い

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026年度(入学年度・直近5回)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-23
東京大学の公式過去問PDF