院試hub

早稲田大学 基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙専攻 専門科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は力学3問、数学1問、制御工学1問です。伝達関数、はりの曲げ、ラプラス変換などが出ています。2025年度と共通するテーマは伝達関数、はりの曲げです。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 数学:常微分方程式とラプラス変換

安定性は微係数の符号で読む

1次元自律系では,平衡点での f′(xe)f'(x_e) が負なら摂動が指数的に減衰し,正なら増大する。ロジスティック方程式で x=0x=0 と x=1x=1 の安定性が逆になるのは,f′(x)f'(x) の符号が両点で反転するためである。

ラプラス変換で落としやすい点

微分のラプラス変換では初期値項が必ず出る。特に2階方程式では L[x′′]=s2X−sx(0)−x′(0)\mathcal L[x'']=s^2X-sx(0)-x'(0) を書かないと,最後の分子が変わる。最終解は x(0)=0x(0)=0, x′(0)=1x'(0)=1 を代入して検算できる。

解答

1階自律系の線形化

平衡点を xex_e とすると f(xe)=0f(x_e)=0 である。摂動を X(t)=x(t)−xe X(t)=x(t)-x_e とおくと,x=xe+Xx=x_e+X だから X˙=f(xe+X)=f(xe)+f′(xe)X+O(X2)=f′(xe)X+O(X2) \dot X=f(x_e+X)=f(x_e)+f'(x_e)X+O(X^2) =f'(x_e)X+O(X^2) である。1次の微小項まで残す線形化方程式は X˙=f′(xe)X,X(0)=X0 \dot X=f'(x_e)X,\qquad X(0)=X_0 となり, X(t)=X0exp⁡{f′(xe)t} X(t)=X_0\exp\{f'(x_e)t\} を得る。

ロジスティック方程式

f(x)=rx(1−x),r>0 f(x)=rx(1-x),\qquad r>0 であるから平衡点は xe=0,1x_e=0,1 である。各点での微係数は f′(x)=r(1−2x),f′(0)=r,f′(1)=−r. f'(x)=r(1-2x),\qquad f'(0)=r,\qquad f'(1)=-r. したがって x=0x=0 のまわりでは X˙=rX,X(t)=X0ert \dot X=rX,\qquad X(t)=X_0e^{rt} であり不安定,x=1x=1 のまわりでは X˙=−rX,X(t)=X0e−rt \dot X=-rX,\qquad X(t)=X_0e^{-rt} であり漸近安定である。

非線形方程式そのものは変数分離により dxx(1−x)=r dt,log⁡∣x1−x∣=rt+C \frac{dx}{x(1-x)}=r\,dt,\qquad \log\left|\frac{x}{1-x}\right|=rt+C となる。初期値 x(0)=x0x(0)=x_0 を入れると x(t)=x0ert1−x0+x0ert x(t)=\frac{x_0e^{rt}}{1-x_0+x_0e^{rt}} である。0<x0<10<x_0<1 では単調に 11 へ近づき,特に x0=1/2x_0=1/2 では x(t)=ert/(1+ert)x(t)=e^{rt}/(1+e^{rt}) である。 x0>1x_0>1 では上から 11 へ減少する。x0<0x_0<0 では分母が 有限時刻で 0 になり,このモデルの解はその時刻で発散する。

ラプラス変換の基本公式

L[1]=1s,L[eαt]=1s−α(ℜs>α), \mathcal L[1]=\frac1s,\qquad \mathcal L[e^{\alpha t}]=\frac1{s-\alpha}\quad(\Re s>\alpha), L[sin⁡αt]=αs2+α2,L[cos⁡αt]=ss2+α2 \mathcal L[\sin \alpha t]=\frac{\alpha}{s^2+\alpha^2},\qquad \mathcal L[\cos \alpha t]=\frac{s}{s^2+\alpha^2} である。また部分積分により L[f′]=sF(s)−f(0) \mathcal L[f'] = sF(s)-f(0) となり,繰り返せば L[f(n)]=snF(s)−sn−1f(0)−sn−2f′(0)−⋯−f(n−1)(0) \mathcal L[f^{(n)}] =s^nF(s)-s^{n-1}f(0)-s^{n-2}f'(0)-\cdots-f^{(n-1)}(0) を得る。

微分方程式 x′′+αx′+βx=f(t),x(0)=x0,x′(0)=v0 x''+\alpha x'+\beta x=f(t),\qquad x(0)=x_0,\quad x'(0)=v_0 にラプラス変換を施すと {s2+αs+β}X(s)=F(s)+(s+α)x0+v0 \{s^2+\alpha s+\beta\}X(s) =F(s)+(s+\alpha)x_0+v_0 である。よって X(s)=F(s)+(s+α)x0+v0s2+αs+β. X(s)=\frac{F(s)+(s+\alpha)x_0+v_0}{s^2+\alpha s+\beta}.

最後に α=4, β=3, f(t)=sin⁡t, x(0)=0, x′(0)=1\alpha=4,\ \beta=3,\ f(t)=\sin t,\ x(0)=0,\ x'(0)=1 とする。 X(s)=1/(s2+1)+1(s+1)(s+3)=s2+2(s2+1)(s+1)(s+3). X(s)=\frac{1/(s^2+1)+1}{(s+1)(s+3)} =\frac{s^2+2}{(s^2+1)(s+1)(s+3)}. 部分分数分解は X(s)=−15s+110s2+1+341s+1−11201s+3 X(s)=\frac{-\frac15s+\frac1{10}}{s^2+1} +\frac{3}{4}\frac1{s+1} -\frac{11}{20}\frac1{s+3} であるから x(t)=−15cos⁡t+110sin⁡t+34e−t−1120e−3t. x(t)=-\frac15\cos t+\frac1{10}\sin t+\frac34e^{-t} -\frac{11}{20}e^{-3t}.

最終答

X(t)=X0ef′(xe)tX(t)=X_0e^{f'(x_e)t},ロジスティック方程式は x(t)=x0ert/(1−x0+x0ert)x(t)=x_0e^{rt}/(1-x_0+x_0e^{rt})。ラプラス変換による最後の解は x(t)=−15cos⁡t+110sin⁡t+34e−t−1120e−3t. x(t)=-\frac15\cos t+\frac1{10}\sin t+\frac34e^{-t} -\frac{11}{20}e^{-3t}.

第2問 — 力学:鉛直ばね連成振動

静的つり合いを先に引く

鉛直ばね問題では,重力を含んだ座標のまま固有振動を解こうとすると式が見通しにくくなる。静止位置 Y1,Y2Y_1,Y_2 を先に求め,そこからの変位を未知量にすると,固有振動は純粋なばね行列の問題になる。

モードの読み方

低い固有角振動数では2質点が同じ向きに動き,下側ばねの伸縮が比較的小さい。高い固有角振動数では2質点が逆向きに動き,下側ばねの伸縮が大きくなる。振幅比の符号を見れば,同相か逆相かを答案中で説明できる。

力学:鉛直ばね連成振動の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 熱力学:ディーゼルサイクルとブレイトンサイクル

どの過程で熱を計算するか

熱量を直接計算するのは等圧・等容過程である。断熱過程では熱量ではなく TVκ−1=const.TV^{\kappa-1}=\mathrm{const.} や PVκ=const.PV^\kappa=\mathrm{const.} を用いて状態量をつなぐ。ここを分けて書くと,効率式の導出が短くなる。

T-S線図の要点

可逆断熱過程は SS 一定の鉛直線で表される。ディーゼルサイクルでは放熱が定容,ブレイトンサイクルでは放熱が定圧であり,この違いが熱効率式の違いになる。

熱力学:ディーゼルサイクルとブレイトンサイクルの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 流体力学:噴流の等エントロピー膨張と運動量

圧力項を二重に数えない

出口圧が大気圧に等しいので,曲板まわりの運動量収支では噴流境界の圧力力を大気圧基準で消せる。残る主役は運動量流束の向きの変化である。

動く羽根では相対速度を使う

移動曲板で m˙U2\dot mU_2 をそのまま使うと過大評価になる。曲板に実際に当たる流体量は相対速度 U2−VU_2-V に比例し,力は相対速度の2乗に比例する。

流体力学:噴流の等エントロピー膨張と運動量の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 材料力学:対称荷重はりと3本トラス

対称性を最初に使う

はりの反力と最大曲げモーメント位置は対称性だけで大きく絞れる。中央でせん断力が 0 になることを確認してから曲げ応力へ進むと,BMD全体を詳細に描かなくても最大応力を安全に求められる。

トラスの符号

斜材の伸びは,結合点変位を棒軸方向へ射影して求める。棒1と棒2は角度が対称でも軸剛性が異なるため,水平変位は 0 にならない。この点が本問の主要な差である。

材料力学:対称荷重はりと3本トラスの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 制御工学:4次遅れ系の比例制御とPI制御

安定限界は位相から先に決める

ナイキストまたはボード線図で安定限界を求めるときは,まず −180∘-180^\circ となる周波数を求める。その周波数でループゲインの大きさが1になる値が限界ゲインである。

PI補償の影響

PI補償は低周波ゲインを大きくして定常偏差を改善する一方,位相遅れを追加する。比例制御より限界ゲインが小さくなるのは,積分器の −90∘-90^\circ に近い位相遅れが効くためである。

制御工学:4次遅れ系の比例制御とPI制御の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(このページ・全6問)

    数学:常微分方程式とラプラス変換 / 力学:鉛直ばね連成振動 / 熱力学:ディーゼルサイクルとブレイトンサイクル

  • 2025年度(全6問)

    数学:逐次近似と複素積分 / 力学:水平ばねで結合された二振り子 / 熱力学:可逆カルノーサイクルとエントロピー

  • 2024年度(全6問)

    数学:行列指数関数と複素対数 / 力学:二重振り子の微小振動 / 熱力学:アトキンソンサイクルとルノアールサイクル

  • 2023年度(全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

  • 2022年度(全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

2026年度の出題内容

全6問

この6問の分野は力学3問・数学1問・制御工学1問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学常微分方程式とラプラス変換安定性は微係数の符号で読む / ラプラス変換で落としやすい点あり
第2問力学鉛直ばね連成振動静的つり合いを先に引く / モードの読み方あり
第3問熱・統計力学ディーゼルサイクルとブレイトンサイクルどの過程で熱を計算するか / T-S線図の要点あり
第4問力学噴流の等エントロピー膨張と運動量圧力項を二重に数えない / 動く羽根では相対速度を使うあり
第5問力学対称荷重はりと3本トラス対称性を最初に使う / トラスの符号あり
第6問制御工学4次遅れ系の比例制御とPI制御安定限界は位相から先に決める / PI補償の影響あり

同じテーマを出した他大学・他年度

4テーマ

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 6問 → 2026年度 6問
両年度に出たテーマ
伝達関数・はりの曲げ
2026年度で新しく出たテーマ
ラプラス変換・ボード線図
2025年度の解答例

早稲田大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2027年度(現行一覧。大学は過去3年分の公開と案内)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-09-26
早稲田大学の公式過去問PDF