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早稲田大学 基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙専攻 専門科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は力学3問、数学1問、制御工学1問です。固有値・固有ベクトル、留数定理、伝達関数などが出ています。2022年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、留数定理、伝達関数です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 数学

固有値計算の確認

3次行列では,特性多項式を因数分解した後に各固有ベクトルを必ず代入して確認する。今回の初期値解では,初期ベクトルを固有ベクトルの線形結合に分解するだけで係数が決まる。指数の符号を取り違えると t=0t=0 の値は合っても微分方程式を満たさないので,最後に x′(0)=Ax(0)x'(0)=Ax(0) を確認するとよい。

複素積分の極の選別

z6+1=0z^6+1=0 の根は単位円上に6個並ぶ。積分路は原点中心ではなく中心が 11 の円であるため,全ての根を入れてはいけない。距離 ∣eiθ−1∣=2∣sin⁡(θ/2)∣ |e^{i\theta}-1|=2|\sin(\theta/2)| を使うと,内部に入るのは偏角 ±π/6\pm\pi/6 の2点だけであることがすぐに分かる。

実積分への接続

実積分は上半平面の留数計算でも求められるが,ここでは標準公式を使うのが最短である。公式を使う場合も,偶関数なので全実軸の積分が 00 から ∞\infty の2倍になることを書いておくと減点されにくい。

解答

前半は定係数線形微分方程式である。与えられた行列を A=(6−3−7−1215−3−6) A=\begin{pmatrix} 6&-3&-7\\ -1&2&1\\ 5&-3&-6 \end{pmatrix} とおく。特性多項式は det⁡(λI−A)=λ3−2λ2−λ+2=(λ−2)(λ−1)(λ+1) \det(\lambda I-A)=\lambda^3-2\lambda^2-\lambda+2 =(\lambda-2)(\lambda-1)(\lambda+1) である。したがって固有値は 2,1,−12,1,-1 であり,対応する固有ベクトルは例えば v2=(1−11),v1=(211),v−1=(101) v_2=\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix},\quad v_1=\begin{pmatrix}2\\1\\1\end{pmatrix},\quad v_{-1}=\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix} と取れる。よって一般解は x(t)=C1e2tv2+C2etv1+C3e−tv−1 x(t)=C_1 e^{2t}v_2+C_2 e^t v_1+C_3 e^{-t}v_{-1} である。初期条件 x(0)=(1,0,0)Tx(0)=(1,0,0)^T を課すと (1,0,0)T=v2+v1−2v−1 (1,0,0)^T=v_2+v_1-2v_{-1} なので, x(t)=e2t(1−11)+et(211)−2e−t(101) x(t)=e^{2t}\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix} +e^t\begin{pmatrix}2\\1\\1\end{pmatrix} -2e^{-t}\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix} を得る。成分で書けば x1=e2t+2et−2e−t,x2=−e2t+et,x3=e2t+et−2e−t. x_1=e^{2t}+2e^t-2e^{-t},\quad x_2=-e^{2t}+e^t,\quad x_3=e^{2t}+e^t-2e^{-t}.

後半で ∣z∣=1|z|=1 とおくと z=eiθz=e^{i\theta} であり, w=z+4z=5cos⁡θ−3isin⁡θ w=z+\frac{4}{z}=5\cos\theta-3i\sin\theta となる。したがって w=X+iYw=X+iY は X225+Y29=1 \frac{X^2}{25}+\frac{Y^2}{9}=1 を満たす楕円上を動く。向きは θ=0\theta=0 で w=5w=5 から下向きに進むので時計回りである。

次に f(z)=1z6+1 f(z)=\frac{1}{z^6+1} の特異点は αk=exp⁡(i(2k+1)π6)(k=0,1,…,5) \alpha_k=\exp\left(i\frac{(2k+1)\pi}{6}\right)\quad (k=0,1,\ldots,5) で,いずれも単純極である。留数は Res⁡z=αkf(z)=16αk5 \operatorname*{Res}_{z=\alpha_k}f(z)=\frac{1}{6\alpha_k^5} である。円 ∣z−1∣=1|z-1|=1 の内部にある極は α0=eiπ/6\alpha_0=e^{i\pi/6} と α5=e−iπ/6\alpha_5=e^{-i\pi/6} の2つであるから, ∮Cf(z) dz=2πi(16α05+16α55)=2πi⋅2cos⁡(5π/6)6=−πi33. \oint_C f(z)\,dz =2\pi i\left(\frac{1}{6\alpha_0^5}+\frac{1}{6\alpha_5^5}\right) =2\pi i\cdot\frac{2\cos(5\pi/6)}{6} =-\frac{\pi i\sqrt3}{3}. 最後に実積分は偶関数性と標準公式 ∫0∞dx1+xa=πacsc⁡πa(a>1) \int_0^\infty \frac{dx}{1+x^a}=\frac{\pi}{a}\csc\frac{\pi}{a}\quad (a>1) を用いて ∫−∞∞dxx6+1=2⋅π6csc⁡π6=2π3. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^6+1} =2\cdot\frac{\pi}{6}\csc\frac{\pi}{6} =\frac{2\pi}{3}.

最終答

λ=2,1,−1,x(t)=C1e2tv2+C2etv1+C3e−tv−1,x(0)=(1,0,0)T⇒x(t)=e2tv2+etv1−2e−tv−1,(Re⁡w)225+(Im⁡w)29=1,∮Cdzz6+1=−πi33,∫−∞∞dxx6+1=2π3. \begin{gathered} \lambda=2,1,-1,\quad x(t)=C_1 e^{2t}v_2+C_2 e^t v_1+C_3 e^{-t}v_{-1},\\ x(0)=(1,0,0)^T\Rightarrow x(t)=e^{2t}v_2+e^t v_1-2e^{-t}v_{-1},\\ \frac{(\operatorname{Re}w)^2}{25}+\frac{(\operatorname{Im}w)^2}{9}=1,\quad \oint_C\frac{dz}{z^6+1}=-\frac{\pi i\sqrt3}{3},\quad \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^6+1}=\frac{2\pi}{3}. \end{gathered}

第2問 — 力学

並進と回転に分ける

この問題は2自由度に見えるが,和 x1+x2x_1+x_2 と差 x1−x2x_1-x_2 に分けると本質が明確になる。和は重心の上下運動,差は棒の回転運動であり,互いに独立な単振動になる。

モードの物理的意味

A1=A2A_1=A_2 のモードでは棒は水平のまま上下する。3つの質点全体を2本のばねで支えるため,有効ばね定数は 2k2k,有効質量は 3m3m となり,ω2=2k/(3m)\omega^2=2k/(3m) と読める。A1=−A2A_1=-A_2 のモードでは重心は動かず,端の2質点だけが回転慣性に寄与するため ω2=k/m\omega^2=k/m になる。

符号の扱い

下向きを正にしたので,ばね力は −kXi-kX_i と書く。平衡位置を基準にした後は重力が完全に消える。この消去をしないまま固有振動数を求めようとすると,定数項を誤って固有値問題に混ぜてしまう。

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第3問 — 熱力学

絞り過程は等エンタルピー

断熱で軸仕事がなく,A と C の速度エネルギーを無視できるとき,定常流エネルギー式は hA=hCh_A=h_C に落ちる。理想気体ではエンタルピーが温度だけの関数なので,この結論は TA=TCT_A=T_C も意味する。

等エントロピー流れとの違い

滑らかな絞りでは断面 B で速度が増し圧力が下がるが,断面 C で元の断面積に戻ると,同じ等エントロピー枝に沿って A の状態へ戻る。剥離を伴う場合は機械的エネルギーが不可逆に失われるため,圧力は回復しきらず,エントロピーが増える。

散逸関数の符号

熱伝導によるエントロピー生成は温度勾配の二乗で決まる。温度場の曲率を含む発散項だけを見ると局所的に増減を判断しにくいが,散逸関数 ϕ\phi は常に非負である。この非負性を書くことが,熱力学第二法則に対応する説明になる。

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第4問 — 流体力学

どの不変量を使うか

ピストンが右へ動くと,左側の気体には膨張波が左向きに伝わる。静止した領域 1 とピストン背後の領域 2 を結ぶ単純波では,速度が増える分だけ音速が下がる。したがって u2=2(a1−a2)/(κ−1)u_2=2(a_1-a_2)/(\kappa-1) が正になるように不変量を選ぶ。

数値の検算

圧力が 1/31/3 に下がるので温度と音速も下がる。一方,流速は正に生じるため,マッハ数は 11 未満だがかなり大きい値になる。ここで u2/a1u_2/a_1 をマッハ数としてしまうと,定義する状態の音速を取り違える。

右側領域の説明

左側は膨張,右側は圧縮である。ピストンの進行方向前方では情報が圧縮波として伝わるため,弱い圧縮波の列または衝撃波の発生を述べればよい。

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第5問 — 材料力学

中央剛体の扱い

分布荷重そのものをはり全体に直接載せるのではなく,中央剛体を介して A, B の2点に集中荷重が伝わると考える。対称性により2点の荷重は等しいので,左半分だけを解けばよい。

固定端モーメントの決め方

固定端モーメントは反力のつり合いだけでは決まらない。両端固定ばりでは端部回転が0であるため,曲げモーメント図の全体面積が0になる条件を使うと素早く求まる。

ばね接触後は剛性が増える

中央部を剛体化すると,左右の短い固定案内ばり2本が並列に働く。接触後はさらに中央ばねが並列に加わるため,荷重変位線図の傾きが 24EI/l324EI/l^3 から 24EI/l3+K24EI/l^3+K に増加する。

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第6問 — 制御工学

閉ループで考える

ブロック線図の周波数応答は開ループ C(s)P(s)C(s)P(s) ではなく,目標値から出力までの閉ループ伝達関数で求める。分母に 1+C(s)P(s)1+C(s)P(s) が入ることを最初に書くと,後のゲイン式の見通しがよい。

比例とPIの低周波差

比例のみでは低周波ゲインが L/(1+L)L/(1+L) にとどまる。PI では積分器の効果により低周波でループゲインが大きくなるため,閉ループゲインは1に近づく。これは定常偏差を小さくするという制御上の意味を持つ。

高周波の漸近線

どちらの調節器でも高周波では制御対象の2次遅れが支配的で,ゲインはおおよそ (ωTp)−2(\omega T_p)^{-2} で落ちる。したがって高周波側の傾きは −40 dB/dec-40\,\mathrm{dB/dec} と説明できる。

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(全6問)

    数学:常微分方程式とラプラス変換 / 力学:鉛直ばね連成振動 / 熱力学:ディーゼルサイクルとブレイトンサイクル

  • 2025年度(全6問)

    数学:逐次近似と複素積分 / 力学:水平ばねで結合された二振り子 / 熱力学:可逆カルノーサイクルとエントロピー

  • 2024年度(全6問)

    数学:行列指数関数と複素対数 / 力学:二重振り子の微小振動 / 熱力学:アトキンソンサイクルとルノアールサイクル

  • 2023年度(このページ・全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

  • 2022年度(全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

2023年度の出題内容

全6問

この6問の分野は力学3問・数学1問・制御工学1問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—固有値計算の確認 / 複素積分の極の選別あり
第2問力学—並進と回転に分ける / モードの物理的意味あり
第3問熱・統計力学熱力学絞り過程は等エンタルピー / 等エントロピー流れとの違いあり
第4問力学流体力学どの不変量を使うか / 数値の検算あり
第5問力学材料力学中央剛体の扱い / 固定端モーメントの決め方あり
第6問制御工学—閉ループで考える / 比例とPIの低周波差あり

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8テーマ

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 6問 → 2023年度 6問
2023年度で新しく出たテーマ
調和振動子・熱力学第一・第二法則・伝熱工学
2022年度の解答例

早稲田大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2027年度(現行一覧。大学は過去3年分の公開と案内)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-09-26
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