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早稲田大学 基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙専攻 専門科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は力学3問、数学1問、制御工学1問です。固有値・固有ベクトル、伝達関数、固有振動数と振動系などが出ています。2023年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、伝達関数、固有振動数と振動系です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 数学:行列指数関数と複素対数

行列指数の証明

相似変換と無限級数の相性を使うだけである。各べきで P−1PP^{-1}P が消えることを明示すれば十分で,対角化可能な場合は指数関数が固有値ごとに作用する。

対数の多価性

log⁡z\log z の本質は偏角が 2π2\pi だけ不定である点にある。値を求める問題では,一般の log⁡\log と主枝 Log\mathrm{Log} を混同しないことが重要である。

解答

行列指数関数

行列指数関数は eA=∑k=0∞Akk! e^A=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{A^k}{k!} で定義される。正則行列 PP について (PAP−1)k=PAkP−1 (PAP^{-1})^k=PA^kP^{-1} であるから ePAP−1=∑k=0∞(PAP−1)kk!=P(∑k=0∞Akk!)P−1=PeAP−1. e^{PAP^{-1}} =\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(PAP^{-1})^k}{k!} =P\left(\sum_{k=0}^{\infty}\frac{A^k}{k!}\right)P^{-1} =Pe^AP^{-1}. 定数行列 AA に対する初期値問題 x˙=Ax,x(0)=x0 \dot x=Ax,\qquad x(0)=x_0 の解は x(t)=etAx0. x(t)=e^{tA}x_0. 相異なる固有値 λk\lambda_k と固有ベクトル pkp_k を持ち, P=(p1,…,pn)P=(p_1,\ldots,p_n) とおくと A=Pdiag⁡(λ1,…,λn)P−1. A=P\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)P^{-1}. したがって x(t)=Pdiag⁡(eλ1t,…,eλnt)P−1x0. x(t)=P\operatorname{diag}(e^{\lambda_1t},\ldots,e^{\lambda_nt})P^{-1}x_0.

2次元の具体例を A=(02−20)A=\begin{pmatrix}0&2\\-2&0\end{pmatrix} と読むと, A2=−4I A^2=-4I である。よって etA=Icos⁡2t+A2sin⁡2t=(cos⁡2tsin⁡2t−sin⁡2tcos⁡2t). e^{tA}=I\cos 2t+\frac{A}{2}\sin 2t =\begin{pmatrix} \cos2t & \sin2t\\ -\sin2t & \cos2t \end{pmatrix}. 初期値 x0=(x10,x20)Tx_0=(x_{10},x_{20})^T に対して x1(t)=x10cos⁡2t+x20sin⁡2t,x2(t)=−x10sin⁡2t+x20cos⁡2t. x_1(t)=x_{10}\cos2t+x_{20}\sin2t,\qquad x_2(t)=-x_{10}\sin2t+x_{20}\cos2t.

複素対数

正則性の必要十分条件は,u,vu,v が1階連続偏微分可能で Cauchy--Riemann 方程式 ux=vy,uy=−vx u_x=v_y,\qquad u_y=-v_x を満たすことである。極座標では ur=1rvθ,vr=−1ruθ u_r=\frac1r v_\theta,\qquad v_r=-\frac1r u_\theta となる。

複素対数は log⁡z=ln⁡∣z∣+i(arg⁡z+2nπ),n∈Z \log z=\ln|z|+i(\arg z+2n\pi),\qquad n\in\mathbb Z であり,主枝は Log z=ln⁡∣z∣+iArg z,−π<Arg z≤π \mathrm{Log}\,z=\ln|z|+i\mathrm{Arg}\,z,\qquad -\pi<\mathrm{Arg}\,z\le\pi である。したがって log⁡(−3)=ln⁡3+i(2n+1)π,log⁡3=ln⁡3+i2nπ, \log(-3)=\ln3+i(2n+1)\pi,\quad \log3=\ln3+i2n\pi, log⁡(1−i)=12ln⁡2+i(−π4+2nπ), \log(1-i)=\frac12\ln2+i\left(-\frac{\pi}{4}+2n\pi\right), Log(−1)=iπ,Log(1+i)=12ln⁡2+iπ4. \mathrm{Log}(-1)=i\pi,\qquad \mathrm{Log}(1+i)=\frac12\ln2+i\frac{\pi}{4}. log⁡z\log z は多価関数であり,原点を囲む領域全体では一価正則な枝を取れない。ただし負の実軸などを切断した単連結領域では主枝 Log z\mathrm{Log}\,z が正則である。

曲線 ∣z∣=1|z|=1 を正向きに一周する積分は ∫C1z dz=2πi. \int_C\frac{1}{z}\,dz=2\pi i.

最終答

x(t)=etAx0,x(t)=Pdiag⁡(eλ1t,…,eλnt)P−1x0. x(t)=e^{tA}x_0,\qquad x(t)=P\operatorname{diag}(e^{\lambda_1t},\ldots,e^{\lambda_nt})P^{-1}x_0. 複素対数は log⁡z=ln⁡∣z∣+i(arg⁡z+2nπ)\log z=\ln|z|+i(\arg z+2n\pi),主枝は Log z=ln⁡∣z∣+iArg z\mathrm{Log}\,z=\ln|z|+i\mathrm{Arg}\,z。

第2問 — 力学:二重振り子の微小振動

下側質点の速度

下側質点の水平変位は L(θ1+θ2)L(\theta_1+\theta_2) であるため,運動エネルギーに交差項が出る。この交差項を落とすと固有振動数が大きく変わる。

モードの物理像

低周波モードでは2本の糸がほぼ同じ向きに揺れ,下側質点の振幅が大きい。高周波モードでは2本が逆向きに揺れ,中央の関節付近で曲がるような形になる。

力学:二重振り子の微小振動の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 熱力学:アトキンソンサイクルとルノアールサイクル

アトキンソンの特徴

アトキンソンサイクルでは膨張比が圧縮比より大きく取れる。これにより膨張仕事を長く取り出し,定圧放熱に入る温度を下げられるため,効率式に εe\varepsilon_e が現れる。

比熱の使い分け

定容過程では cvc_v,定圧過程では cpc_p を使う。熱量計算で比熱を逆にすると,効率式の先頭係数 κ\kappa が逆数になってしまう。

熱力学:アトキンソンサイクルとルノアールサイクルの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 流体力学:積分形保存式と後流運動量

検査面の向き

流入は u⋅n<0\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n<0,流出は正で数える。符号を統一すれば,上下境界を通る質量流量も連続式から自然に求まる。

抗力は速度欠損で決まる

圧力が上下流で等しいとき,物体抗力は後流で失われた xx 方向運動量流束として表せる。式 u(U−u)u(U-u) は,速度が一様流 UU に戻れば抗力が 0 になることも示している。

流体力学:積分形保存式と後流運動量の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 材料力学:薄肉圧力容器

薄肉仮定

半径方向応力を無視し,膜応力だけでつり合いを取るのが薄肉圧力容器の基本である。円筒では円周方向応力が軸方向応力の2倍になる。

厚さを変える理由

同じ内圧でも円筒と球殻の半径方向伸びは異なる。接合部で伸びを合わせないと曲げが発生するため,膜理論で得た伸びから厚さ比を決める。

材料力学:薄肉圧力容器の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 制御工学:一次遅れ系のPI制御応答

標準2次形への整理

PI制御を一次遅れ対象にかけると閉ループ分母は2次になる。分母を TITT_IT で割ってから ωn,ζ\omega_n,\zeta を読み取ると符号ミスが少ない。

ゲイン線図の特徴

低周波では積分動作により目標値への追従性が高くなる。TIT_I が大きいと積分作用が弱く始まり,折点が低い uu に現れるため,3本の曲線の違いは零点位置の違いとして説明できる。

制御工学:一次遅れ系のPI制御応答の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(全6問)

    数学:常微分方程式とラプラス変換 / 力学:鉛直ばね連成振動 / 熱力学:ディーゼルサイクルとブレイトンサイクル

  • 2025年度(全6問)

    数学:逐次近似と複素積分 / 力学:水平ばねで結合された二振り子 / 熱力学:可逆カルノーサイクルとエントロピー

  • 2024年度(このページ・全6問)

    数学:行列指数関数と複素対数 / 力学:二重振り子の微小振動 / 熱力学:アトキンソンサイクルとルノアールサイクル

  • 2023年度(全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

  • 2022年度(全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

2024年度の出題内容

全6問

この6問の分野は力学3問・数学1問・制御工学1問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学行列指数関数と複素対数行列指数の証明 / 対数の多価性あり
第2問力学二重振り子の微小振動下側質点の速度 / モードの物理像あり
第3問熱・統計力学アトキンソンサイクルとルノアールサイクルアトキンソンの特徴 / 比熱の使い分けあり
第4問力学積分形保存式と後流運動量検査面の向き / 抗力は速度欠損で決まるあり
第5問力学薄肉圧力容器薄肉仮定 / 厚さを変える理由あり
第6問制御工学一次遅れ系のPI制御応答標準2次形への整理 / ゲイン線図の特徴あり

同じテーマを出した他大学・他年度

4テーマ

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 6問 → 2024年度 6問
2024年度で新しく出たテーマ
偏微分可能性と連続性
2023年度の解答例

早稲田大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2027年度(現行一覧。大学は過去3年分の公開と案内)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-09-26
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