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早稲田大学 基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙専攻 専門科目 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は力学3問、数学1問、制御工学1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標、留数定理などが出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 数学

実基底への変換

複素固有値を持つ実2次系では,固有ベクトルの実部と虚部を基底に取ると,回転と減衰が同時に見える標準形になる。今回の実部は −1-1,虚部は 33 なので,解は e−te^{-t} で減衰しながら角速度 33 で回転する。

回転方向の判定

y˙1=−y1+3y2, y˙2=−3y1−y2\dot y_1=-y_1+3y_2,\ \dot y_2=-3y_1-y_2 である。点 (1,0)(1,0) では y˙2=−3<0\dot y_2=-3<0 なので下向きに進み,時計回りである。

留数の符号

iaia と −ia-ia の留数は符号が反対になる。両方を囲む積分が0になることは,大きな半円を用いる実積分計算とは別の話であり,どの極を囲む閉曲線かを明確にして答える必要がある。

解答

行列 B=(−43−62) B=\begin{pmatrix}-4&3\\-6&2\end{pmatrix} の特性多項式は det⁡(λI−B)=λ2+2λ+10 \det(\lambda I-B)=\lambda^2+2\lambda+10 である。したがって固有値は λ=−1±3i \lambda=-1\pm3i である。固有値 −1+3i-1+3i に対して,固有ベクトルは w=(11+i)=u+iv,u=(11),v=(01) w=\begin{pmatrix}1\\1+i\end{pmatrix} =u+iv,\qquad u=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\quad v=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix} と取れる。実基底 P=(u v)P=(u\ v) を用いて x=Pyx=Py とおけば P=(1011),y˙=(−13−3−1)y. P=\begin{pmatrix}1&0\\1&1\end{pmatrix},\qquad \dot y= \begin{pmatrix}-1&3\\-3&-1\end{pmatrix}y. よって相平面では原点へ向かう時計回りの渦状沈点である。

初期条件 x(0)=(1,0)Tx(0)=(1,0)^T については y(0)=P−1x(0)=(1−1) y(0)=P^{-1}x(0)=\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix} であるから, y(t)=e−t(cos⁡3tsin⁡3t−sin⁡3tcos⁡3t)(1−1). y(t)=e^{-t} \begin{pmatrix} \cos3t&\sin3t\\ -\sin3t&\cos3t \end{pmatrix} \begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}. したがって x1(t)=e−t(cos⁡3t−sin⁡3t),x2(t)=−2e−tsin⁡3t. x_1(t)=e^{-t}(\cos3t-\sin3t),\qquad x_2(t)=-2e^{-t}\sin3t.

次に複素関数 f(z)=1z2+a2(a>0) f(z)=\frac{1}{z^2+a^2}\quad (a>0) を考える。単純極は z=ia,−iaz=ia,-ia であり, Res⁡z=iaf(z)=12ia,Res⁡z=−iaf(z)=−12ia. \operatorname*{Res}_{z=ia}f(z)=\frac{1}{2ia},\qquad \operatorname*{Res}_{z=-ia}f(z)=-\frac{1}{2ia}. したがって,正向きの閉曲線が iaia のみを囲む場合は ∮f(z) dz=πa, \oint f(z)\,dz=\frac{\pi}{a}, −ia-ia のみを囲む場合は ∮f(z) dz=−πa, \oint f(z)\,dz=-\frac{\pi}{a}, 両方を囲む場合は留数の和が0なので ∮f(z) dz=0. \oint f(z)\,dz=0. さらに実積分は ∫−∞∞dxx2+a2=1a[arctan⁡xa]−∞∞=πa. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^2+a^2} =\frac{1}{a}\left[\arctan\frac{x}{a}\right]_{-\infty}^{\infty} =\frac{\pi}{a}.

最終答

λ=−1±3i,x1=e−t(cos⁡3t−sin⁡3t),x2=−2e−tsin⁡3t, \lambda=-1\pm3i,\quad x_1=e^{-t}(\cos3t-\sin3t),\quad x_2=-2e^{-t}\sin3t, ∮iaのみf dz=πa,∮−iaのみf dz=−πa,∮両極f dz=0,∫−∞∞dxx2+a2=πa. \oint_{iaのみ}f\,dz=\frac{\pi}{a},\quad \oint_{-iaのみ}f\,dz=-\frac{\pi}{a},\quad \oint_{両極}f\,dz=0,\quad \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^2+a^2}=\frac{\pi}{a}.

第2問 — 力学

ゼロ固有値の意味

両端が固定されていない3質点系なので,すべての質点が同じだけ移動する全体並進はばねを伸縮させない。そのため固有角振動数0のモードが存在する。

対称性で次数を下げる

左右の質点とばねが同じなので,反対称モードと対称モードに分けると3次の行列式を展開せずに固有振動数が求まる。初期条件が左右対称なら,反対称モードは係数0である。

初期変位の分解

初速度が0なので,各振動モードの時間依存は cos⁡ωt\cos\omega t だけになる。ゼロモードは時間に依存しない定数項として残り,これが各質点の平均的な移動量を表す。

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第3問 — 熱力学

定容か定圧か

オットーでは排熱が定容なので Qout=Cv(T4−T1)Q_{\mathrm{out}}=C_v(T_4-T_1) である。アトキンソンでは最後が定圧冷却なので Qout=Cp(T4′−T1)Q_{\mathrm{out}}=C_p(T_{4'}-T_1) になる。この違いが効率式の係数 κ\kappa を生む。

膨張比の役割

アトキンソンでは圧縮比 ε\varepsilon より膨張比 ε′\varepsilon' を大きく取るため,膨張でより多くの仕事を取り出せる。式の上では r=ε′/εr=\varepsilon'/\varepsilon が大きくなると排熱項の割合が下がる。

オットーへの極限

ε′=ε\varepsilon'=\varepsilon とすると,アトキンソンはオットーサイクルに戻る。効率式は 0/00/0 型に見えるが,rκ−1≃κ(r−1)r^\kappa-1\simeq\kappa(r-1) を用いるとオットー効率が得られる。

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第4問 — 流体力学

圧力と速度水頭を分ける

同じ管径なので A, B の速度は同じだが,水槽自由表面の速度は無視できる。A 点や B 点の圧力を求めるときは,管内速度水頭 V2/2V^2/2 を式から落とさないようにする。

ポンプ動力の見方

ポンプに必要なエネルギーは,大気圧から加圧タンク圧への圧力上昇,位置水頭差,そして摩擦損失の和で決まる。A 点と B 点の圧力差から計算しても,全体の Bernoulli 式から計算しても同じ値になる。

摩擦損失の影響

この条件では摩擦損失ヘッドは約 2.4 m2.4\ \mathrm{m} であり,全ヘッドの中では圧力差の寄与が支配的である。桁の確認として,軸動力が ρQwp\rho Q w_p を効率で割った MW 級になることも妥当である。

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第5問 — 材料力学

薄肉断面の近似

正方形管の断面二次モーメントは厳密式から一次の tt だけを残すと (2/3)a3t(2/3)a^3t になる。水平板の寄与と垂直板の寄与を足しても同じ値になる。

剛ロッドは先端支持

剛なロッドは B 点の上下変位を0にする支点として働く。片持ちはりに先端反力を未知量として加え,先端たわみが0という条件から反力を決めるのが最も確実である。

弾性ロッドはばね

ロッドが弾性変形する場合,B 点は完全には拘束されず,反力と変位が R=(EA/b)vBR=(EA/b)v_B で結ばれる。段付き剛性の問題では標準公式をそのまま使うのではなく,単位荷重法で曲げ剛性の違う区間を分けて積分する。

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第6問 — 制御工学

タンクは一次遅れ

液位系では「貯める量」が AhAh,「流れにくさ」が RR なので,時定数は面積と抵抗の積 ARAR になる。二段にすると一次遅れが直列に接続された形になり,伝達関数の分母が2つの一次因子の積になる。

2次遅れのボード線図

正確なゲインは減衰比 ζ\zeta に依存する。表を埋めるときは,低周波で0 dB,高周波で −40 dB/dec-40\,\mathrm{dB/dec},固有角周波数付近で位相 −90∘-90^\circ という骨格を先に書くとよい。

速度フィードバックの役割

二重積分と1次遅れを含む対象は比例だけでは安定化できない。速度フィードバックは特性多項式の ss 項を作り,Routh 条件を満たせるようにする。条件 KF>TPK_F>T_P は,この ss 項が十分大きいことを表す。

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(全6問)

    数学:常微分方程式とラプラス変換 / 力学:鉛直ばね連成振動 / 熱力学:ディーゼルサイクルとブレイトンサイクル

  • 2025年度(全6問)

    数学:逐次近似と複素積分 / 力学:水平ばねで結合された二振り子 / 熱力学:可逆カルノーサイクルとエントロピー

  • 2024年度(全6問)

    数学:行列指数関数と複素対数 / 力学:二重振り子の微小振動 / 熱力学:アトキンソンサイクルとルノアールサイクル

  • 2023年度(全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

  • 2022年度(このページ・全6問)

    数学 / 力学 / 熱力学

2022年度の出題内容

全6問

この6問の分野は力学3問・数学1問・制御工学1問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—実基底への変換 / 回転方向の判定あり
第2問力学—ゼロ固有値の意味 / 対称性で次数を下げるあり
第3問熱・統計力学熱力学定容か定圧か / 膨張比の役割あり
第4問力学流体力学圧力と速度水頭を分ける / ポンプ動力の見方あり
第5問力学材料力学薄肉断面の近似 / 剛ロッドは先端支持あり
第6問制御工学—タンクは一次遅れ / 2次遅れのボード線図あり

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9テーマ

2022年度は4問に9テーマが出ています。

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