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岡山大学 院試 過去問 解答例

岡山大 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2026年第1回募集 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析3問・位相・幾何1問・線形代数1問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理)。2025年第2回募集と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理。

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収録6年度分の解答PDF:岡山大学 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学(¥3,200・紙面見本あり)

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解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

岡山大 数学 2026年第1回募集 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析3問・位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数行列の固有値とジョルダン標準形重解でも対角化できる場合 / ジョルダン標準形の確認あり
第2問—線形写像の対合と固有空間分解分解公式 / 答案上の注意あり
第3問微分積分・解析級数と広義積分項別積分の根拠 / 収束判定の書き分けあり
第4問微分積分・解析留数定理による級数計算輪郭積分が消える理由 / 符号の確認あり
第5問代数対称群の部分群隣接互換で生成できる理由 / 交わりの見つけ方あり
第6問位相・幾何距離空間のコンパクト性閉性の証明 / 反例の意味あり
第7問微分積分・解析極座標変換による二重積分原点の扱いあり

この年度の解説には検算2件が付いています。

2026年第1回募集の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に6テーマが出ています。

前年度(2025年第2回募集)との違い

大問数
2025年第2回募集 7問 → 2026年第1回募集 7問
2026年第1回募集で新しく出たテーマ
一様収束・ジョルダン標準形
2025年第2回募集のページを見る

第1問 — 行列の固有値とジョルダン標準形

方針

固有多項式を計算した後,重解の有無と対角化可能性を分けて調べる。重解をもつことと対角化できないことは同じではないので,a=0a=0 を別に確認するのがこの問題の要点である。

重解でも対角化できる場合

a=0a=0 では固有値 22 が重複するが,その固有空間は2次元ある。したがって固有ベクトルは合計3本取れる。ここを確認せずに「重解があるから対角化不能」と判断すると失点しやすい。

ジョルダン標準形の確認

a=−1a=-1 では λ=1\lambda=1 の固有空間が1次元しかないため,代数的重複度2を1本の固有ベクトルでは埋められない。その不足分が長さ2のジョルダン鎖として現れる。

解答

第2成分は他の成分と混ざらないので,固有多項式は det⁡(λI−A)=(λ−2)det⁡(λ−2−a−1λ)=(λ−2)(λ2−2λ−a) \det(\lambda I-A) =(\lambda-2)\det \begin{pmatrix} \lambda-2 & -a\\ -1 & \lambda \end{pmatrix} =(\lambda-2)(\lambda^2-2\lambda-a) である。したがって固有値は 2,1+1+a,1−1+a 2,\qquad 1+\sqrt{1+a},\qquad 1-\sqrt{1+a} である。ただし,重解を考えるときはこの表示よりも (λ−2)(λ2−2λ−a) (\lambda-2)(\lambda^2-2\lambda-a) をそのまま用いるのが安全である。

重解をもつのは,二次因子が重解をもつ場合,または二次因子が λ=2\lambda=2 を根にもつ場合である。前者は (−2)2+4a=0 (-2)^2+4a=0 より a=−1a=-1,後者は 22−2⋅2−a=0 2^2-2\cdot2-a=0 より a=0a=0 である。よって重解をもつ値は a=−1, 0 a=-1,\ 0 である。

次に対角化可能性を調べる。a≠−1,0a\neq -1,0 では固有値がすべて相異なるから対角化可能である。

a=0a=0 のとき,固有多項式は λ(λ−2)2 \lambda(\lambda-2)^2 である。λ=2\lambda=2 の固有空間は (A−2I)(xyz)=0⟺x−2z=0 (A-2I) \begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=0 \quad\Longleftrightarrow\quad x-2z=0 であり,y,zy,z を自由に選べるので次元は 22 である。さらに λ=0\lambda=0 の固有空間は1次元であるから,固有空間の次元の和は 33 となり,この場合も対角化可能である。

a=−1a=-1 のとき,固有多項式は (λ−2)(λ−1)2 (\lambda-2)(\lambda-1)^2 である。第1・第3成分に関する部分は (2−110) \begin{pmatrix}2&-1\\1&0\end{pmatrix} であり,λ=1\lambda=1 に対して (1−11−1)(xz)=0 \begin{pmatrix}1&-1\\1&-1\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x\\z\end{pmatrix}=0 となるので,λ=1\lambda=1 の固有空間は1次元である。代数的重複度は 22 で幾何的重複度は 11 だから,この場合は対角化できない。

以上より,対角化可能であるための必要十分条件は a≠−1 a\neq -1 である。

最後に,対角化できない場合 a=−1a=-1 のジョルダン標準形を求める。 固有値 11 についてサイズ 22 のジョルダンブロックが1つ現れ,固有値 22 についてサイズ 11 のブロックが1つ現れる。したがって J=(110010002) J= \begin{pmatrix} 1&1&0\\ 0&1&0\\ 0&0&2 \end{pmatrix} がジョルダン標準形である。

最終答

重解をもつのは a=−1,0,対角化可能条件は a≠−1. \text{重解をもつのは }a=-1,0,\qquad \text{対角化可能条件は }a\neq -1. 対角化できない a=−1a=-1 では J=(110010002). J=\begin{pmatrix}1&1&0\\0&1&0\\0&0&2\end{pmatrix}.

第2問 — 線形写像の対合と固有空間分解

方針

f2=id⁡f^2=\operatorname{id} は「2回作用させると元に戻る」という条件である。したがって最小多項式は x2−1=(x−1)(x+1)x^2-1=(x-1)(x+1) を割り,固有空間分解が自然に出てくる。

分解公式

v=v+f(v)2+v−f(v)2 v=\frac{v+f(v)}2+\frac{v-f(v)}2 はこの問題の中心である。前半は ff で不変な成分,後半は符号が反転する成分であり,この式だけで和が全体を張ることが示せる。

答案上の注意

対角化可能性を言うには,固有値が 1,−11,-1 に限られることだけでは不十分である。実際に V=W1⊕W−1V=W_1\oplus W_{-1} を示し,それぞれの固有空間の基底を合わせると VV の基底になる,という一文まで書くと答案として安定する。

線形写像の対合と固有空間分解の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 級数と広義積分

方針

広義積分の特異点は x=0x=0 だけである。そこで x=t2x=t^2 とおくと平方根の特異性が消え,通常の連続関数 e−t2e^{-t^2} の積分に帰着する。

項別積分の根拠

級数展開を積分に入れるときは,何らかの正当化が必要である。この問題では [0,1][0,1] 上で ∑n=0∞∣t∣2nn!≤∑n=0∞1n! \sum_{n=0}^{\infty}\frac{|t|^{2n}}{n!}\leq \sum_{n=0}^{\infty}\frac1{n!} が成り立つため,ワイエルシュトラスの判定法で一様収束が従う。したがって項別積分が正当化される。

収束判定の書き分け

級数は絶対収束を示せば十分だが,広義積分は端点の特異性を個別に見る必要がある。ここで e−xe^{-x} は 0≤x≤10\le x\le 1 で有界なので,問題になるのは x−1/2x^{-1/2} だけである。指数 −1/2>−1-1/2>-1 であることを明記すると, 広義積分の収束理由が答案上で明確になる。

検算

右辺の積分は正なので,左辺の級数に係数 22 を掛けた値も正でなければならない。 初項だけなら 22 で,次項までなら 2(1−1/3)=4/32(1-1/3)=4/3 となる。 一方,0<e−x≤10<e^{-x}\le1 から右辺は 00 と 22 の間にあるため, 得られた等式の大きさとしても矛盾しない。

よくあるミス

xx のまま e−xe^{-x} を展開してもよいが, ∫01xn−12 dx \int_0^1 x^{n-\frac12}\,dx を扱う必要がある。計算自体は難しくないものの,広義積分と項別積分の正当化を同時に書く必要があるため,x=t2x=t^2 によって特異性を消す方法の方が答案にしやすい。 また,∫01t2n dt=1/(2n+1)\int_0^1 t^{2n}\,dt=1/(2n+1) の係数 22 は, 置換の dx=2t dtdx=2t\,dt と分母の x=t\sqrt{x}=t が打ち消し合った後に残る。 この係数を落とすと最終式全体が半分になる。

級数と広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 留数定理による級数計算

方針

π\pi 間隔の極をもつ cot⁡z=cos⁡z/sin⁡z\cot z=\cos z/\sin z を使い,その留数から整数全体の和を取り出す標準的な留数計算である。追加の極 ±iπ\pm i\pi の留数が,最終的な閉じた形を決める。

輪郭積分が消える理由

正方形の辺を半整数倍の π\pi に置くことで,実軸上の極 kπk\pi を避けられる。垂直辺では Re⁡z\operatorname{Re}z が半整数倍の π\pi なので cot⁡z\cot z は有界であり,水平辺では虚部が大きいためやはり有界である。残る因子 1/(z2+π2)1/(z^2+\pi^2) が O(an−2)O(a_n^{-2}),周長が O(an)O(a_n) なので積分は O(an−1)O(a_n^{-1}) となる。

符号の確認

z=iπz=i\pi では (2iπ)sin⁡(iπ)=(2iπ)(isinh⁡π)=−2πsinh⁡π (2i\pi)\sin(i\pi)=(2i\pi)(i\sinh\pi)=-2\pi\sinh\pi であるため,留数は負になる。ここで符号を誤ると最終結果が −πcoth⁡π-\pi\coth\pi になってしまい,正項級数の値として不自然であることからも確認できる。

留数定理による級数計算の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 対称群の部分群

方針

G1G_1 は互いに素な巡回置換の組合せなので,まず C3×C2C_3\times C_2 と見る。ここで 33 と 22 が互いに素であるため, (123)(45)(123)(45) だけで両方の成分を復元できる。G2G_2 は隣接互換で 生成される対称群として見る。この2つの見方を使うと,位数・巡回性・ 交わりがすべて統一的に決まる。

隣接互換で生成できる理由

隣接互換は「隣同士を入れ替える操作」であり,バブルソートと同じ考えで 任意の並べ替えを実現できる。答案では,任意の互換 (ij)(ij) を隣接互換の 積で表示すれば十分である。対称群は互換で生成されるので,そこまで書けば (12),(23),(34)(12),(23),(34) が S4S_4 全体を生成する根拠になる。

交わりの見つけ方

G2G_2 の決定的な特徴は 55 を固定することである。一方, G1=⟨(123)(45)⟩G_1=\langle(123)(45)\rangle では,奇数乗に (45)(45) が残るので 55 を動かし,偶数乗だけが 55 を固定する。したがって交わりは 偶数乗からなる {e,(123),(132)}\{e,(123),(132)\} であり,これが ⟨(123)⟩\langle(123)\rangle である。

正規性の判定

部分群が正規であるかどうかは,共役で閉じているかを調べればよい。今回は (123)(123) を G2G_2 の元 (34)(34) で共役すると (124)(124) になる。 (124)(124) は同じく 55 を固定する3-cycle だが, ⟨(123)⟩\langle(123)\rangle の3個の元には含まれない。生成される3元部分群の 中に戻らない例を1つ出せば,正規でないことが示せる。

単数群との比較

(Z/nZ)×(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times の位数は φ(n)\varphi(n) である。したがって C3C_3 と同型になるには φ(n)=3\varphi(n)=3 が必要である。しかし n>2n>2 では単数 aa と −a-a が必ず異なるので,単数全体は2個ずつ 組になり,φ(n)\varphi(n) は偶数になる。例外 n=1,2n=1,2 では単数群は どちらも自明群である。このため位数3の単数群,したがって C3C_3 と同型な単数群は存在しない。

対称群の部分群の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 距離空間のコンパクト性

方針

距離空間のコンパクト性は,開被覆の定義から直接扱うのが最も確実である。閉部分集合のコンパクト性は,補集合を1つ加えて大きいコンパクト集合の開被覆にするのが定石である。

閉性の証明

距離空間では,点 x∉Ax\notin A のまわりに AA と交わらない開球を作れば,補集合が開であることが示せる。各点ごとの距離は正でも,その下限が正とは限らないため,コンパクト性で有限個に絞ってから最小値を取る必要がある。

反例の意味

ユークリッド空間ではハイネ・ボレルの定理により「有界かつ閉」と「コンパクト」が同値である。しかしこれは一般の距離空間では成り立たない。離散距離の N\mathbb{N} は,その差がはっきり見える代表的な反例である。

距離空間のコンパクト性の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 極座標変換による二重積分

方針

x2+y2x^2+y^2 と第1象限円板が同時に現れるため,極座標変換が最短である。対数は log⁡(r2)\log(r^2) となり,ヤコビアンの rr と x+yx+y の rr によって,半径方向には r2log⁡(r2)r^2\log(r^2) が現れる。

原点の扱い

log⁡(r2)\log(r^2) は r=0r=0 で発散するが, r2log⁡(r2) r^2\log(r^2) は 00 近傍で可積分である。実際,原始関数に含まれる r3log⁡(r2) r^3\log(r^2) は r→0+r\to0+ で 00 に収束する。したがって広義積分として問題なく計算できる。

検算

0<a<10<a<1 では log⁡(a2)<0\log(a^2)<0 なので答は負になり得る。一方,aa が十分大きいと対数項が支配的になり正になる。積分関数の符号が半径によって変わることと整合している。

極座標変換による二重積分の途中式・最終答をPDFで見る

岡山大 数学 院試 過去問の収録6年度