岡山大学 院試 過去問 解答例
岡山大 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2026年第1回募集 院試 解答例・解説
岡山大学 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2026年第1回募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 行列の固有値とジョルダン標準形
方針
固有多項式を計算した後,重解の有無と対角化可能性を分けて調べる。重解をもつことと対角化できないことは同じではないので, を別に確認するのがこの問題の要点である。
重解でも対角化できる場合
では固有値 が重複するが,その固有空間は2次元ある。したがって固有ベクトルは合計3本取れる。ここを確認せずに「重解があるから対角化不能」と判断すると失点しやすい。
ジョルダン標準形の確認
では の固有空間が1次元しかないため,代数的重複度2を1本の固有ベクトルでは埋められない。その不足分が長さ2のジョルダン鎖として現れる。
第2問 — 線形写像の対合と固有空間分解
方針
は「2回作用させると元に戻る」という条件である。したがって最小多項式は を割り,固有空間分解が自然に出てくる。
分解公式
はこの問題の中心である。前半は で不変な成分,後半は符号が反転する成分であり,この式だけで和が全体を張ることが示せる。
答案上の注意
対角化可能性を言うには,固有値が に限られることだけでは不十分である。実際に を示し,それぞれの固有空間の基底を合わせると の基底になる,という一文まで書くと答案として安定する。
第3問 — 級数と広義積分
方針
広義積分の特異点は だけである。そこで とおくと平方根の特異性が消え,通常の連続関数 の積分に帰着する。
項別積分の根拠
級数展開を積分に入れるときは,何らかの正当化が必要である。この問題では 上で が成り立つため,ワイエルシュトラスの判定法で一様収束が従う。したがって項別積分が正当化される。
収束判定の書き分け
級数は絶対収束を示せば十分だが,広義積分は端点の特異性を個別に見る必要がある。ここで は で有界なので,問題になるのは だけである。指数 であることを明記すると, 広義積分の収束理由が答案上で明確になる。
検算
右辺の積分は正なので,左辺の級数に係数 を掛けた値も正でなければならない。 初項だけなら で,次項までなら となる。 一方, から右辺は と の間にあるため, 得られた等式の大きさとしても矛盾しない。
よくあるミス
のまま を展開してもよいが, を扱う必要がある。計算自体は難しくないものの,広義積分と項別積分の正当化を同時に書く必要があるため, によって特異性を消す方法の方が答案にしやすい。 また, の係数 は, 置換の と分母の が打ち消し合った後に残る。 この係数を落とすと最終式全体が半分になる。
第4問 — 留数定理による級数計算
方針
間隔の極をもつ を使い,その留数から整数全体の和を取り出す標準的な留数計算である。追加の極 の留数が,最終的な閉じた形を決める。
輪郭積分が消える理由
正方形の辺を半整数倍の に置くことで,実軸上の極 を避けられる。垂直辺では が半整数倍の なので は有界であり,水平辺では虚部が大きいためやはり有界である。残る因子 が ,周長が なので積分は となる。
符号の確認
では であるため,留数は負になる。ここで符号を誤ると最終結果が になってしまい,正項級数の値として不自然であることからも確認できる。
第5問 — 対称群の部分群
方針
は互いに素な巡回置換の組合せなので,まず と見る。ここで と が互いに素であるため, だけで両方の成分を復元できる。 は隣接互換で 生成される対称群として見る。この2つの見方を使うと,位数・巡回性・ 交わりがすべて統一的に決まる。
隣接互換で生成できる理由
隣接互換は「隣同士を入れ替える操作」であり,バブルソートと同じ考えで 任意の並べ替えを実現できる。答案では,任意の互換 を隣接互換の 積で表示すれば十分である。対称群は互換で生成されるので,そこまで書けば が 全体を生成する根拠になる。
交わりの見つけ方
の決定的な特徴は を固定することである。一方, では,奇数乗に が残るので を動かし,偶数乗だけが を固定する。したがって交わりは 偶数乗からなる であり,これが である。
正規性の判定
部分群が正規であるかどうかは,共役で閉じているかを調べればよい。今回は を の元 で共役すると になる。 は同じく を固定する3-cycle だが, の3個の元には含まれない。生成される3元部分群の 中に戻らない例を1つ出せば,正規でないことが示せる。
単数群との比較
の位数は である。したがって と同型になるには が必要である。しかし では単数 と が必ず異なるので,単数全体は2個ずつ 組になり, は偶数になる。例外 では単数群は どちらも自明群である。このため位数3の単数群,したがって と同型な単数群は存在しない。
第6問 — 距離空間のコンパクト性
方針
距離空間のコンパクト性は,開被覆の定義から直接扱うのが最も確実である。閉部分集合のコンパクト性は,補集合を1つ加えて大きいコンパクト集合の開被覆にするのが定石である。
閉性の証明
距離空間では,点 のまわりに と交わらない開球を作れば,補集合が開であることが示せる。各点ごとの距離は正でも,その下限が正とは限らないため,コンパクト性で有限個に絞ってから最小値を取る必要がある。
反例の意味
ユークリッド空間ではハイネ・ボレルの定理により「有界かつ閉」と「コンパクト」が同値である。しかしこれは一般の距離空間では成り立たない。離散距離の は,その差がはっきり見える代表的な反例である。
第7問 — 極座標変換による二重積分
方針
と第1象限円板が同時に現れるため,極座標変換が最短である。対数は となり,ヤコビアンの と の によって,半径方向には が現れる。
原点の扱い
は で発散するが, は 近傍で可積分である。実際,原始関数に含まれる は で に収束する。したがって広義積分として問題なく計算できる。
検算
では なので答は負になり得る。一方, が十分大きいと対数項が支配的になり正になる。積分関数の符号が半径によって変わることと整合している。