院試hub

岡山大学 院試 過去問 解答例

岡山大 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2024年第2回募集 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・テイラー展開)。2024年第1回募集と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:岡山大学 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学(¥3,200・紙面見本あり)

このページで公開
解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

岡山大 数学 2024年第2回募集 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数A-1 線形代数巡回行列の見方 / 対角化可能性の注意あり
第2問微分積分・解析A-2 逆正接関数の高階微分漸化式は恒等式から作る / 添字のずれあり
第3問微分積分・解析A-3 単位球上の積分対称性で3つを同じ積分にする / 係数 の意味あり
第4問—A-4 自由アーベル群の自己準同型有限生成自由であることの使い所 / 単射と全射は対称ではないあり
第5問—B-1 連結性の定義と区間定義から示すという条件 / 相対開集合あり
第6問—B-2 共通点をもつ連結集合族の合併共通点の役割 / 証明の流れあり
第7問—B-3 連続写像による連結性の保存逆像を使う理由 / 相対開集合の扱いあり

この年度の解説には検算1件が付いています。

2024年第2回募集の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に3テーマが出ています。

前年度(2024年第1回募集)との違い

大問数
2024年第1回募集 7問 → 2024年第2回募集 7問
2024年第2回募集で新しく出たテーマ
テイラー展開
2024年第1回募集のページを見る

第1問 — A-1 線形代数

巡回行列の見方

この問題の本質は,行を1つずつ巡回させる形の行列がフーリエ基底で対角化されることである。3次の場合は (1,1,1)t,(1,ω,ω2)t,(1,ω2,ω)t (1,1,1)^t,\quad (1,\omega,\omega^2)^t,\quad (1,\omega^2,\omega)^t を試せば十分で,抽象的な理論を持ち出さなくても完結する。

対角化可能性の注意

「固有値が3つ相異なる」とは限らない。例えば b=c=0b=c=0 なら固有値はすべて0である。しかし対角化可能性は,固有値の個数ではなく固有ベクトルで基底を作れるかで判定する。今回の固有ベクトルは b,cb,c に依存しないため,重複固有値の場合も問題なく対角化できる。

実数行列と複素対角化

BB の成分は実数であるが,対角化は複素行列によって行うかどうかが問われている。したがって複素固有ベクトルを用いてよい。実数上の対角化可能性とは別問題なので,ここを混同しないことが重要である。

解答

問題で与えられた行列は巡回行列なので,1の3乗根を用いた固有ベクトルで扱うのが最も短い。 ω≠1, ω3=1\omega\ne 1,\ \omega^3=1 とする。このとき 1+ω+ω2=0,ω2=ω‾ 1+\omega+\omega^2=0,\qquad \omega^2=\overline{\omega} である。

まず u0=(111),u1=(1ωω2),u2=(1ω2ω) u_0=\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\quad u_1=\begin{pmatrix}1\\ \omega\\ \omega^2\end{pmatrix},\quad u_2=\begin{pmatrix}1\\ \omega^2\\ \omega\end{pmatrix} を考える。問題の行列 AA に対して直接計算すると Au0=(a+b+c)u0, Au_0=(a+b+c)u_0, Au1=(a+bω+cω2)u1,Au2=(a+bω2+cω)u2 Au_1=(a+b\omega+c\omega^2)u_1,\qquad Au_2=(a+b\omega^2+c\omega)u_2 となる。実際,例えば u1u_1 の第2成分は c+aω+bω2=ω(a+bω+cω2) c+a\omega+b\omega^2 =\omega(a+b\omega+c\omega^2) であり,他の成分も同様である。さらに det⁡(u0,u1,u2)=det⁡(1111ωω21ω2ω)=(ω−1)(ω2−1)(ω−ω2)≠0 \det(u_0,u_1,u_2) = \det \begin{pmatrix} 1&1&1\\ 1&\omega&\omega^2\\ 1&\omega^2&\omega \end{pmatrix} =(\omega-1)(\omega^2-1)(\omega-\omega^2)\ne 0 であるから,これら3本は C3\mathbb{C}^3 の基底である。したがって AA はこの基底に関して対角成分 a+b+c,a+bω+cω2,a+bω2+cω a+b+c,\quad a+b\omega+c\omega^2,\quad a+b\omega^2+c\omega をもつ対角行列で表される。よって det⁡A=(a+b+c)(a+bω+cω2)(a+bω2+cω) \det A =(a+b+c)(a+b\omega+c\omega^2)(a+b\omega^2+c\omega) が従う。

次に問題の行列 BB は,上の AA において a=0a=0 とした巡回行列である。したがって同じ基底 u0,u1,u2u_0,u_1,u_2 に対して Bu0=(b+c)u0,Bu1=(bω+cω2)u1,Bu2=(bω2+cω)u2 Bu_0=(b+c)u_0,\quad Bu_1=(b\omega+c\omega^2)u_1,\quad Bu_2=(b\omega^2+c\omega)u_2 である。従って BB の固有値は b+c,bω+cω2,bω2+cω b+c,\qquad b\omega+c\omega^2,\qquad b\omega^2+c\omega である。

また,u0,u1,u2u_0,u_1,u_2 は b,cb,c の値によらず一次独立であり,すべて BB の固有ベクトルである。よって固有値に重複が生じる場合でも,この3本の固有ベクトルが基底をなすため,BB は複素行列によって対角化可能である。

最終答

det⁡A=(a+b+c)(a+bω+cω2)(a+bω2+cω). \det A =(a+b+c)(a+b\omega+c\omega^2)(a+b\omega^2+c\omega). Spec⁡(B)={ b+c, bω+cω2, bω2+cω }. \operatorname{Spec}(B) = \{\,b+c,\ b\omega+c\omega^2,\ b\omega^2+c\omega\,\}. BB は C\mathbb{C} 上で常に対角化可能である。

第2問 — A-2 逆正接関数の高階微分

漸化式は恒等式から作る

arctan⁡x\arctan x の高階微分を直接計算すると式がすぐ複雑になる。最初に (1+x2)f′(x)=1 (1+x^2)f'(x)=1 という簡単な恒等式へ変形してから微分するのが安定した方法である。1+x21+x^2 の高階導関数が2階で止まるため,求める漸化式には f(n+1)f^{(n+1)} と f(n)f^{(n)} だけが残る。

添字のずれ

両辺を n+1n+1 回微分する点が重要である。kk 回微分すると (1+x2)f(k+1)+2kxf(k)+k(k−1)f(k−1)=0 (1+x^2)f^{(k+1)}+2kx f^{(k)}+k(k-1)f^{(k-1)}=0 となるので,ここで k=n+1k=n+1 と置く。n(n+1)n(n+1) の係数を (n+1)(n+2)(n+1)(n+2) としてしまう誤りが起きやすい。

0での値はマクローリン展開が最短

漸化式に x=0x=0 を代入しても求められるが,奇偶の構造を見るにはマクローリン展開が最も明快である。偶数次の項が存在しないので偶数階微分は0になり,奇数階では係数に階乗を掛けるだけで値が出る。

展開を使うときの正当化

ここで必要なのは 00 における微分係数なので,arctan⁡x\arctan x のマクローリン展開を x=0x=0 の近くで使えば十分である。実際, 11+x2=∑m=0∞(−1)mx2m(∣x∣<1) \frac{1}{1+x^2}=\sum_{m=0}^{\infty}(-1)^m x^{2m} \qquad(|x|<1) を項別積分すれば上の展開が得られる。収束半径内での項別微分・係数比較であることを意識すると,形式的な級数操作だけに見える答案を避けられる。

A-2 逆正接関数の高階微分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — A-3 単位球上の積分

対称性で3つを同じ積分にする

単位球は x,y,zx,y,z の入れ替えで不変である。そのため ∫Dx2\int_D x^2, ∫Dy2\int_D y^2, ∫Dz2\int_D z^2 は等しい。個別に球座標で x2x^2 を積分するより, x2+y2+z2=r2 x^2+y^2+z^2=r^2 を先に使う方が計算量が少なく,ミスも減る。

係数 1/31/3 の意味

∭Dr2 dV\iiint_D r^2\,dV は3方向の2乗の和の積分である。球の対称性により,その寄与は3方向へ等分される。このため ∭Dx2 dV\iiint_D x^2\,dV は ∭Dr2 dV\iiint_D r^2\,dV のちょうど3分の1になる。

検算

体積は 4π/34\pi/3 であり,単位球内では 0≤x2,y2,z2≤10\le x^2,y^2,z^2\le 1 である。したがって ∭Dx2 dV=4π/15\iiint_D x^2\,dV=4\pi/15 は体積より小さく,値の大きさとして自然である。

また直接計算しても ∭Dx2 dV=∫02π∫0π∫01r2sin⁡2φcos⁡2θ⋅r2sin⁡φ dr dφ dθ \iiint_D x^2\,dV = \int_0^{2\pi}\int_0^\pi\int_0^1 r^2\sin^2\varphi\cos^2\theta\cdot r^2\sin\varphi\,dr\,d\varphi\,d\theta となり,∫02πcos⁡2θ dθ=π\int_0^{2\pi}\cos^2\theta\,d\theta=\pi, ∫0πsin⁡3φ dφ=4/3\int_0^\pi\sin^3\varphi\,d\varphi=4/3 から 4π/154\pi/15 が再び得られる。対称性で短縮した計算の数値確認として有効である。

A-3 単位球上の積分の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — A-4 自由アーベル群の自己準同型

有限生成自由であることの使い所

自由アーベル群は Zr\mathbb{Z}^r と同型であり,ねじれ元をもたない。この性質だけで (1) は解ける。有限群の非零元は必ず有限位数をもつため,自由アーベル群の中に非自明な有限部分群は存在しない。

単射と全射は対称ではない

Z\mathbb{Z} 上では,有限次元ベクトル空間と異なり,単射な自己準同型が全射とは限らない。n↦2nn\mapsto 2n は像が 2Z2\mathbb{Z} になり,指数2の真部分群へ埋め込む写像である。

全射なら同型となる理由

全射性は有限生成性と相性がよい。行列で見れば,Zr\mathbb{Z}^r の自己準同型が全射であることは,対応する整数行列の像が Zr\mathbb{Z}^r 全体であることを意味し,スミス標準形ではすべての不変因子が1になる。したがって行列式は ±1\pm1 となり,逆行列も整数行列になる。本文ではテンソル積を使って,少なくとも単射性が従うことを簡潔に示した。

行列での検算

A≃ZrA\simeq\mathbb{Z}^r を固定すると,ff は整数行列 MM で表される。全射なら標準基底 eie_i の各々について Mxi=eiMx_i=e_i となる整数ベクトル xix_i が取れるので,これらを列に並べた整数行列 NN は MN=Ir MN=I_r を満たす。行列式を取れば det⁡Mdet⁡N=1\det M\det N=1 であり,det⁡M=±1\det M=\pm1 である。従って MM は Z\mathbb{Z} 上で逆行列をもち,ff は同型である。この検算は,有限次元ベクトル空間の議論だけで全射性を終えたつもりになっていないかを確かめるのに役立つ。

A-4 自由アーベル群の自己準同型の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — B-1 連結性の定義と区間

定義から示すという条件

[0,1][0,1] が連結であることは既知の定理として使われることが多いが,ここでは定義からの証明が求められている。したがって「中間値の定理より」だけで済ませると不十分になりやすい。分離を仮定し,上限を使って矛盾を出すのが標準的で確実である。

相対開集合

[0,1][0,1] の中で開いている,という意味は R\mathbb{R} 全体で開いているという意味ではない。例えば [0,ε)[0,\varepsilon) は [0,1][0,1] の相対位相では開集合である。このため端点を含む議論では「相対開」と明記して扱う必要がある。

上限法の構造

点 aa から出発して,どこまで GG の中だけで進めるかを SS で測る。上限 cc がもう一方の集合に入ると左側の点と矛盾し,GG に入ると右へ延長できて上限性と矛盾する。この二段階が証明の核心である。

答案で落としやすい点

「cc に下から近づく点がある」と書くだけでは,どの点が GG に入るのかが曖昧になりやすい。任意の x<cx<c に対して x<s≤cx<s\le c となる s∈Ss\in S を取り,[a,s]⊂G[a,s]\subset G から x∈Gx\in G と示すと,上限の使い方が明確になる。また端点 0,10,1 では通常の開区間ではなく,相対開集合としての片側近傍を使うことを忘れない。

B-1 連結性の定義と区間の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — B-2 共通点をもつ連結集合族の合併

共通点の役割

連結集合の合併は一般には連結とは限らない。例えば離れた2つの区間の合併は連結でない。ここで共通部分が空でないという仮定は,すべての連結集合を同じ分離成分側へ固定するために使われる。

反対に,各 AλA_\lambda が互いに少しずつ交わるだけで共通点が1点もない場合は,この証明はそのまま使えない。試験では,どの仮定で p∈Aλ∩Gp\in A_\lambda\cap G をすべての λ\lambda について保証しているかを明記すると,仮定の使い漏れがなくなる。

証明の流れ

合併 AA の分離を仮定し,共通点 pp が入る側を GG とする。各 AλA_\lambda は pp を含むので,もし HH にも点を持てば AλA_\lambda 自身が分離されてしまう。したがって各 AλA_\lambda は GG に完全に含まれ,結局 HH は空になる。

相対開性の確認

G,HG,H が AA の相対開集合なら,Aλ∩GA_\lambda\cap G, Aλ∩HA_\lambda\cap H は AλA_\lambda の相対開集合である。この一文を書いておくと,連結性の定義を正しく適用していることが明確になる。

添字集合の大きさ

Λ\Lambda が有限である必要はない。証明では,各 λ\lambda について Aλ∩H=∅A_\lambda\cap H=\varnothing を示し,最後に ⋃λ∈Λ(Aλ∩H)=∅ \bigcup_{\lambda\in\Lambda}(A_\lambda\cap H)=\varnothing を使うだけである。有限個の帰納法に見せてしまうと,無限族にも通用する主張であることが伝わりにくい。

B-2 共通点をもつ連結集合族の合併の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — B-3 連続写像による連結性の保存

逆像を使う理由

連続性は「開集合の逆像が開集合である」という形で使うのが最も直接的である。像側で分離が存在すると仮定し,その2つの開集合を逆像に戻すことで,元の連結集合の分離を作る。

相対開集合の扱い

G,HG,H は YY 全体で開いているとは限らず,f(U)f(U) の中で相対開であるだけである。そのため G=f(U)∩OGG=f(U)\cap O_G と書いてから逆像を取る。この確認を省くと,距離空間全体の開集合と部分空間の開集合を混同した答案になる。

非空性の確認

G,HG,H が非空でも,逆像が非空であることを一言確認する必要がある。ここでは G,H⊂f(U)G,H\subset f(U) なので,各点には必ず UU 内の原像が存在する。この点まで書けば,連結性の定義を完全に適用できる。

開集合を像で押し出さない

連続写像は一般に開写像ではないので,UU の分離を ff で送るという方向では証明できない。必ず像側の分離を仮定し,開集合の逆像が開であることを使って元へ戻す。連続性の定義を使う向きがこの問題の採点上の要点である。

B-3 連続写像による連結性の保存の途中式・最終答をPDFで見る

岡山大 数学 院試 過去問の収録6年度