岡山大学 院試 過去問 解答例
岡山大 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2024年第1回募集 院試 解答例・解説
岡山大学 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2024年第1回募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A-1 行列の標準形
ブロック分解に気づく
この行列は左上 次ブロックと右下 次ブロックが互いに干渉していない。したがって 次行列として直接行基本変形を続けるより, 次と 次に分ける方が計算量が少ない。固有多項式も固有空間も,この分解に沿って求められる。
対角化可能性の判定
固有値 だけが重複しているため,対角化可能性で確認すべき点は の固有空間の次元である。ここで固有空間が 次元なら 次のジョルダンブロックが生じるが,今回は 次元なのでその心配はない。
標準形の書き方
ジョルダン標準形の対角成分の順序は本質的ではない。例えば と書いても同じジョルダン標準形を表している。重要なのは, に対して 次ブロックではなく 次ブロックが二つ並ぶことである。
第2問 — A-2 線形写像の核と像
核と像が等しいときの決定的な制約
核と像が等しいという条件は,単に次元が等しいだけでなく, も含んでいる。したがって を二回作用させると必ず になる。この観察は,同時成立が不可能であることを一行で説明できる重要な点である。
冪零写像はジョルダンブロックで見る
かつ は,長さ のジョルダン鎖が存在することを意味する。従って空間の次元は少なくとも 必要である。 の例では, という一本の鎖を作っている。
存在問題の答案の書き方
存在する場合は具体例を一つ示せば十分である。一方,存在しない場合は,次元や冪零指数など,すべての候補に共通する不可能性を示す必要がある。ここでは階数・退化次数の定理とジョルダン標準形がその役割を果たしている。
第3問 — A-3 ベータ積分
広義積分の確認
特異性は と の二か所だけにある。 では本質的に , では本質的に の積分可能性を見る。指数が より大きいこと,つまり がちょうど必要な条件である。
部分積分の境界項
関係式の証明では, が両端で になることを明記するのが重要である。ここを書かずに形式的に微分だけ行うと,広義積分であることへの配慮が不足する。厳密には から まで積分してから としても同じ結論が得られる。
整数値公式へのつなげ方
ベータ関数の階乗公式はガンマ関数を使えば一瞬で書けるが,この設問では前問の関係式を使う流れが自然である。 を併用すると,添字を一つずつ下げる漸化式が得られる。
漸化式の向き
計算ミスが起きやすいのは,どちらの添字を下げているかを見失う点である。 という形で見ると,第一引数を と下げていく流れがはっきりする。 分母は毎回「現在の2つの引数の和から1」を含むので,最後に が現れる。
半整数の場合
では三角置換が最短である。被積分関数の平方根の形から, とおけば分母の が微分の因子で消える。 端点は に対応して であり,この範囲では なので絶対値を気にせず と書ける。
第4問 — A-4 周期正則関数
恒等定理の使いどころ
正則関数の等式を実軸上で確認できれば,実軸が領域内に集積点をもつため,領域全体で等式が成立する。ここでは という差を一つの正則関数として見るのが自然である。
係数評価の向き
の絶対値は, とすると である。従って では下側へ, では上側へ積分路をずらすと減衰因子が得られる。符号を逆にすると指数が増大してしまうので注意が必要である。
縦辺が消える理由
長方形積分で縦辺が打ち消し合うのは, の周期性だけでなく が整数 について成り立つためである。ここを書いておくと,周期関数のフーリエ係数として扱っていることが明確になる。
正則性の証明
級数で正則関数を定める問題では,コンパクト集合上一様収束を示すのが標準的である。任意のコンパクト集合は境界 から正の距離だけ離れているので, を選べる。この余裕 が幾何級数の収束を保証している。
第5問 — B-1 二面体群
群の正体
この群は正方形の対称性を表す二面体群である。 を 回転, を反射と見ると,関係式 は「反射で挟むと回転の向きが逆になる」という幾何的事実に対応している。
共役類の分け方
二面体群 では,回転部分 の中に中心 があり,残りの回転 が一つの共役類になる。反射は二種類に分かれる。正方形でいえば,対角線に関する反射と,辺の中点を結ぶ軸に関する反射が別の共役類になる。
自己同型を数える視点
自己同型は生成元の行き先を決めれば決まる。ただし,位数と関係式を保ち,像が群全体を生成する必要がある。今回は位数 の元が の二つ,反射型の候補が四つあり,どの組合せも二面体群の関係式を満たすため 個になる。
第6問 — B-2 コンパクト性
開被覆の定義を正確に使う
コンパクト性の証明では,「任意の開被覆を一つ取る」ことから始めるのが基本である。連続像のコンパクト性では,像側の開被覆を逆像で引き戻すことで,もとのコンパクト性を使える形に変換している。
全射でない理由
コンパクト空間からの連続像は必ずコンパクトである。一方, はコンパクトでない。したがってコンパクト空間を連続写像で 全体に写すことはできない。ここでは の非コンパクト性を開球の被覆で具体的に示している。
同相の証明で必要な性質
連続な全単射が常に同相とは限らない。ここでは定義域のコンパクト性と,値域が の部分空間であることが効いている。コンパクト集合の連続像がコンパクトで, ではコンパクト集合が閉集合になるため,逆写像の連続性が従う。
第7問 — B-3 円板上の積分
円板の対称性を使う
は 軸と 軸を入れ替えても変わらないので, と の積分は等しい。したがって二つを別々に計算する必要はなく, の積分から半分ずつ求めればよい。
極座標でのヤコビアン
円板上の二重積分では, を忘れないことが重要である。今回の第一の積分では にヤコビアンの が掛かるため,内側は になる。
第二の積分の意味
はグラフ の面積要素に現れる形である。 の場合, は半径 だけに依存するため,積分も一変数の積分に落ちる。 では角度依存が残るので,この単純な計算にはならない。