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岡山大学 院試 過去問 解答例

岡山大 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2024年第1回募集 院試 解答例・解説

岡山大学 環境生命自然科学研究科 数理科学コース 数学 2024年第1回募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — A-1 行列の標準形

ブロック分解に気づく

この行列は左上 33 次ブロックと右下 22 次ブロックが互いに干渉していない。したがって 55 次行列として直接行基本変形を続けるより,33 次と 22 次に分ける方が計算量が少ない。固有多項式も固有空間も,この分解に沿って求められる。

対角化可能性の判定

固有値 1-1 だけが重複しているため,対角化可能性で確認すべき点は 1-1 の固有空間の次元である。ここで固有空間が 11 次元なら 22 次のジョルダンブロックが生じるが,今回は 22 次元なのでその心配はない。

標準形の書き方

ジョルダン標準形の対角成分の順序は本質的ではない。例えば diag(1,1,0,1,2)\operatorname{diag}(-1,-1,0,1,2) と書いても同じジョルダン標準形を表している。重要なのは,1-1 に対して 22 次ブロックではなく 11 次ブロックが二つ並ぶことである。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — A-2 線形写像の核と像

核と像が等しいときの決定的な制約

核と像が等しいという条件は,単に次元が等しいだけでなく,ImfKerf\operatorname{Im}f\subset\operatorname{Ker}f も含んでいる。したがって ff を二回作用させると必ず 00 になる。この観察は,同時成立が不可能であることを一行で説明できる重要な点である。

冪零写像はジョルダンブロックで見る

f4=0f^4=0 かつ f30f^3\ne0 は,長さ 44 のジョルダン鎖が存在することを意味する。従って空間の次元は少なくとも 44 必要である。C4\mathbb{C}^4 の例では,e4e3e2e10e_4\mapsto e_3\mapsto e_2\mapsto e_1\mapsto0 という一本の鎖を作っている。

存在問題の答案の書き方

存在する場合は具体例を一つ示せば十分である。一方,存在しない場合は,次元や冪零指数など,すべての候補に共通する不可能性を示す必要がある。ここでは階数・退化次数の定理とジョルダン標準形がその役割を果たしている。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — A-3 ベータ積分

広義積分の確認

特異性は x=0x=0x=1x=1 の二か所だけにある。x=0x=0 では本質的に xa1x^{a-1}x=1x=1 では本質的に (1x)b1(1-x)^{b-1} の積分可能性を見る。指数が 1-1 より大きいこと,つまり a>0, b>0a>0,\ b>0 がちょうど必要な条件である。

部分積分の境界項

関係式の証明では,xa(1x)bx^a(1-x)^b が両端で 00 になることを明記するのが重要である。ここを書かずに形式的に微分だけ行うと,広義積分であることへの配慮が不足する。厳密には δ\delta から 1δ1-\delta まで積分してから δ0\delta\to0 としても同じ結論が得られる。

整数値公式へのつなげ方

ベータ関数の階乗公式はガンマ関数を使えば一瞬で書けるが,この設問では前問の関係式を使う流れが自然である。B(a,b)=B(a+1,b)+B(a,b+1)B(a,b)=B(a+1,b)+B(a,b+1) を併用すると,添字を一つずつ下げる漸化式が得られる。

漸化式の向き

計算ミスが起きやすいのは,どちらの添字を下げているかを見失う点である。 B(a,b)=a1a+b1B(a1,b) B(a,b)=\frac{a-1}{a+b-1}B(a-1,b) という形で見ると,第一引数を a,a1,,1a,a-1,\ldots,1 と下げていく流れがはっきりする。 分母は毎回「現在の2つの引数の和から1」を含むので,最後に (a+b1)!(a+b-1)! が現れる。

半整数の場合

B(1/2,1/2)B(1/2,1/2) では三角置換が最短である。被積分関数の平方根の形から,x=sin2θx=\sin^2\theta とおけば分母の sinθcosθ\sin\theta\cos\theta が微分の因子で消える。 端点は x=0,1x=0,1 に対応して θ=0,π/2\theta=0,\pi/2 であり,この範囲では sinθ,cosθ0\sin\theta,\cos\theta\ge0 なので絶対値を気にせず x(1x)=sinθcosθ\sqrt{x(1-x)}=\sin\theta\cos\theta と書ける。

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4 — A-4 周期正則関数

恒等定理の使いどころ

正則関数の等式を実軸上で確認できれば,実軸が領域内に集積点をもつため,領域全体で等式が成立する。ここでは f(z+1)f(z)f(z+1)-f(z) という差を一つの正則関数として見るのが自然である。

係数評価の向き

e2πinze^{-2\pi i n z} の絶対値は,z=x+iyz=x+iy とすると e2πnye^{2\pi n y} である。従って n>0n>0 では下側へ,n<0n<0 では上側へ積分路をずらすと減衰因子が得られる。符号を逆にすると指数が増大してしまうので注意が必要である。

縦辺が消える理由

長方形積分で縦辺が打ち消し合うのは,ff の周期性だけでなく e2πin(z+1)=e2πinze^{-2\pi i n(z+1)}=e^{-2\pi i nz} が整数 nn について成り立つためである。ここを書いておくと,周期関数のフーリエ係数として扱っていることが明確になる。

正則性の証明

級数で正則関数を定める問題では,コンパクト集合上一様収束を示すのが標準的である。任意のコンパクト集合は境界 Imz=1|\operatorname{Im}z|=1 から正の距離だけ離れているので,ρ<ε\rho<\varepsilon を選べる。この余裕 ερ\varepsilon-\rho が幾何級数の収束を保証している。

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5 — B-1 二面体群

群の正体

この群は正方形の対称性を表す二面体群である。τ\tau9090^\circ 回転,σ\sigma を反射と見ると,関係式 στσ1=τ1\sigma\tau\sigma^{-1}=\tau^{-1} は「反射で挟むと回転の向きが逆になる」という幾何的事実に対応している。

共役類の分け方

二面体群 D4D_4 では,回転部分 τ\langle\tau\rangle の中に中心 {I,τ2}\{I,\tau^2\} があり,残りの回転 τ,τ3\tau,\tau^3 が一つの共役類になる。反射は二種類に分かれる。正方形でいえば,対角線に関する反射と,辺の中点を結ぶ軸に関する反射が別の共役類になる。

自己同型を数える視点

自己同型は生成元の行き先を決めれば決まる。ただし,位数と関係式を保ち,像が群全体を生成する必要がある。今回は位数 44 の元が τ,τ3\tau,\tau^3 の二つ,反射型の候補が四つあり,どの組合せも二面体群の関係式を満たすため 88 個になる。

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6 — B-2 コンパクト性

開被覆の定義を正確に使う

コンパクト性の証明では,「任意の開被覆を一つ取る」ことから始めるのが基本である。連続像のコンパクト性では,像側の開被覆を逆像で引き戻すことで,もとのコンパクト性を使える形に変換している。

全射でない理由

コンパクト空間からの連続像は必ずコンパクトである。一方,Rn\mathbb{R}^n はコンパクトでない。したがってコンパクト空間を連続写像で Rn\mathbb{R}^n 全体に写すことはできない。ここでは Rn\mathbb{R}^n の非コンパクト性を開球の被覆で具体的に示している。

同相の証明で必要な性質

連続な全単射が常に同相とは限らない。ここでは定義域のコンパクト性と,値域が Rn\mathbb{R}^n の部分空間であることが効いている。コンパクト集合の連続像がコンパクトで,Rn\mathbb{R}^n ではコンパクト集合が閉集合になるため,逆写像の連続性が従う。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — B-3 円板上の積分

円板の対称性を使う

DDxx 軸と yy 軸を入れ替えても変わらないので,x2x^2y2y^2 の積分は等しい。したがって二つを別々に計算する必要はなく,x2+y2=r2x^2+y^2=r^2 の積分から半分ずつ求めればよい。

極座標でのヤコビアン

円板上の二重積分では,dxdy=rdrdθdxdy=r\,drd\theta を忘れないことが重要である。今回の第一の積分では x2+y2=r2x^2+y^2=r^2 にヤコビアンの rr が掛かるため,内側は 01r3dr\int_0^1 r^3\,dr になる。

第二の積分の意味

1+f2\sqrt{1+|\nabla f|^2} はグラフ z=f(x,y)z=f(x,y) の面積要素に現れる形である。b=ab=a の場合,ff は半径 rr だけに依存するため,積分も一変数の積分に落ちる。bab\ne a では角度依存が残るので,この単純な計算にはならない。

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