院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析2問・線形代数1問・微分方程式1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・一様収束)。

最終更新:

収録20年度分の解答PDF:東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A(¥3,200・紙面見本あり)

このページで公開
解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

東大 専門科目A 2020年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数上三角行列の対角化条件—あり
第2問微分積分・解析極座標領域上の対数積分採点上の注意あり
第3問微分積分・解析半円と補間二次関数の面積漸近—あり
第4問微分方程式連立一次微分方程式—あり
第5問—対角化可能作用素の不変部分空間採点上の注意あり
第6問—確率重み列と極限交換—あり
第7問—右上集合が生成する位相採点上の注意あり

この年度の解説には採点上の注意3件・典型ミス3件・検算1件が付いています。

2020年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に2テーマが出ています。

前年度(2019年度)との違い

大問数
2019年度 7問 → 2020年度 7問
2019年度のページを見る

第1問 — 上三角行列の対角化条件

方針

上三角行列では固有値がすぐ読める。重複固有値 aa の固有空間の次元を調べる問題に落とす。

典型ミス

d≠ad\ne a のときに b=c=e=0b=c=e=0 まで要求すると強すぎる。 必要なのは (b,c)(b,c) と (d−a,e)(d-a,e) の一次従属性であり,これは be−c(d−a)=0be-c(d-a)=0 で表せる。

解答

固有値は上三角行列の対角成分から a,d,aa,d,a である。したがって,場合分けは d=ad=a かどうかで行うのが最短である。

d≠ad\ne a の場合

dd に対応する固有値は単根なので問題ない。固有値 aa の代数的重複度は 22 であり, 対角化可能性には dim⁡ker⁡(M−aI)=2 \dim\ker(M-aI)=2 が必要十分である。 M−aI=(0bc0d−ae000) M-aI= \begin{pmatrix} 0&b&c\\ 0&d-a&e\\ 0&0&0 \end{pmatrix} だから,この核の次元が 22 になることは,非零な二つの行ベクトル (b,c)(b,c) と (d−a,e)(d-a,e) が一次従属であることと同値である。よって be−c(d−a)=0 be-c(d-a)=0 が条件である。

d=ad=a の場合

固有値は aa だけである。対角化可能なら対角化後の行列は aIaI でなければならないので, もとの行列自体も aIaI である。したがって b=c=e=0 b=c=e=0 が必要十分条件である。

最終答

{d≠a のとき be=(d−a)c,d=a のとき b=c=e=0. \boxed{ \begin{cases} d\ne a \text{ のとき } be=(d-a)c,\\ d=a \text{ のとき } b=c=e=0. \end{cases}}

第2問 — 極座標領域上の対数積分

方針

見かけは極座標積分だが,条件に rcos⁡θr\cos\theta が現れるため x=rcos⁡θx=r\cos\theta を使うと一気に分離する。

採点上の注意

積分要素は問題で与えられた dr dθdr\,d\theta で扱う。面積要素の r dr dθr\,dr\,d\theta を勝手に入れると別問題になる。

極座標領域上の対数積分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 半円と補間二次関数の面積漸近

方針

補間二次関数を直接求めたあと,x2x^2 を変数にして凹性を見る。 面積の次数は x=aux=au とスケール変換して読むと安定する。

典型ミス

1−x2\sqrt{1-x^2} の展開だけで faf_a 側の aa-依存を落とすと,主要項の符号や係数を誤る。

半円と補間二次関数の面積漸近の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 連立一次微分方程式

方針

係数行列が A2=IA^2=I になることを見抜くと,指数行列を対角化なしで計算できる。 非斉次項が一次式なので,特殊解も一次式で置けばよい。

検算

t=0t=0 で x(0)=1x(0)=1,y(0)=0y(0)=0 となる。 また x′(0)=−31+24=−7x'(0)=-31+24=-7,右辺も −7⋅1−4⋅0=−7-7\cdot1-4\cdot0= -7 で一致する。

連立一次微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 対角化可能作用素の不変部分空間

方針

不変部分空間の格子を見る問題である。固有空間がすべて一次元なら集合の包含計算に帰着し, 二次元以上の固有空間があると三本の直線で反例が作れる。

採点上の注意

(b)⇒(a)(b)\Rightarrow(a) では,反例として選ぶ三つの部分空間が本当に ff-不変であることを書く。 同じ固有空間の中の任意の部分空間は ff がスカラー倍として作用するため不変である。

対角化可能作用素の不変部分空間の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 確率重み列と極限交換

方針

am,na_{m,n} は,mm が大きくなると固定された有限個の添字から質量が逃げていく確率重みである。 有限部分と尾部に分けると,Toeplitz 型の極限定理として処理できる。

典型ミス

(1)(1) で各 mm の級数が収束することと,mm に関する一様収束を混同しない。 一様収束では尾部和を mm によらず小さくできる必要がある。

確率重み列と極限交換の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 右上集合が生成する位相

方針

この位相では開集合が右上方向に伸びる。閉包は左下方向に伸びるため, 閉集合は点を一つ含むだけで大きな左下象限を含む。

採点上の注意

通常のユークリッド位相の直感でコンパクト性を判断しない。 第2小問では (0,0)(0,0) を含む開集合一つが KK 全体を覆う点が決定的である。

右上集合が生成する位相の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度

  • 2026年度(全7問)

    円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理

  • 2025年度(全7問)

    広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp

  • 2024年度(全7問)

    巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族

  • 2023年度(全7問)

    交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化

  • 2022年度(全7問)

    線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分

  • 2020年度(このページ・全7問)

    上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近

  • 2019年度(全7問)

    関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列

  • 2018年度(全7問)

    平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分

  • 2017年度(全7問)

    多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性

  • 2016年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列

  • 2015年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間

  • 2014年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分

  • 2013年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換

  • 2012年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分

  • 2011年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性

  • 2010年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性

  • 2007年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍

  • 2006年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解

  • 2005年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離

  • 2004年度(全7問)解答・最終答まで全文公開

    行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性