東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2014年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問。微分積分・解析2問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・正定値行列・二次形式)。2013年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。
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- 解説7問・解答7問・最終答7問(全7問)
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- 2014年度は解答・最終答まで全文公開
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東大 専門科目A 2014年度 院試 過去問の出題内容(全7問)
この7問の分野は微分積分・解析2問です。
2014年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は3問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| 正定値行列 | 第1問 | 17大学・70問 | |
| 二次形式 | 第1問 | 16大学・63問 | |
| ジョルダン標準形 | 第6問 | 14大学・23問 | |
| 偏微分可能性と連続性 | 第3問 | 9大学・12問 |
前年度(2013年度)との違い
- 大問数
- 2013年度 7問 → 2014年度 7問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル
- 2014年度で新しく出たテーマ
- 正定値行列・二次形式・ジョルダン標準形・偏微分可能性と連続性
第1問 — 線形写像と正定値性
差を取って階段化する
この行列は同じ値がブロック状に並ぶので,掃き出しを機械的に行うよりも, 行同士の差を見る方が速い。第1行と第2行,第3行と第2行を比べるだけで , が出る。
正定値性の見せ方
単に固有値を計算する必要はない。直交補空間を とパラメータ表示し,平方完成で と書けば,仮定 がどこで効くかが明確になる。
解答
(1) 問題の行列を とおく。 に対して を考える。第1行と第2行の差から であるから, である。これを第1行に戻すと である。さらに第3行と第2行の差から となり, より である。したがって も従う。
よって この直交補空間は である。
(2) いま とおくと,直接計算により であるから右辺は非負である。さらに右辺が ならば となり, である。したがって 上の二次形式は正定値である。
最終答
また となるので, 上で正定値である。
第2問 — 乗法的Cauchy方程式
割って加法形にする
式の右辺に と が出るときは, を作るのが定石である。 これにより,正の実数の乗法群から実数の加法群への連続準同型になる。
連続性の役割
有理数乗の公式だけなら代数的に出せるが,微分可能性には連続性が本質的である。 連続な加法的関数が一次関数であることを使うと,解の形が に一意に決まる。
解答
(1) に対して とおく。与えられた関係式を で割ると を得る。 は連続であるから も連続である。
とする。まず正の整数 について が帰納法で従う。また より である。従って と書けば である。これを に戻すと となる。
(2) 次に微分可能性を示す。 と置き, と定めると, は連続で を満たす。連続な加法的関数は一次関数であるから,ある定数 が存在して である。よって 右辺は 上で微分可能である。
最終答
である。特に は微分可能である。
第3問 — 距離関数の微分
下限を取る順序
距離関数の Lipschitz 性は,三角不等式を書いたあとに 上の下限を取れば終わる。 閉集合であることはこの部分では不要で,最近点の存在を使う後半で効いている。
勾配の大きさ
1-Lipschitz 性から勾配の大きさは高々 である。一方,最近点へ向かう直線上では 距離が速度 で減るため,ある方向微分の絶対値が になる。両側から挟むのが要点である。
解答
(1) 任意の と に対して三角不等式より である。 について下限を取ると となる。 を入れ替えれば も成り立つ。したがって であり, は Lipschitz 連続である。
(2) 次に で が全微分可能であるとする。 とおく。 は閉集合なので, からの距離を実現する点 が存在する。 とおくと, について である。実際,右辺以下であることは から従い,右辺以上であることは 三角不等式から従う。
したがって方向微分は 一方,全微分可能性より である。よって Cauchy--Schwarz の不等式から を得る。すでに は 1-Lipschitz なので,任意の単位ベクトル に対して であり, である。従って
最終答
である。さらに で が全微分可能なら である。
第4問 — Poisson核型積分
符号付きの
は負でもよい。展開は で絶対収束するため,係数はそのまま であり, の偶奇による符号も自然に含まれる。
の処理
の場合は逆数 に直す。ここで が現れるため, 単に と書くと負の の場合に誤る。
解答
まず とする。このとき であり,絶対収束する幾何級数を掛け合わせて を得る。三角関数の直交性より,正の整数 について
次に とする。 とおけば で, である。したがって先ほどの結果を に適用して
最終答
正の整数 に対して
第5問 — 回転面の面積条件
全区間で面積が一致する意味
が任意の区間で成り立つので,積分値だけでなく被積分関数が一致する。 ここを明記しないと,微分方程式への移行が不十分になる。
単調性の使い方
が単調増加であるため,平方根を取ったあと の枝を選ぶ。 この符号選択がないと,同じ式から減少解も形式的には出てしまう。
解答
曲線を 軸のまわりに回転したとき,区間 に対応する回転面の面積は である。一方,対応する平面領域の面積は である。条件はすべての で成り立つので,被積分関数が等しく でなければならない。
は正値かつ単調増加であるから である。 と見て逆関数を用いると 初期条件 から のとき である。したがって と置くと であり,下端 ではこの値は である。よって
最終答
曲線は を の関数として と表される。
第6問 — 可換部分空間の次元
条件 (b) の読み替え
条件 (a) は 内の可換性,条件 (b) はそれ以上大きな可換部分空間に拡大できないことを 述べている。つまり は極大可換部分空間である。
次行列での上限
次行列では,可換部分空間の最大次元は である。典型例は や対角行列全体である。試験ではこの上限と,極大性によってその上限まで拡大されることを 分けて書くと論理が明確になる。
解答
まず, は包含に関して極大な可換部分ベクトル空間である。実際,条件 (b) は を真に含む任意の部分空間 が可換でないことを意味している。 また,単位行列 が に含まれていなければ はなお可換で を真に含むので,極大性に反する。従って である。
次の事実を用いる。複素 次正方行列全体の中の可換な線形部分空間の次元は高々 である。確認しておく。可換な行列族は同時三角化できる。もしその中に最小多項式の次数が の行列 があれば,その中心化代数は であり,その可換部分空間は高々 次元である。そうでない場合は,各非スカラー元は 一次元部分空間と二次元部分空間からなる共通の分解または旗を保存する。二次元ブロック内の 可換部分空間は高々 次元であり,残りの一次元ブロックの自由度を足しても高々 次元である。従って
一方,極大性から は 未満ではあり得ない。実際,非スカラー元 を取る。最小多項式の次数が なら, であり, は 次元可換部分空間であるから,極大性より である。 最小多項式の次数が 以下の場合も,Jordan標準形で見ると と可換な行列の中に と独立な行列を選び, 次元の可換部分空間まで拡大できる。したがって なら は真に大きい可換部分空間に含まれ,条件 (b) に反する。
以上より である。
最終答
第7問 — Lorenz型ベクトル場と体積収縮
吸収領域の確認
境界で の軌道微分が負なら,流れは外へ出ない。領域内部で微分が正になる点が あっても問題はなく,境界での向きだけを確認すればよい。
体積は発散で決まる
流れ写像のJacobianは である。非線形項があっても,発散が定数であるため体積収縮率は一発で決まる。
解答
(1) ベクトル場を と書くと,
(2) 次に とおく。領域は で表される。軌道に沿った微分は 上では である。この制約のもとで の最小値は, として 平面内の円周 上で点 への距離を最小にすると得られ, である。ここで 成分を増やすと制約の残りが減る一方で目的関数に 正の が加わるため,最小は で実現される。従って 上で であり,ベクトル場は境界で内向きである。よって が成り立つ。
(3) 最後に体積を求める。発散が定数 なので,Liouville の公式より時間 の流れは 体積を 倍する。したがって は であるから,半径は である。従って 求める体積は
最終答
かつ
東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度
円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理
広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp
巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族
交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化
線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分
上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近
関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列
平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分
多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性
2016年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列
2015年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間
2014年度(このページ・全7問)解答・最終答まで全文公開
線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分
2013年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換
2012年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分
2011年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性
2010年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性
2007年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍
2006年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解
2005年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離
2004年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性