東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2011年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2011年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 対角化可能性と相似条件
相似では特性多項式だけでは足りない場合がある
固有値が相異なる場合は,特性多項式の一致だけで十分である。注意すべきなのは になる場合で,このときはジョルダンブロックの大きさまで 確認する必要がある。
階数でジョルダン型を読む
三次で唯一の固有値が のとき, なら 固有空間は二次元で,ジョルダン型は である。 なら固有空間は一次元で,型は になる。
2011年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
(1) 特性多項式を計算する。 については したがって, のときは三つの固有値が相異なるので は対角化可能である。
のときも のときも特性多項式は である。ここで ではこの行列の階数は , では階数は である。 いずれの場合も固有空間の次元は ではないので, は対角化可能でない。 よって である。
(2) 次に の特性多項式は 相似なら特性多項式が一致するから,まず が必要である。
かつ のとき,両者は同じ相異なる三つの固有値をもつ。 どちらも対角化可能なので,同じ対角行列に相似であり,したがって互いに相似である。
残る重根の場合を調べる。特性多項式が になるのは のときである。このとき であり,階数は ,かつ である。したがって のジョルダン型は 次ブロック一つと 次ブロック一つである。 一方, のときの も かつ なので同じジョルダン型である。 のときは で,ジョルダン型が異なる。
最終答
第2問 — 特異積分の極限
発散しそうな対数は 型で消える
被積分関数は で 程度に大きくなるが, は有限である。原始関数で見ると, 端点で問題になる項は だけで,これは に収束する。
最後の極限は二つの項を別々に見る
を使うと第一項は で押さえられる。 残りは逆正接の標準極限だけであり,値は になる。
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(1) 原始関数を求める。 で である。したがって ここで であり, である。よって
(2) 次に とする。 であり, であるから
最終答
第3問 — コンパクト開位相の基本閉性
証明の核は点列の取り直し
存在量化された点 はそのままでは極限を持つとは限らないが, 定義域 がコンパクトなので収束部分列を取れる。ここがこの問題の最重要点である。
一様収束を使う箇所
のように点 が動く場合,単なる各点収束では不十分である。 一様距離で収束しているからこそ, を に依らず 小さくできる。
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には一様距離が入っている。まず (1) が閉であることを示す。
が に収束したとする。各 について を取り, とできる。 はコンパクトなので, 部分列を取り直して としてよい。すると 中央の項は であり,左右の項は一様収束と の連続性から に 収束する。よって であり, である。
(2) 次に が閉であることを示す。 が に一様収束したとする。 任意の を固定する。各 について全射性より となる が取れる。再び のコンパクト性から,部分列を取り直して とできる。一様収束と連続性により したがって である。 は任意だったので は全射であり, は閉である。
最終答
第4問 — 線形漸化式と部分和作用素
漸化式空間は有限次元
漸化式が で成り立つため,最初の 項を決めれば以後は全て決まる。 この有限次元性が第二小問の矛盾の受け皿になる。
部分和は次数を一つ上げる
定数列を一度和にすると ,もう一度和にすると二次式というように, 反復部分和は多項式の次数を上げる。有限次元の漸化式空間がこれを無限に吸収する ことはできない。
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(1) 漸化式の特性多項式を とおく。 なので である。一方,複素数体上の 多項式 は少なくとも一つ根をもつ。その根を とすると である。
この に対し とおけば は と同値である。したがって であり,第一小問が従う。
(2) 第二小問では背理法を用いる。仮に とする。 上で取った幾何数列 は に属する。
の場合,定数列 がすでに に入る。 の場合は ここで かつ なので,定数列 も に属する。 いずれの場合も が分かった。
仮定 から はすべて に属する。ところが であり,これは に関する次数 の多項式列である。次数が異なる多項式列は 一次独立なので, は無限個の一次独立な元を含むことになる。
しかし の元は最初の 項で一意に決まるため, である。 これは矛盾である。したがって,どのように を選んでも とはならない。
最終答
ただし である。
第5問 — 対数発散の係数と定数項
和を階乗に落とす
積分後に出る和は,そのまま評価するより として添字をずらすのが速い。 するとほとんどの が消え,残るのは と端の二項だけになる。
係数 は対数発散の係数
漸近展開の主項は である。これと異なる を選ぶと が残るため,有限極限にはならない。
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各 について であるから したがって ここで和を整理する。 第一項で と置くと よって
Stirling の公式 を用いる。また である。これらを代入して定数項まで集めると したがって有限な極限をもたせるためには でなければならず,そのときの極限は である。
最終答
第6問 — 単位円上の留数計算
極が円の内側に入るかだけを見る
分母の零点は である。したがって と で 場合分けが反転する。ここを取り違えると符号以前に値が変わる。
留数の符号
なので,留数には が付く。 単に Cauchy の積分公式を当てはめるときも,この係数を忘れないことが採点上重要である。
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積分される関数は である。 は単位閉円板の近傍で正則なので,特異点の候補は だけである。 の場合は分母が であり,積分は正則関数の周回積分だから である。
のときは なので,単位円の内部に特異点はない。したがって
のときは であり,単位円の内部に単純極 がある。 その留数は よって留数定理から積分値もこの値に等しい。
最終答
第7問 — 法線反射から生じる微分方程式
反射条件を式にする
点から直線への反射公式を使うと,法線の傾きや反射点を図形的に追う必要がない。 法線の方程式を と書ければ,あとは代数計算で微分方程式が出る。
による単純化
得られる式は と が同じ次数で現れるため, と置くのが自然である。すると二次方程式の平方完成により となり,標準積分 に帰着する。
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(1) を固定し,, とおく。点 における 法線は,接線方向 に垂直な直線なので と書ける。
直線 に関して点 を反射した点の 座標は である。ここでは だから,反射点の 座標は である。条件よりこれが に等しいので 整理すると を得る。これが の満たす微分方程式である。
(2) 次に とおくと, である。上の方程式に代入すると すなわち 関数 は増加関数であり,条件式から であるから を選ぶ。したがって である。
(3) この微分方程式は分離形で, 積分して を得る。正定数 を用いれば よって 実際,この形の関数は で増加し, を満たすので条件を満たす。
最終答