東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2013年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2013年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — ハウスホルダー変換と回転
反射として見る
は, 方向だけ符号を反転し, 上では恒等写像になる。 したがって固有値を直接計算するより,空間を に分けるのが最短である。
回転角は跡で決める
二つの平面鏡映の積は回転になる。回転軸は二つの鏡映面の交線なので外積で出る。 角度は幾何的に二倍角として求めてもよいが,跡を使うと符号の迷いが少ない。 3次元回転の跡が であることを書けば,答案としても安定する。
2013年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
(1) は長さ であるから,任意の について である。したがって なら ,一方 である。よって固有値は である。
(2) 次に とする。 と はそれぞれ , に関する鏡映であり, どちらも直交変換で行列式は である。したがって は行列式 の直交変換である。
回転軸は二つの鏡映面の共通部分 である。これは と の外積で張られるので, より,回転軸は である。
回転角を とする。3次元回転行列の跡は である。一方, とおくと よって 回転角の大きさは である。
最終答
第2問 — 調和級数と奇偶部分和
定数の名前より評価が重要
第1小問の極限はオイラー定数だが,名前を書くことよりも存在を示す評価が重要である。 単調性と有界性を積分評価から出すと,答案が短くまとまる。
同じ定数は相殺される
第2小問では の形にそろえると, と がちょうど消える。 奇数項和を と書けるかが計算の分岐点である。
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(1) とおく。 まず が収束することを示す。関数 の単調減少性から が成り立つ。これを足し上げると である。したがって は有界である。
また である。ここで を用いた。 よって は単調減少かつ有界であり,極限が存在する。 この極限を と書く。
(2) 次に について計算する。偶奇に分けると である。したがって を用いると
最終答
は存在する。また,正整数 に対して
第3問 — 交代形式への合同変換
合同変換を外積で読む
は,交代2形式を で引き戻す操作である。 対角行列の場合,基底 に対応する成分が 倍されるので,対角化可能性がすぐ分かる。
3次元の便利な同一視
3次元では交代行列を と書くと,合同変換は に移る。今回の は固有空間が明瞭なので,交代行列側の固有空間も そのまま読み取れる。
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(1) は3次元複素空間上の交代形式全体と見なせる。 まず が対角化可能であるとし, と書く。 とおくと, は から への同型であり, である。したがって は と共役である。
標準的な交代行列 に対して であるから, は対角化可能である。よって も対角化可能である。
(2) 次に を考える。ここで は全成分が の行列である。 ベクトル に対する固有値は ,和が の平面上の固有値は である。
交代行列を と表す。任意の可逆行列 について が成り立つ。今回 であるから, が の固有値 に属すれば である。
したがって, のとき固有値は , のとき固有値は である。具体的には
最終答
であり,上に表示した交代行列がそれぞれの固有空間の基底を与える。
第4問 — 対数を含む正則関数と実積分
枝の選択を先に固定する
主値の対数を使うので,第一象限では , 正の虚軸では となる。この二つを誤ると, 実部と虚部の符号が逆になる。
端点の特異性
は除去可能特異点であり,定義値 はその極限値である。 一方, では対数が出るが, は可積分なので線積分の極限は存在する。
実積分は級数と標準積分で処理する
は級数展開に落とすと奇数平方和だけが残る。 は と見ると一行で評価できる。
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(1) とおくと,, である。 したがって よって
(2) 次に , とおく。 , なので は の近くで可積分だから極限は存在し,虚部は
(3) 最後に二つの実積分を求める。まず で であり,単調収束または優収束により項別積分できる。したがって また,部分積分により ここで を用いた。
最終答
さらに
第5問 — 上限で定める関数の連続性
閉区間では一様連続性が効く
上限を取る操作は一般には連続性を壊しうる。しかしパラメータ集合がコンパクトで, 考える を の近くに限定すれば,積集合上で一様連続性が使える。 このため上限の差も一様に抑えられる。
半開区間では上限が端に逃げる
反例の本質は,最大値が で達成されそうなのに,その点が定義域に入っていないことである。 では を に近づけると値は に近づくが, では常に である。この端点の欠落が不連続を作る。
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(1) とし, が有界連続であるとする。 とおく。任意に を取る。 区間 はコンパクトであるから, はこの集合上で 一様連続である。したがって任意の に対して,十分小さい を取れば, が成り立つ。このとき なので, である。 同様に と を入れ替えれば となる。よって であり, は連続である。
(2) 次に の場合の反例を与える。 とおく。これは有界な連続関数である。 しかし である一方, なら とすることで となる。したがって であり, で連続でない。
最終答
このとき となり, は連続でない。
第6問 — 4階テンソルの巡回作用
巡回群の表現として処理する
この問題はテンソル計算を展開するより,4次巡回群 の作用として見る方が整理しやすい。 から対角化可能性が出て,固有空間の次元は跡から求める。
跡の数え方
テンソル因子の置換の跡は,添字が同じサイクル内で一致する場合だけ寄与する。 そのため,サイクル数が なら自由に選べる添字が 個あり,跡は になる。
は新しい作用ではない
と気づけば, の固有分解をそのまま使える。 固有値 と はどちらも の固有値 に合流する点に注意する。
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は4つのテンソル因子を巡回的に一つ送る変換である。したがって である。最小多項式は の約数であり, は複素数体上で 重根をもたない。よって は対角化可能であり,固有値は の一部である。
の次元を とする。テンソル因子の置換に対応する作用の跡は, その置換の巡回分解のサイクル数を とすると である。したがって 固有値 の固有空間の次元を とすると, フーリエ反転により よって
一方, であるから である。したがって は対角化可能な の多項式であり,対角化可能である。 の固有値が である部分空間上で, の固有値は である。したがって の固有値と固有空間の次元は である。
最終答
は対角化可能で,固有値と固有空間次元は である。 も対角化可能で,固有値と次元は である。
第7問 — 単位速さ曲線の零点数
零点が孤立する理由
零点で速度ベクトルが消えていないため,曲線はその点を一次近似では直線的に通過する。 したがって同じ零点がすぐ近くに再び現れることはない。これを と書けるかが第1小問の要点である。
曲率ではなく速度変化量を見る
連続する二つの零点の間では,曲線の変位の積分が になる。 もし速度がほとんど変わらなければ,単位速度で一方向に進むため原点へ戻れない。 上の評価はこの直感を として定量化したものである。
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(1) の大きさが常に であるから,零点 において である。したがって十分小さい について となり, は に属さない。よって の各点は孤立点である。
は連続であるから は閉集合であり, コンパクト集合 の閉部分集合としてコンパクトである。コンパクト集合の無限部分集合は 集積点をもつので,孤立点だけからなるコンパクト集合 は有限集合である。
(2) 次に が二回連続微分可能であるとする。 と書く。 もし なら示すべき不等式は明らかである。以下 とし, 連続する二つの零点 , を取る。 とおく。 すると である。一方, だから 両辺の大きさを取ると, と より したがって なら二つの異なる零点は存在せず, なら である。よって零点間の各間隔は少なくとも であり, したがって を得る。
最終答
の各点は により孤立しており,かつ はコンパクト集合の閉部分集合なので 有限集合である。さらに二回連続微分可能な場合は,連続する零点間の長さが少なくとも であるため が成り立つ。