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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2013年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2013年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

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1 — ハウスホルダー変換と回転

反射として見る

A(u)=I2utuA(u)=I-2u{}^tu は,uu 方向だけ符号を反転し,uu^\perp 上では恒等写像になる。 したがって固有値を直接計算するより,空間を R3=Ruu \mathbb R^3=\mathbb Ru\oplus u^\perp に分けるのが最短である。

回転角は跡で決める

二つの平面鏡映の積は回転になる。回転軸は二つの鏡映面の交線なので外積で出る。 角度は幾何的に二倍角として求めてもよいが,跡を使うと符号の迷いが少ない。 3次元回転の跡が 1+2cosθ1+2\cos\theta であることを書けば,答案としても安定する。

2013年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1) uu は長さ 11 であるから,任意の wR3w\in\mathbb R^3 について A(u)w=w2u(tuw) A(u)w=w-2u({}^tu w) である。したがって wuw\perp u なら A(u)w=wA(u)w=w,一方 A(u)u=u2u=uA(u)u=u-2u=-u である。よって固有値は 1(1),1(2) -1\quad(1\text{重}),\qquad 1\quad(2\text{重}) である。

(2) 次に u=12(1,1,0)T,v=12(0,1,1)T u=\frac1{\sqrt2}(1,-1,0)^T,\qquad v=\frac1{\sqrt2}(0,1,-1)^T とする。A(u)A(u)A(v)A(v) はそれぞれ uu^\perpvv^\perp に関する鏡映であり, どちらも直交変換で行列式は 1-1 である。したがって R=A(u)A(v) R=A(u)A(v) は行列式 11 の直交変換である。

回転軸は二つの鏡映面の共通部分 uv u^\perp\cap v^\perp である。これは uuvv の外積で張られるので, u×v=12(1,1,1)T u\times v=\frac12(1,1,1)^T より,回転軸は R(1,1,1)T \mathbb R(1,1,1)^T である。

回転角を θ\theta とする。3次元回転行列の跡は trR=1+2cosθ \operatorname{tr} R=1+2\cos\theta である。一方,c=tuv=1/2c={}^tuv=-1/2 とおくと tr{A(u)A(v)}=tr{(I2utu)(I2vtv)}=322+4(tuv)2=1+4c2=0. \begin{aligned} \operatorname{tr}\{A(u)A(v)\} &=\operatorname{tr}\{(I-2u{}^tu)(I-2v{}^tv)\}\\ &=3-2-2+4({}^tuv)^2 =-1+4c^2=0 . \end{aligned} よって 1+2cosθ=0,cosθ=12. 1+2\cos\theta=0,\qquad \cos\theta=-\frac12 . 回転角の大きさは θ=2π3 \theta=\frac{2\pi}{3} である。

最終答

(1)SpecA(u)={1,1,1}. \text{(1)}\quad \operatorname{Spec} A(u)=\{-1,1,1\}. (2)A(u)A(v) は軸 R(1,1,1)T のまわりの回転で,角は 2π/3 \text{(2)}\quad \boxed{A(u)A(v)\text{ は軸 }\mathbb R(1,1,1)^T\text{ のまわりの回転で,角は }2\pi/3}

2 — 調和級数と奇偶部分和

定数の名前より評価が重要

第1小問の極限はオイラー定数だが,名前を書くことよりも存在を示す評価が重要である。 単調性と有界性を積分評価から出すと,答案が短くまとまる。

同じ定数は相殺される

第2小問では Hm=logm+γ+o(1) H_m=\log m+\gamma+o(1) の形にそろえると,γ\gammalogn\log n がちょうど消える。 奇数項和を H2n12HnH_{2n}-\frac12H_n と書けるかが計算の分岐点である。

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(1) Hn=k=1n1/kH_n=\sum_{k=1}^n 1/k とおく。 まず an=Hnlogn a_n=H_n-\log n が収束することを示す。関数 1/x1/x の単調減少性から 1k+1kk+1dxx1k \frac1{k+1}\le \int_k^{k+1}\frac{dx}{x}\le \frac1k が成り立つ。これを足し上げると Hn+11log(n+1)Hn H_{n+1}-1\le \log(n+1)\le H_n である。したがって ana_n は有界である。

また an+1an=1n+1log(1+1n)0 a_{n+1}-a_n =\frac1{n+1}-\log\left(1+\frac1n\right)\le 0 である。ここで log(1+t)t/(1+t)\log(1+t)\ge t/(1+t) を用いた。 よって {an}\{a_n\} は単調減少かつ有界であり,極限が存在する。 この極限を γ\gamma と書く。

(2) 次に An=k=1n12k1,Bn=k=1n12k A_n=\sum_{k=1}^n\frac1{2k-1},\qquad B_n=\sum_{k=1}^n\frac1{2k} について計算する。偶奇に分けると An=H2n12Hn,Bn=12Hn A_n=H_{2n}-\frac12 H_n,\qquad B_n=\frac12 H_n である。したがって ApnBqn=H2pn12Hpn12Hqn. \begin{aligned} A_{pn}-B_{qn} &=H_{2pn}-\frac12H_{pn}-\frac12H_{qn}. \end{aligned} Hm=logm+γ+o(1)H_m=\log m+\gamma+o(1) を用いると limn(ApnBqn)=log(2pn)12log(pn)12log(qn)=log2+12logp12logq=log(2pq). \begin{aligned} \lim_{n\to\infty}(A_{pn}-B_{qn}) &=\log(2pn)-\frac12\log(pn)-\frac12\log(qn)\\ &=\log 2+\frac12\log p-\frac12\log q\\ &=\log\left(2\sqrt{\frac pq}\right). \end{aligned}

最終答

(1)limn(k=1n1klogn) \text{(1)}\quad \lim_{n\to\infty}\left(\sum_{k=1}^n\frac1k-\log n\right) は存在する。また,正整数 p,qp,q に対して (2)limn(ApnBqn)=log(2pq). \text{(2)}\quad \lim_{n\to\infty}(A_{pn}-B_{qn}) =\log\left(2\sqrt{\frac pq}\right).

3 — 交代形式への合同変換

合同変換を外積で読む

tXAX{}^tXAX は,交代2形式を XX で引き戻す操作である。 対角行列の場合,基底 eieje_i\wedge e_j に対応する成分が λiλj\lambda_i\lambda_j 倍されるので,対角化可能性がすぐ分かる。

3次元の便利な同一視

3次元では交代行列を K(w)K(w) と書くと,合同変換は wdet(X)X1w w\mapsto \det(X)X^{-1}w に移る。今回の X=J2IX=J-2I は固有空間が明瞭なので,交代行列側の固有空間も そのまま読み取れる。

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(1) SS は3次元複素空間上の交代形式全体と見なせる。 まず XX が対角化可能であるとし, X=PDP1,D=diag(λ1,λ2,λ3) X=PDP^{-1},\qquad D=\operatorname{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3) と書く。LP(A)=tPAPL_P(A)={}^tPAP とおくと,LPL_PSS から SS への同型であり, TX=LP1TDLP T_X=L_{P^{-1}}\circ T_D\circ L_P である。したがって TXT_XTDT_D と共役である。

標準的な交代行列 EijEji(1i<j3) E_{ij}-E_{ji}\qquad (1\le i<j\le 3) に対して TD(EijEji)=λiλj(EijEji) T_D(E_{ij}-E_{ji})=\lambda_i\lambda_j(E_{ij}-E_{ji}) であるから,TDT_D は対角化可能である。よって TXT_X も対角化可能である。

(2) 次に X=(111111111)=J2I X=\begin{pmatrix} -1&1&1\\ 1&-1&1\\ 1&1&-1 \end{pmatrix}=J-2I を考える。ここで JJ は全成分が 11 の行列である。 ベクトル (1,1,1)T(1,1,1)^T に対する固有値は 11,和が 00 の平面上の固有値は 2-2 である。

交代行列を K(α,β,γ)=(0γβγ0αβα0) K(\alpha,\beta,\gamma)= \begin{pmatrix} 0&-\gamma&\beta\\ \gamma&0&-\alpha\\ -\beta&\alpha&0 \end{pmatrix} と表す。任意の可逆行列 MM について tMK(w)M=det(M)K(M1w) {}^tM K(w)M=\det(M)K(M^{-1}w) が成り立つ。今回 detX=4\det X=4 であるから,wwXX の固有値 μ\mu に属すれば TX(K(w))=4K(X1w)=4μK(w) T_X(K(w))=4K(X^{-1}w)=\frac4\mu K(w) である。

したがって,w(1,1,1)Tw\parallel (1,1,1)^T のとき固有値は 44w1+w2+w3=0w_1+w_2+w_3=0 のとき固有値は 2-2 である。具体的には λ=4:C(011101110), \lambda=4:\quad \mathbb C \begin{pmatrix} 0&-1&1\\ 1&0&-1\\ -1&1&0 \end{pmatrix}, λ=2:spanC{(001001110),(010101010)}. \lambda=-2:\quad \operatorname{span}_{\mathbb C}\left\{ \begin{pmatrix} 0&0&-1\\ 0&0&-1\\ 1&1&0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 0&1&0\\ -1&0&-1\\ 0&1&0 \end{pmatrix} \right\}.

最終答

(1)X が対角化可能なら TX も対角化可能である \text{(1)}\quad \boxed{X\text{ が対角化可能なら }T_X\text{ も対角化可能である}} (2)4 (1次元),2 (2次元) \text{(2)}\quad \boxed{4\ (1\text{次元}),\qquad -2\ (2\text{次元})} であり,上に表示した交代行列がそれぞれの固有空間の基底を与える。

4 — 対数を含む正則関数と実積分

枝の選択を先に固定する

主値の対数を使うので,第一象限では log(eiθ)=iθ\log(e^{i\theta})=i\theta, 正の虚軸では log(iy)=logy+iπ/2\log(iy)=\log y+i\pi/2 となる。この二つを誤ると, 実部と虚部の符号が逆になる。

端点の特異性

z=1z=1 は除去可能特異点であり,定義値 1/2-1/2 はその極限値である。 一方,z=0z=0 では対数が出るが,ylogyy\log y は可積分なので線積分の極限は存在する。

実積分は級数と標準積分で処理する

01xlogx/(1x4)dx\int_0^1 x\log x/(1-x^4)\,dx は級数展開に落とすと奇数平方和だけが残る。 θcotθ\theta\cot\thetacotθ=(logsinθ)\cot\theta=(\log\sin\theta)' と見ると一行で評価できる。

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(1) z=eiθz=e^{i\theta} とおくと,logz=iθ\log z=i\thetadz=ieiθdθdz=ie^{i\theta}\,d\theta である。 したがって f(z)dz=eiθiθ1e2iθieiθdθ=θe2iθ1e2iθdθ=θ2(1icotθ)dθ. \begin{aligned} f(z)\,dz &=\frac{e^{i\theta}i\theta}{1-e^{2i\theta}}ie^{i\theta}\,d\theta\\ &=-\theta\frac{e^{2i\theta}}{1-e^{2i\theta}}\,d\theta =\frac{\theta}{2}(1-i\cot\theta)\,d\theta . \end{aligned} よって ReCf(z)dz=0π/2θ2dθ=π216. \operatorname{Re}\int_C f(z)\,dz =\int_0^{\pi/2}\frac{\theta}{2}\,d\theta =\frac{\pi^2}{16}.

(2) 次に z=iyz=iyεy1\varepsilon\le y\le 1 とおく。 log(iy)=logy+iπ/2\log(iy)=\log y+i\pi/2dz=idydz=i\,dy なので f(iy)idy=iy(logy+iπ/2)1+y2idy=ylogyi(π/2)y1+y2dy. f(iy)i\,dy =\frac{iy(\log y+i\pi/2)}{1+y^2}i\,dy = \frac{-y\log y-i(\pi/2)y}{1+y^2}\,dy . ylogyy\log y00 の近くで可積分だから極限は存在し,虚部は π201y1+y2dy=π4log2. -\frac{\pi}{2}\int_0^1\frac{y}{1+y^2}\,dy =-\frac{\pi}{4}\log2 .

(3) 最後に二つの実積分を求める。まず x<1|x|<111x4=m=0x4m \frac1{1-x^4}=\sum_{m=0}^\infty x^{4m} であり,単調収束または優収束により項別積分できる。したがって 01xlogx1x4dx=m=001x4m+1logxdx=m=01(4m+2)2=14m=01(2m+1)2=14π28=π232. \begin{aligned} \int_0^1\frac{x\log x}{1-x^4}\,dx &=\sum_{m=0}^\infty\int_0^1 x^{4m+1}\log x\,dx\\ &=-\sum_{m=0}^\infty\frac1{(4m+2)^2}\\ &=-\frac14\sum_{m=0}^\infty\frac1{(2m+1)^2} =-\frac14\cdot\frac{\pi^2}{8} =-\frac{\pi^2}{32}. \end{aligned} また,部分積分により 0π/2θcotθdθ=[θlog(sinθ)]0π/20π/2log(sinθ)dθ=π2log2. \begin{aligned} \int_0^{\pi/2}\theta\cot\theta\,d\theta &= \left[\theta\log(\sin\theta)\right]_0^{\pi/2} -\int_0^{\pi/2}\log(\sin\theta)\,d\theta\\ &=\frac{\pi}{2}\log2 . \end{aligned} ここで 0π/2log(sinθ)dθ=(π/2)log2\int_0^{\pi/2}\log(\sin\theta)\,d\theta=-(\pi/2)\log2 を用いた。

最終答

(1)ReCf(z)dz=π216, \text{(1)}\quad \operatorname{Re}\int_C f(z)\,dz=\frac{\pi^2}{16}, (2)Imlimε0Lεf(z)dz=π4log2. \text{(2)}\quad \operatorname{Im}\lim_{\varepsilon\downarrow0}\int_{L_\varepsilon}f(z)\,dz =-\frac{\pi}{4}\log2. さらに (3)01xlogx1x4dx=π232,0π/2θcotθdθ=π2log2. \text{(3)}\quad \int_0^1\frac{x\log x}{1-x^4}\,dx=-\frac{\pi^2}{32}, \qquad \int_0^{\pi/2}\theta\cot\theta\,d\theta=\frac{\pi}{2}\log2.

5 — 上限で定める関数の連続性

閉区間では一様連続性が効く

上限を取る操作は一般には連続性を壊しうる。しかしパラメータ集合がコンパクトで, 考える xxx0x_0 の近くに限定すれば,積集合上で一様連続性が使える。 このため上限の差も一様に抑えられる。

半開区間では上限が端に逃げる

反例の本質は,最大値が y=0y=0 で達成されそうなのに,その点が定義域に入っていないことである。 x0x\ne0 では yy00 に近づけると値は 11 に近づくが, x=0x=0 では常に 00 である。この端点の欠落が不連続を作る。

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(1) I=[0,1]I=[0,1] とし,f:R×[0,1]Rf:\mathbb R\times[0,1]\to\mathbb R が有界連続であるとする。 fsup(x)=supy[0,1]f(x,y) f_{\sup}(x)=\sup_{y\in[0,1]}f(x,y) とおく。任意に x0Rx_0\in\mathbb R を取る。 区間 [x01,x0+1]×[0,1][x_0-1,x_0+1]\times[0,1] はコンパクトであるから,ff はこの集合上で 一様連続である。したがって任意の ε>0\varepsilon>0 に対して,十分小さい δ>0\delta>0 を取れば, xx0<δ,y[0,1]f(x,y)f(x0,y)<ε |x-x_0|<\delta,\quad y\in[0,1] \quad\Longrightarrow\quad |f(x,y)-f(x_0,y)|<\varepsilon が成り立つ。このとき f(x,y)f(x0,y)+εfsup(x0)+ε f(x,y)\le f(x_0,y)+\varepsilon\le f_{\sup}(x_0)+\varepsilon なので,fsup(x)fsup(x0)+εf_{\sup}(x)\le f_{\sup}(x_0)+\varepsilon である。 同様に xxx0x_0 を入れ替えれば fsup(x0)fsup(x)+ε f_{\sup}(x_0)\le f_{\sup}(x)+\varepsilon となる。よって fsup(x)fsup(x0)ε |f_{\sup}(x)-f_{\sup}(x_0)|\le \varepsilon であり,fsupf_{\sup} は連続である。

(2) 次に I=(0,1]I=(0,1] の場合の反例を与える。 f(x,y)=x2x2+y2(xR, 0<y1) f(x,y)=\frac{x^2}{x^2+y^2}\qquad (x\in\mathbb R,\ 0<y\le1) とおく。これは有界な連続関数である。 しかし fsup(0)=0 f_{\sup}(0)=0 である一方,x0x\ne0 なら y0y\downarrow0 とすることで sup0<y1x2x2+y2=1 \sup_{0<y\le1}\frac{x^2}{x^2+y^2}=1 となる。したがって fsup(x)={0,x=0,1,x0, f_{\sup}(x)= \begin{cases} 0,&x=0,\\ 1,&x\ne0, \end{cases} であり,x=0x=0 で連続でない。

最終答

(1)I=[0,1] では fsup は連続である \text{(1)}\quad \boxed{I=[0,1]\text{ では }f_{\sup}\text{ は連続である}} (2)反例は f(x,y)=x2x2+y2(xR, 0<y1) \text{(2)}\quad \boxed{\text{反例は }f(x,y)=\frac{x^2}{x^2+y^2}\quad(x\in\mathbb R,\ 0<y\le1)} このとき fsup(0)=0,fsup(x)=1(x0) f_{\sup}(0)=0,\qquad f_{\sup}(x)=1\quad(x\ne0) となり,fsupf_{\sup} は連続でない。

6 — 4階テンソルの巡回作用

巡回群の表現として処理する

この問題はテンソル計算を展開するより,4次巡回群 C4C_4 の作用として見る方が整理しやすい。 f4=1f^4=1 から対角化可能性が出て,固有空間の次元は跡から求める。

跡の数え方

テンソル因子の置換の跡は,添字が同じサイクル内で一致する場合だけ寄与する。 そのため,サイクル数が cc なら自由に選べる添字が cc 個あり,跡は ncn^c になる。

gg は新しい作用ではない

g=ff1g=f-f^{-1} と気づけば,ff の固有分解をそのまま使える。 固有値 111-1 はどちらも gg の固有値 00 に合流する点に注意する。

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ff は4つのテンソル因子を巡回的に一つ送る変換である。したがって f4=1 f^4=1 である。最小多項式は t41t^4-1 の約数であり,t41t^4-1 は複素数体上で 重根をもたない。よって ff は対角化可能であり,固有値は 1, 1, i, i 1,\ -1,\ i,\ -i の一部である。

VV の次元を nn とする。テンソル因子の置換に対応する作用の跡は, その置換の巡回分解のサイクル数を cc とすると ncn^c である。したがって tr(1)=n4,tr(f)=n,tr(f2)=n2,tr(f3)=n. \operatorname{tr}(1)=n^4,\qquad \operatorname{tr}(f)=n,\qquad \operatorname{tr}(f^2)=n^2,\qquad \operatorname{tr}(f^3)=n . 固有値 λ{1,1,i,i}\lambda\in\{1,-1,i,-i\} の固有空間の次元を mλm_\lambda とすると, フーリエ反転により mλ=14r=03λrtr(fr). m_\lambda=\frac14\sum_{r=0}^3\lambda^{-r}\operatorname{tr}(f^r). よって m1=n4+n2+2n4,m1=n4+n22n4,mi=n4n24,mi=n4n24. \begin{aligned} m_1&=\frac{n^4+n^2+2n}{4},\\ m_{-1}&=\frac{n^4+n^2-2n}{4},\\ m_i&=\frac{n^4-n^2}{4},\\ m_{-i}&=\frac{n^4-n^2}{4}. \end{aligned}

一方, g(abcd)=f(abcd)f1(abcd) g(a\otimes b\otimes c\otimes d) =f(a\otimes b\otimes c\otimes d)-f^{-1}(a\otimes b\otimes c\otimes d) であるから g=ff1 g=f-f^{-1} である。したがって gg は対角化可能な ff の多項式であり,対角化可能である。 ff の固有値が λ\lambda である部分空間上で,gg の固有値は λλ1 \lambda-\lambda^{-1} である。したがって gg の固有値と固有空間の次元は 固有値固有空間の次元0m1+m1=n4+n222imi=n4n242imi=n4n24 \begin{array}{c|c} \text{固有値} & \text{固有空間の次元}\\ \hline 0 & m_1+m_{-1}=\dfrac{n^4+n^2}{2}\\[3mm] 2i & m_i=\dfrac{n^4-n^2}{4}\\[3mm] -2i & m_{-i}=\dfrac{n^4-n^2}{4} \end{array} である。

最終答

ff は対角化可能で,固有値と固有空間次元は 1n4+n2+2n41n4+n22n4in4n24in4n24 \begin{array}{c|c} 1&\dfrac{n^4+n^2+2n}{4}\\[2mm] -1&\dfrac{n^4+n^2-2n}{4}\\[2mm] i&\dfrac{n^4-n^2}{4}\\[2mm] -i&\dfrac{n^4-n^2}{4} \end{array} である。g=ff1g=f-f^{-1} も対角化可能で,固有値と次元は 0n4+n222in4n242in4n24 \begin{array}{c|c} 0&\dfrac{n^4+n^2}{2}\\[2mm] 2i&\dfrac{n^4-n^2}{4}\\[2mm] -2i&\dfrac{n^4-n^2}{4} \end{array} である。

7 — 単位速さ曲線の零点数

零点が孤立する理由

零点で速度ベクトルが消えていないため,曲線はその点を一次近似では直線的に通過する。 したがって同じ零点がすぐ近くに再び現れることはない。これを f(a+h)=hf(a)+o(h) f(a+h)=h f'(a)+o(h) と書けるかが第1小問の要点である。

曲率ではなく速度変化量を見る

連続する二つの零点の間では,曲線の変位の積分が 00 になる。 もし速度がほとんど変わらなければ,単位速度で一方向に進むため原点へ戻れない。 上の評価はこの直感を Labf(t)f(a)dt L\le \int_a^b |f'(t)-f'(a)|\,dt として定量化したものである。

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(1) f(t)f'(t) の大きさが常に 11 であるから,零点 aSa\in S において f(a+h)=f(a)+hf(a)+o(h)=hf(a)+o(h) f(a+h)=f(a)+h f'(a)+o(h)=h f'(a)+o(h) である。したがって十分小さい h0h\ne0 について f(a+h)h2 |f(a+h)|\ge \frac{|h|}{2} となり,a+ha+hSS に属さない。よって SS の各点は孤立点である。

ff は連続であるから S=f1({(0,0)})[0,T]S=f^{-1}(\{(0,0)\})\cap[0,T] は閉集合であり, コンパクト集合 [0,T][0,T] の閉部分集合としてコンパクトである。コンパクト集合の無限部分集合は 集積点をもつので,孤立点だけからなるコンパクト集合 SS は有限集合である。

(2) 次に ff が二回連続微分可能であるとする。S={t1<<tm}S=\{t_1<\cdots<t_m\} と書く。 もし m=1m=1 なら示すべき不等式は明らかである。以下 m2m\ge2 とし, 連続する二つの零点 a=tja=t_jb=tj+1b=t_{j+1} を取る。L=baL=b-a とおく。 すると 0=f(b)f(a)=abf(t)dt 0=f(b)-f(a)=\int_a^b f'(t)\,dt である。一方, f(t)=f(a)+atf(s)ds f'(t)=f'(a)+\int_a^t f''(s)\,ds だから Lf(a)=ab{f(t)f(a)}dt. \begin{aligned} L f'(a) &=-\int_a^b\{f'(t)-f'(a)\}\,dt . \end{aligned} 両辺の大きさを取ると,f(a)=1|f'(a)|=1f(s)M|f''(s)|\le M より Labf(t)f(a)dtabatf(s)dsdtabM(ta)dt=ML22. \begin{aligned} L &\le \int_a^b |f'(t)-f'(a)|\,dt\\ &\le \int_a^b \int_a^t |f''(s)|\,ds\,dt\\ &\le \int_a^b M(t-a)\,dt =\frac{M L^2}{2}. \end{aligned} したがって M=0M=0 なら二つの異なる零点は存在せず,M>0M>0 なら L2M1M L\ge \frac{2}{M}\ge \frac1M である。よって零点間の各間隔は少なくとも 1/M1/M であり, Ttmt1=j=1m1(tj+1tj)m1M. T\ge t_m-t_1=\sum_{j=1}^{m-1}(t_{j+1}-t_j)\ge \frac{m-1}{M}. したがって #S=m1+MT \#S=m\le 1+MT を得る。

最終答

(1)S は有限集合である \text{(1)}\quad \boxed{S\text{ は有限集合である}} (2)#S1+MT \text{(2)}\quad \boxed{\#S\le 1+MT} SS の各点は f(t)=1|f'(t)|=1 により孤立しており,かつ SS はコンパクト集合の閉部分集合なので 有限集合である。さらに二回連続微分可能な場合は,連続する零点間の長さが少なくとも 1/M1/M であるため が成り立つ。

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