院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2004年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2004年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 行列ノルムとスペクトル半径

ノルムの種類に惑わされない

成分の絶対値を全部足す量は、通常の作用素ノルムではないが、劣乗法性を持つ行列ノルムである。有限次元では、どの行列ノルムを使っても nn 乗の 1/n1/n 乗極限はスペクトル半径になる。

重根は極限値を変えない

固有値 22 は重根である。Jordan ブロックがある場合は BnB^n に多項式因子が現れるが、その 1/n1/n 乗は 11 に収束する。指数的な成長率だけを見るので、答は最大固有値の絶対値で決まる。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

行列 A=(ajk)A=(a_{jk}) に対して N(A)=j,kajk N(A)=\sum_{j,k}|a_{jk}| と書く。この NNN(AC)j,k,lajlclk=N(A)N(C) N(AC) \le \sum_{j,k,l}|a_{jl}|\,|c_{lk}| =N(A)N(C) を満たすので、行列環上の劣乗法的ノルムである。したがって Gelfand の公式より limnN(Bn)1/n=max{μ:μ は B の固有値} \lim_{n\to\infty}N(B^n)^{1/n} = \max\{|\mu|:\mu \text{ は }B\text{ の固有値}\} が成り立つ。

あとは固有値を求めればよい。直接計算すると det(tIB)=det(t3112t1101t1)=(t2)2(t1). \begin{aligned} \det(tI-B) &= \det \begin{pmatrix} t-3&-1&1\\ 2&t-1&-1\\ 0&-1&t-1 \end{pmatrix} \\ &=(t-2)^2(t-1). \end{aligned} したがって固有値は 2,2,12,2,1 であり、スペクトル半径は 22 である。

最終答

limnρ(Bn)1/n=2. \displaystyle \lim_{n\to\infty}\rho(B^n)^{1/n}=2.

2 — 同次性と極座標表示

最初に同次性を見る

条件 f(λx,λy)=f(x,y)f(\lambda x,\lambda y)=f(x,y) は、ff が原点からの距離ではなく方向だけの関数であることを意味する。したがって極座標では f=F(θ)f=F(\theta) と置くのが自然である。

符号と定義域

x>y>0x>y>0 では x2y2>0x^2-y^2>0 である。最後の対数の中身が正であることを確認しておくと、積分定数以外の不定性が残らない。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1) 条件 f(λx,λy)=f(x,y)f(\lambda x,\lambda y)=f(x,y)λ\lambda で微分し、λ=1\lambda=1 とおくと xfx+yfy=0 x\frac{\partial f}{\partial x} +y\frac{\partial f}{\partial y}=0 を得る。これは ff が半直線方向には変化しないことを表している。

(2) 極座標 x=rcosθ,y=rsinθ,0<θ<π4 x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta, \qquad 0<\theta<\frac{\pi}{4} を用いる。同次性から ffrr に依存せず、 f(x,y)=F(θ) f(x,y)=F(\theta) と書ける。ここで dθ=ydx+xdyx2+y2 d\theta=\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2} であるから df=F(θ)dθ=F(θ)ydx+xdyx2+y2 df=F'(\theta)\,d\theta = F'(\theta)\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2} となる。

条件を極座標で書き直す。r2=x2+y2r^2=x^2+y^2 として fx=yr2F(θ),fy=xr2F(θ) \frac{\partial f}{\partial x} = -\frac{y}{r^2}F'(\theta), \qquad \frac{\partial f}{\partial y} = \frac{x}{r^2}F'(\theta) なので 1xfx+1yfy=F(θ)r2(yx+xy)=1r2. \frac1x\frac{\partial f}{\partial x} + \frac1y\frac{\partial f}{\partial y} = \frac{F'(\theta)}{r^2} \left(-\frac{y}{x}+\frac{x}{y}\right) = \frac1{r^2}. よって F(θ)=xyx2y2=sinθcosθcos2θsin2θ=12tan2θ. F'(\theta) = \frac{xy}{x^2-y^2} = \frac{\sin\theta\cos\theta}{\cos^2\theta-\sin^2\theta} = \frac12\tan 2\theta. したがって df=12tan2θdθ df=\frac12\tan 2\theta\,d\theta である。

(3) 前問の式を積分して F(θ)=14log(cos2θ)+C F(\theta) = -\frac14\log(\cos 2\theta)+C を得る。領域では 0<θ<π/40<\theta<\pi/4 だから cos2θ>0\cos2\theta>0 であり、実対数として問題ない。さらに cos2θ=x2y2x2+y2 \cos2\theta=\frac{x^2-y^2}{x^2+y^2} より f(x,y)=C+14logx2+y2x2y2. f(x,y) = C+\frac14\log\frac{x^2+y^2}{x^2-y^2}.

最終答

(1)xfx+yfy=0. \text{(1)}\quad x\frac{\partial f}{\partial x} +y\frac{\partial f}{\partial y}=0. (2)df=12tan2θdθ(x=rcosθ, y=rsinθ, 0<θ<π4). \text{(2)}\quad df=\frac12\tan 2\theta\,d\theta \qquad \left(x=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta,\ 0<\theta<\frac{\pi}{4}\right). (3)f(x,y)=C+14logx2+y2x2y2(CR). \text{(3)}\quad f(x,y)=C+\frac14\log\frac{x^2+y^2}{x^2-y^2} \qquad (C\in\mathbb{R}).

3 — グラフ距離とコンパクト性

グラフとして見る

この距離は、平面上の点を R3\mathbb{R}^3 内のグラフ上の点へ持ち上げて測った距離である。したがって三角不等式を成分計算で示すより、R3\mathbb{R}^3 の距離を使う方が短い。

逆向きで使うコンパクト性

(X,d)(X,d) がコンパクトなら、恒等写像 (X,d)X(X,d)\to X はコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続全単射になる。この一手で、通常位相から dd 位相へ戻る写像も連続になる。最後に ffdd に関して Lipschitz であることを組み合わせればよい。

不連続な場合の直感

ff に跳びがあると、平面上で近い点列でもグラフ上では高さ方向に離れたままになる。通常の正方形のコンパクト性だけでは、グラフ距離での収束部分列を保証できない。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1) p=(x,y)p=(x,y) に対して Γ(p)=(x,y,f(p))R3 \Gamma(p)=(x,y,f(p))\in\mathbb{R}^3 とおく。与えられた距離は d(p,q)=Γ(p)Γ(q) d(p,q)=|\Gamma(p)-\Gamma(q)| である。右辺は R3\mathbb{R}^3 のユークリッド距離なので、非負性、対称性、三角不等式を満たす。

また d(p,q)=0d(p,q)=0 なら Γ(p)=Γ(q)\Gamma(p)=\Gamma(q) である。特に第1、第2成分が等しいので p=qp=q である。よって (X,d)(X,d) は距離空間である。

(2) まず ff が通常の位相で連続であるとする。このとき Γ:XR3\Gamma:X\to\mathbb{R}^3 は連続であり、通常の正方形 XX はコンパクトであるから、グラフ Γ(X)\Gamma(X) はコンパクトである。さらに Γ:(X,d)Γ(X)\Gamma:(X,d)\to\Gamma(X) は等距離全単射である。したがって (X,d)(X,d) もコンパクトである。

逆に (X,d)(X,d) がコンパクトであるとする。通常のユークリッド距離を |\cdot| と書くと pqd(p,q) |p-q|\le d(p,q) であるから、恒等写像 ι:(X,d)(X,) \iota:(X,d)\longrightarrow (X,|\cdot|) は連続である。これはコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続全単射なので、同相写像である。

一方、 f(p)f(q)d(p,q) |f(p)-f(q)|\le d(p,q) より、F:(X,d)RF:(X,d)\to\mathbb{R}, F(p)=f(p)F(p)=f(p)11-Lipschitz 連続である。通常の位相から見ると f=Fι1 f=F\circ\iota^{-1} であるから、ff は通常の位相に関して連続である。

最終答

(1) (X,d)(X,d) はグラフ写像 Γ(p)=(p,f(p))\Gamma(p)=(p,f(p)) によるユークリッド距離の引き戻しなので距離空間である。

(2) (X,d)(X,d) がコンパクトであることと、ff が通常位相で連続であることは同値である。

4 — 二階微分方程式の第一積分

割る前に正値性を確保する

式変形では yy で割りたくなるが、最初は yy が消えないことを示す必要がある。第一積分 1+(y)2y2=1+c2 \frac{1+(y')^2}{y^2}=1+c^2 を先に作ると、yy00 に近づけないことが分かる。

解が正であることの検算

a=1+c2a=\sqrt{1+c^2} とすると c/a<1|c/a|<1 である。したがって cosh(ax)+casinh(ax)=12(1+ca)eax+12(1ca)eax \cosh(ax)+\frac{c}{a}\sinh(ax) = \frac12\left(1+\frac ca\right)e^{ax} + \frac12\left(1-\frac ca\right)e^{-ax} は常に正である。求めた解は (1) の結論とも整合している。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

c=y(0)c=y'(0) とおく。yy00 でない区間では (1+(y)2y2)=2yy3{yy(1+(y)2)}=0 \left(\frac{1+(y')^2}{y^2}\right)' = \frac{2y'}{y^3}\{yy''-(1+(y')^2)\} = 0 である。y(0)=1y(0)=1 だから、00 を含むその区間で 1+(y)2y2=1+c2 \frac{1+(y')^2}{y^2}=1+c^2 が成り立つ。

(1) 上の式から y2=1+(y)21+c211+c2 y^2=\frac{1+(y')^2}{1+c^2} \ge \frac1{1+c^2} である。したがって 00 を含む正値区間の端で yy00 になることはない。初期値 y(0)=1>0y(0)=1>0 と連続性より、 y(x)>0(xR) y(x)>0\qquad (x\in\mathbb{R}) が従う。

(2) (1) により y>0y>0 なので、元の微分方程式と第一積分から yy=1+(y)2=(1+c2)y2 yy''=1+(y')^2=(1+c^2)y^2 すなわち y=(1+c2)y y''=(1+c^2)y を得る。a=1+c2a=\sqrt{1+c^2} とおくと、初期条件 y(0)=1y(0)=1, y(0)=cy'(0)=c を満たす解は y(x)=cosh(ax)+casinh(ax) y(x)=\cosh(ax)+\frac{c}{a}\sinh(ax) である。

最終答

(1)y(x)>0(xR). \text{(1)}\quad y(x)>0\qquad (x\in\mathbb{R}). (2)y(x)=cosh ⁣(1+c2x)+c1+c2sinh ⁣(1+c2x). \text{(2)}\quad y(x)=\cosh\!\left(\sqrt{1+c^2}\,x\right) +\frac{c}{\sqrt{1+c^2}} \sinh\!\left(\sqrt{1+c^2}\,x\right).

5 — 指数置換とベータ型積分

Fourier 変換を Mellin 変換へ移す

exe^x を含む有理型の形は、t=ext=e^x によって 0<t<0<t<\infty 上の Mellin 型積分に変わる。cos(λlogt)\cos(\lambda\log t)tiλt^{i\lambda} の実部として扱える。

特殊値で検算する

λ=0\lambda=0 とすると答は 2π33 \frac{2\pi}{3\sqrt3} である。これは 0dt1+t3=π3cscπ3=2π33 \int_0^\infty \frac{dt}{1+t^3} = \frac{\pi}{3}\csc\frac{\pi}{3} = \frac{2\pi}{3\sqrt3} と一致する。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

t=ext=e^x とおくと dx=dt/tdx=dt/t であり、xx-\infty から \infty まで動くと tt00 から \infty まで動く。したがって求める積分は I(λ)=0cos(λlogt)1+t3dt=Re0tiλ1+t3dt. \begin{aligned} I(\lambda) &= \int_0^\infty \frac{\cos(\lambda\log t)}{1+t^3}\,dt \\ &= \operatorname{Re} \int_0^\infty \frac{t^{i\lambda}}{1+t^3}\,dt . \end{aligned} ベータ型積分 0ta11+t3dt=π3cscπa3(0<Rea<3) \int_0^\infty \frac{t^{a-1}}{1+t^3}\,dt = \frac{\pi}{3}\csc\frac{\pi a}{3} \qquad (0<\operatorname{Re}a<3) a=1+iλa=1+i\lambda に適用すると I(λ)=Re{π3csc(π3+iπλ3)}. I(\lambda) = \operatorname{Re} \left\{ \frac{\pi}{3} \csc\left(\frac{\pi}{3}+i\frac{\pi\lambda}{3}\right) \right\}. u=πλ/3u=\pi\lambda/3 とおく。すると sin(π3+iu)=32coshu+i2sinhu \sin\left(\frac{\pi}{3}+iu\right) = \frac{\sqrt3}{2}\cosh u+\frac{i}{2}\sinh u なので Re1sin(π/3+iu)=32coshu34cosh2u+14sinh2u=23coshu1+2cosh2u. \begin{aligned} \operatorname{Re}\frac{1}{\sin(\pi/3+iu)} &= \frac{\frac{\sqrt3}{2}\cosh u} {\frac34\cosh^2u+\frac14\sinh^2u} \\ &= \frac{2\sqrt3\cosh u}{1+2\cosh 2u}. \end{aligned} ゆえに I(λ)=2π3cosh(πλ/3)1+2cosh(2πλ/3). I(\lambda) = \frac{2\pi}{\sqrt3} \frac{\cosh(\pi\lambda/3)} {1+2\cosh(2\pi\lambda/3)}.

最終答

excos(λx)1+e3xdx=2π3cosh(πλ/3)1+2cosh(2πλ/3). \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \frac{e^x\cos(\lambda x)}{1+e^{3x}}\,dx = \frac{2\pi}{\sqrt3} \frac{\cosh(\pi\lambda/3)} {1+2\cosh(2\pi\lambda/3)}.

6 — 外積表現とJordanブロック

外積の誘導写像

線形写像 ff は各ベクトルを動かすので、面積要素 vwv\wedge w も自然に f(v)f(w)f(v)\wedge f(w) へ動く。これが外積表現 2f\bigwedge^2 f である。

n3n\ge3 の役割

n=2n=2 では 2V\bigwedge^2V11 次元で、gg は常に対角化可能になってしまう。n3n\ge3 なら、非自明な Jordan 鎖を外積空間にも残すための相手ベクトルを確保できる。

冪零指数の数え方

単一 Jordan ブロックでは、NN は添字を 11 ずつ下げる。2V\bigwedge^2V では最大重み 2n12n-1 から最小重み 33 まで下げる必要があり、その差は 2n42n-4 である。したがって 2n42n-4 回作用してまだ残り、次の 11 回で消える。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1) 2V\bigwedge^2Vvwv\wedge w たちで張られる。基底 e1,,ene_1,\ldots,e_n を取り、 eiej(1i<jn) e_i\wedge e_j\qquad (1\le i<j\le n) 2V\bigwedge^2V の基底とする。この基底上で g(eiej)=f(ei)f(ej) g(e_i\wedge e_j)=f(e_i)\wedge f(e_j) と定め、線形に延長する。外積の双線形性と交代性により、任意の v,wVv,w\in V について g(vw)=f(v)f(w) g(v\wedge w)=f(v)\wedge f(w) が成り立つ。

また、vwv\wedge w たちは 2V\bigwedge^2V を張るので、この条件を満たす線形写像はその値が張る集合上で決まってしまう。したがって存在も一意性も示された。

(2) まず ff が対角化可能であるとする。f(ei)=αieif(e_i)=\alpha_i e_i となる基底を取れば g(eiej)=αiαj(eiej)(i<j) g(e_i\wedge e_j) = \alpha_i\alpha_j(e_i\wedge e_j) \qquad (i<j) である。よって gg は対角化可能である。

逆に ff が対角化可能でないとする。複素数体上なので、ff は長さ 22 以上の Jordan 鎖を持つ。ある固有値 α0\alpha\ne0 に対して f(e1)=αe1,f(ek)=αek+ek1(k2) f(e_1)=\alpha e_1,\qquad f(e_k)=\alpha e_k+e_{k-1}\quad (k\ge2) となる鎖を取る。

鎖の長さが 33 以上なら g(e1e2)=α2(e1e2), g(e_1\wedge e_2)=\alpha^2(e_1\wedge e_2), g(e1e3)=α2(e1e3)+α(e1e2). g(e_1\wedge e_3) = \alpha^2(e_1\wedge e_3) +\alpha(e_1\wedge e_2). α0\alpha\ne0 なので、α2\alpha^2 に対して非自明な Jordan 鎖が現れ、gg は対角化可能でない。

鎖の長さが 22 の場合は、n3n\ge3 だから Jordan 標準形の別のブロックから固有ベクトル uu を取れる。f(u)=βuf(u)=\beta u とすると β0\beta\ne0 であり、 g(e1u)=αβ(e1u), g(e_1\wedge u)=\alpha\beta(e_1\wedge u), g(e2u)=αβ(e2u)+β(e1u). g(e_2\wedge u) = \alpha\beta(e_2\wedge u)+\beta(e_1\wedge u). ここでも非自明な Jordan 鎖が現れる。したがって gg が対角化可能なら ff も対角化可能である。

(3) 表示された Jordan ブロックの基底を e1,,ene_1,\ldots,e_n とし、 N=fI N=f-I とおく。このとき Ne1=0,Nei=ei1(i2) Ne_1=0,\qquad Ne_i=e_{i-1}\quad (i\ge2) である。G=gIG=g-I とおくと G(eiej)=Neiej+eiNej+NeiNej. G(e_i\wedge e_j) = Ne_i\wedge e_j +e_i\wedge Ne_j +Ne_i\wedge Ne_j. eieje_i\wedge e_j の重みを i+ji+j と呼ぶことにする。GG は重みを少なくとも 11 下げる。非零の外積で最小の重みは 1+2=31+2=3、最大の重みは (n1)+n=2n1(n-1)+n=2n-1 である。したがって G2n3=0 G^{2n-3}=0 である。

次に G2n40G^{2n-4}\ne0 を示す。LLL(eiej)=Neiej+eiNej L(e_i\wedge e_j)=Ne_i\wedge e_j+e_i\wedge Ne_j で定めると、G=L+G=L+「重みを 22 下げる項」である。G2n4(en1en)G^{2n-4}(e_{n-1}\wedge e_n) の重み 33 成分は L2n4(en1en) L^{2n-4}(e_{n-1}\wedge e_n) の重み 33 成分と同じである。一般に Lk(uv)=a=0k(ka)NauNkav L^k(u\wedge v) = \sum_{a=0}^k \binom{k}{a}N^a u\wedge N^{k-a}v なので、k=2n4k=2n-4 とすると e1e2e_1\wedge e_2 の係数は (2n4n2)(2n4n3) \binom{2n-4}{n-2} - \binom{2n-4}{n-3} である。これは n3n\ge300 でない。よって G2n40G^{2n-4}\ne0 であり、求める最小の自然数は m=2n3 m=2n-3 である。

最終答

(1) g=2fg=\bigwedge^2 f が一意に存在する。

(2) n3n\ge3 では ff が対角化可能であることと gg が対角化可能であることは同値である。

(3)最小の自然数は m=2n3. \text{(3)}\quad \text{最小の自然数は }m=2n-3.

7 — 最大固有値による成長評価

反対称成分はノルムを増やさない

X2|X|^2 の微分には Φ+ΦT\Phi+\Phi^{\mathsf T} だけが現れる。反対称成分は回転を表すだけで、ユークリッドノルムの増減には寄与しない。

最大固有値の使い方

対称行列 AA については、任意のベクトル vv に対して vTAvλmax(A)v2 v^{\mathsf T}Av\le \lambda_{\max}(A)|v|^2 が成り立つ。ここで A=Φ+ΦTA=\Phi+\Phi^{\mathsf T} と置くのが本問の中心である。

絶対値可積分なら十分

λ(s)\lambda(s) が負ならエネルギーはむしろ減少する。上からの評価だけなら λ(s)λ(s)\lambda(s)\le|\lambda(s)| としてよく、絶対値の積分が有限であれば指数評価も有限に保たれる。

2004年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

ユークリッドノルムを用い、 E(s)=X(s)2=X(s)TX(s) E(s)=|X(s)|^2=X(s)^{\mathsf T}X(s) とおく。X(s)=Φ(s)X(s)X'(s)=\Phi(s)X(s) より E(s)=X(s)TX(s)+X(s)TX(s)=X(s)T{Φ(s)T+Φ(s)}X(s). \begin{aligned} E'(s) &= X'(s)^{\mathsf T}X(s)+X(s)^{\mathsf T}X'(s)\\ &= X(s)^{\mathsf T}\{\Phi(s)^{\mathsf T}+\Phi(s)\}X(s). \end{aligned} 対称行列 Φ(s)+Φ(s)T\Phi(s)+\Phi(s)^{\mathsf T} の最大固有値が λ(s)\lambda(s) であるから、Rayleigh 商の評価により E(s)λ(s)E(s)λ(s)E(s) E'(s)\le \lambda(s)E(s)\le |\lambda(s)|E(s) が成り立つ。

E(0)=0E(0)=0 の場合は一意性により X(s)0X(s)\equiv0 であり、結論は明らかである。以下 E(0)>0E(0)>0 とする。Gronwall の不等式から E(s)E(0)exp(0sλ(u)du)E(0)exp(0λ(u)du) E(s) \le E(0)\exp\left(\int_0^s|\lambda(u)|\,du\right) \le E(0)\exp\left(\int_0^\infty|\lambda(u)|\,du\right) である。右辺は有限定数なので、E(s)E(s)s0s\ge0 で有界である。したがって X(s)X(s) も有界である。

最終答

X(s)2|X(s)|^2 に対して ddsX(s)2λ(s)X(s)2 \frac{d}{ds}|X(s)|^2\le |\lambda(s)|\,|X(s)|^2 が成り立つ。Gronwall の不等式と 0λ(s)ds<\int_0^\infty|\lambda(s)|\,ds<\infty より、X(s)X(s)s0s\ge0 で有界である。

東京大学 専門科目A — 他の年度