東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2007年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問。微分積分・解析2問・位相・幾何1問・線形代数1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2006年度と共通のテーマは線形空間・基底・一様収束。
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収録20年度分の解答PDF:東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A(¥3,200・紙面見本あり)
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- 解説7問・解答7問・最終答7問(全7問)
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東大 専門科目A 2007年度 院試 過去問の出題内容(全7問)
この7問の分野は微分積分・解析2問・位相・幾何1問・線形代数1問・微分方程式1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 広義固有空間と交換関係 | 固有空間ではなく広義固有空間を見る / nilpotent 性の理由 | あり |
| 第2問 | 微分方程式 | 偏微分可能性と極座標積分 | 偏微分可能と全微分可能は違う / 領域判定は符号だけを見る | あり |
| 第3問 | 位相・幾何 | コンパクト集合の直積近傍 | コンパクト性が作る余裕 / 距離は最大ノルムが便利 | あり |
| 第4問 | — | 留数計算と交代二項和 | 和は留数定理で出る / 主要項の分離 | あり |
| 第5問 | 微分積分・解析 | Lipschitz関数の距離 | この距離は値と傾きを測る / 通常の一様収束とは違う | あり |
| 第6問 | 微分積分・解析 | Laplace型積分の境界展開 | 境界点 0 は別扱い / 展開の読み方 | あり |
| 第7問 | 線形代数 | 階数一更新と正則性 | 階数一更新の判定 / 正則行列の場合 | あり |
2007年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第7問 | 21大学・152問 | |
| 留数定理 | 第4問 | 18大学・126問 | |
| 一様収束 | 第5問 | 14大学・63問 | |
| 偏微分可能性と連続性 | 第2問 | 9大学・12問 |
前年度(2006年度)との違い
- 大問数
- 2006年度 7問 → 2007年度 7問
- 2007年度で新しく出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・留数定理・偏微分可能性と連続性
第1問 — 広義固有空間と交換関係
固有空間ではなく広義固有空間を見る
は重根だが,通常の固有空間は一次元しかない。そこで まで広げると,空間全体が に分解される。この分解を使うと,交換関係 の意味が 「固有値を 倍する向きに が動く」という形で見える。
nilpotent 性の理由
は から へ移せるが,その次は が存在しないので 必ず消える。したがって実際には まで言える。試験答案では 「広義固有空間を保つ」ではなく「固有値を 倍した広義固有空間へ写す」 と書くことが重要である。
解答
(1) 行列を とする。特性多項式は である。したがって固有値は である。
について だから,固有空間は である。また より については であり,固有値 は単根なので広義固有空間もこの一次元空間である。
(2) 次に とする。任意の と正整数 について が成り立つ。よって は の広義固有空間 を に写す。ここで の固有値は だけなので したがって空間全体 上で であり,特に である。
(3) 最後に非零例を作る。,, とおくと 線形写像 を で定めると,基底 上の確認から が従う。 標準基底での行列は であり,これは零行列ではない。
最終答
第2問 — 偏微分可能性と極座標積分
偏微分可能と全微分可能は違う
原点で二つの偏微分係数が存在しても,誤差項が距離に比べて小さくなるとは限らない。 この問題では が方向依存で一次の大きさを残すため,全微分可能性が破れる。
領域判定は符号だけを見る
であり,後ろの因子は で正である。したがって の境界は複雑な曲線ではなく 直線 である。ここを見抜くと積分範囲がすぐに決まる。
解答
(1) 原点以外では有理関数なので通常の微分計算ができる。原点での連続性は から従う。原点での偏微分係数は である。原点以外では偏微分が存在するので, は全平面で一回偏微分可能である。
(2) 全微分可能性を調べる。もし原点で全微分可能なら,線形主要部は でなければならない。しかし として とすると となり,例えば では に収束しない。よって原点で全微分可能ではない。 原点以外では全微分可能だから,結論として 上では全微分可能ではない。
(3) 積分は極座標で計算する。 とおくと であり, は と同値である。したがって単位円内の領域は で表される。ゆえに
最終答
第3問 — コンパクト集合の直積近傍
コンパクト性が作る余裕
点ごとの開近傍なら が開であることだけで作れる。しかしここでは 一つの直積 をまとめて入れる必要がある。この一様な余裕を与えるのが のコンパクト性である。
距離は最大ノルムが便利
平面の距離として を使うと, 方向と 方向に同じ幅だけ太らせた集合がそのまま 直積近傍になる。ユークリッド距離でも証明できるが,最後に直積へ戻す記述が少し増える。
解答
空集合を含む場合は自明なので,以下では がともに空でないとしてよい。 はコンパクトであり, は閉集合である。さらに だから,最大値・最小値の存在を使って は正である。ただし のときは任意の正の を取ればよい。
そこで とおく。これは の開集合であり,明らかに である。
任意の を取ると,ある が存在して となる。したがって もし なら であり, の定義に反する。 よって である。したがって が示された。
最終答
と取ればよい。ただし は と の正の距離である。
第4問 — 留数計算と交代二項和
和は留数定理で出る
二項係数を含む交代和は,有限個の整数点に単純極を置くと自然に現れる。 この問題では を加えることで,分母の と の二位の極が同時に作られている。
主要項の分離
和は と因数分解される。前者は の大きさ,後者は の大きさである。したがって問題の という正規化が ちょうど定数を残す。
解答
(1) とおく。極は である。 では単純極であり,
は二位の極である。 とおくと であるから,留数は である。対数微分により また したがって
(2) 次に とおく。有理関数 は無限遠で なので全留数の和は である。 上の単純極の和は だから よって求める極限は
ここで である。Wallis の公式から が従うので また である。したがって
最終答
第5問 — Lipschitz関数の距離
この距離は値と傾きを測る
関数に限ると である。 つまりこの距離は を別々に測っている。したがって完備性は の完備性に帰着される。
通常の一様収束とは違う
一様収束だけでは 関数列の極限が とは限らない。 ここでは導関数が一様 Cauchy になるため,極限の導関数を先に作ってから積分で 関数を復元できる。
解答
(1) 関数 に対して, 上で は有界である。 平均値の定理より だから である。
(2) 次に が距離であることを示す。Lipschitz 定数の最小値 は を満たす。また なら は定数である。 したがって ,対称性,三角不等式は直ちに従う。 さらに なら である。よって は定数で,しかも での値が だから である。 これで は 上の距離である。
(3) 最後に の完備性を示す。 関数 については である。したがって の -Cauchy 列 に対して, は実数の Cauchy 列であり, は 連続関数空間 の一様ノルムに関する Cauchy 列である。 よって となる , が存在する。
と定めると であり である。さらに したがって はこの距離について完備である。
最終答
第6問 — Laplace型積分の境界展開
境界点 は別扱い
では指数関数に が現れるため,主要な寄与は の狭い範囲から来る。一方 では が主要範囲になる。 このスケールの違いが という不連続な結果を生む。
展開の読み方
では を に代入するだけで係数が読める。符号を間違えやすいのは で, 一次補正が から来るため負になる。
解答
(1) まず とおくと
のときは である。したがって
以下 とする。さらに とおくと よって であり, である。
(2) 次に したがって
(3) 最後に で だから,支配収束により
最終答
第7問 — 階数一更新と正則性
階数一更新の判定
は「第 成分を読み取って 方向を足す」階数一の写像である。 階数が増えるには,足す方向 がもとの列空間の外にあり,かつ読み取り が 上で消えないことが必要である。後者は が行空間の外にあることと同値である。
正則行列の場合
正則性の判定では行列式補題が最短である。すべての一成分更新で特異になると仮定すると, の全成分が になってしまう。 ではその行列は階数 なので, 逆行列としてはあり得ない。
解答
(1) を線形写像と見て,列空間を ,行空間を と書く。標準基底を とする。 階数 の部分空間 は,標準基底ベクトルのうち高々 個しか 含めない。したがって となる は少なくとも 個ある。同様に となる も少なくとも 個ある。
このような を取る。 である。 かつ のとき, を示す。
実際, とする。このとき 左辺は に属する。 だから でなければならず,従って である。よって また なので, は 上で零汎関数ではない。したがって 階数・退化次数の定理より よって条件を満たす組は少なくとも 個存在する。
(2) 次に が正則である場合を考える。行列式補題より もしすべての について が正則でないなら, がすべての で成り立つ。すると は全成分が の行列になる。 しかし ではこの行列の階数は であり,正則ではない。これは が正則であることに反する。したがって正則な が少なくとも一つ 存在する。
最終答
東大 専門科目A 院試 過去問の収録20年度
円板上の重積分 / 像と核の直和分解 / べき級数とタウバー型定理
広義積分と漸近展開 / 射影された線形写像 / 反復正弦と log-sum-exp
巡回型行列 / 斉次関数の臨界点 / 負内積ベクトル族
交互成分行列 / 細い領域の二重積分 / 外積表現と対角化
線型写像の対角化 / 極座標による重積分 / ディリクレ積分
上三角行列の対角化条件 / 極座標領域上の対数積分 / 半円と補間二次関数の面積漸近
関数の極限と展開 / 直交行列と上三角分解 / 冪零行列の可換行列
平均値の極限 / 二次多項式空間上の線形変換 / 極座標と平面領域の積分
多項式空間の線形変換 / 反復正弦と級数 / 原点での連続性と全微分可能性
2016年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
核空間と直和分解 / 奇数冪積分と一様収束 / 二乗根をもつ実行列
2015年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
剰余で定まる線形写像 / 円板上の平均値 / 同相写像の軌道空間
2014年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
線形写像と正定値性 / 乗法的Cauchy方程式 / 距離関数の微分
2013年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
ハウスホルダー変換と回転 / 調和級数と奇偶部分和 / 交代形式への合同変換
2012年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
交換子と対角化可能性 / 二変数関数の最大値 / フーリエ積分
2011年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
対角化可能性と相似条件 / 特異積分の極限 / コンパクト開位相の基本閉性
2010年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
階数低下と零固有値 / コーシー型核の積分と畳み込み / 有界列空間と収束列の閉性
2007年度(このページ・全7問)解答・最終答まで全文公開
広義固有空間と交換関係 / 偏微分可能性と極座標積分 / コンパクト集合の直積近傍
2006年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行基本変形と列空間 / 余弦積分と一様収束 / 双対空間と直和分解
2005年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
実対称行列の固有条件 / 平坦関数と積分剰余 / 単調関数が誘導する距離
2004年度(全7問)解答・最終答まで全文公開
行列ノルムとスペクトル半径 / 同次性と極座標表示 / グラフ距離とコンパクト性