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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2007年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目A 2007年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

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1 — 広義固有空間と交換関係

固有空間ではなく広義固有空間を見る

λ=1\lambda=1 は重根だが,通常の固有空間は一次元しかない。そこで ker(AI)2\ker(A-I)^2 まで広げると,空間全体が C3=G1G2 \mathbb{C}^3=G_1\oplus G_2 に分解される。この分解を使うと,交換関係 AB=2BAAB=2BA の意味が 「固有値を 22 倍する向きに BB が動く」という形で見える。

nilpotent 性の理由

BBG1G_1 から G2G_2 へ移せるが,その次は G4G_4 が存在しないので 必ず消える。したがって実際には B2=0B^2=0 まで言える。試験答案では 「広義固有空間を保つ」ではなく「固有値を 22 倍した広義固有空間へ写す」 と書くことが重要である。

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(1) 行列を A=(211121110) A=\begin{pmatrix} 2&1&1\\ -1&2&-1\\ -1&-1&0 \end{pmatrix} とする。特性多項式は det(λIA)=(λ1)2(λ2) \det(\lambda I-A)=(\lambda-1)^2(\lambda-2) である。したがって固有値は 1,21,2 である。

λ=1\lambda=1 について AI=(111111111) A-I= \begin{pmatrix} 1&1&1\\ -1&1&-1\\ -1&-1&-1 \end{pmatrix} だから,固有空間は ker(AI)=span{(1,0,1)T} \ker(A-I)=\operatorname{span}\{(1,0,-1)^T\} である。また (AI)2=(111111111) (A-I)^2= \begin{pmatrix} -1&1&-1\\ -1&1&-1\\ 1&-1&1 \end{pmatrix} より G1:=ker(AI)2={(x,y,z)T:y=x+z}=span{(1,1,0)T,(0,1,1)T}. G_1:=\ker(A-I)^2 =\{(x,y,z)^T:y=x+z\} =\operatorname{span}\{(1,1,0)^T,(0,1,1)^T\}. λ=2\lambda=2 については ker(A2I)=span{(1,1,1)T} \ker(A-2I)=\operatorname{span}\{(-1,-1,1)^T\} であり,固有値 22 は単根なので広義固有空間もこの一次元空間である。

(2) 次に AB=2BAAB=2BA とする。任意の μ\mu と正整数 mm について (A2μI)mB=2mB(AμI)m (A-2\mu I)^mB=2^mB(A-\mu I)^m が成り立つ。よって BBAA の広義固有空間 GμG_\muG2μG_{2\mu} に写す。ここで AA の固有値は 1,21,2 だけなので B(G1)G2,B(G2)G4={0}. B(G_1)\subset G_2,\qquad B(G_2)\subset G_4=\{0\}. したがって空間全体 G1G2G_1\oplus G_2 上で B2=0B^2=0 であり,特に B3=O B^3=O である。

(3) 最後に非零例を作る。u=(1,0,1)Tu=(1,0,-1)^Tv=(1,1,0)Tv=(1,1,0)^Tw=(1,1,1)Tw=(-1,-1,1)^T とおくと (AI)u=0,(AI)v=2u,Aw=2w. (A-I)u=0,\qquad (A-I)v=2u,\qquad Aw=2w. 線形写像 BBBu=0,Bv=w,Bw=0 Bu=0,\qquad Bv=w,\qquad Bw=0 で定めると,基底 {u,v,w}\{u,v,w\} 上の確認から AB=2BAAB=2BA が従う。 標準基底での行列は B=(101101101) B= \begin{pmatrix} -1&0&-1\\ -1&0&-1\\ 1&0&1 \end{pmatrix} であり,これは零行列ではない。

最終答

(1)G1=span{(1,1,0)T,(0,1,1)T},G2=span{(1,1,1)T} \text{(1)}\quad \boxed{ G_1=\operatorname{span}\{(1,1,0)^T,(0,1,1)^T\},\qquad G_2=\operatorname{span}\{(-1,-1,1)^T\} } (2)AB=2BAB3=O \text{(2)}\quad \boxed{AB=2BA\Longrightarrow B^3=O} (3)(101101101) \text{(3)}\quad \boxed{ \begin{pmatrix} -1&0&-1\\ -1&0&-1\\ 1&0&1 \end{pmatrix} }

2 — 偏微分可能性と極座標積分

偏微分可能と全微分可能は違う

原点で二つの偏微分係数が存在しても,誤差項が距離に比べて小さくなるとは限らない。 この問題では (xy)xyx2+y2 (x-y)\frac{xy}{x^2+y^2} が方向依存で一次の大きさを残すため,全微分可能性が破れる。

領域判定は符号だけを見る

x3y3=(xy)(x2+xy+y2)x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2) であり,後ろの因子は (x,y)(0,0)(x,y)\ne(0,0) で正である。したがって f>0f>0 の境界は複雑な曲線ではなく 直線 x=yx=y である。ここを見抜くと積分範囲がすぐに決まる。

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(1) 原点以外では有理関数なので通常の微分計算ができる。原点での連続性は x3y3x2+y2x+y \left|\frac{x^3-y^3}{x^2+y^2}\right| \le |x|+|y| から従う。原点での偏微分係数は fx(0,0)=limh0f(h,0)h=1,fy(0,0)=limh0f(0,h)h=1 f_x(0,0)=\lim_{h\to0}\frac{f(h,0)}{h}=1,\qquad f_y(0,0)=\lim_{h\to0}\frac{f(0,h)}{h}=-1 である。原点以外では偏微分が存在するので,ff は全平面で一回偏微分可能である。

(2) 全微分可能性を調べる。もし原点で全微分可能なら,線形主要部は xy x-y でなければならない。しかし f(x,y)(xy)=(xy)xyx2+y2. f(x,y)-(x-y) =(x-y)\frac{xy}{x^2+y^2}. y=txy=tx として x0x\to0 とすると f(x,tx)(xtx)x2+t2x2=(1t)t(1+t2)3/2 \frac{f(x,tx)-(x-tx)}{\sqrt{x^2+t^2x^2}} = \frac{(1-t)t}{(1+t^2)^{3/2}} となり,例えば t=2t=2 では 00 に収束しない。よって原点で全微分可能ではない。 原点以外では全微分可能だから,結論として R2\mathbb{R}^2 上では全微分可能ではない。

(3) 積分は極座標で計算する。x=rcosθ, y=rsinθx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta とおくと f(x,y)=r(cos3θsin3θ) f(x,y)=r(\cos^3\theta-\sin^3\theta) であり,f>0f>0cosθ>sinθ\cos\theta>\sin\theta と同値である。したがって単位円内の領域は 3π4<θ<π4,0<r<1 -\frac{3\pi}{4}<\theta<\frac{\pi}{4},\qquad 0<r<1 で表される。ゆえに I=3π/4π/401r(cos3θsin3θ)rdrdθ=133π/4π/4(cos3θsin3θ)dθ=529. \begin{aligned} I &=\int_{-3\pi/4}^{\pi/4}\int_0^1 r(\cos^3\theta-\sin^3\theta)\,r\,dr\,d\theta \\ &=\frac13 \int_{-3\pi/4}^{\pi/4}(\cos^3\theta-\sin^3\theta)\,d\theta =\frac{5\sqrt2}{9}. \end{aligned}

最終答

(1)f は R2 上連続かつ一回偏微分可能 \text{(1)}\quad \boxed{f\text{ は }\mathbb R^2\text{ 上連続かつ一回偏微分可能}} (2)f は原点で全微分可能ではない \text{(2)}\quad \boxed{f\text{ は原点で全微分可能ではない}} (3)I=529 \text{(3)}\quad \boxed{I=\frac{5\sqrt2}{9}}

3 — コンパクト集合の直積近傍

コンパクト性が作る余裕

点ごとの開近傍なら UU が開であることだけで作れる。しかしここでは 一つの直積 V×WV\times W をまとめて入れる必要がある。この一様な余裕を与えるのが A×BA\times B のコンパクト性である。

距離は最大ノルムが便利

平面の距離として (x,y)=max(x,y) \|(x,y)\|_\infty=\max(|x|,|y|) を使うと,xx 方向と yy 方向に同じ幅だけ太らせた集合がそのまま 直積近傍になる。ユークリッド距離でも証明できるが,最後に直積へ戻す記述が少し増える。

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空集合を含む場合は自明なので,以下では A,BA,B がともに空でないとしてよい。 A×BA\times B はコンパクトであり,UcU^c は閉集合である。さらに A×BU A\times B\subset U だから,最大値・最小値の存在を使って δ=dist(A×B,Uc)=inf{max(ax,by):(a,b)A×B, (x,y)Uc} \delta =\operatorname{dist}_\infty(A\times B,U^c) = \inf\{\max(|a-x|,|b-y|):(a,b)\in A\times B,\ (x,y)\in U^c\} は正である。ただし Uc=U^c=\varnothing のときは任意の正の δ\delta を取ればよい。

そこで V={xR:dist(x,A)<δ/2},W={yR:dist(y,B)<δ/2} V=\{x\in\mathbb{R}:\operatorname{dist}(x,A)<\delta/2\},\qquad W=\{y\in\mathbb{R}:\operatorname{dist}(y,B)<\delta/2\} とおく。これは R\mathbb{R} の開集合であり,明らかに A×BV×W A\times B\subset V\times W である。

任意の (x,y)V×W(x,y)\in V\times W を取ると,ある aA, bBa\in A,\ b\in B が存在して xa<δ/2,yb<δ/2 |x-a|<\delta/2,\qquad |y-b|<\delta/2 となる。したがって dist((x,y),A×B)<δ. \operatorname{dist}_\infty((x,y),A\times B)<\delta. もし (x,y)U(x,y)\notin U なら (x,y)Uc(x,y)\in U^c であり,δ\delta の定義に反する。 よって (x,y)U(x,y)\in U である。したがって A×BV×WU A\times B\subset V\times W\subset U が示された。

最終答

V={x:dist(x,A)<δ/2},W={y:dist(y,B)<δ/2} V=\{x:\operatorname{dist}(x,A)<\delta/2\},\qquad W=\{y:\operatorname{dist}(y,B)<\delta/2\} と取ればよい。ただし δ\deltaA×BA\times BUcU^c の正の距離である。

4 — 留数計算と交代二項和

和は留数定理で出る

二項係数を含む交代和は,有限個の整数点に単純極を置くと自然に現れる。 この問題では (2z+1)2(2z+1)^2 を加えることで,分母の (2k+1)2(2k+1)^21/2-1/2 の二位の極が同時に作られている。

主要項の分離

和は 2nn!(2n+1)!!j=0n12j+1 \frac{2^n n!}{(2n+1)!!} \sum_{j=0}^n\frac1{2j+1} と因数分解される。前者は n1/2n^{-1/2} の大きさ,後者は (1/2)logn(1/2)\log n の大きさである。したがって問題の n/logn\sqrt n/\log n という正規化が ちょうど定数を残す。

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(1) f(z)=n!(2z+1)2z(z1)(zn) f(z)=\frac{n!}{(2z+1)^2z(z-1)\cdots(z-n)} とおく。極は z=0,1,,n,z=12 z=0,1,\dots,n,\qquad z=-\frac12 である。k=0,1,,nk=0,1,\dots,n では単純極であり, Resz=kf(z)=n!(2k+1)2jk(kj)=(1)nk(2k+1)2(nk). \begin{aligned} \operatorname*{Res}_{z=k}f(z) &= \frac{n!}{(2k+1)^2\prod_{j\ne k}(k-j)} \\ &= \frac{(-1)^{n-k}}{(2k+1)^2}\binom{n}{k}. \end{aligned}

z=1/2z=-1/2 は二位の極である。 g(z)=n!4z(z1)(zn) g(z)=\frac{n!}{4z(z-1)\cdots(z-n)} とおくと f(z)=g(z)(z+1/2)2 f(z)=\frac{g(z)}{(z+1/2)^2} であるから,留数は g(1/2)g'(-1/2) である。対数微分により g(z)g(z)=j=0n1zj. \frac{g'(z)}{g(z)} =-\sum_{j=0}^n\frac1{z-j}. また g ⁣(12)=(1)n+12n1n!(2n+1)!!. g\!\left(-\frac12\right) = (-1)^{n+1}\frac{2^{\,n-1}n!}{(2n+1)!!}. したがって Resz=1/2f(z)=(1)n+12nn!(2n+1)!!j=0n12j+1. \operatorname*{Res}_{z=-1/2}f(z) = (-1)^{n+1}\frac{2^n n!}{(2n+1)!!} \sum_{j=0}^n\frac1{2j+1}.

(2) 次に Sn=k=0n(1)k(nk)1(2k+1)2 S_n=\sum_{k=0}^n(-1)^k\binom{n}{k}\frac1{(2k+1)^2} とおく。有理関数 ff は無限遠で O(zn3)O(z^{-n-3}) なので全留数の和は 00 である。 上の単純極の和は (1)nSn(-1)^nS_n だから Sn=2nn!(2n+1)!!j=0n12j+1. S_n= \frac{2^n n!}{(2n+1)!!} \sum_{j=0}^n\frac1{2j+1}. よって求める極限は limnnSnlogn. \lim_{n\to\infty} \frac{\sqrt n\,S_n}{\log n}.

ここで 2nn!(2n+1)!!=4n(2n+1)(2nn) \frac{2^n n!}{(2n+1)!!} = \frac{4^n}{(2n+1)\binom{2n}{n}} である。Wallis の公式から (2nn)4nπn \binom{2n}{n}\sim \frac{4^n}{\sqrt{\pi n}} が従うので n2nn!(2n+1)!!π2. \sqrt n\,\frac{2^n n!}{(2n+1)!!}\longrightarrow \frac{\sqrt\pi}{2}. また j=0n12j+1=12logn+O(1) \sum_{j=0}^n\frac1{2j+1} = \frac12\log n+O(1) である。したがって limnnSnlogn=π212=π4. \lim_{n\to\infty} \frac{\sqrt n\,S_n}{\log n} = \frac{\sqrt\pi}{2}\cdot\frac12 = \frac{\sqrt\pi}{4}.

最終答

(1)Resz=kf(z)=(1)nk(2k+1)2(nk)(0kn) \text{(1)}\quad \boxed{ \operatorname*{Res}_{z=k}f(z) = \frac{(-1)^{n-k}}{(2k+1)^2}\binom{n}{k} \quad(0\le k\le n) } Resz=1/2f(z)=(1)n+12nn!(2n+1)!!j=0n12j+1 \boxed{ \operatorname*{Res}_{z=-1/2}f(z) = (-1)^{n+1}\frac{2^n n!}{(2n+1)!!} \sum_{j=0}^n\frac1{2j+1} } (2)π4 \text{(2)}\quad \boxed{\frac{\sqrt\pi}{4}}

5 — Lipschitz関数の距離

この距離は値と傾きを測る

C1C^1 関数に限ると L(fg)=fgL(f-g)=\|f'-g'\|_\infty である。 つまりこの距離は f(0)f f(0)\quad\text{と}\quad f' を別々に測っている。したがって完備性は R×C[0,1]\mathbb{R}\times C[0,1] の完備性に帰着される。

通常の一様収束とは違う

一様収束だけでは C1C^1 関数列の極限が C1C^1 とは限らない。 ここでは導関数が一様 Cauchy になるため,極限の導関数を先に作ってから積分で 関数を復元できる。

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(1) C1C^1 関数 ff に対して,[0,1][0,1] 上で ff' は有界である。 平均値の定理より f(x)f(y)max0t1f(t)xy |f(x)-f(y)|\le \max_{0\le t\le1}|f'(t)|\,|x-y| だから YXY\subset X である。

(2) 次に dd が距離であることを示す。Lipschitz 定数の最小値 LLL(h)0,L(h)=L(h),L(h1+h2)L(h1)+L(h2) L(h)\ge0,\qquad L(-h)=L(h),\qquad L(h_1+h_2)\le L(h_1)+L(h_2) を満たす。また L(h)=0L(h)=0 なら hh は定数である。 したがって d(f,g)0d(f,g)\ge0,対称性,三角不等式は直ちに従う。 さらに d(f,g)=0d(f,g)=0 なら f(0)=g(0),L(fg)=0 f(0)=g(0),\qquad L(f-g)=0 である。よって fgf-g は定数で,しかも 00 での値が 00 だから f=gf=g である。 これで ddXX 上の距離である。

(3) 最後に YY の完備性を示す。C1C^1 関数 hh については L(h)=max0t1h(t) L(h)=\max_{0\le t\le1}|h'(t)| である。したがって YYdd-Cauchy 列 {fm}\{f_m\} に対して, {fm(0)}\{f_m(0)\} は実数の Cauchy 列であり,{fm}\{f_m'\} は 連続関数空間 C[0,1]C[0,1] の一様ノルムに関する Cauchy 列である。 よって fm(0)a,fmφ f_m(0)\to a,\qquad f_m'\to \varphi となる aRa\in\mathbb{R}φC[0,1]\varphi\in C[0,1] が存在する。

f(x)=a+0xφ(t)dt f(x)=a+\int_0^x\varphi(t)\,dt と定めると fC1[0,1]f\in C^1[0,1] であり f=φf'= \varphi である。さらに d(fm,f)=fm(0)a+max0t1fm(t)φ(t)0. d(f_m,f) = |f_m(0)-a|+\max_{0\le t\le1}|f_m'(t)-\varphi(t)| \longrightarrow0. したがって YY はこの距離について完備である。

最終答

(1)YX \text{(1)}\quad \boxed{Y\subset X} (2)d(f,g)=f(0)g(0)+L(fg) は X 上の距離である \text{(2)}\quad \boxed{ d(f,g)=|f(0)-g(0)|+L(f-g) \text{ は }X\text{ 上の距離である} } (3)Y はこの距離で完備である \text{(3)}\quad \boxed{Y\text{ はこの距離で完備である}}

6 — Laplace型積分の境界展開

境界点 x=0x=0 は別扱い

x>0x>0 では指数関数に e2xu/se^{-2xu/s} が現れるため,主要な寄与は u=O(s)u=O(s) の狭い範囲から来る。一方 x=0x=0 では u=O(s)u=O(\sqrt{s}) が主要範囲になる。 このスケールの違いが a0(0)a0(x)a_0(0)\ne a_0(x) という不連続な結果を生む。

展開の読み方

x>0x>0 では esv2=1sv2+s2v42 e^{-sv^2}=1-sv^2+\frac{s^2v^4}{2}-\cdots s20ve2xvesv2dv s^2\int_0^\infty v e^{-2xv}e^{-sv^2}\,dv に代入するだけで係数が読める。符号を間違えやすいのは a2a_2 で, 一次補正が sv2-sv^2 から来るため負になる。

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(1) まず y=x+u y=x+u とおくと f(x,s)=0uexp((x+u)2x2s)du=0uexp(2xu+u2s)du. \begin{aligned} f(x,s) &=\int_0^\infty u\exp\left(-\frac{(x+u)^2-x^2}{s}\right)\,du \\ &=\int_0^\infty u\exp\left(-\frac{2xu+u^2}{s}\right)\,du . \end{aligned}

x=0x=0 のときは f(0,s)=0ueu2/sdu=s2 f(0,s)=\int_0^\infty u e^{-u^2/s}\,du=\frac{s}{2} である。したがって a0(0)=12,a1(0)=0,a2(0)=0. a_0(0)=\frac12,\qquad a_1(0)=0,\qquad a_2(0)=0.

以下 x>0x>0 とする。さらに u=svu=sv とおくと f(x,s)=s20ve2xvesv2dv. f(x,s)=s^2\int_0^\infty v e^{-2xv}e^{-sv^2}\,dv. よって f(x,s)s=s0ve2xvesv2dv0 \frac{f(x,s)}{s} = s\int_0^\infty v e^{-2xv}e^{-sv^2}\,dv\longrightarrow0 であり, a0(x)=0(x>0) a_0(x)=0\qquad(x>0) である。

(2) 次に f(x,s)s2=0ve2xvesv2dv0ve2xvdv=14x2. \frac{f(x,s)}{s^2} = \int_0^\infty v e^{-2xv}e^{-sv^2}\,dv \longrightarrow \int_0^\infty v e^{-2xv}\,dv = \frac1{4x^2}. したがって a1(x)=14x2(x>0). a_1(x)=\frac1{4x^2}\qquad(x>0).

(3) 最後に f(x,s)s2/(4x2)s3=0ve2xvesv21sdv. \frac{f(x,s)-s^2/(4x^2)}{s^3} = \int_0^\infty v e^{-2xv}\frac{e^{-sv^2}-1}{s}\,dv. s0s\downarrow0esv21sv2 \frac{e^{-sv^2}-1}{s}\longrightarrow -v^2 だから,支配収束により a2(x)=0v3e2xvdv=38x4(x>0). a_2(x) = -\int_0^\infty v^3e^{-2xv}\,dv = -\frac{3}{8x^4} \qquad(x>0).

最終答

(1)a0(x)={12,x=0,0,x>0, \text{(1)}\quad \boxed{ a_0(x)= \begin{cases} \frac12,&x=0,\\ 0,&x>0, \end{cases} } (2)a1(x)={0,x=0,14x2,x>0, \text{(2)}\quad \boxed{ a_1(x)= \begin{cases} 0,&x=0,\\ \frac1{4x^2},&x>0, \end{cases} } (3)a2(x)={0,x=0,38x4,x>0. \text{(3)}\quad \boxed{ a_2(x)= \begin{cases} 0,&x=0,\\ -\frac3{8x^4},&x>0. \end{cases} }

7 — 階数一更新と正則性

階数一更新の判定

EijE_{ij} は「第 jj 成分を読み取って eie_i 方向を足す」階数一の写像である。 階数が増えるには,足す方向 eie_i がもとの列空間の外にあり,かつ読み取り ejTe_j^TkerA\ker A 上で消えないことが必要である。後者は eje_j が行空間の外にあることと同値である。

正則行列の場合

正則性の判定では行列式補題が最短である。すべての一成分更新で特異になると仮定すると, A1A^{-1} の全成分が 1-1 になってしまう。n2n\ge2 ではその行列は階数 11 なので, 逆行列としてはあり得ない。

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(1) AA を線形写像と見て,列空間を ImA\operatorname{Im}A,行空間を RowA\operatorname{Row}A と書く。標準基底を e1,,ene_1,\dots,e_n とする。 階数 rr の部分空間 ImA\operatorname{Im}A は,標準基底ベクトルのうち高々 rr 個しか 含めない。したがって eiImA e_i\notin\operatorname{Im}A となる ii は少なくとも nrn-r 個ある。同様に ejRowA e_j\notin\operatorname{Row}A となる jj も少なくとも nrn-r 個ある。

このような i,ji,j を取る。Eij=eiejTE_{ij}=e_i e_j^T である。 eiImAe_i\notin\operatorname{Im}A かつ ejRowAe_j\notin\operatorname{Row}A のとき, rank(A+Eij)=r+1 \operatorname{rank}(A+E_{ij})=r+1 を示す。

実際,(A+eiejT)x=0(A+e_i e_j^T)x=0 とする。このとき Ax=(ejTx)ei. Ax=-(e_j^Tx)e_i. 左辺は ImA\operatorname{Im}A に属する。eiImAe_i\notin\operatorname{Im}A だから ejTx=0e_j^Tx=0 でなければならず,従って Ax=0Ax=0 である。よって ker(A+Eij)=kerAker(ejT). \ker(A+E_{ij})=\ker A\cap \ker(e_j^T). また ejRowA=(kerA)e_j\notin\operatorname{Row}A=(\ker A)^\perp なので, ejTe_j^TkerA\ker A 上で零汎関数ではない。したがって dimker(A+Eij)=dimkerA1=nr1. \dim\ker(A+E_{ij}) = \dim\ker A-1 = n-r-1. 階数・退化次数の定理より rank(A+Eij)=r+1>r. \operatorname{rank}(A+E_{ij})=r+1>r. よって条件を満たす組は少なくとも (nr)2 (n-r)^2 個存在する。

(2) 次に AA が正則である場合を考える。行列式補題より det(A+Eij)=detA(1+ejTA1ei)=detA(1+(A1)ji). \det(A+E_{ij}) = \det A\left(1+e_j^TA^{-1}e_i\right) = \det A\left(1+(A^{-1})_{ji}\right). もしすべての i,ji,j について A+EijA+E_{ij} が正則でないなら, (A1)ji=1 (A^{-1})_{ji}=-1 がすべての i,ji,j で成り立つ。すると A1A^{-1} は全成分が 1-1 の行列になる。 しかし n2n\ge2 ではこの行列の階数は 11 であり,正則ではない。これは A1A^{-1} が正則であることに反する。したがって正則な A+EijA+E_{ij} が少なくとも一つ 存在する。

最終答

(1)#{(i,j):rank(A+Eij)>rankA}(nr)2 \text{(1)}\quad \boxed{ \#\{(i,j):\operatorname{rank}(A+E_{ij})>\operatorname{rank}A\} \ge (n-r)^2 } (2)A が正則なら,ある (i,j) で A+Eij も正則 \text{(2)}\quad \boxed{A\text{ が正則なら,ある }(i,j)\text{ で }A+E_{ij}\text{ も正則}}

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